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第四章
戦闘編
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俺は、黒霧と一緒に黒闇闇の本拠地に来ていた。記憶を失うはずの霧も、黒霧のところだけは晴れていった。さすが、支配者・・・。
「なぁ、黒霧。何で、邪魔なんてしたんだ?全能祭の時は。危なかったんだぞ?怪我人が、出るところだった。何で道具を、使ったんだ?」
「道具?そんなの使ったっけな。それより、昴ってどこまで知ってるの?組織のこと。」
「え~と、高校生以上からしか入れないところだけかな。(話を逸らしたな。)」
正直、全く分かっていなかった。
なぜ、こんなにも親切にしてくれるのか。おっと、脱線した。
「組織っていうのはね、高校生以上なら能力者でも無能力者でも入ることができる。そして、組織の意向はボスが決めた目的だ。目的を達成したら、ボスは交代となる。そして、目的は黒闇闇の組織員以外には他言厳禁だ。でも、もう昴は黒闇闇の組織員だ。教えてあげる。僕の目的は、君が力を扱えるようになることだ。」
なるほど、だから今までちょっかいかけてきたのか。真の能力に気づいているかとか、どれくらい使えているかというか。ん?ていうか、なんで知ってるんだ?俺の力。
「そういえば、なんで知ってるんだ?この力。」
「ああ、それはね実は知り合いに君の力を封印したっていう人がいてね。その人に頼まれたんだよ。彼の力が、制御できるようになるまで、守ってくれないかってね。まぁ、無理なんだけど・・・。」
「ん?なんか言った?」
「いやいや、なんでも。ということで、昴には僕と君自身のために協力してもらうよ。」
「はいはい・・・。」
大丈夫かな?どうやって、やるんだろう・・・。まぁ、気にしてても仕方ないか。ここは、乗ってみることにしよう。
その頃、風制委員会議ビルでは・・・。
「も~、なんで連絡つかないの?もう1日もたったわよ。自宅にもいないなんて、昴君どこ言ったのかしら。もうすぐ、学園祭があるっていうのに・・・。」
学園祭は、全能祭と違ってそれぞれの高校で行われる。そして、学園祭の日にちは1日ずつズレているため、10日間の間行われることになる。これは、お客さんが全部を回れるように配慮して作られたシステムだった。
学園祭では、もちろん制定委員が警備を任されている。だが、今年は全能祭のこともあり、風紀委員も導入されることになったのだが・・・早苗はどうやら、昴を必要としているらしい。
全能祭を見越してのこただとは思うが、彼女に何の考えがあるのか全く分からない。
学園祭まで残り、1ヶ月。まだまだ、焦る時間じゃないと思うのだが・・・。
そんなことも知らずに、昴は黒霧と話をしていた。
「黒闇闇の本拠地って、思ってたより綺麗な場所だな。闇とかがついてるから、もっときみ悪いところかと思ったぜ。」
「それは失礼な・・・と言いたいところだが、否定はできない。実は、先代のボスが掃除嫌いでこれよりも酷かったらしい。でも、ボスの座が僕に移ってからは、そんなことはなくなったけど。」
心の底で、事情があるんだと察した昴は今後このような質問はしないようにと誓った。
頑張るぞ!力を使いこなすために。
と言っても・・・、一体どうすればいいんだーーーーーー!!
考えてもいなかった、誰に教えてもらう?そんなことは、一切考えてなかったーーーー。
どうしよう、どうしよう、どうしよう。そうだ!黒霧に、頼もう。
「ごめん、今手が離せなくて。そうだ!彼らに頼もう!きっと、昴の力になると思うよ。」
彼ら?彼らとは、いったい誰のことだろう・・・。まぁいいや、とりあえずそこを尋ねてみるとするか。
どうやら、組織にはボスに使える5人の側近がいるらしい。呼び方は、組織ごと違うが、黒闇闇だと黒で呼ぶらしい。
黒霧の奴・・・、これくらい教えろよ!おかげで、組織員の人と話すことになっちまったじゃねえか。まだ、入りだてっていうのに。「これで、よくボスが認めたね。」とか言われたしよ~。あーもームカつく。今度1発殴ろう。今は、それより・・・。
今日は、第4黒に会いにきていた。
「あの~、すみません。」
「ん?何か用があるのかい?」
第4黒の、黒紫 実政が呼びかけに応じてくれた。
「あ~、君が新しく黒闇闇入った昴か!僕は、黒紫実政。黒紫と、そう呼んでくれ。黒霧からは、聞いているし。それじゃ、早速始めようか。まずは、今の能力を完璧に扱えるようにならないとね!」
いや聞いてるのかよ。だったら、俺にも教えてくれよ。黒霧め・・・。
そう、覚醒状態の能力を扱うためには、今現在使える能力を、磨き上げる必要があった。でも・・・。
「そんなのじゃぁ、ダメだよ!もっと、力を入れる場所を工夫して!」
工夫?工夫も何も、こんな能力当たるところにだけ力を・・・。そうか!
「ほう、やるね!そのとうり。強化系能力は、相手に当たるとこ以外も強化しないと意味がない。たとえば、蹴りの場合は蹴る脚だけじゃなく、踏み込む足、そして腕にも使わないと、遠心力が生まれないからね!そうやって、工夫していくんだよ。」
俺は、いつも以上に動けていた。能力をうまく扱えると、こうも変わるものなのか。
「今日は、ここまでだね!もっと、うまく扱えるようになれば、もっと強くなれる。」
この後に、黒霧と会う約束をしていた。
「どうだい?実感は、湧いてきたのかな。うまく扱えれば、それだけ覚醒した時に人格が変わらなくなる。それだけ、分かってればいい。これからも、頑張っていこうね。」
「そういえば、覚醒した俺の力には、どんなふう力があるんだ?あの時は、俺が何者かに取り憑かれたみたいな感じで、覚醒?みたいなものだとは分かったけど、記憶がなんせとんでいる。」
そのとうりだ。俺が意識を取り戻した時には、戦闘が終わっていた。
「昴の能力は、未知数だ。僕にもわからない。知っているのは、君が本来の力を使えないということだけだ。」
「そうか、ありがとう。使いこなせた時に、分かるってやつだ。それまで、努力を続けないと。」
それからも、特訓は続いた。2週間くらいが経過した。
その頃の、早苗といえば・・・。
「おっそ~い!もう2週間もたったのよ~。学園祭までは、まだあるけど・・・。そういえば、小春も帰ってきてないわね。あの一件、そんなに大変だったのかしら。もう、ウズウズする~。ちょっと、私探してくる。」
と言ったものの、委員に止められ駄々をこねる委員長だったのである。
~???~
「見つけたか?奴は。」
「ああ、黒闇闇にいる。だが、あの霧の対策には時間を使う。頑張っても、1週間ってところか。」
「分かった。それまで、持ち堪えるとしよう。」
緑色のローブに包まれた男が、4人。黒闇闇への、侵入を試みる。能力者こそ、入りにくいと言われているが彼らの目的はいったい何なのか・・・。
~黒闇闇~
俺の、特訓はまだまだ続いた。今日も、かなりハードだった。でも、
「ん~、もう僕のところで教えることはないかな。時間がないし、次行こう!」
時間がない?一体どういう意味だろう・・・。
だが、自分自身。強くなりたい一心なので、第3黒を訪ねてみることにした。
「あっ、やっときた~。遅いよ~。まぁいいや、僕が黒成 夢芽。夢芽でいいとよ。それじゃぁ、始めようか。」
聞き覚えのある声・・・。誰だっけ?ん~、思い出せない。
だが、次の言葉ではっきりとした。
「じゃぁ眠って。僕の能力は、そうしないと使えないから。今から君には、試練を乗り越えてもらうよ。夢の世界といって、油断したら大怪我するから気をつけてね。それじゃぁ、行ってらっしゃ~い。」
ちょっとまt・・・。
「試練。『能力を使いこなす』って、具体的すぎるだろ!ん?でも、まぁいいや。試すことが、いっぱいあったからな。それを、全部試せばいいや。これで、強くなれるんなら一石二鳥だろ?だったら、やるっきゃないね!」
俺は、何時間も何日も特訓に専念した。幸い、この空間は時間の流れが遅く、疲れも感じない。ただ、能力の質が上がっていくだけだった。俺にとって、それがどれほど良かったことか・・・。
黒紫に教えてもらった方法で、ゴーレムを倒していく。再生はするが、核をつぶせば一撃で死んでいく。
レベルで強さが決まっているが、55レベルまでは、すぐに倒せるようになっていた。最大100レベル。それをクリアするまで、出てやるもんか!
「よし!どんどん、調子がよくなっていっている気がする。」
特訓するうちにわかったことだが、能力はイメージ力も大切だ。この能力を使ったら、どうなるのか。それを、考えれば能力が想像通りに動くようになる。
始めは、なかなか上手くいかなかったが、コツを掴んでから飛躍的に能力が使いやすくなっていった。
もう、レベル79まで楽勝になっていたが、80が問題だった。
デカイ・・・。それだけだ。今まで、こんなに大きなものと戦ったことはない。つまり、イメージしにくいということだ。
これを克服しないと、絶対に強くなれない。なんとしても、乗り越えなくては・・・。
試練は、想像以上に難しかった。(自業自得である)
イメージとは、単純かつ繊細なものだ。一つの分からないことがあるだけで、イメージは完全に崩れてしまう。
一体どうすれば・・・。
まず、イメージなしでやってみることにした。
「うっそ!!?」
体が思うように動かない。能力が、上手く扱えない。
イメージが、どれほど大切なものか思い知らされた。
今までの自分が、嘘のように思えてきた・・・。
負のイメージ。これだけは、してはいけない。勝のイメージ。これを、最優先にする。
でも、そんな簡単なことじゃない。実力差を見せつけられれば、負のイメージが強くなる。また、勝のイメージをしてもすぐ負のイメージが、それを超えてしまう。
結果的に、負ける。でも、自信過剰の人の方がこういうのは得意だった。まぁ、俺はそうではないんだが・・・。
だが、戦ってわかった。勝てる!
