主観恋愛【詩集】

松野井奏

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嘘つきと災い

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あなたの嘘は好き。私のためにあるから。
あなたの「好き」は嫌い。あなたのための嘘だから。
私たちは傷を舐め合うために、この遊びを続けていただけ。いつか終わるのを知っていながら、それを先延ばしにするのに慣れていた。
誰も損してない。なにがいけないの。
私は傷つかない。それでいいじゃない。

遊ぶだけ遊んで、いくとこまでいったら操作完了。私はコントロールを失わない。愉悦は、増えていくばかり。
満たされないくらいが丁度良いじゃない。全身全霊なんて疲れてしまうわ。ただ上手に泳いでいたいだけ。あなたもそうでしょう。

今日だってほら、そんな目をして誘っている。
艶やかな唇は雄弁。巧みな指先に絡むのは紅い紅い糸じゃないでしょう。
それでもいいの。それがいいの。本気かどうかなんて下らないわ。私たちは切っても切れない間柄。ただそれだけ。

奪うのに慣れてるなんて、笑止千万。
私は与えられこそすれ、奪ったことなんてないわ。愛なんていう免罪符、私はいらないの。
盗った盗られたなんてはしたないわ。だってねえ、そうでしょう。

「さよなら」をあなたがいつまでも言わないから。耳障りな「すき」がいつまでも鳴り止まない。
嘘だよとただ一言、言って笑って。
災いよ、どうぞこちらへいらっしゃい。
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