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第1章
14.一緒に行こう! 【挿絵あり】
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リディの前でひとしきり泣いて気が済んだのだろう。赤い目をより赤くしたナイトメアは「そうだ」と呟く。
『私のお願いばかり聞いていただくわけにはいきません。リディ、あなたが西方へ来た理由を聞かせてください。私も全力であなたの力になります!』
ナイトメアはぐっと顔を上げて胸を張る。その姿は「ずっとこうして立っていれば、それだけで有名になれそうだ」と思えるほどに堂々としていて立派だった。
「ありがとう。私はね、母様を探してるの。母様を探して、持ち去った鈴鳴家の宝を返してもらわなきゃいけないんだ」
『ほう? この広い地でたったひとりを捜すのですか。あなたもなかなか難儀なものを背負ってますね。で、そのスズナリ家の宝とはどんなものなのです?』
「神乞い鈴っていう神器だよ。中央の棒にね、三段になった鈴が合計十五個ついていて、とても良い音が鳴るんだ。昔々、巫女の“五百鳴媛”という方がお作りになった品でね」
鈴の音を好むとされる紫禳の神の気をひくのが神乞い鈴の役目だ。取り付けられた十五の鈴の中には、紫禳の神が五百鳴媛を見初める元になった鈴もあるのだと伝わる。
「鈴鳴家出身の女性が神乞い鈴を持って舞うと神に願いを届けられるって言われてるから、国家の安寧や豊穣を祈る大きな儀式の時には必ず使うんだよ」
『あなたも使ったことがあるのですか?』
「もちろん」
リディは大社の舞殿でよくやったように、着物の袖を押さえながら鈴を振る動作をしてみせる。
着ている物は巫女の白衣ではないし、袴も緋袴とは少し違う赤だが、こうしてほんの少し舞うだけで“紗綾”に戻った気持ちになった。
「……だけどね」
鈴鳴家にはもうひとつの伝承がひっそりと残されている。五百鳴媛が神乞い鈴を作った真の理由は個人的なものだったという話。実は彼女は、真の姿を恥じて天へ帰った夫――紫禳の神に再び会いたかっただけなのだと。
神乞い鈴は“神恋《かむこ》い鈴”だ。
五百鳴媛は天に向かって「恋しい貴方、今ひとたび」と呼びかけながらこの鈴を鳴らし、幾度も舞ったそうだ。
しかし紫禳の初代国主・鈴鳴 紫津彦は【残念ながら母の望みは叶わなかった】と書き残している。
『……聞いた限りだとあまりありがたいものではなさそうですが、そんな品が本当に家宝で神器なんですか?』
「そう言わないでよ。紫禳の神は地へお越しにならないけど、鈴の音を聞いて天から加護を与えてくださっている。紫禳国に大きな争乱は起きず、飢えや乾きに苦しむこともないのが何よりの証拠だ。……ってことに表向きはなってるから」
胡乱な目つきをするナイトメアに微笑んで答え、リディは道の先へ顔を向ける。
「おっと、こうしてる場合じゃない。早く行かないと次の町に間に合わなくなっちゃう」
『あなたそれ、本気で言ってます?』
ナイトメアの口調には呆れが滲んでいる。
『あなたにはこの私がいるんですよ。私なら今日中に次の町どころか、三つ先の町までだってあなたを乗せて行けます』
「でも私、馬具がまったくない馬にちゃんと乗れる自信なんてないよ」
『……でしたら走るのはやめます。今日は次の町までにしましょう』
「ありがとう。えーと……ウェベドゥビジャムヌジョニョモモモモさん」
『その謎の呪文はもしや、私の名前のつもりですか? 私は※*#@♪△ですよ』
「ミッチョリコグムフルゥソォチェジャキキキキさん」
『違います』
「ごめんね、やっぱり上手く発音できないみたい」
リディは、大きくため息を吐く。
「あだ名で呼んでもいいかな?」
『あっ、あだ名ですかっ?』
ナイトメアの声が弾んだ。
『あだ名をつけてもらうなんて初めてっ……こほん。……ま、まあ、その、発音できないのなら、あだ名でも、仕方ありませんよねっ』