結果は、お察しのとうり。もちろん、勝ちましたっと。
レベル100までもう少しなのに、ここで詰まったか。レベル99。
なんだありゃ。能力か?知らないものだと、戸惑ってしまう。そうしたら、イメージがあやふやになってしまう。負の連鎖ってやつか。どうしたもんか・・・。ていうか、普通に考えて今まで能力を使う前に倒していたからな~。
だが、ありがたい。解析は、得意にしておかないと。
なるほど、光線系の能力か。だったら、
レーザーの道筋をイメージして、それを避けながら進む。そして、倒す!!
少し、苦戦を強いられたが、レベル99クリア!ついにレベル100だ・・・。
長かった。現実の時間でいえば、30分。こちらでは、1週間。こんなにちがったのか・・・!
まぁ、あっちの世界では何日も過ごしたのに、こっちでは1日もたっていなかったわけだし・・・。そう考えると、少ないや。全然。焦ることなんてなかったな。
そう思い、俺はレベル100に挑んでいた。もう何日も過ぎた。1ヶ月。現実時間、2時間。一体いくら続ければいいんだ?
こいつは、集大成だった。能力も使う。防御もする。攻撃力が高い。しかも、一度戦うごとに解析学習をしている。勝てないわけだ。一度使った手は、もう使えない。1000回以上挑んで、もう手段が残り少なくなってしまった。まずいな。このままじゃ、絶対に勝てなくなる。
いや、勝てる。勝てるさ、俺なら。負の連鎖を断ち切って、勝利をもぎ取ってやる。
そう思った時の、イメージ力は凄かった。まるで敵の動きが止まって見えるくらいに、動体視力が良くなっていた。
これなら・・・勝てる!!
慢心ほど、危険なものはないというが、これに限っては慢心ほど、有意義なものはない。そういう、ものだった。
勝てた!!!
やっとだ。これで、現実に戻れる。
現実では、2時間しかたっていなかった。
現実に戻った時、体が急に重くなった。とくに、足が重い。現実の体は、動いていないはずなのに・・・。能は寝てても動いているのと、同じ現象なのか?あとで、聞いてみるとするか。
でも、今日はもう、無・・・理?
「すごいね!まさか、完璧にクリアされてしまうとは・・・。まぁ、時間短縮ということで次々。早く早く!」
なんでみんな、そうせかすんだ?なんで、時間を気にして・・・。ていうか、もうきついんですけどー!今日は休みたい。こんなことを思うなんて、情けないな・・・俺。
「・・・、来たか。さて、始めるとするか。」
第5黒黒鬼 峰一。
「なんで、そんなに時間を気にしt・・・。」
「いいから、さっさとやるぞ。」
今度は武の鍛錬だった。能力がない状態でも、戦えるように。また、能力は自分の身体能力によっても、効果が左右されてくる。つまり、身体的に強い方が同じランクでも、勝てるというわけだ。
俺は、何度も何度も、敗れては挑戦し、何度も試行錯誤を繰り返してきた。
たとえ、能力がなくても俺は強い!
ここでも、イメージは大切だ。人は、考えたことを実行しようとする。それを、逆手にとれば勝てるはずなのに・・・。
どうしても、威圧感に押されてしまう。負のイメージが、強すぎる。何か、逆転の一手を・・・。
まてよ?そもそも、勝てばいいんじゃない。自分を超えなきゃ、意味がないんだ。
前とは、違う思考。これが、1番大切だ。組み手で、自分の身体能力が飛躍的に上がった感覚があった。
いける!勝つのではない。ここは・・・。
逃げる!!
足に、筋肉を集中させろ!ずっと、持続させるんだ。
「ほう、なるほど。いい発案だな。」
な!?バレている!?俺の思考が・・・。一体なぜ?まぁいい、こちらから行かせてもらうぞ!
隙をついて、右脚を引き、左足で蹴る。入った!
でも、浅い。深い一撃は、入らなかった。やっぱりダメなのか?
いや、試行錯誤しろ。
ところが、ついに黒鬼も攻撃を始めてきた。
「まじかよ!?」
体勢がふらつく。反撃だけでも、ダメだったのに・・・。一体どうしたらいいんだ?
でも・・・、なんか、いける気がする。この調子で行けば、絶対に合格する。
解析学習をしろ。相手の、動きを覚えろ。パターンを、導き出すんだ。
なるほど・・・。そういうことだったのか。いける!絶対に。
「ふっ、」
はぁぁぁぁぁぁぁぁ!
「なっ!?」
「アウトだ。能力を使うなといったろう!忠告は、守る。これが常識ってものだ。いいか、絶対にだぞ。」
でも、解析学習できるようになったのは、ありがたい。
これで、またさらに強くなった。いける、いけるぞ!
頂点目指して、lets start!
早々と、1週間が過ぎてしまった。
「なぁ、黒霧。本当にこれで、制御できるのか?」
「なんなら、試してみるか?」
「いやいいよ、冗談はよせって。」
そう言って2人で笑っていた。しかし、すぐに黒霧の目つきが変わった。
「来る!」
来る?一体何が来るんだろう?だが、この雰囲気。敵だな。狙いはなんだ?黒闇闇の、霧を突破するだけの力があるということは、わかるが・・・。
「総員、配置につけ。奴らを迎え撃つ。奴らの狙いは、昴だ!」
俺!?俺を狙ってるのか?一体なんで。俺なんて、価値の・・・あった。でもなんで、奴らが知ってるんだ?てか、奴らって誰だよ。
その時、黒闇闇の本拠地の壁に大きな穴が開いた。
「よ~す。昴はいるか~?貰いたいんだが?」
いやなんだよ!そんな入り方して、単刀直入に言うと言うセリフもなしかよ!!
「居ないのか?まぁいい、暴れさせてくれよな~?」
どんどん、建物が壊れてゆく。たった1人の力で・・・。
あいつは、本物だ。本当の、真の能力者だ。
「気を付けろ。あいつらは、風颯嵐だ。そして、今対峙してるのが風颯嵐第1颯、五十嵐 颯明。能力は、『疾風迅雷』だ。触れたものを、ものすごく速いスピードで飛ばしたり、自らも速く動くことができるが、制御が難しく早すぎると止まれなくなってしまう。だから、普段は対象にしか使わないのだ。しかも、恐ろしいことに砂ぼこりでも、早く飛ばせば殺傷能力がある投擲物と化す。まぁ、その分能素消費も多いわけだが・・・。」
こんなことを聞いている間にも、破壊は続いていく。というか、何で風颯嵐が狙ってくるんだ?
俺が狙いだとしたら、一体どうやって能力を知ったんだ?そんなことより、側近は5人いる。早く何とかしないと・・・。
「お一人様か?」
「ああそうだ。なんせ、今の風颯嵐はできてばっかだ。まだ、俺しかいないから。ボスの側近も俺1人だ。だから、強いやつを探してようやく見つけたのが昴ってわけだ。」
「ああ、確か風颯嵐のボスは触れた相手の能力を色で見ることができるんだったな。」
色で?というか、いつ触られたんだ?記憶がない・・・。でも、今の俺にできることは何かあるはずだ。
黒霧に意識が向いている今、不意打ちをするか?でも、当たるより先に見つかったらかわされて、捕まってゲームオーバー。
だったら・・・。
俺は、走った。助けを呼びにいく。今この事態に気づいているのは俺たちだけ。みんな、少し離れた場所にいるし、ここは障害物が多くて音が伝わりにくい。
だから、俺が呼ぶんだ。頼む、間に合ってくれ。
「おかしいな?確か、組織情報には3人いるって言ってなかったか?」
「あれ?そうだったかな。まぁ、ここ数日開けてたしその時に入ったんじゃないか?」
そうとも知らず、俺が走った先に待っていた光景は・・・。
「えっ・・・。」
第5黒と第4黒が、風颯嵐と思われる敵と戦っていた。
「嘘・・・だろ。1人じゃなかったのか?3人もいたのか?」
向こうで、黒霧対颯明。こちらでは、黒紫対?。黒鬼対?。の戦闘が起きていた。
勝負は互角と思われたが、
「くっ、ここまでか。黒紫、あとは任せた。」
そういえば、黒鬼って能力者なのか?能力を使っているところを見たことがないが・・・。何にせよ、非常にまずい事態になった。2対1。圧倒的不利だ。俺がいくか?でも足手まといになると、嫌だし・・・。
考えるよりも、体が動いた。どうする、俺!!
俺は、走っていた。黒鬼が、戦っていた相手目掛けて能力を使った。
「昴!?」
黒鬼は、驚いているようだった。
「何でてきてるんだ!奴らの狙いは、お前だぞ!」
「だからだよ。俺がこうして、ヘイトを稼ぐんだ。」
そうだ、こうすれば黒紫の方も、少しはゆるくなるはずだ。
「おっ、ターゲット発見。ねぇ颯佐、こっち任せてもいい?」
「ダメです。せめて、倒してから来てください。こちらは僕が、対処します。」
やはり、ボスの側近なだけはあるか・・・。だが、やってやる。俺だって、側近に鍛えてもらったんだ。
まずは、相手の攻撃を見る。そして解析学習をしろ。相手の、攻撃パターンを覚えるんだ。
・・・何!?
