優等生と劣等生

和希

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LASTSEASON

予感

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(1)

「冬夜さん起きてください。今日から仕事ですよ」
「おはよう愛莉」

愛莉に起こされると支度を済ませて、朝食をとる。

「今日は夕食如何なさいますか?」
「家で食べるよ。ただ遅くなるかもしれないから愛莉先に食べてて」
「はい、わかりました」

朝食を食べ終わるとすぐに家を出る。

「じゃあ、行ってくる」
「お気をつけて」

そうして、車で通勤する。
会社に着くと席に座り準備を始める。
そうしていると次々と皆がやってくる。
達彦先輩も夏美さんと一緒にやって来た。

「オッス冬夜!今日から忙しいぞ」
「おはようございます」

そして朝礼が始まる。
今日の連絡事項が知らされる。
やっぱり大変そうだ。
朝礼が終るとさっそく仕事が渡される。
書類を見ながら達彦先輩から説明をされる。
分からないところを頭の中で纏めて、一度に聞く。
細かい不明な点は都度先輩の指示を仰ぐ。
主に比較損益計算書や比較貸借対照表などを作成していく。
月次損益推移までは指示通りに作成していくが決算シミュレーション等は達彦先輩の仕事。
先輩の判断材料となるデータを作成して先輩の仕事の材料づくりをすることが僕の仕事。
先輩の担当してる件数は法人で20件以上
年度末の決算などで忙しくなる。
昼休みになると弁当を食べる。
昼休みを挟んで再び仕事が始まる。
15時の休憩を挟んで仕事を続ける、
それは定時になっても終わることが無い。
21時になる頃「もう帰ってもいいぞ」と言われる。

「もう少しでキリがつくんでそこまでやります」
「張り切りすぎるなよ。長続きしないのが一番困るんだから」

達彦先輩がそう言って笑う。
出来上がった。
今日の最後の案件を渡すと達彦先輩のチェックを待つ。

「おつかれさん、続きは明日にしよう」

帰り支度をして事務所を出る。

「あんまり無理すんなよ!頑張りすぎて無理ってなって翌月に辞めちまう奴多いんだから」

達彦先輩はそう言うと帰っていった。
車に乗ると一息ついて愛莉に電話する。

「今終わった。これから帰るよ」
「遅くまでお疲れ様です。気を付けて帰って来てくださいね」
「わかった」

一言いうと、家まで帰る。
家に帰ると愛莉が待っていた。

「お帰りなさい。お疲れ様です。ご飯できてますよ」

ダイニングに行くとほかほかの料理が並んである。二人分。

「ご飯食べる前に着替えてくださいね」
「愛莉先に食べたんじゃなかったの?」

遅くなるから先に食べてて良いって言ったのに。
時間は22時半を回っていた。

「だって冬夜さん家に帰ってから食べるって言ってたから一緒に食べようと思って」
「愛莉お腹空いたろ?」
「一人で食べるの寂しいですよ。冬夜さんもきっとそうだと思ったから」

愛莉は僕の脱いだスーツを片付けながらそう言って微笑む。

「さ、食べましょう。冷めないうちに」

愛莉がそう言うと二人で夕食を食べる。
食べ終えると愛莉は片づけを始める。

「お風呂沸かしておいたので先に入ってくださいな」

愛莉に言われたとおりに風呂に入る。
僕が風呂に入ると愛莉が風呂に入ってそして戻ってくる。

「まだお休みにならなくてよろしいのですか?明日も大変なのでしょう?」

だから今夜はお酒は我慢しましょうね。と、愛莉は言う。
そんな愛莉が眩しかった。
優しい愛莉がいてくれるから、家に帰ると疲れが吹き飛ぶ。
愛莉がいてくれる。帰る場所がある。
愛莉こそが僕の帰るところ。
そんな居場所を大切にしよう。
守り抜こう。
夢幻の果てに辿り着いた場所。
愛莉を抱きしめる。

「今月はこんな日が続くかもしれない、ごめん」
「お仕事してるのですから当たり前です。気にしないで」
「……じゃあ、お休みしようか?」
「はい」

愛莉と二人でベッドに入る。
愛莉も疲れていたようだ。すぐに眠りにつく。
そんな愛莉を僕はどんな顔をしてみているのだろう?
飽きることなく愛莉を見つめ続けそして眠りについた。

(2)

まいったな。
この年になって不良に絡まれることになるなんて思ってなかった。

「いい加減分かってくれないかな~?俺達は慈善事業やってるわけよ。お前みたいなダサい奴の人生に花を咲かせてやろうって言ってるんだぜ?いい話じゃないか?」
「しかも入会金ただ、会費10000円でいいって言ってるんだぜこんなおいしい話無いぜ?」

出会い系サークル「レガリス」の勧誘。
言い方を変えればただのカツアゲ。

「今ちょっと手持ちのお金じゃ足りなくて」
「ちょっと財布出せよ」

参ったな。
どうしようかな~。
喧嘩沙汰になったら過剰防衛になるのかな~?