上ずった声で言ったナイトメアが格好だけは重々しくうなずいたので、リディは「良かった」と笑う。
「じゃあ、考えてみるよ。ところであなたはナイトメアだよね」
『もちろん』
「ということは、メス?」
『当り前です』
「そっか。そうだよね、うん」
高めの男性のような声だったのでオスだと思っていたが、ナイトメアならメスだろう。
「うーん……女性につけるあだ名か……」
呟いてすぐ、リディは良いあだ名を思いついた。念のために確認しようとナイトメアの左横へ行き、更には草をかき分けて後ろから眺め、最後に右からも見つめてみる。
『全身にくまなく視線を感じると、さすがに恥ずかしいものですね』
彼は――彼女は、正面に戻って来たリディに向けて目を細める。
『良いあだ名は思いつきましたか?』
「うん。ばっちり!」
『ど、どんなあだ名でしょうかっ』
リディは両手を腰に当てる。
「マックロ!」
先ほどから辺りの草むらを優しく揺らしていたそよ風が急な突風に変わり、音を立てて通り過ぎながらナイトメアのタテガミとリディの髪を高くなびかせる。
『……えーと……』
舞い上がったタテガミが乱れながらも元の位置に落ち着いたあたりで、小さくナイトメアが言った。
『……すみません。もう一度お願いできますか?』
リディは両手に腰を当てた姿勢のまま、もう一度強く宣言する。
「マックロ! あなたのあだ名は、マックロだよ!」
『……マックロ……真っ黒……』
繰り返したナイトメアは、地面につきそうなほど首を落とした。
『却下です……』
「あれ、却下? もしかして嫌だった? 気に入ってもらえると思ったんだけどなあ」
『嫌……というか、その……とても言いにくいのですが……』
ナイトメアは深くため息をついた。道の砂が巻き上がる。
『私に相応しいあだ名ではありません』
「どうして?」
『私は真っ黒ではないのです』
「真っ黒だったよ?」
『よく見てください』
わずかに首を上げたナイトメアとリディの目が合う。
『私の目は赤でしょう?』
「なんだ、そんなことか。平気だよ。瞼を閉じてみて」
『瞼を? こうですか?』
「ほら、真っ黒になった」
『あっ……!!』
首を高く上げたナイトメアは、目をつぶったまま興奮気味に足を踏み鳴らす。あまりに地面が揺れるので、リディはこっそり四歩下がった。
『私はどう足掻いても真っ黒な自分を見ることはできないのですが、他者からは私が真っ黒に見えるのですね! まさしく盲点でした、なんという発想の転換! ――おや、どうしてあなたはそんな後ろにいるんです?』
「ちょっとね」
目を開けたナイトメアに問われ、リディは四歩前に戻る。
「えーと、だからマックロってあだ名でも大丈夫だと思うんだけど、どうかな」
『ぜひお願いします。ああ、まるで新しい自分に生まれ変わったかのような清々しい気分! これも契約の効果なのでしょうか!』
ウキウキと言って、ナイトメアのマックロはリディに背を向ける。
『さあ、そうと決まれば行きましょう! あなたの母親と、家宝を探しに!』
「そして、マックロさんを有名にするために、だね」
『ええ、ここから私とリディの新しい旅が始まるんです!』
「そうだね。改めてよろしく、マックロさん。――あ、ひとつ言い忘れてた。私はまだ冒険者じゃないから『マックロさんがナイトメアだ』って公表できないんだよ」
『なんですって!』
悲鳴をあげた彼女の背をリディは軽く撫でる。黒い体は滑らかで、そしてひんやりとしていた。この不思議な生き物はやはり馬とは違うのだと再確認する。
「ごめんね。そのうち公表できるように私も頑張るから」
『本当にできますよね? 信じますよ?』
「うん。大丈夫だと思う。その辺の話も移動しながらするね。ところで、乗ってる間はタテガミ持っていい?」
『駄目です。首に抱きついておいてください』
「分かった」
傘が差せなくなったので代わりに被り布を巻き、まとめた荷物を背に負ってリディはマックロに乗る。体を倒してマックロの首に抱きつくと、春の夜に風が運んでくるのとよく似た甘い香りがリディを包んだ。
冒険者になる許可は得られていない。