見えない!早すぎる以前の問題だ。
ギリギリ見える残像も、分身のように見えてさらに混乱を呼ぶ。
焦るな、何か策があるはずだ。何か・・・。
あった、これならいける。
「どうした、もう終わりか?来ないのなら、こっちからいくぞ。」
来た!!
グハァッ
痛い・・・。まるで、内臓が潰れた感じだ。半端ねぇ、あの早さで生身の俺にぶつかられたら、さすがにひとたまりもなかったぜ。
「なるほど、能力で身体を固めて身を守りましたか。ですが、それでもかなりダメージが入っているようだ。僕は、これから能素を取り出しているが、君は違う。後何発、耐えられるかな?」
まずいな・・・。早くしないと、俺がダメになりそうだ。
「まだ耐えるか、だがこれで終わりだ!」
ぐっ、
重い一撃が入った。俺は、膝をついてしか立っていられなくなった。
「もう終わりですねか・・・。それではあなたを回収します。」
いまだ!!
予知の加護で、移動場所を把握しろ。能力の分は、今まで受けた攻撃の速さから解析学習した分で、補え!
そして、当てるというイメージを持て!勝てる、俺なら勝てる!
「うおおおおぉぉぉぉ!!!」
「何度言ったらわかる?無駄です。」
後ろだ!
回避の加護でかわし、天眼の加護で急所をつく!
「おらぁ!」
「何!?」
相手は、地面に倒れた。勝てた、特訓の成果は無駄じゃなかった。
「おいおい、何やってんだよ颯佐!お前がやるって言ってたから、手を出さなかったんだぞ!」
「よそ見している暇があったら、出直してくれんだな。」
「グハァッ。」
何とか、黒紫も勝ったらしい。さて、問題は・・・。
「黒霧の方が心配だ。急ぐぞ!」
時は少し遡り、昴が居なくなった後。
「まぁいいや、まずはお前を倒す。知ってるか?この能力には、こんな使い方もあるんだよ!!」
急に、強風が吹き荒れた。僕は、壁に衝突したが間一髪のところで受け身をとった。
「へぇ、やるじゃん。じゃぁ、これはどうかな?」
そう言って、地面を蹴り砂埃を浮上させた。
まずい!!
「槍術 伍式 混沌の渦」
混沌の渦は、すべての砂埃を吸い込んだが、
「第2陣!?」
しゅっ、しゅっ、しゅっ、と僕の頬をかすめていく。
「なかなかやるな、でもこっちも時間をかけてはいられないんだ。これで終わらせてもらうよ。」
そう言うと、あたり一面に砂埃を浮上させ、一気に飛ばしてきた。
「間に合わない!」
ぐさっ!!
僕の心臓を、貫いた。
「流石にこれは疲れるが、こいつがあるから大丈夫だろ。」
「何が大丈夫なんだい?」
「何!?なぜお前が生きて・・・。」
ふぅ、失神させた。正直危なかった。混沌の渦で、こちらが隠れている間に幻影と交代しといて良かったと思う。だが、さすがに疲れたが、もう向こうは終わっているようだった。
「大丈夫か?」
「ああ、今終わったところだ。さてと、どうしたものか。ボスが見当たらないと何も解決しない。探さないと・・・。」
「その必要は、ないよ。いや、いいものを見せてもらった。さすがに、君たち相手では歯が立たなかったようだが。」
後ろから、聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「でも、これで終わるわけじゃない。進化を見たいのだよ、私は。いいね?昴君。」
そう言って、道具を背中に押し当ててきた。
「うわあああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「まずい!強制暴走。何をしているんだ!風雷。」
「何って、本来の力を解放しているだけさ。これを倒せたら、もう手を出さないと約束しよう。」
覚醒。しかも、パワーアップした昴が。制御できるという、希望はないな。急に、大量の能素を入れられたら、能力の方が支配権を握ってしまう。
「おいおい、今回は出ないようにしてたんだが?お呼び出しか?」
「滅相もございません。あなたには、本来の姿で居てもらいたいだけなのです。」
「そうか・・・。まぁいい、ではまず初めに、お前の部下の能力を教えろ。」
こうして、風雷は語った。能力名と、効果を。
「分かった、条件として協力はしてやろう。」
まずい!
「総員、道具をもってこい。はやく!」
「いくぜ!久しぶりに、はしゃげそうだ。」
勝敗は、一目瞭然だった。惨敗—————————。
「気を付けろ!風颯嵐の技は、使えると思え!」
速い!疾風迅雷か。まずいな、あのスピードで動かれたら攻撃が当たらない。
そして、昴には大量の能素が取り込まれている。つまり、能力は無数に使える。
「準備はまだか!」
「すみません。瓦礫で、倉庫への道が塞がれて・・・。1時間もあれば、いけるかと・・・。」
1時間・・・、長い。耐えることは、できるか?
正直、難しい・・・。
「1時間で、すませろ!それまで、持ち堪える。」
「はい!!!」
大丈夫か?いや、全然ダメだ。絶対、耐えきれない。1人じゃ、きついな。さて、どうしたもんか・・・。
「耐久戦か・・・。いいだろう、乗ってやる。俺の攻撃に、耐え切れるかな?」
攻撃の連鎖は、止まらなかった。
くっそ、槍術でどこまで捌き切れるか・・・。
「もう、おしまいか?まだ、3分も立っていないぞ。これでは、時間稼ぎにもならないか。殺してしまうのもアレだし・・・、そうだとりあえず気絶させよう。」
ひゅん、と耳元で囁かれた瞬間、背筋がゾッとした。ヤバイ、死ぬ。死ぬ境地に、陥ったことがないのにわかる。これはまずい。
このままだと、死んでしまう。どうにかしないと・・・。
「おうおう!ばちばち、やりあってんね。」
!?
「協力しにきました。」
異世界から連れ帰り、保護していただけなのに。何で・・・?
「今、何でとか思ったでしょ。私たちには、こっちの世界に連れてきてもらったって言う、かりがあるのよ。それを、返すだけよ。それにしても、いつもよりオーラが出てるみたいね。昴?」
「残念だが、今は昴じゃない。そこだけは、分かってくれ。」
「ふっ、まぁこれで楽しめそうだ。俺を、退屈させないでくれ。」
そうは言っても、この人数でもまだきついぞ。側近のうち、1人はダウン。1人は、瓦礫の方へ。残り3人は今、持ち場を離しているとなると、増援には期待できない。でも、やるしかないんだ。ここで、止めないとスバルも街も悲惨なことになってしまう。
「は~!色色色彩 春 桜花乱舞!」
こんなところにも、桜の木は立つ。でも・・・。
「色色色彩 夏 赫赫烈日。」
一瞬にして、燃えてしまった。やはり、向こうのほうが数段上ということか。
「まだ、まだ~!色色色彩 春 春雷轟轟!」
雷が鳴り、その音が波紋状に轟いた。
「へ~、すごいね。1つの能力で、ここまで出来るんだ。でも、逆に言えば1つの能力さえ使えれば、ここまで出来るということ。色色色彩 春 春雷轟轟」
先ほどよりも、凄まじい雷が落ちてきた。音も、倍以上だ。これじゃ、轟くじゃなくもう、爆発だな。
こんなのに、勝てるのか?いや、勝つんだ。
「絶対に、ここは死守する。何としても、守り抜けー!」
「おー!」
みんな、なるべく既存の技を使うようにした。察したのだろう、あの能力の恐ろしさを。
「いいですね~、この戦闘力なら組織を復興できるかもしれない。前のボス、四季色 琥珀が失踪しなければこんなことには、ならなかったのですがね~。」
12分後———————————。
やっと、10分の1だ。まずいな、本当にまずい。
何とかしなくては・・・。何とか・・・。
くっ、一体どうすれば・・・。待てよ?これなら、いけるかもしれない。
「紅梅、小鴨、茜、藁、合図したタイミングで一斉攻撃を仕掛けてくれ!」
「分かった!」
「3・・・2・・・1・・・・いまだ!」
「色色色彩 春 桜花乱舞!」
「色色色彩 夏 赫赫烈日!」
「色色色彩 秋 秋冷月鏡!」
「色色色彩 冬 嵐雪白冬!」
4人の攻撃が、スバル?を直撃した。
「ちっ、」
かすり傷は付いたが、再生の加護で瞬時にさせられてしまった。
「今だ、行け!」
「何!?」
僕が作った幻影が、床に垂れていたスバル?の血を取り込んだ。
「僕の幻影の、力は知っていたよね。」
そこには、もう1人のスバル?の姿があった。
「趣味の悪いことをしてくれる。でも、何分持つかな?試してやるよ!」
激戦が、始まった。こちらからは、目で追うのも大変なほどだった。
だが、いずれにせよ互角に渡り合えていた。
20分後——————。
「何でだ?何で消えないんだ?・・・、そうか!俺が、怪我を負うたびにそこから血を吸っていやがるのか。本当に、悪趣味だぜ。でもな?こっちにも秘策があるんだよ!」
そう言って、スバル?は道具を取り出して幻影に押し付けた。
「能素を、具現化しているだけなら、その能素を吸い取って仕まえば意味はないからな。」
気づかれたか。正直、これは時間の問題だと思った。もう少し、遅めに気づいてくれていれば。しかし、何を言っても仕方ない。残り30分。何とかしなければ・・・。
「何だ?もう終わりか?だったら、こっちから行かせてもらうぜ!」
そう言って、スバル?は小鴨の前に来て
「じゃぁな。」
と言って、拳を振るった。
まずい、間に合うか?この距離は、きついぞ。何か、何かないのか?
