5 / 17
『運命の王子様』を探すため
しおりを挟む
聖剣を携えたあたしは家に戻って、瞬く間に出発の準備を整えた。
あったりまえよね、17年間も待たせちゃったんだもん!
早く『運命の王子様』に会いに行かなくちゃ!
良かったわ。いつか『運命の王子様』を探して旅に出るときのために、お小遣い貯金しておいて!
とはいっても、これだけじゃ足らない。
仕方ないので、畑仕事から戻ってきた両親に頼んでみることにした。
「ねー、お父さん、お母さん! あたし、聖剣を手に入れたの! 村を出て『運命の王子様』探しに行くから旅費ちょうだい!」
聖剣を見せながら言ったっていうのに、残念ながら両親はちっとも取り合ってくれなかった。
逆に
「お前、そんな剣を作ってまで旅に出たいのか……」
なんて泣かれちゃった。
一方でレオンも
【俺は聖剣だぞ? 見た目だってこんなに神々しいんだぞ? ……なのに小娘が作った剣だと思われた……】
なんて良く分からない理由で泣き始めた。
なんなのよ!
なんであっちでもこっちでも泣いてるのよ!
泣きたいのはあたしの方よ、せっかく旅に出られると思ってたのに両親に信じてもらえなかったんだからね!
そんな困り果てるあたしの前に現れたのは、「ローゼの説明ではこうなるだろうと思った」なんて言いながら、わざわざうちまで来てくれたアーヴィン。
さすがは人前に出ることの多い神官だけあって、言葉には説得力があった。彼がきちんとした説明をしてくれたおかげで、最終的に両親はうなずいた上で、旅費もちゃんとくれたんだけど……。
……なんか複雑。どうして実の娘より、他人のアーヴィンを信じるのよ。あたしだってちゃんと説明したのにな……。
【当たり前だろうが。お前の頼み方でうなずく奴なんかいないぞ】
ってレオンには突っ込まれたけど、何言ってるのよこいつ。失礼ね。
もう一度踏んづけてやろうかしら!
* * *
翌朝。
あたしはウキウキしながら、出発前に神殿のアーヴィンへ挨拶に出かけた。
「おはよう、アーヴィン。これから出かけてくるわ!」
「おはよう、ローゼ。どこへ行くか決めたのかい?」
「うーんとね。色々考えたんだけど、あたしは旅の初心者でしょ? 今回はあんまり遠くまでは行かずに付近の町を回ってくる程度にしようかと思って。だからそんなにかからず村へ戻ってくるつもりよ」
あたしが言うと、アーヴィンはいつもの穏やかな笑みでうなずく。
「魔物を倒したら、きちんと神殿で申告するんだよ。報奨金が出るからね」
「うん、分かった!」
「……レオン。ローゼをお願いします」
【任せとけって】
不思議なんだけど、レオンの声が聞こえるのはあたしとアーヴィンだけみたい。
この聖剣の主になったあたしはともかく、なんでアーヴィンに聞こえるのかは不思議だったんだけど
【おそらく、俺が現れた時に居合わせたからだろう】
レオン曰くそういうことらしい。
まあ、あたしだけにしか聞こえてなかったら、自分の頭がおかしくなっただけだと思ったかもしれない。アーヴィンにも聞こえてたのは結果的にありがたかったわ。
「じゃあね、アーヴィン。行ってくる。お土産買ってくるからね!」
神殿を出たあたしが今日の天気みたいに晴れ晴れとした気持ちで大きく手を振ると、アーヴィンも肩の辺りまで手を上げて振り返してくれる。
「本当に気を付けるんだよ」
「大丈夫! せっかく旅に出られるんだもの、どこかで待ってくれてる『運命の王子様』のためにも怪我なんてできないわ!」
あたしの言葉を聞いたアーヴィンはうなずいてくれる。彼の表情は笑顔だ。
……なのにあたしは、なぜかアーヴィンが悲しんでいるような気がした。
あったりまえよね、17年間も待たせちゃったんだもん!
早く『運命の王子様』に会いに行かなくちゃ!
良かったわ。いつか『運命の王子様』を探して旅に出るときのために、お小遣い貯金しておいて!
とはいっても、これだけじゃ足らない。
仕方ないので、畑仕事から戻ってきた両親に頼んでみることにした。
「ねー、お父さん、お母さん! あたし、聖剣を手に入れたの! 村を出て『運命の王子様』探しに行くから旅費ちょうだい!」
聖剣を見せながら言ったっていうのに、残念ながら両親はちっとも取り合ってくれなかった。
逆に
「お前、そんな剣を作ってまで旅に出たいのか……」
なんて泣かれちゃった。
一方でレオンも
【俺は聖剣だぞ? 見た目だってこんなに神々しいんだぞ? ……なのに小娘が作った剣だと思われた……】
なんて良く分からない理由で泣き始めた。
なんなのよ!
なんであっちでもこっちでも泣いてるのよ!
