能覚人

〜第三章〜

誘拐

　疲れた～、本当に。

　全能祭では、風制委員としても札律次の選手としても参加したし・・・。大変だった。

　今日は、休みたいものだ。

　あっ、そういえばあの後どうなったんだろう？飯田のやつは。

　TVを、つけた。

　全能祭のニュースでは、飯田のことは話されなかった。黒闇闇のボスの、洗脳のおかげか。

　これは、さすがと言ったところか。

　しかし、俺は呆然としてしまった。

　次に流れてきたニュースのせいだ。

　ゆう・・・かい・・・。

　誘拐されたのは、誰だ？身元不明？一体誰なんだ？

　でも・・・でも、なぜか俺に関係あるかのような気がする。

　行かなきゃ・・・、行かなきゃ、今すぐ！！

　俺は、走った。走って、走って、走り尽くした。

　「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、ついた。」

　そこは、空き地だった。なぜ、空き地に向かったのかと言うと第6感がそういったからだ。

　誰か、いた。

　「ん？誰だ、君は？僕に用事かな？」

　「誘拐したのは、誰だ！」

　なぜ、この人が誘拐犯だと分かったのか。よくわからない。直感だ。

　「ふふ、誘拐犯か。面白い。残念だが、僕には分からない。まぁ、僕を倒せたらもしかすると吐くかもしれないけど。それは、君次第だ。」

　俺は、無意識に走り出していた。能力と、加護をフルに活用して戦った。

　強い・・・。勝てない。

　「ぐはぁ、」

　「弱いね、君。本当に、そんな力で勝ってきたの？全能祭では、優勝したんでしょ？君の力で。」

　はっ！！

　「それとも、違った？君の仲間のおかげかな？どちらにせよ、もう君には用事はない。僕は、帰るとするよ。」

　くっ・・・。

　目から、涙が溢れて出てきた。

　「そうだ、俺は弱い。黒闇闇のボスと戦った時だって、1度目は逃げられ、2度目は早苗に助けてもらった。全能祭だって、黒闇闇のボスや早苗、隼零二の力がなきゃ勝てなかった。暴走させたのは、俺の責任なのに・・・。弱かったんだなぁ、俺。認めたくなかったんだなぁ。認めたら、負けちまうから。」
　　
　俺の、足取りは重かった。

　明日は、休暇をもらった。体を休めないと、任務に支障が出るかもしれないからだ。

　それにしても、なぜ俺はここまできたんだ？なぜ、俺の第6感はそう言ったんだ？

　分からない。分からないことだらけだ。

　今日のことは、忘れよう。いつまでも、こんな気持ちじゃやっていけないからな。

　俺は、そう決意したがやはり重い足には変わりはなかった。