母もまだ見つからない。
しかし、故郷を出るときひとりきりだったリディに仲間ができた。
これからの道行きは、マックロが一緒だ。
『私のお願いばかり聞いていただくわけにはいきません。リディ、あなたが西方へ来た理由を聞かせてください。私も全力であなたの力になります!』
ナイトメアはぐっと顔を上げて胸を張る。その姿は「ずっとこうして立っていれば、それだけで有名になれそうだ」と思えるほどに堂々としていて立派だった。
「ありがとう。私はね、母様を探してるの。母様を探して、持ち去った鈴鳴家の宝を返してもらわなきゃいけないんだ」
『ほう? この広い地でたったひとりを捜すのですか。あなたもなかなか難儀なものを背負ってますね。で、そのスズナリ家の宝とはどんなものなのです?』
「神乞い鈴っていう神器だよ。中央の棒にね、三段になった鈴が合計十五個ついていて、とても良い音が鳴るんだ。昔々、巫女の“五百鳴媛”という方がお作りになった品でね」
鈴の音を好むとされる紫禳の神の気をひくのが神乞い鈴の役目だ。取り付けられた十五の鈴の中には、紫禳の神が五百鳴媛を見初める元になった鈴もあるのだと伝わる。
「鈴鳴家出身の女性が神乞い鈴を持って舞うと神に願いを届けられるって言われてるから、国家の安寧や豊穣を祈る大きな儀式の時には必ず使うんだよ」
『あなたも使ったことがあるのですか?』
「もちろん」
リディは大社の舞殿でよくやったように、着物の袖を押さえながら鈴を振る動作をしてみせる。
着ている物は巫女の白衣ではないし、袴も緋袴とは少し違う赤だが、こうしてほんの少し舞うだけで“紗綾”に戻った気持ちになった。
「……だけどね」
鈴鳴家にはもうひとつの伝承がひっそりと残されている。五百鳴媛が神乞い鈴を作った真の理由は個人的なものだったという話。実は彼女は、真の姿を恥じて天へ帰った夫――紫禳の神に再び会いたかっただけなのだと。
神乞い鈴は“神恋《かむこ》い鈴”だ。
五百鳴媛は天に向かって「恋しい貴方、今ひとたび」と呼びかけながらこの鈴を鳴らし、幾度も舞ったそうだ。
しかし紫禳の初代国主・鈴鳴 紫津彦は【残念ながら母の望みは叶わなかった】と書き残している。
『……聞いた限りだとあまりありがたいものではなさそうですが、そんな品が本当に家宝で神器なんですか?』
「そう言わないでよ。紫禳の神は地へお越しにならないけど、鈴の音を聞いて天から加護を与えてくださっている。紫禳国に大きな争乱は起きず、飢えや乾きに苦しむこともないのが何よりの証拠だ。……ってことに表向きはなってるから」
胡乱な目つきをするナイトメアに微笑んで答え、リディは道の先へ顔を向ける。
「おっと、こうしてる場合じゃない。早く行かないと次の町に間に合わなくなっちゃう」
『あなたそれ、本気で言ってます?』
ナイトメアの口調には呆れが滲んでいる。
『あなたにはこの私がいるんですよ。私なら今日中に次の町どころか、三つ先の町までだってあなたを乗せて行けます』
「でも私、馬具がまったくない馬にちゃんと乗れる自信なんてないよ」
『……でしたら走るのはやめます。今日は次の町までにしましょう』
「ありがとう。えーと……ウェベドゥビジャムヌジョニョモモモモさん」
『その謎の呪文はもしや、私の名前のつもりですか? 私は※*#@♪△ですよ』
「ミッチョリコグムフルゥソォチェジャキキキキさん」
『違います』
「ごめんね、やっぱり上手く発音できないみたい」
リディは、大きくため息を吐く。
「あだ名で呼んでもいいかな?」
『あっ、あだ名ですかっ?』
ナイトメアの声が弾んだ。
『あだ名をつけてもらうなんて初めてっ……こほん。……ま、まあ、その、発音できないのなら、あだ名でも、仕方ありませんよねっ』
上ずった声で言ったナイトメアが格好だけは重々しくうなずいたので、リディは「良かった」と笑う。
「じゃあ、考えてみるよ。ところであなたはナイトメアだよね」
『もちろん』
「ということは、メス?」
『当り前です』
「そっか。そうだよね、うん」