もう終わりだと思った時、スバルの拳が小鴨の額の寸前で、止まった。
「なんだ?もう起きたのか。能素を、使いすぎちまったな。なぁ、昴。」
昴!?そうか、能素量が一定を下回ったから、何とか制御できないか試しているのか。
だったら、協力してやるよ。
「みんな、攻撃の手を休めるな!連鎖を、止めるな!」
さっきよりも、戦いやすかった。昴が、制御しているのか。昴を、気にしているのかは分からなかったが、ありがたいことだ。
この隙は、絶対に見逃さない。絶対に、昴を取り戻す!絶対に。
「はぁ!」
!?
風雷が、道具を投げた。それは、スバル?にあたり能素が一気に取り込まれた。
「ふ~、これであいつも出てこないだろう。さて、第二ラウンドと行こうじゃないか!」
状況は、最悪だった。早く、早く道具を。そう願うことしか。出来なかった。
状況は、依然として最悪だった。
一度見えかかった希望も、潰えてしまった。
残り、25分・・・。どう耐えるか、もう方法を選んでいる場合じゃない・・・か。
まぁ、選ぶ方法もないんだが。
いや・・・待てよ?何か、引っかかる。そもそも、初歩的なところから間違えていたのか?う~む、わからない。もう少し時間があれば・・・。
「おい!時間を稼ぐから、何か、考えろよ!」
あいつは、心が読めているのか?だが、ありがたい。早く、何かを考えなければ・・・。
5分後—————。
「くっ、もう・・限界だ・・・。」
4人とも、倒れてしまった。
「おいおい、もうダメなのかよ?残り、1人になっちまったじゃ、ねえか。」
「いいや、時間稼ぎのおかげでいいアイディアを思い出せた。」
「何だ?だが、能素が枯渇しそうだな。おい、ジジィ!それをよこせ。」
そう言って、貰おうとした時、
「組織法 第七条 他組織の目標を妨害してはならない もし妨害した場合は自分の地位を失いその組織に使える」
僕を、中心にして波紋状に波動が漂った。
「うっ、」
「お前は、1つミスを犯した。それは、僕たちの目標を妨害したことだ。お前の目標は、組織の復興。昴じゃなくてもいい。つまり、今のお前は僕の従者だ。立ち去れ、ここから立ち去るんだ。早く!」
「くっ、くそぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
ふぅ、これで風颯嵐は退けられたが・・・、スバル?をどうするか考えてなかったな。
「まぁいい、かかってこいよ!その、チンケな技で。」
やはりダメか・・・。どうあがいても、通用しなかった。僕の、技術じゃダメだと知った時だった。
「まぁいいや、もう面倒い。いっそのことここら一帯をまっ平にするか。」
!?
そう言って、スバル?は空気中から大量の能素を吸い込みはじまた。
まずい・・・。このままでは、街に被害が起きるかもしれない。今度こそ、手詰まりか・・・。
あの4人には悪いが、もう僕は無理だ。そう思っていてくれ、頼んだぞ。
「これだけじゃぁ、足りないな。こいつも使うか!」
ドンと、心が痛むような感覚に襲われた。
このままじゃ、このままじゃまともに仕事できないな。
はてさて、どうしたものか・・・。
残りは、20分。何とか、いけるか?でもかなり、勝率は低いぞ?勝たなくてもいいのに、勝率が低いってこりゃなんだ。
2度あることは、3度ある。似たようなことが、起こるかもしれないが、ちゃんと考えておかないと。まぁ、今は目の前の方が、優先事項だな。何とか、しなくては・・・。
「溜めるまでに、15分はかかる。その間に、俺を倒せたらお前らの勝ちだ。倒せなかったら・・・、分かってるよな?」
そう言う、スバル?の目はすでにこちらを見ていなかった。勝ちを、確信していたのだろう。
こんな簡単なことも、考えられないほどに僕は追い詰められていた。
周りには、何人もの人が倒れている。しかも、スバル?に能力を使われると黒闇闇が完璧に消し飛んでしまう。これだけは、僕でも分かっていた。
考えろ、考えるんだ。組織のボスは、頭脳とカリスマ性がある人材にしか声がかからない。つまり、僕には出来るということだ。
・・・、何も思いつかなかった。僕の頭の中は、真っ白だった。
スバル?は、退屈そうに笑っていた。その笑みは、人を絶望に引き込むかのような、そんなものだった。
時間は、刻々と進んでいく。だが、もう僕には時間という概念が分からなくなっていた。僕の思考は、完全に停止していた。時間すら、気にしなくなっていた。5分経ったことも、分からなかった。
「どうした?かかってこないのか?」
この言葉すら、僕の耳には入ってこなかった。
周りから僕は、どのように見えているのだろう?静止しているのか。表情がないのか。
分からない、分からない、分かりたくない、もう分からなくていい。僕は、僕は、僕は一体誰なんだ?
スバル?は、ニヤリと不快な笑みを浮かべた。
私は、不思議に思った。スバル?が、溜めを始めてから黒霧が完全に停止していた。表情も、何一つ変わっていなかった。どうして何だ?疑問が、私の頭を遮る。なぜだ?なぜ、溜めをやめ黒霧を殺さない。今殺せば、もう一度溜める時間くらいあるはずなのに・・・。
私の心を読んだのか、スバル?がこう答えた。
「簡単な話さ。俺が、お前たちがいた世界を作った能力と同じ能力を、使っただけさ。」
!?
でも、そしたら何で黒霧はこちらにいるの?
「何だ?不思議に思っているみたいだな。お前らが、体験していたことと現状が合致しない。当たり前だ。俺のランクはA。あいつとは違う。扉を使わなくても、俺が作った世界に飛ばすなんて簡単なことだ。」
「じゃぁ、何で黒霧はここで止まっているのよ!」
「まだ分からないのか?俺が飛ばしたのは、人とは言っていない。こいつの、精神さ!こいつは、白一色の世界でたった1人で100000000年生きているからな。」
100000000年!?そんな世界で、一人ぼっち・・・。考えるだけで、鳥肌が立つ。いや、そんなものじゃない。心の奥底から、負の感情に支配されていくようだった。
「安心しろ、精神は死なん。呼び戻せば、分からないが・・・。」
残りの、8分。何とか、時間を稼がないと・・・。でも、もう手も足も動かない。
そんな時だった。急に、スバル?の感情が現れてきた。
「ちっ、またお前かよ。まぁ、俺を止めれるもんならやってみろ!昴。」
昴!?もしかして、今戦ってるの?私たちには、見えないだけで今スバル?と昴が戦っているんだ。
そう思えたけど、結局現状が変わるわけもなく。変わったことといえば、私たちに光が見えてきたくらいだった。
「へっ、そんなもんかよ。そんなんじゃ、俺を引き戻すことなんて出来ないぜ?」
対峙している。でも、言葉的に昴が不利だと分かっていた。引き戻せたとしても、また出てきたら意味がない。昴には、何か作があるのだろうか?
「さ・・あ・お・・・・・い・・る。」
!?