泣きたいのはあたしの方よ、せっかく旅に出られると思ってたのに両親に信じてもらえなかったんだからね!
そんな困り果てるあたしの前に現れたのは、「ローゼの説明ではこうなるだろうと思った」なんて言いながら、わざわざうちまで来てくれたアーヴィン。
さすがは人前に出ることの多い神官だけあって、言葉には説得力があった。彼がきちんとした説明をしてくれたおかげで、最終的に両親はうなずいた上で、旅費もちゃんとくれたんだけど……。
……なんか複雑。どうして実の娘より、他人のアーヴィンを信じるのよ。あたしだってちゃんと説明したのにな……。
【当たり前だろうが。お前の頼み方でうなずく奴なんかいないぞ】
ってレオンには突っ込まれたけど、何言ってるのよこいつ。失礼ね。
もう一度踏んづけてやろうかしら!
* * *
翌朝。
あたしはウキウキしながら、出発前に神殿のアーヴィンへ挨拶に出かけた。
「おはよう、アーヴィン。これから出かけてくるわ!」
「おはよう、ローゼ。どこへ行くか決めたのかい?」
「うーんとね。色々考えたんだけど、あたしは旅の初心者でしょ? 今回はあんまり遠くまでは行かずに付近の町を回ってくる程度にしようかと思って。だからそんなにかからず村へ戻ってくるつもりよ」
あたしが言うと、アーヴィンはいつもの穏やかな笑みでうなずく。
「魔物を倒したら、きちんと神殿で申告するんだよ。報奨金が出るからね」
「うん、分かった!」
「……レオン。ローゼをお願いします」
【任せとけって】
不思議なんだけど、レオンの声が聞こえるのはあたしとアーヴィンだけみたい。
この聖剣の主になったあたしはともかく、なんでアーヴィンに聞こえるのかは不思議だったんだけど
【おそらく、俺が現れた時に居合わせたからだろう】
レオン曰くそういうことらしい。
まあ、あたしだけにしか聞こえてなかったら、自分の頭がおかしくなっただけだと思ったかもしれない。アーヴィンにも聞こえてたのは結果的にありがたかったわ。
「じゃあね、アーヴィン。行ってくる。お土産買ってくるからね!」
神殿を出たあたしが今日の天気みたいに晴れ晴れとした気持ちで大きく手を振ると、アーヴィンも肩の辺りまで手を上げて振り返してくれる。
「本当に気を付けるんだよ」
「大丈夫! せっかく旅に出られるんだもの、どこかで待ってくれてる『運命の王子様』のためにも怪我なんてできないわ!」
あたしの言葉を聞いたアーヴィンはうなずいてくれる。彼の表情は笑顔だ。
……なのにあたしは、なぜかアーヴィンが悲しんでいるような気がした。
0
お気に入りに追加
22
あなたにおすすめの小説

巻き込まれ体質の俺は魔王の娘の世話係になりました
亜瑠真白
恋愛
工藤日生は巻き込まれ体質だ。そのため高校入学初日の今日も、薄暗い空き教室でパンツ一丁の見知らぬ男に腕を掴まれている。日生は男に「自分の制服を剥ぎ取った女をここに連れ戻す」よう頼まれた。日生が言われた女の子を見つけて声をかけると、その子は「魔界第二十四代王、ルゼリフ・ドリースの一人娘、ラフェだ!」と名乗った。重度の中二病かとも思ったが、どうやら本当らしい。
魔界から家出してきた魔王の娘と、魔界に帰らせたい日生の攻防が始まる。
完結まで書き終わっているので、毎日12時と19時に公開していきます(6万字程度)
【完結】お飾りの妻からの挑戦状
おのまとぺ
恋愛
公爵家から王家へと嫁いできたデイジー・シャトワーズ。待ちに待った旦那様との顔合わせ、王太子セオドア・ハミルトンが放った言葉に立ち会った使用人たちの顔は強張った。
「君はお飾りの妻だ。装飾品として慎ましく生きろ」
しかし、当のデイジーは不躾な挨拶を笑顔で受け止める。二人のドタバタ生活は心配する周囲を巻き込んで、やがて誰も予想しなかった展開へ……
◇表紙はノーコピーライトガール様より拝借しています
◇全18話で完結予定
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが
ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。
定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない
そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──

闇黒の悪役令嬢は溺愛される
葵川真衣
恋愛
公爵令嬢リアは十歳のときに、転生していることを知る。
今は二度目の人生だ。
十六歳の舞踏会、皇太子ジークハルトから、婚約破棄を突き付けられる。
記憶を得たリアは前世同様、世界を旅する決意をする。
前世の仲間と、冒険の日々を送ろう!
婚約破棄された後、すぐ帝都を出られるように、リアは旅の支度をし、舞踏会に向かった。
だが、その夜、前世と異なる出来事が起きて──!?
悪役令嬢、溺愛物語。
☆本編完結しました。ありがとうございました。番外編等、不定期更新です。
☆2025年3月4日、書籍発売予定です。どうぞよろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる