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第4話 夢中説夢-1
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ジリリリリリリリリリ!!!!
「うわっ!」
けたたましい音で目が覚めた。寝ぼけながらも、音の原因である目覚めし時計を止めた。部屋には、外で降っているらしい雨音が響いていた。
「……今日、雨かよ」
ただでさえ目覚めの悪い夢を見たというのに、雨とは泣きっ面に蜂だ。しかも、昨日遅くまで飲んでいたので二日酔いによる頭痛が襲ってきた。幸い、そこまで酷くはないので、今日の仕事に影響はなさそうだ。
昨日、仕事が終わってから三嶋とその友人達と遊びに行った。全部で7.8人ほどいたと思う。人生で初めてダーツバーというとこに行った。ダーツは、てんでダメだったが面白かった。いい憂さ晴らしになったと思う。
だが、そのあとが最悪だった。三嶋による「こいつ彼女募集してます」攻撃が始まったのだ。何を勘違いしたのか、俺が美幸に振られたと思ったらしい三嶋は、俺のことを励まそうとしたらしい。
その場にいた3.4人の女性に興味を持たれてしまい、質問攻めに合った。ちょくちょく三嶋が話しに入りながら、その時間は延々と続いた。家に着いたのは、2時を回っていたと思う。
今の時刻は9時32分。俺は朝のコーヒーとご飯を準備するため、ベッドから起き上がりキッチンへと向かった。
お湯を沸かしながら、俺は今朝の夢のことを思い返していた。普通の夢なら、目覚めてすぐに内容なんて忘れてしまうが、今朝の夢はやはり鮮明に覚えていた。
やっぱり、キスをしようとすると目が覚めるのだろうか。俺は、無理矢理夢を終わらせようとして、美幸にキスをしようとした。そのあたりで目が覚めたように思う。
いや、そんなことよりもだ。もっと衝撃的なことがあっただろう。
「……夢では生きてんのか、母さん」
誰にでもなく、そう呟いた。
忘れた日なんてなかった。母さんが死んでから、俺は毎日後悔していた。母さんが死んだのは、俺が原因だから。
ふと、自分の頬を冷たいものがつたった。涙だ。昨日の夜といい、最近涙もろいな、俺。
「墓参りでも行くか」
直接ではないが、こうやって夢に出てきたってことは、何か意味があるのかもしれない。生憎の天気だが、出勤までまだ時間がある。朝食を食べたら墓参りにでもいこう。歩いて10分もかからないし。
そういえば、もうひとつ気になることがあった。美幸は、俺の母さんが死んだことを知っているのかということだ。
葬式には来なかった。美幸のご両親は参列してくれたが、そこに美幸の姿はなかった。俺は母さんの葬式の時、あまりの喪失感に、誰ともまともに会話ができなかった。美幸のお母さんが俺に何か話しかけてくれたような記憶があるが、ほとんど覚えていない。
その後、美幸のご両親とも連絡を取っていない。同じ街に住んでいるのだから、二人を見かけるときはある。だが、なぜか声をかける気にはなれなかった。
美幸のことを聞こうと思えば、いつでも聞けたというのに。そうしなかったのは、俺にはそんな資格がないと思っていたから。
でも。
覚えていてくれた。それが唯一の救いだった。楽しく会話をしたわけでも、連絡先を交換したわけでもない。ただ、俺のことを覚えていてくれただけ。
それだけで、俺は美幸と関わることを許された気がした。ただの勘違いかもしれないことだが。
そして、俺は昨日自分の気持ちに気づいてしまった。俺は、美幸と話したい。昔のように、仲のいい幼なじみに戻りたいのだと。
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ジリリリリリリリリリ!!!!
「うわっ!」
けたたましい音で目が覚めた。寝ぼけながらも、音の原因である目覚めし時計を止めた。部屋には、外で降っているらしい雨音が響いていた。
「……今日、雨かよ」
ただでさえ目覚めの悪い夢を見たというのに、雨とは泣きっ面に蜂だ。しかも、昨日遅くまで飲んでいたので二日酔いによる頭痛が襲ってきた。幸い、そこまで酷くはないので、今日の仕事に影響はなさそうだ。
昨日、仕事が終わってから三嶋とその友人達と遊びに行った。全部で7.8人ほどいたと思う。人生で初めてダーツバーというとこに行った。ダーツは、てんでダメだったが面白かった。いい憂さ晴らしになったと思う。
だが、そのあとが最悪だった。三嶋による「こいつ彼女募集してます」攻撃が始まったのだ。何を勘違いしたのか、俺が美幸に振られたと思ったらしい三嶋は、俺のことを励まそうとしたらしい。
その場にいた3.4人の女性に興味を持たれてしまい、質問攻めに合った。ちょくちょく三嶋が話しに入りながら、その時間は延々と続いた。家に着いたのは、2時を回っていたと思う。
今の時刻は9時32分。俺は朝のコーヒーとご飯を準備するため、ベッドから起き上がりキッチンへと向かった。
お湯を沸かしながら、俺は今朝の夢のことを思い返していた。普通の夢なら、目覚めてすぐに内容なんて忘れてしまうが、今朝の夢はやはり鮮明に覚えていた。
やっぱり、キスをしようとすると目が覚めるのだろうか。俺は、無理矢理夢を終わらせようとして、美幸にキスをしようとした。そのあたりで目が覚めたように思う。
いや、そんなことよりもだ。もっと衝撃的なことがあっただろう。
「……夢では生きてんのか、母さん」
誰にでもなく、そう呟いた。
忘れた日なんてなかった。母さんが死んでから、俺は毎日後悔していた。母さんが死んだのは、俺が原因だから。
ふと、自分の頬を冷たいものがつたった。涙だ。昨日の夜といい、最近涙もろいな、俺。
「墓参りでも行くか」
直接ではないが、こうやって夢に出てきたってことは、何か意味があるのかもしれない。生憎の天気だが、出勤までまだ時間がある。朝食を食べたら墓参りにでもいこう。歩いて10分もかからないし。
そういえば、もうひとつ気になることがあった。美幸は、俺の母さんが死んだことを知っているのかということだ。
葬式には来なかった。美幸のご両親は参列してくれたが、そこに美幸の姿はなかった。俺は母さんの葬式の時、あまりの喪失感に、誰ともまともに会話ができなかった。美幸のお母さんが俺に何か話しかけてくれたような記憶があるが、ほとんど覚えていない。
その後、美幸のご両親とも連絡を取っていない。同じ街に住んでいるのだから、二人を見かけるときはある。だが、なぜか声をかける気にはなれなかった。
美幸のことを聞こうと思えば、いつでも聞けたというのに。そうしなかったのは、俺にはそんな資格がないと思っていたから。
でも。
覚えていてくれた。それが唯一の救いだった。楽しく会話をしたわけでも、連絡先を交換したわけでもない。ただ、俺のことを覚えていてくれただけ。
それだけで、俺は美幸と関わることを許された気がした。ただの勘違いかもしれないことだが。
そして、俺は昨日自分の気持ちに気づいてしまった。俺は、美幸と話したい。昔のように、仲のいい幼なじみに戻りたいのだと。
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