今、何かが聞こえたような・・・。もしかして、昴の声?何で、聞こえてくるんだろう。でもそれって、引き戻しかけてるってことだよね。
「はっ、どうやってするんだよ?今のお前に、そんな力はない。あと、3分でこれをぶっ放す。覚悟はいいか?お前のせいで、この街もろとも、吹き飛ぶんだよ!」
「さ・・・ほ・・・・あ・。」
その時、かすかに能素の流れに乱れが生じた。その能素は、スバル?が溜めている方向とは真逆に進んでいった。
スバル?の表情が、豹変した。焦りを、感じていたのかもしれない。だが、今となっては分からなかった。
「くっ、うぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!させねぇ、せっかく出てきたんだ!食い下がるわけに・・・は・・・。」
スバル?が、倒れた。溜めていた、能素も分散して消えた。
一体どうなったの?昴は、生きてるの?黒霧は・・・。
「もう安心して、大丈夫。黒霧は、問題ない。昴も。」
目の前に、仮面を付けた男が立っていた。見覚えがあったが、思い出せなかった。
「いたたた、あれ?スバル?は?」
「どうやら、成功したらしい。」
昴が、頭を押さえて起き上がった。
「ごめん、黒霧。俺、あの力を封印してしまった。その代償として、今は能力も使えないけど。でも、これで黒闇闇の目標は達成できなくなってしまった。どうするんだ?これから。」
「目標が達成できなくなった場合、ボスが死ぬまで目標を変えることはできない。これから、気長に過ごすとするよ。」
そういうことなら、大丈夫か。
「これから俺は、どうすればいい?」
「もう、昴がここにいる意味はない。みんな待ってるみたいだし、帰ってあげればいいんじゃない。」
「そうするか。」
俺が後ろを振り向くと、ちょうど道具を取り出そうとしていた組織員が戻ってきた。
「ボ~ス、持ってきました・・・ぜ?あれ、もしかしてもう終わってたりして・・・。」
「あぁ、そうだけど。」
「うわぁぁ、俺たちの有志が・・・。まぁいいや、今はみんなが無事ってだけでいいんだから。」
よかった。みんな無事だった。今回の戦闘で、多大な被害はあったものの、死者は出なかった。これだけが、不幸中の幸いと言ってもいいだろう。
俺は、出口に向かって歩いた。だがその時、大きな音とともに天井が崩れ落ちた。
「何事だ!?」
俺は、目を見開いた。まさか・・・、
「こは・・・る?」
真相は、謎に包まれたまま、その全てを覆い隠し、存在自体を消す。それを、暴くことが大切なんだ。
~第四章~ 戦闘編 完
「なぁ、黒霧。何で、邪魔なんてしたんだ?全能祭の時は。危なかったんだぞ?怪我人が、出るところだった。何で道具を、使ったんだ?」
「道具?そんなの使ったっけな。それより、昴ってどこまで知ってるの?組織のこと。」
「え~と、高校生以上からしか入れないところだけかな。(話を逸らしたな。)」
正直、全く分かっていなかった。
なぜ、こんなにも親切にしてくれるのか。おっと、脱線した。
「組織っていうのはね、高校生以上なら能力者でも無能力者でも入ることができる。そして、組織の意向はボスが決めた目的だ。目的を達成したら、ボスは交代となる。そして、目的は黒闇闇の組織員以外には他言厳禁だ。でも、もう昴は黒闇闇の組織員だ。教えてあげる。僕の目的は、君が力を扱えるようになることだ。」
なるほど、だから今までちょっかいかけてきたのか。真の能力に気づいているかとか、どれくらい使えているかというか。ん?ていうか、なんで知ってるんだ?俺の力。
「そういえば、なんで知ってるんだ?この力。」
「ああ、それはね実は知り合いに君の力を封印したっていう人がいてね。その人に頼まれたんだよ。彼の力が、制御できるようになるまで、守ってくれないかってね。まぁ、無理なんだけど・・・。」
「ん?なんか言った?」
「いやいや、なんでも。ということで、昴には僕と君自身のために協力してもらうよ。」
「はいはい・・・。」
大丈夫かな?どうやって、やるんだろう・・・。まぁ、気にしてても仕方ないか。ここは、乗ってみることにしよう。
その頃、風制委員会議ビルでは・・・。
「も~、なんで連絡つかないの?もう1日もたったわよ。自宅にもいないなんて、昴君どこ言ったのかしら。もうすぐ、学園祭があるっていうのに・・・。」
学園祭は、全能祭と違ってそれぞれの高校で行われる。そして、学園祭の日にちは1日ずつズレているため、10日間の間行われることになる。これは、お客さんが全部を回れるように配慮して作られたシステムだった。
学園祭では、もちろん制定委員が警備を任されている。だが、今年は全能祭のこともあり、風紀委員も導入されることになったのだが・・・早苗はどうやら、昴を必要としているらしい。
全能祭を見越してのこただとは思うが、彼女に何の考えがあるのか全く分からない。
学園祭まで残り、1ヶ月。まだまだ、焦る時間じゃないと思うのだが・・・。
そんなことも知らずに、昴は黒霧と話をしていた。
「黒闇闇の本拠地って、思ってたより綺麗な場所だな。闇とかがついてるから、もっときみ悪いところかと思ったぜ。」
「それは失礼な・・・と言いたいところだが、否定はできない。実は、先代のボスが掃除嫌いでこれよりも酷かったらしい。でも、ボスの座が僕に移ってからは、そんなことはなくなったけど。」
心の底で、事情があるんだと察した昴は今後このような質問はしないようにと誓った。
頑張るぞ!力を使いこなすために。
と言っても・・・、一体どうすればいいんだーーーーーー!!
考えてもいなかった、誰に教えてもらう?そんなことは、一切考えてなかったーーーー。
どうしよう、どうしよう、どうしよう。そうだ!黒霧に、頼もう。
「ごめん、今手が離せなくて。そうだ!彼らに頼もう!きっと、昴の力になると思うよ。」
彼ら?彼らとは、いったい誰のことだろう・・・。まぁいいや、とりあえずそこを尋ねてみるとするか。
どうやら、組織にはボスに使える5人の側近がいるらしい。呼び方は、組織ごと違うが、黒闇闇だと黒で呼ぶらしい。
黒霧の奴・・・、これくらい教えろよ!おかげで、組織員の人と話すことになっちまったじゃねえか。まだ、入りだてっていうのに。「これで、よくボスが認めたね。」とか言われたしよ~。あーもームカつく。今度1発殴ろう。今は、それより・・・。
今日は、第4黒に会いにきていた。
「あの~、すみません。」
「ん?何か用があるのかい?」
第4黒の、黒紫 実政が呼びかけに応じてくれた。
「あ~、君が新しく黒闇闇入った昴か!僕は、黒紫実政。黒紫と、そう呼んでくれ。黒霧からは、聞いているし。それじゃ、早速始めようか。まずは、今の能力を完璧に扱えるようにならないとね!」
いや聞いてるのかよ。だったら、俺にも教えてくれよ。黒霧め・・・。
そう、覚醒状態の能力を扱うためには、今現在使える能力を、磨き上げる必要があった。でも・・・。
「そんなのじゃぁ、ダメだよ!もっと、力を入れる場所を工夫して!」
工夫?工夫も何も、こんな能力当たるところにだけ力を・・・。そうか!
「ほう、やるね!そのとうり。強化系能力は、相手に当たるとこ以外も強化しないと意味がない。たとえば、蹴りの場合は蹴る脚だけじゃなく、踏み込む足、そして腕にも使わないと、遠心力が生まれないからね!そうやって、工夫していくんだよ。」
俺は、いつも以上に動けていた。能力をうまく扱えると、こうも変わるものなのか。
「今日は、ここまでだね!もっと、うまく扱えるようになれば、もっと強くなれる。」
この後に、黒霧と会う約束をしていた。
「どうだい?実感は、湧いてきたのかな。うまく扱えれば、それだけ覚醒した時に人格が変わらなくなる。それだけ、分かってればいい。これからも、頑張っていこうね。」
「そういえば、覚醒した俺の力には、どんなふう力があるんだ?あの時は、俺が何者かに取り憑かれたみたいな感じで、覚醒?みたいなものだとは分かったけど、記憶がなんせとんでいる。」
そのとうりだ。俺が意識を取り戻した時には、戦闘が終わっていた。
「昴の能力は、未知数だ。僕にもわからない。知っているのは、君が本来の力を使えないということだけだ。」
「そうか、ありがとう。使いこなせた時に、分かるってやつだ。それまで、努力を続けないと。」
それからも、特訓は続いた。2週間くらいが経過した。
その頃の、早苗といえば・・・。
「おっそ~い!もう2週間もたったのよ~。学園祭までは、まだあるけど・・・。そういえば、小春も帰ってきてないわね。あの一件、そんなに大変だったのかしら。もう、ウズウズする~。ちょっと、私探してくる。」
と言ったものの、委員に止められ駄々をこねる委員長だったのである。
~???~
「見つけたか?奴は。」
「ああ、黒闇闇にいる。だが、あの霧の対策には時間を使う。頑張っても、1週間ってところか。」
「分かった。それまで、持ち堪えるとしよう。」
緑色のローブに包まれた男が、4人。黒闇闇への、侵入を試みる。能力者こそ、入りにくいと言われているが彼らの目的はいったい何なのか・・・。
~黒闇闇~
俺の、特訓はまだまだ続いた。今日も、かなりハードだった。でも、
「ん~、もう僕のところで教えることはないかな。時間がないし、次行こう!」
時間がない?一体どういう意味だろう・・・。
だが、自分自身。強くなりたい一心なので、第3黒を訪ねてみることにした。
「あっ、やっときた~。遅いよ~。まぁいいや、僕が黒成 夢芽。夢芽でいいとよ。それじゃぁ、始めようか。」
聞き覚えのある声・・・。誰だっけ?ん~、思い出せない。
だが、次の言葉ではっきりとした。
「じゃぁ眠って。僕の能力は、そうしないと使えないから。今から君には、試練を乗り越えてもらうよ。夢の世界といって、油断したら大怪我するから気をつけてね。それじゃぁ、行ってらっしゃ~い。」
ちょっとまt・・・。
「試練。『能力を使いこなす』って、具体的すぎるだろ!ん?でも、まぁいいや。試すことが、いっぱいあったからな。それを、全部試せばいいや。これで、強くなれるんなら一石二鳥だろ?だったら、やるっきゃないね!」
俺は、何時間も何日も特訓に専念した。幸い、この空間は時間の流れが遅く、疲れも感じない。ただ、能力の質が上がっていくだけだった。俺にとって、それがどれほど良かったことか・・・。
黒紫に教えてもらった方法で、ゴーレムを倒していく。再生はするが、核をつぶせば一撃で死んでいく。
レベルで強さが決まっているが、55レベルまでは、すぐに倒せるようになっていた。最大100レベル。それをクリアするまで、出てやるもんか!
「よし!どんどん、調子がよくなっていっている気がする。」
特訓するうちにわかったことだが、能力はイメージ力も大切だ。この能力を使ったら、どうなるのか。それを、考えれば能力が想像通りに動くようになる。
始めは、なかなか上手くいかなかったが、コツを掴んでから飛躍的に能力が使いやすくなっていった。
もう、レベル79まで楽勝になっていたが、80が問題だった。
デカイ・・・。それだけだ。今まで、こんなに大きなものと戦ったことはない。つまり、イメージしにくいということだ。
これを克服しないと、絶対に強くなれない。なんとしても、乗り越えなくては・・・。
試練は、想像以上に難しかった。(自業自得である)
イメージとは、単純かつ繊細なものだ。一つの分からないことがあるだけで、イメージは完全に崩れてしまう。
一体どうすれば・・・。
まず、イメージなしでやってみることにした。
「うっそ!!?」
体が思うように動かない。能力が、上手く扱えない。
イメージが、どれほど大切なものか思い知らされた。
今までの自分が、嘘のように思えてきた・・・。
負のイメージ。これだけは、してはいけない。勝のイメージ。これを、最優先にする。
でも、そんな簡単なことじゃない。実力差を見せつけられれば、負のイメージが強くなる。また、勝のイメージをしてもすぐ負のイメージが、それを超えてしまう。
結果的に、負ける。でも、自信過剰の人の方がこういうのは得意だった。まぁ、俺はそうではないんだが・・・。
だが、戦ってわかった。勝てる!