高めの男性のような声だったのでオスだと思っていたが、ナイトメアならメスだろう。
「うーん……女性につけるあだ名か……」
呟いてすぐ、リディは良いあだ名を思いついた。念のために確認しようとナイトメアの左横へ行き、更には草をかき分けて後ろから眺め、最後に右からも見つめてみる。
『全身にくまなく視線を感じると、さすがに恥ずかしいものですね』
彼は――彼女は、正面に戻って来たリディに向けて目を細める。
『良いあだ名は思いつきましたか?』
「うん。ばっちり!」
『ど、どんなあだ名でしょうかっ』
リディは両手を腰に当てる。
「マックロ!」
先ほどから辺りの草むらを優しく揺らしていたそよ風が急な突風に変わり、音を立てて通り過ぎながらナイトメアのタテガミとリディの髪を高くなびかせる。
『……えーと……』
舞い上がったタテガミが乱れながらも元の位置に落ち着いたあたりで、小さくナイトメアが言った。
『……すみません。もう一度お願いできますか?』
リディは両手に腰を当てた姿勢のまま、もう一度強く宣言する。
「マックロ! あなたのあだ名は、マックロだよ!」
『……マックロ……真っ黒……』
繰り返したナイトメアは、地面につきそうなほど首を落とした。
『却下です……』
「あれ、却下? もしかして嫌だった? 気に入ってもらえると思ったんだけどなあ」
『嫌……というか、その……とても言いにくいのですが……』
ナイトメアは深くため息をついた。道の砂が巻き上がる。
『私に相応しいあだ名ではありません』
「どうして?」
『私は真っ黒ではないのです』
「真っ黒だったよ?」
『よく見てください』
わずかに首を上げたナイトメアとリディの目が合う。
『私の目は赤でしょう?』
「なんだ、そんなことか。平気だよ。瞼を閉じてみて」
『瞼を? こうですか?』
「ほら、真っ黒になった」
『あっ……!!』
首を高く上げたナイトメアは、目をつぶったまま興奮気味に足を踏み鳴らす。あまりに地面が揺れるので、リディはこっそり四歩下がった。
『私はどう足掻いても真っ黒な自分を見ることはできないのですが、他者からは私が真っ黒に見えるのですね! まさしく盲点でした、なんという発想の転換! ――おや、どうしてあなたはそんな後ろにいるんです?』
「ちょっとね」
目を開けたナイトメアに問われ、リディは四歩前に戻る。
「えーと、だからマックロってあだ名でも大丈夫だと思うんだけど、どうかな」
『ぜひお願いします。ああ、まるで新しい自分に生まれ変わったかのような清々しい気分! これも契約の効果なのでしょうか!』
ウキウキと言って、ナイトメアのマックロはリディに背を向ける。
『さあ、そうと決まれば行きましょう! あなたの母親と、家宝を探しに!』
「そして、マックロさんを有名にするために、だね」
『ええ、ここから私とリディの新しい旅が始まるんです!』
「そうだね。改めてよろしく、マックロさん。――あ、ひとつ言い忘れてた。私はまだ冒険者じゃないから『マックロさんがナイトメアだ』って公表できないんだよ」
『なんですって!』
悲鳴をあげた彼女の背をリディは軽く撫でる。黒い体は滑らかで、そしてひんやりとしていた。この不思議な生き物はやはり馬とは違うのだと再確認する。
「ごめんね。そのうち公表できるように私も頑張るから」
『本当にできますよね? 信じますよ?』
「うん。大丈夫だと思う。その辺の話も移動しながらするね。ところで、乗ってる間はタテガミ持っていい?」
『駄目です。首に抱きついておいてください』
「分かった」
傘が差せなくなったので代わりに被り布を巻き、まとめた荷物を背に負ってリディはマックロに乗る。体を倒してマックロの首に抱きつくと、春の夜に風が運んでくるのとよく似た甘い香りがリディを包んだ。
冒険者になる許可は得られていない。
母もまだ見つからない。
しかし、故郷を出るときひとりきりだったリディに仲間ができた。
これからの道行きは、マックロが一緒だ。
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