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第一章
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狩猟大会も終わり、シルと一緒に帝都に帰ろうとしたが第二騎士団の仕事で一日だけ遅く帰宅することになった。
折角一緒に狩猟大会に参加したって言うのに、二人っきりになれる時間が少なすぎる!
先に帝都に戻るシルを見送る際、魔力を吸収してもらって身体を楽にしてくれたけど、心が全く癒されない!
また一週間以上も会えないとか地獄すぎるので、シルに追いつく為にもさっさと仕事を終わらせ、ミリガンとともに馬車に乗り込む。
「見事なものでしたね団長」
馬車内だと言うのに大量の書類に目を通しながら話しかけてきた。
「だろ?」
優勝賞品に「雪月花」が与えられると言う話をミリガンから聞いて、今回の作戦を思いついた。
「雪月花」がプロポーズするのにピッタリの希少性と美しさを持つ宝石だ。
「キング」に選ばれた者が「雪月花」がを手に、意中の女性に贈れば未来永劫幸せになれる。と言う噂を持つこともあり絶対に優勝したかった。
あの野郎のせいでシルは怖い思いをしたし、ロキのせいで申し訳ない気持ちになったシルに最上の名誉と宝石を贈りたかった。
そしてそれ以上に、シルフレイヤ・アティルナが俺の婚約者だって言いたかった。
過去の俺の行動のせいで、他の女に嘲笑されているのも払拭したかった。これから綺麗になるであろうシルに、誰も手が出せないよう牽制もできた。
「キングの名誉さえ贈る奴はいねぇからな」
宝石は贈っても名誉を贈ることはしない。なんたってあの北部の王が認めた称号だ。
普通の貴族や騎士なら例え愛しい相手だろうと譲るなんてしない。まぁ一般的な話だよな。
だからこそそれを初めてした俺は目立つし、俺がそれだけシルを愛しているという噂はすぐにでも帝国中に知られるだろう。
こうすればシルを嘲笑する奴もいなくなるし、シルにちょっかい出す奴も現れない。
「団長は名誉よりアティルナ公女のほうが大切ですからね。かなり効果的だと思いますよ」
「女の噂は早ぇからな」
「男でも十分早いと思いますよ」
「……だから絶対に…。絶っっっ対にあの事だけはバレないようにしなければッ!」
マルスを通じてシルに危険がないか確認した際、初めて嫉妬する顔が見れて興奮した。
いつかあの怒っても可愛いシルを生で見たいなぁ…。
なんて思っていたが、俺の愛人についての話がシルの耳に入ったと聞いて心臓が止まった。
「私は何度も忠告しましたよ。紛らわしくなるから自テント内に女性を招くなと」
「だからッ! それは全部デモスとスタラザ、あとフォンのせいであって俺のせいじゃねェだろ!? 俺はずっと寝てたしヤってない!」
「事実はどうであれ、どこで誰が見ているのか解らないから止めるようにと忠告しました」
「あん時はそういうのどうでもよかったんだよ…! ああああもう過去に戻って自分を殺したい案件がまた増えたァアアア!!」
「これ以上ないことを祈るばかりです」
「俺は本当にクソ野郎だッ…!」
戦争中。俺のテントは広く、側近のデモスやスタラザが俺の不在中や、俺がいてもお構いなく娼婦を呼んでヤりまくっていた。
しかもあいつらときたらトラキア城の俺の部屋でもヤっていたとかで、色々な人間が「俺の自室から女が出て行く姿」を目撃している。
「魔力過剰症」の症状で他人で関心が持てず、どうしようと問題にしなかった。寧ろそいつらを元気にしてやる為に魔法が使えると思って積極的に助けてやった…。
あああそのせいで俺に愛人がいるとか、婚約者がいるのに他の女に手を出すクズ野郎だとかって…!
いや俺が悪いのは解っている。でもこれもシルに絶対にバレてはいけない過去だ。
幸いシルは気にしていない様子だったけど、トラキアに行く前にどうにかしねェとヤバイ。絶対に幻滅する…!