結果は、お察しのとうり。もちろん、勝ちましたっと。
レベル100までもう少しなのに、ここで詰まったか。レベル99。
なんだありゃ。能力か?知らないものだと、戸惑ってしまう。そうしたら、イメージがあやふやになってしまう。負の連鎖ってやつか。どうしたもんか・・・。ていうか、普通に考えて今まで能力を使う前に倒していたからな~。
だが、ありがたい。解析は、得意にしておかないと。
なるほど、光線系の能力か。だったら、
レーザーの道筋をイメージして、それを避けながら進む。そして、倒す!!
少し、苦戦を強いられたが、レベル99クリア!ついにレベル100だ・・・。
長かった。現実の時間でいえば、30分。こちらでは、1週間。こんなにちがったのか・・・!
まぁ、あっちの世界では何日も過ごしたのに、こっちでは1日もたっていなかったわけだし・・・。そう考えると、少ないや。全然。焦ることなんてなかったな。
そう思い、俺はレベル100に挑んでいた。もう何日も過ぎた。1ヶ月。現実時間、2時間。一体いくら続ければいいんだ?
こいつは、集大成だった。能力も使う。防御もする。攻撃力が高い。しかも、一度戦うごとに解析学習をしている。勝てないわけだ。一度使った手は、もう使えない。1000回以上挑んで、もう手段が残り少なくなってしまった。まずいな。このままじゃ、絶対に勝てなくなる。
いや、勝てる。勝てるさ、俺なら。負の連鎖を断ち切って、勝利をもぎ取ってやる。
そう思った時の、イメージ力は凄かった。まるで敵の動きが止まって見えるくらいに、動体視力が良くなっていた。
これなら・・・勝てる!!
慢心ほど、危険なものはないというが、これに限っては慢心ほど、有意義なものはない。そういう、ものだった。
勝てた!!!
やっとだ。これで、現実に戻れる。
現実では、2時間しかたっていなかった。
現実に戻った時、体が急に重くなった。とくに、足が重い。現実の体は、動いていないはずなのに・・・。能は寝てても動いているのと、同じ現象なのか?あとで、聞いてみるとするか。
でも、今日はもう、無・・・理?
「すごいね!まさか、完璧にクリアされてしまうとは・・・。まぁ、時間短縮ということで次々。早く早く!」
なんでみんな、そうせかすんだ?なんで、時間を気にして・・・。ていうか、もうきついんですけどー!今日は休みたい。こんなことを思うなんて、情けないな・・・俺。
「・・・、来たか。さて、始めるとするか。」
第5黒黒鬼 峰一。
「なんで、そんなに時間を気にしt・・・。」
「いいから、さっさとやるぞ。」
今度は武の鍛錬だった。能力がない状態でも、戦えるように。また、能力は自分の身体能力によっても、効果が左右されてくる。つまり、身体的に強い方が同じランクでも、勝てるというわけだ。
俺は、何度も何度も、敗れては挑戦し、何度も試行錯誤を繰り返してきた。
たとえ、能力がなくても俺は強い!
ここでも、イメージは大切だ。人は、考えたことを実行しようとする。それを、逆手にとれば勝てるはずなのに・・・。
どうしても、威圧感に押されてしまう。負のイメージが、強すぎる。何か、逆転の一手を・・・。
まてよ?そもそも、勝てばいいんじゃない。自分を超えなきゃ、意味がないんだ。
前とは、違う思考。これが、1番大切だ。組み手で、自分の身体能力が飛躍的に上がった感覚があった。
いける!勝つのではない。ここは・・・。
逃げる!!
足に、筋肉を集中させろ!ずっと、持続させるんだ。
「ほう、なるほど。いい発案だな。」
な!?バレている!?俺の思考が・・・。一体なぜ?まぁいい、こちらから行かせてもらうぞ!
隙をついて、右脚を引き、左足で蹴る。入った!
でも、浅い。深い一撃は、入らなかった。やっぱりダメなのか?
いや、試行錯誤しろ。
ところが、ついに黒鬼も攻撃を始めてきた。
「まじかよ!?」
体勢がふらつく。反撃だけでも、ダメだったのに・・・。一体どうしたらいいんだ?
でも・・・、なんか、いける気がする。この調子で行けば、絶対に合格する。
解析学習をしろ。相手の、動きを覚えろ。パターンを、導き出すんだ。
なるほど・・・。そういうことだったのか。いける!絶対に。
「ふっ、」
はぁぁぁぁぁぁぁぁ!
「なっ!?」
「アウトだ。能力を使うなといったろう!忠告は、守る。これが常識ってものだ。いいか、絶対にだぞ。」
でも、解析学習できるようになったのは、ありがたい。
これで、またさらに強くなった。いける、いけるぞ!
頂点目指して、lets start!
早々と、1週間が過ぎてしまった。
「なぁ、黒霧。本当にこれで、制御できるのか?」
「なんなら、試してみるか?」
「いやいいよ、冗談はよせって。」
そう言って2人で笑っていた。しかし、すぐに黒霧の目つきが変わった。
「来る!」
来る?一体何が来るんだろう?だが、この雰囲気。敵だな。狙いはなんだ?黒闇闇の、霧を突破するだけの力があるということは、わかるが・・・。
「総員、配置につけ。奴らを迎え撃つ。奴らの狙いは、昴だ!」
俺!?俺を狙ってるのか?一体なんで。俺なんて、価値の・・・あった。でもなんで、奴らが知ってるんだ?てか、奴らって誰だよ。
その時、黒闇闇の本拠地の壁に大きな穴が開いた。
「よ~す。昴はいるか~?貰いたいんだが?」
いやなんだよ!そんな入り方して、単刀直入に言うと言うセリフもなしかよ!!
「居ないのか?まぁいい、暴れさせてくれよな~?」
どんどん、建物が壊れてゆく。たった1人の力で・・・。
あいつは、本物だ。本当の、真の能力者だ。
「気を付けろ。あいつらは、風颯嵐だ。そして、今対峙してるのが風颯嵐第1颯、五十嵐 颯明。能力は、『疾風迅雷』だ。触れたものを、ものすごく速いスピードで飛ばしたり、自らも速く動くことができるが、制御が難しく早すぎると止まれなくなってしまう。だから、普段は対象にしか使わないのだ。しかも、恐ろしいことに砂ぼこりでも、早く飛ばせば殺傷能力がある投擲物と化す。まぁ、その分能素消費も多いわけだが・・・。」
こんなことを聞いている間にも、破壊は続いていく。というか、何で風颯嵐が狙ってくるんだ?
俺が狙いだとしたら、一体どうやって能力を知ったんだ?そんなことより、側近は5人いる。早く何とかしないと・・・。
「お一人様か?」
「ああそうだ。なんせ、今の風颯嵐はできてばっかだ。まだ、俺しかいないから。ボスの側近も俺1人だ。だから、強いやつを探してようやく見つけたのが昴ってわけだ。」
「ああ、確か風颯嵐のボスは触れた相手の能力を色で見ることができるんだったな。」
色で?というか、いつ触られたんだ?記憶がない・・・。でも、今の俺にできることは何かあるはずだ。
黒霧に意識が向いている今、不意打ちをするか?でも、当たるより先に見つかったらかわされて、捕まってゲームオーバー。
だったら・・・。
俺は、走った。助けを呼びにいく。今この事態に気づいているのは俺たちだけ。みんな、少し離れた場所にいるし、ここは障害物が多くて音が伝わりにくい。
だから、俺が呼ぶんだ。頼む、間に合ってくれ。
「おかしいな?確か、組織情報には3人いるって言ってなかったか?」
「あれ?そうだったかな。まぁ、ここ数日開けてたしその時に入ったんじゃないか?」
そうとも知らず、俺が走った先に待っていた光景は・・・。
「えっ・・・。」
第5黒と第4黒が、風颯嵐と思われる敵と戦っていた。
「嘘・・・だろ。1人じゃなかったのか?3人もいたのか?」
向こうで、黒霧対颯明。こちらでは、黒紫対?。黒鬼対?。の戦闘が起きていた。
勝負は互角と思われたが、
「くっ、ここまでか。黒紫、あとは任せた。」
そういえば、黒鬼って能力者なのか?能力を使っているところを見たことがないが・・・。何にせよ、非常にまずい事態になった。2対1。圧倒的不利だ。俺がいくか?でも足手まといになると、嫌だし・・・。
考えるよりも、体が動いた。どうする、俺!!
俺は、走っていた。黒鬼が、戦っていた相手目掛けて能力を使った。
「昴!?」
黒鬼は、驚いているようだった。
「何でてきてるんだ!奴らの狙いは、お前だぞ!」
「だからだよ。俺がこうして、ヘイトを稼ぐんだ。」
そうだ、こうすれば黒紫の方も、少しはゆるくなるはずだ。
「おっ、ターゲット発見。ねぇ颯佐、こっち任せてもいい?」
「ダメです。せめて、倒してから来てください。こちらは僕が、対処します。」
やはり、ボスの側近なだけはあるか・・・。だが、やってやる。俺だって、側近に鍛えてもらったんだ。
まずは、相手の攻撃を見る。そして解析学習をしろ。相手の、攻撃パターンを覚えるんだ。
・・・何!?