「なにしてるんだ?」

ハスキーな女性の声がした。
ボーイッシュショートヘアにピアスをして小顔の輪郭が整っていてキリッとした目つき。
スポーツ選手の様な体格をしている。
パーカーにチャーコールグレーのタンクトップにパンツをはいているその女性は風船ガムを膨らましがなら男たちを睨んでいる。

「なんだおまえ、こっちは取り込み中なんだよ。引っ込んでろ!」
「いい歳こいてカツアゲ紛いのだせえ真似してんじゃねーよ!」

随分強気な女性だな。

「誰に口聞いてんだ?姉ちゃん」

男が棍棒を手にした。

「耳が遠いのか?理解力が欠しいのか?はっきりしろよ!」
「このアマぁ!」

男が襲い掛かる。
女性は男の凶器を持つ手を取ると反対の拳が男の顔面を捕らえる。
もう一人の男が怯んでいる?違う女性の後ろにさらに二人いる。

「後ろ危ない!」

僕は女性に声をかける。だが気付くのが遅かった。
二人がかりで両腕を押さえられる。

「さて、どう嬲ってやろうかな?」

男が女性に近づく。
……しかたない。
僕は行動に移した。
男に近づくと振り向きざまに上段蹴りを顔面に当てる。

「てめぇ!」

男が凶器を取り出した。
女性の拘束が解かれる。
女性が振り返って攻撃しようとするのを襟を掴んで引っ張ったのは道具がナイフだったから。

「下がって!」

女性にそう言うと僕は二人の相手をする。
2人はナイフを持って同時に襲い掛かってくる。
片方は手にしていたバッグで防ぐ。参考書などが入っていたので盾にはなった。
もう一人は僕の拳が鼻っ柱を捕らえる。
想像以上に派手に吹き飛んでくれた。
残る一人に正対する。

「お前たち何をしている!」

警官が駆け付けてくれた。
残った一人は逃げ出した。
これじゃ僕が加害者じゃないか。

「君がやったのか?」

警官が問いただす。……やれやれ。

「はい、僕一人でやりました」
「ちょっとお前!」

何か言おうとする女性に向かって人差し指を口に当てる。
女性は意味を正確にとらえてくれたのか知らないけど何も言わなかった。

「事情を聞くから交番まで来てもらうよ」

バイト間に合わないな。
スマホで電話する

「涼宮ですけど……はい。ちょっと事情が出来てバイト遅れます。すいません」

その後交番に行って事情聴取を受けた。
女性が上手い具合に口裏を合わせてくれたらしい。正当防衛が成立した。
僕が事情聴取をすませ交番を出ると女性が待っていてくれた。

「何であんな真似したんだ?」

女性が言う。

「いや、事をスムーズに運ぶにはその方がいいと思ったんだ。君を巻き込みたくなかったしね」

お互い面倒事は嫌でしょ?

「お蔭で助かったよ。お礼に何かご馳走させてよ」
「生憎とバイトの時間なんだ。気持ちだけ受け取っておくよ」
「じゃあ、名前だけでも。私若宮美琴。私立大に通ってる」
「僕は涼宮咢。地元大に通ってる。それじゃ僕は失礼するよ」

そう言って僕はバイト先に急いだ。
バッグに傷がはいった。結構お気に入りだったんだけどな。
まあ女性の顔はプライスレスだよね。

(3)

また中坊が絡まれてる。
そう思って助けようとした。
2人ならどうにかなる。
1人倒した。
すると中坊が叫ぶ。

「後ろ危ない!」

大の男二人に両腕を封じられたら身動き取れない。

「さて、どう嬲ってやろうかな?」

男がそう言って近づいてくる、ちょっとした恐怖を感じた。
すると予想外の事が起こった。
中坊が上段蹴りで目の前の男を蹴り倒した。
二人の男が動く。
私の拘束が解かれる。
加勢しないと。
だけど、中坊は私の襟を掴み後ろに引っ張る。

「下がってて!」

守ろうと思った男に守られた。
警察が来た。
中坊は言う。

「僕一人でやりました」

武勇伝にでもしたいのか?
私が何か言おうとすると中坊は私に向かって人差し指を唇に当ててみせる。

「ここは僕に任せて」

そう言いたげな感じだった。
結局私も事情聴取を受けたのだが口裏を合わせて置いた。
助けるはずが助けられた。
私は余計な真似をした。
お詫びくらいしないといけないな。
中坊が交番から出て来るのを待った。
中坊が出て来るとお礼にご馳走すると言った。
だけど「バイトがあるから」と断られた。
せめて名前だけでもと思って聞いた。

「僕は涼宮咢。地元大に通ってる」

……大学生だったんだ。



と、言う事を友達の祥子に話した。

「ふーん……」

祥子は私の話を聞いて考えている。

「でさ、美琴はその涼宮って奴にどうしたいんだ?」
「え?」
「何かしたいから相談してるんじゃないの?」
「……分からない。こんな気持ち初めてだ」

単に礼が言いたい?それとも……会いたい?