「とにかく全力で隠せ。あの兄共にもバレないようにしろ」
「お相手をした女性達はどうしますか?」
「そっちは絶対に大丈夫。いざこざが面倒臭ェからその場で記憶消してる」
「気軽に禁忌魔法を使用しないで下さい」
「戦場なら何があってもバレねぇから大丈夫だろ。それよりシルにバレるほうが怖い…。無理…捨てられたら死ぬ…」
「死ねない癖に」
「じゃあ世界壊滅して俺とシルだけの世界にする。そしたらいくらシルでも俺と一緒にいるしかなくなる…」
「悪魔ではなく魔王でしたか」
「駄目だ…。考えれば考えるほど死にたくなる…。ヤってねぇけど協力してたし、トラキアの連中もそう思ってる奴ら多い…」
「では元凶のデモス様とスタザラ様、フォボス様を処分することをお勧めします」
「―――そうだな、殺そう」
「私は殺さないでくださいね、忠告した唯一の人間ですから」
そう言って視線を書類から俺に向けてキッパリ言い放つ。
ミリガンには仲のいい婚約者がいたのもあって何度も何度も忠告してくれた。
「罪悪感を抱えたままアティルナ公女を幸せにするしか救いはありませんよ」
「当たり前だ」
「それと、自分は最低人間なのにアティルナ公女の過去の男に嫉妬して、怪我を負わせる資格はないと思います。例え最低だとしても、オットライト家の私からしたら守るべき存在です」
「…」
ほんっと痛いとこばっかついてきやがる…。
俺が悪いのは解ってるが、嫉妬ぐらい許されるだろ。
怪我を負わせたのはシルを怖がらせたあいつが悪い。
シルに対して愛憎を持つとか頭イかれてるし、接触禁止が出てんのに執着してるのもおかしい。変態じゃねぇか、気持ち悪い…。
もし俺が行かなかったらどうなっていた?殴られていた?持っていた剣で斬りかかっていた?
シルの柔肌を男の力で殴ったら腫れるどころじゃない。斬ったりしたら死罪でも許されない…。
って言うか俺すらも滅多に触れねぇのにあんな奴がシルに触れるなんて許されることじゃない!
……いや待て。すぐに婚約者候補から外れたと言っても、一時は候補で何度か会ってるよな…?って言うことはシルに触れたことがあるのか?
「いい加減にして下さい団長」
「いつか消してやる」
「止めて下さい」
折角一緒に狩猟大会に参加したって言うのに、二人っきりになれる時間が少なすぎる!
先に帝都に戻るシルを見送る際、魔力を吸収してもらって身体を楽にしてくれたけど、心が全く癒されない!
また一週間以上も会えないとか地獄すぎるので、シルに追いつく為にもさっさと仕事を終わらせ、ミリガンとともに馬車に乗り込む。
「見事なものでしたね団長」
馬車内だと言うのに大量の書類に目を通しながら話しかけてきた。
「だろ?」
優勝賞品に「雪月花」が与えられると言う話をミリガンから聞いて、今回の作戦を思いついた。
「雪月花」がプロポーズするのにピッタリの希少性と美しさを持つ宝石だ。
「キング」に選ばれた者が「雪月花」がを手に、意中の女性に贈れば未来永劫幸せになれる。と言う噂を持つこともあり絶対に優勝したかった。
あの野郎のせいでシルは怖い思いをしたし、ロキのせいで申し訳ない気持ちになったシルに最上の名誉と宝石を贈りたかった。
そしてそれ以上に、シルフレイヤ・アティルナが俺の婚約者だって言いたかった。
過去の俺の行動のせいで、他の女に嘲笑されているのも払拭したかった。これから綺麗になるであろうシルに、誰も手が出せないよう牽制もできた。
「キングの名誉さえ贈る奴はいねぇからな」
宝石は贈っても名誉を贈ることはしない。なんたってあの北部の王が認めた称号だ。
普通の貴族や騎士なら例え愛しい相手だろうと譲るなんてしない。まぁ一般的な話だよな。
だからこそそれを初めてした俺は目立つし、俺がそれだけシルを愛しているという噂はすぐにでも帝国中に知られるだろう。
こうすればシルを嘲笑する奴もいなくなるし、シルにちょっかい出す奴も現れない。
「団長は名誉よりアティルナ公女のほうが大切ですからね。かなり効果的だと思いますよ」
「女の噂は早ぇからな」
「男でも十分早いと思いますよ」