見えない!早すぎる以前の問題だ。
ギリギリ見える残像も、分身のように見えてさらに混乱を呼ぶ。
焦るな、何か策があるはずだ。何か・・・。
あった、これならいける。
「どうした、もう終わりか?来ないのなら、こっちからいくぞ。」
来た!!
グハァッ
痛い・・・。まるで、内臓が潰れた感じだ。半端ねぇ、あの早さで生身の俺にぶつかられたら、さすがにひとたまりもなかったぜ。
「なるほど、能力で身体を固めて身を守りましたか。ですが、それでもかなりダメージが入っているようだ。僕は、これから能素を取り出しているが、君は違う。後何発、耐えられるかな?」
まずいな・・・。早くしないと、俺がダメになりそうだ。
「まだ耐えるか、だがこれで終わりだ!」
ぐっ、
重い一撃が入った。俺は、膝をついてしか立っていられなくなった。
「もう終わりですねか・・・。それではあなたを回収します。」
いまだ!!
予知の加護で、移動場所を把握しろ。能力の分は、今まで受けた攻撃の速さから解析学習した分で、補え!
そして、当てるというイメージを持て!勝てる、俺なら勝てる!
「うおおおおぉぉぉぉ!!!」
「何度言ったらわかる?無駄です。」
後ろだ!
回避の加護でかわし、天眼の加護で急所をつく!
「おらぁ!」
「何!?」
相手は、地面に倒れた。勝てた、特訓の成果は無駄じゃなかった。
「おいおい、何やってんだよ颯佐!お前がやるって言ってたから、手を出さなかったんだぞ!」
「よそ見している暇があったら、出直してくれんだな。」
「グハァッ。」
何とか、黒紫も勝ったらしい。さて、問題は・・・。
「黒霧の方が心配だ。急ぐぞ!」
時は少し遡り、昴が居なくなった後。
「まぁいいや、まずはお前を倒す。知ってるか?この能力には、こんな使い方もあるんだよ!!」
急に、強風が吹き荒れた。僕は、壁に衝突したが間一髪のところで受け身をとった。
「へぇ、やるじゃん。じゃぁ、これはどうかな?」
そう言って、地面を蹴り砂埃を浮上させた。
まずい!!
「槍術 伍式 混沌の渦」
混沌の渦は、すべての砂埃を吸い込んだが、
「第2陣!?」
しゅっ、しゅっ、しゅっ、と僕の頬をかすめていく。
「なかなかやるな、でもこっちも時間をかけてはいられないんだ。これで終わらせてもらうよ。」
そう言うと、あたり一面に砂埃を浮上させ、一気に飛ばしてきた。
「間に合わない!」
ぐさっ!!
僕の心臓を、貫いた。
「流石にこれは疲れるが、こいつがあるから大丈夫だろ。」
「何が大丈夫なんだい?」
「何!?なぜお前が生きて・・・。」
ふぅ、失神させた。正直危なかった。混沌の渦で、こちらが隠れている間に幻影と交代しといて良かったと思う。だが、さすがに疲れたが、もう向こうは終わっているようだった。
「大丈夫か?」
「ああ、今終わったところだ。さてと、どうしたものか。ボスが見当たらないと何も解決しない。探さないと・・・。」
「その必要は、ないよ。いや、いいものを見せてもらった。さすがに、君たち相手では歯が立たなかったようだが。」
後ろから、聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「でも、これで終わるわけじゃない。進化を見たいのだよ、私は。いいね?昴君。」
そう言って、道具を背中に押し当ててきた。
「うわあああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「まずい!強制暴走。何をしているんだ!風雷。」
「何って、本来の力を解放しているだけさ。これを倒せたら、もう手を出さないと約束しよう。」
覚醒。しかも、パワーアップした昴が。制御できるという、希望はないな。急に、大量の能素を入れられたら、能力の方が支配権を握ってしまう。
「おいおい、今回は出ないようにしてたんだが?お呼び出しか?」
「滅相もございません。あなたには、本来の姿で居てもらいたいだけなのです。」
「そうか・・・。まぁいい、ではまず初めに、お前の部下の能力を教えろ。」
こうして、風雷は語った。能力名と、効果を。
「分かった、条件として協力はしてやろう。」
まずい!
「総員、道具をもってこい。はやく!」
「いくぜ!久しぶりに、はしゃげそうだ。」
勝敗は、一目瞭然だった。惨敗—————————。
「気を付けろ!風颯嵐の技は、使えると思え!」
速い!疾風迅雷か。まずいな、あのスピードで動かれたら攻撃が当たらない。
そして、昴には大量の能素が取り込まれている。つまり、能力は無数に使える。
「準備はまだか!」
「すみません。瓦礫で、倉庫への道が塞がれて・・・。1時間もあれば、いけるかと・・・。」
1時間・・・、長い。耐えることは、できるか?
正直、難しい・・・。
「1時間で、すませろ!それまで、持ち堪える。」
「はい!!!」
大丈夫か?いや、全然ダメだ。絶対、耐えきれない。1人じゃ、きついな。さて、どうしたもんか・・・。
「耐久戦か・・・。いいだろう、乗ってやる。俺の攻撃に、耐え切れるかな?」
攻撃の連鎖は、止まらなかった。
くっそ、槍術でどこまで捌き切れるか・・・。
「もう、おしまいか?まだ、3分も立っていないぞ。これでは、時間稼ぎにもならないか。殺してしまうのもアレだし・・・、そうだとりあえず気絶させよう。」
ひゅん、と耳元で囁かれた瞬間、背筋がゾッとした。ヤバイ、死ぬ。死ぬ境地に、陥ったことがないのにわかる。これはまずい。
このままだと、死んでしまう。どうにかしないと・・・。
「おうおう!ばちばち、やりあってんね。」
!?
「協力しにきました。」
異世界から連れ帰り、保護していただけなのに。何で・・・?
「今、何でとか思ったでしょ。私たちには、こっちの世界に連れてきてもらったって言う、かりがあるのよ。それを、返すだけよ。それにしても、いつもよりオーラが出てるみたいね。昴?」
「残念だが、今は昴じゃない。そこだけは、分かってくれ。」
「ふっ、まぁこれで楽しめそうだ。俺を、退屈させないでくれ。」
そうは言っても、この人数でもまだきついぞ。側近のうち、1人はダウン。1人は、瓦礫の方へ。残り3人は今、持ち場を離しているとなると、増援には期待できない。でも、やるしかないんだ。ここで、止めないとスバルも街も悲惨なことになってしまう。
「は~!色色色彩 春 桜花乱舞!」
こんなところにも、桜の木は立つ。でも・・・。
「色色色彩 夏 赫赫烈日。」
一瞬にして、燃えてしまった。やはり、向こうのほうが数段上ということか。
「まだ、まだ~!色色色彩 春 春雷轟轟!」
雷が鳴り、その音が波紋状に轟いた。
「へ~、すごいね。1つの能力で、ここまで出来るんだ。でも、逆に言えば1つの能力さえ使えれば、ここまで出来るということ。色色色彩 春 春雷轟轟」
先ほどよりも、凄まじい雷が落ちてきた。音も、倍以上だ。これじゃ、轟くじゃなくもう、爆発だな。
こんなのに、勝てるのか?いや、勝つんだ。
「絶対に、ここは死守する。何としても、守り抜けー!」
「おー!」
みんな、なるべく既存の技を使うようにした。察したのだろう、あの能力の恐ろしさを。
「いいですね~、この戦闘力なら組織を復興できるかもしれない。前のボス、四季色 琥珀が失踪しなければこんなことには、ならなかったのですがね~。」
12分後———————————。
やっと、10分の1だ。まずいな、本当にまずい。
何とかしなくては・・・。何とか・・・。
くっ、一体どうすれば・・・。待てよ?これなら、いけるかもしれない。
「紅梅、小鴨、茜、藁、合図したタイミングで一斉攻撃を仕掛けてくれ!」
「分かった!」
「3・・・2・・・1・・・・いまだ!」
「色色色彩 春 桜花乱舞!」
「色色色彩 夏 赫赫烈日!」
「色色色彩 秋 秋冷月鏡!」
「色色色彩 冬 嵐雪白冬!」
4人の攻撃が、スバル?を直撃した。
「ちっ、」
かすり傷は付いたが、再生の加護で瞬時にさせられてしまった。
「今だ、行け!」
「何!?」
僕が作った幻影が、床に垂れていたスバル?の血を取り込んだ。
「僕の幻影の、力は知っていたよね。」
そこには、もう1人のスバル?の姿があった。
「趣味の悪いことをしてくれる。でも、何分持つかな?試してやるよ!」
激戦が、始まった。こちらからは、目で追うのも大変なほどだった。
だが、いずれにせよ互角に渡り合えていた。
20分後——————。
「何でだ?何で消えないんだ?・・・、そうか!俺が、怪我を負うたびにそこから血を吸っていやがるのか。本当に、悪趣味だぜ。でもな?こっちにも秘策があるんだよ!」
そう言って、スバル?は道具を取り出して幻影に押し付けた。
「能素を、具現化しているだけなら、その能素を吸い取って仕まえば意味はないからな。」
気づかれたか。正直、これは時間の問題だと思った。もう少し、遅めに気づいてくれていれば。しかし、何を言っても仕方ない。残り30分。何とかしなければ・・・。
「何だ?もう終わりか?だったら、こっちから行かせてもらうぜ!」
そう言って、スバル?は小鴨の前に来て
「じゃぁな。」
と言って、拳を振るった。
まずい、間に合うか?この距離は、きついぞ。何か、何かないのか?
もう終わりだと思った時、スバルの拳が小鴨の額の寸前で、止まった。
「なんだ?もう起きたのか。能素を、使いすぎちまったな。なぁ、昴。」
昴!?そうか、能素量が一定を下回ったから、何とか制御できないか試しているのか。
だったら、協力してやるよ。
「みんな、攻撃の手を休めるな!連鎖を、止めるな!」
さっきよりも、戦いやすかった。昴が、制御しているのか。昴を、気にしているのかは分からなかったが、ありがたいことだ。
この隙は、絶対に見逃さない。絶対に、昴を取り戻す!絶対に。
「はぁ!」
!?
風雷が、道具を投げた。それは、スバル?にあたり能素が一気に取り込まれた。
「ふ~、これであいつも出てこないだろう。さて、第二ラウンドと行こうじゃないか!」
状況は、最悪だった。早く、早く道具を。そう願うことしか。出来なかった。
状況は、依然として最悪だった。
一度見えかかった希望も、潰えてしまった。
残り、25分・・・。どう耐えるか、もう方法を選んでいる場合じゃない・・・か。
まぁ、選ぶ方法もないんだが。
いや・・・待てよ?何か、引っかかる。そもそも、初歩的なところから間違えていたのか?う~む、わからない。もう少し時間があれば・・・。
「おい!時間を稼ぐから、何か、考えろよ!」
あいつは、心が読めているのか?だが、ありがたい。早く、何かを考えなければ・・・。
5分後—————。
「くっ、もう・・限界だ・・・。」
4人とも、倒れてしまった。
「おいおい、もうダメなのかよ?残り、1人になっちまったじゃ、ねえか。」
「いいや、時間稼ぎのおかげでいいアイディアを思い出せた。」
「何だ?だが、能素が枯渇しそうだな。おい、ジジィ!それをよこせ。」
そう言って、貰おうとした時、
「組織法 第七条 他組織の目標を妨害してはならない もし妨害した場合は自分の地位を失いその組織に使える」
僕を、中心にして波紋状に波動が漂った。
「うっ、」
「お前は、1つミスを犯した。それは、僕たちの目標を妨害したことだ。お前の目標は、組織の復興。昴じゃなくてもいい。つまり、今のお前は僕の従者だ。立ち去れ、ここから立ち去るんだ。早く!」
「くっ、くそぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
ふぅ、これで風颯嵐は退けられたが・・・、スバル?をどうするか考えてなかったな。
「まぁいい、かかってこいよ!その、チンケな技で。」
やはりダメか・・・。どうあがいても、通用しなかった。僕の、技術じゃダメだと知った時だった。
「まぁいいや、もう面倒い。いっそのことここら一帯をまっ平にするか。」
!?
そう言って、スバル?は空気中から大量の能素を吸い込みはじまた。
まずい・・・。このままでは、街に被害が起きるかもしれない。今度こそ、手詰まりか・・・。
あの4人には悪いが、もう僕は無理だ。そう思っていてくれ、頼んだぞ。
「これだけじゃぁ、足りないな。こいつも使うか!」
ドンと、心が痛むような感覚に襲われた。
このままじゃ、このままじゃまともに仕事できないな。
はてさて、どうしたものか・・・。
残りは、20分。何とか、いけるか?でもかなり、勝率は低いぞ?勝たなくてもいいのに、勝率が低いってこりゃなんだ。
2度あることは、3度ある。似たようなことが、起こるかもしれないが、ちゃんと考えておかないと。まぁ、今は目の前の方が、優先事項だな。何とか、しなくては・・・。
「溜めるまでに、15分はかかる。その間に、俺を倒せたらお前らの勝ちだ。倒せなかったら・・・、分かってるよな?」
そう言う、スバル?の目はすでにこちらを見ていなかった。勝ちを、確信していたのだろう。
こんな簡単なことも、考えられないほどに僕は追い詰められていた。
周りには、何人もの人が倒れている。しかも、スバル?に能力を使われると黒闇闇が完璧に消し飛んでしまう。これだけは、僕でも分かっていた。
考えろ、考えるんだ。組織のボスは、頭脳とカリスマ性がある人材にしか声がかからない。つまり、僕には出来るということだ。
・・・、何も思いつかなかった。僕の頭の中は、真っ白だった。
スバル?は、退屈そうに笑っていた。その笑みは、人を絶望に引き込むかのような、そんなものだった。
時間は、刻々と進んでいく。だが、もう僕には時間という概念が分からなくなっていた。僕の思考は、完全に停止していた。時間すら、気にしなくなっていた。5分経ったことも、分からなかった。
「どうした?かかってこないのか?」
この言葉すら、僕の耳には入ってこなかった。
周りから僕は、どのように見えているのだろう?静止しているのか。表情がないのか。
分からない、分からない、分かりたくない、もう分からなくていい。僕は、僕は、僕は一体誰なんだ?
スバル?は、ニヤリと不快な笑みを浮かべた。
私は、不思議に思った。スバル?が、溜めを始めてから黒霧が完全に停止していた。表情も、何一つ変わっていなかった。どうして何だ?疑問が、私の頭を遮る。なぜだ?なぜ、溜めをやめ黒霧を殺さない。今殺せば、もう一度溜める時間くらいあるはずなのに・・・。
私の心を読んだのか、スバル?がこう答えた。
「簡単な話さ。俺が、お前たちがいた世界を作った能力と同じ能力を、使っただけさ。」
!?
でも、そしたら何で黒霧はこちらにいるの?
「何だ?不思議に思っているみたいだな。お前らが、体験していたことと現状が合致しない。当たり前だ。俺のランクはA。あいつとは違う。扉を使わなくても、俺が作った世界に飛ばすなんて簡単なことだ。」
「じゃぁ、何で黒霧はここで止まっているのよ!」
「まだ分からないのか?俺が飛ばしたのは、人とは言っていない。こいつの、精神さ!こいつは、白一色の世界でたった1人で100000000年生きているからな。」
100000000年!?そんな世界で、一人ぼっち・・・。考えるだけで、鳥肌が立つ。いや、そんなものじゃない。心の奥底から、負の感情に支配されていくようだった。
「安心しろ、精神は死なん。呼び戻せば、分からないが・・・。」
残りの、8分。何とか、時間を稼がないと・・・。でも、もう手も足も動かない。
そんな時だった。急に、スバル?の感情が現れてきた。
「ちっ、またお前かよ。まぁ、俺を止めれるもんならやってみろ!昴。」
昴!?もしかして、今戦ってるの?私たちには、見えないだけで今スバル?と昴が戦っているんだ。
そう思えたけど、結局現状が変わるわけもなく。変わったことといえば、私たちに光が見えてきたくらいだった。
「へっ、そんなもんかよ。そんなんじゃ、俺を引き戻すことなんて出来ないぜ?」
対峙している。でも、言葉的に昴が不利だと分かっていた。引き戻せたとしても、また出てきたら意味がない。昴には、何か作があるのだろうか?
「さ・・あ・お・・・・・い・・る。」
!?
今、何かが聞こえたような・・・。もしかして、昴の声?何で、聞こえてくるんだろう。でもそれって、引き戻しかけてるってことだよね。
「はっ、どうやってするんだよ?今のお前に、そんな力はない。あと、3分でこれをぶっ放す。覚悟はいいか?お前のせいで、この街もろとも、吹き飛ぶんだよ!」
「さ・・・ほ・・・・あ・。」
その時、かすかに能素の流れに乱れが生じた。その能素は、スバル?が溜めている方向とは真逆に進んでいった。
スバル?の表情が、豹変した。焦りを、感じていたのかもしれない。だが、今となっては分からなかった。
「くっ、うぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!させねぇ、せっかく出てきたんだ!食い下がるわけに・・・は・・・。」
スバル?が、倒れた。溜めていた、能素も分散して消えた。
一体どうなったの?昴は、生きてるの?黒霧は・・・。
「もう安心して、大丈夫。黒霧は、問題ない。昴も。」
目の前に、仮面を付けた男が立っていた。見覚えがあったが、思い出せなかった。
「いたたた、あれ?スバル?は?」
「どうやら、成功したらしい。」
昴が、頭を押さえて起き上がった。
「ごめん、黒霧。俺、あの力を封印してしまった。その代償として、今は能力も使えないけど。でも、これで黒闇闇の目標は達成できなくなってしまった。どうするんだ?これから。」
「目標が達成できなくなった場合、ボスが死ぬまで目標を変えることはできない。これから、気長に過ごすとするよ。」
そういうことなら、大丈夫か。
「これから俺は、どうすればいい?」
「もう、昴がここにいる意味はない。みんな待ってるみたいだし、帰ってあげればいいんじゃない。」
「そうするか。」
俺が後ろを振り向くと、ちょうど道具を取り出そうとしていた組織員が戻ってきた。
「ボ~ス、持ってきました・・・ぜ?あれ、もしかしてもう終わってたりして・・・。」
「あぁ、そうだけど。」
「うわぁぁ、俺たちの有志が・・・。まぁいいや、今はみんなが無事ってだけでいいんだから。」
よかった。みんな無事だった。今回の戦闘で、多大な被害はあったものの、死者は出なかった。これだけが、不幸中の幸いと言ってもいいだろう。
俺は、出口に向かって歩いた。だがその時、大きな音とともに天井が崩れ落ちた。
「何事だ!?」
俺は、目を見開いた。まさか・・・、
「こは・・・る?」
真相は、謎に包まれたまま、その全てを覆い隠し、存在自体を消す。それを、暴くことが大切なんだ。
~第四章~ 戦闘編 完
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