「……だから絶対に…。絶っっっ対にあの事だけはバレないようにしなければッ!」
マルスを通じてシルに危険がないか確認した際、初めて嫉妬する顔が見れて興奮した。
いつかあの怒っても可愛いシルを生で見たいなぁ…。
なんて思っていたが、俺の愛人についての話がシルの耳に入ったと聞いて心臓が止まった。
「私は何度も忠告しましたよ。紛らわしくなるから自テント内に女性を招くなと」
「だからッ! それは全部デモスとスタラザ、あとフォンのせいであって俺のせいじゃねェだろ!? 俺はずっと寝てたしヤってない!」
「事実はどうであれ、どこで誰が見ているのか解らないから止めるようにと忠告しました」
「あん時はそういうのどうでもよかったんだよ…! ああああもう過去に戻って自分を殺したい案件がまた増えたァアアア!!」
「これ以上ないことを祈るばかりです」
「俺は本当にクソ野郎だッ…!」
戦争中。俺のテントは広く、側近のデモスやスタラザが俺の不在中や、俺がいてもお構いなく娼婦を呼んでヤりまくっていた。
しかもあいつらときたらトラキア城の俺の部屋でもヤっていたとかで、色々な人間が「俺の自室から女が出て行く姿」を目撃している。
「魔力過剰症」の症状で他人で関心が持てず、どうしようと問題にしなかった。寧ろそいつらを元気にしてやる為に魔法が使えると思って積極的に助けてやった…。
あああそのせいで俺に愛人がいるとか、婚約者がいるのに他の女に手を出すクズ野郎だとかって…!
いや俺が悪いのは解っている。でもこれもシルに絶対にバレてはいけない過去だ。
幸いシルは気にしていない様子だったけど、トラキアに行く前にどうにかしねェとヤバイ。絶対に幻滅する…!
「とにかく全力で隠せ。あの兄共にもバレないようにしろ」
「お相手をした女性達はどうしますか?」
「そっちは絶対に大丈夫。いざこざが面倒臭ェからその場で記憶消してる」
「気軽に禁忌魔法を使用しないで下さい」
「戦場なら何があってもバレねぇから大丈夫だろ。それよりシルにバレるほうが怖い…。無理…捨てられたら死ぬ…」
「死ねない癖に」
「じゃあ世界壊滅して俺とシルだけの世界にする。そしたらいくらシルでも俺と一緒にいるしかなくなる…」
「悪魔ではなく魔王でしたか」
「駄目だ…。考えれば考えるほど死にたくなる…。ヤってねぇけど協力してたし、トラキアの連中もそう思ってる奴ら多い…」
「では元凶のデモス様とスタザラ様、フォボス様を処分することをお勧めします」
「―――そうだな、殺そう」
「私は殺さないでくださいね、忠告した唯一の人間ですから」
そう言って視線を書類から俺に向けてキッパリ言い放つ。
ミリガンには仲のいい婚約者がいたのもあって何度も何度も忠告してくれた。
「罪悪感を抱えたままアティルナ公女を幸せにするしか救いはありませんよ」
「当たり前だ」
「それと、自分は最低人間なのにアティルナ公女の過去の男に嫉妬して、怪我を負わせる資格はないと思います。例え最低だとしても、オットライト家の私からしたら守るべき存在です」
「…」
ほんっと痛いとこばっかついてきやがる…。
俺が悪いのは解ってるが、嫉妬ぐらい許されるだろ。
怪我を負わせたのはシルを怖がらせたあいつが悪い。
シルに対して愛憎を持つとか頭イかれてるし、接触禁止が出てんのに執着してるのもおかしい。変態じゃねぇか、気持ち悪い…。
もし俺が行かなかったらどうなっていた?殴られていた?持っていた剣で斬りかかっていた?
シルの柔肌を男の力で殴ったら腫れるどころじゃない。斬ったりしたら死罪でも許されない…。
って言うか俺すらも滅多に触れねぇのにあんな奴がシルに触れるなんて許されることじゃない!
……いや待て。すぐに婚約者候補から外れたと言っても、一時は候補で何度か会ってるよな…?って言うことはシルに触れたことがあるのか?
「いい加減にして下さい団長」
「いつか消してやる」
「止めて下さい」
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