「ちょっと時間ある?」
「ああ、今日はバイト休みだし」

祥子はスマホを弄りだした。
暫くすると祥子は言った。

「とりあえず来なよ、いいとこ連れて行ってやる」

祥子に連れられたのは地元近くの国道沿いの喫茶店。

「いらっしゃいませ。待ってたよ」

小柄で綺麗めな女性はそう言うと私の方をちらりと見てにこりと笑う。

「空いてる席にどうぞ」

空いてる席に座る。

「祥子の知り合いの店?」

祥子に聞いてみた。

「まあ、近いかな」

祥子はそう言って笑う。

「とりあえずご注文をお伺いします」
「クリームソーダ二つで」
「かしこまりました」

祥子が注文するとさっきの女性が厨房に行った。

「祥子、この子がさっきの?」
「そうです」

カウンター席に座っていたロングヘアーの年上のお嬢様風の女性は私を観察するように見る。
やがてさっきの女性が注文したクリームソーダを運んで持ってきた。

「理由は分からないけどあなたを助けた男に会いたい?合ってる?」

店員が聞いてきた。
どうして知ってんだ?

「まず私が説明するよ。私渡辺班ってグループに入っててさ……」

渡辺班、噂くらいは聞いてくる。どんな願いも叶えてくれる不思議なグループ。
でもその渡辺班に私を紹介してどうしようって言うんだ?

「私達がその涼宮咢っていうのを探して会わせてあげる。私も地元大から簡単に見つけられると思う」
「あんた一体誰だ?」
「渡辺班の大学生を仕切らせてもらってる竹本咲って言います」
「別に驚かせようとか思ったんじゃなくてさ。あんたの気持ちがその涼宮って男に会いたいってのはわかったからさ。こうするのが手っ取り早いと思って連れて来たんだ」

渡辺班に入るのには一応咲さんに通さないといけないからと祥子が言った。

「私は別に……」

出会いを求めてるわけじゃない。

「会いたくない?」

祥子が聞いた。
私は返答に戸惑った。

「迷ってる時点で答え出てるじゃん。一度会ってみなよ?結論出すのはそれからでも遅くない」
「……渡辺班ってのに入ったら可能なのか?」
「噂くらいは聞いてるんでしょ?」

恵美って名乗った人が言った。
必ず見つけ出すという。
疑問は残るけど確かに会って損はないかもしれない。精々時間の浪費くらいか?
そんな私の様子を見て咲さんは言った。

「決まりだね。祥子、グループに招待しなよ」

メッセージのグループに招待される。

「じゃ、よろしくね。見つけたら連絡するわ」

咲さんがそう言うと祥子は席を立つ。

「そろそろ帰ろうか?美琴」

私達は店を出る。

「なあ、祥子?」
「なに?」
「あの人達本当に信用していいのか?」
「……私もさ、あのグループに彼氏紹介してもらった口でさ」

祥子に彼氏!?祥子は男嫌いじゃなかったのか?

「しかも第一印象最悪なチャラい奴でさ。まさか付き合う事になるとは思わなかったよ」
「まてよ、私は彼氏が欲しいなんて一言も言ってないぞ!」
「分かってるよ。人探しが得意なのは確かだからさ。心配する必要ないって。……たださ。気になったんだよ」
「なにが?」
「美琴の目が物語っていた。もう一度会ってみたいって強く願ってた。後は女の勘だね」

私はそんなに涼宮に会いたいと願っていたのか?
考えれば考えるほどあの雄姿が浮かび上がる。

「あんた遊んでるだけの大学生活が嫌だって言ってたじゃん、ちょうどいい機会じゃない?」
「確かにそうかもだけど……」
「難しく考える必要はないって、相手に既に彼女いるかもしれないんだし」
「そうだな」

彼女がいるかもしれない。そう聞いた時胸がちくっと痛んだ。
会ってみないとわからなか。

予感。
生きる事を諦めちゃいけない。前へ進め。
いつか私は君に会うだろう。
私には君が分かるよ。
海を飛び越えて、君と灰になる為旅を続けているんだ。

予感。
渡辺班というグループがもたらす物。それは……。

(4)

焼き鳥屋で3人の歓迎会は行われた。
涼宮咢はまだ見つからないらしい。
僕と愛莉は石原夫妻と酒井夫妻、晴斗と、白鳥さんの席にいた。
渡辺夫妻は桐谷夫妻と多田夫妻、悠木さんと長谷部君と同じ席だった。

「じゃ、皆急に集まってもらって申し訳ないが……」
「うだうだ言わずにさっさと始めろ!!」

美嘉さんが言って宴の始まり。
僕達は話をしながらもやはり悠木さんと長谷部君が気になっていた。
積極的に長谷部君に話を振る悠木さん。
やっぱり緊張している長谷部君。
あまりしゃべらない。
愛想笑いを浮かべるのがやっと。
彼女は精一杯アピールしていた。
女性陣が入れ知恵したんだろう?

「長谷部君が彼氏だったらなー」

そこまで言わせてしまった。
しかしまったく反応のない長谷部君に女性陣が苛立ってくる。
悠木さん自身も酒の勢いも手伝ってか苛立ちが隠せなくなってしまったようだ。
これはまずい。
僕と石原君が行動するよりも恵美さんの行動が早かった。

「長谷部といったかしら!?ちょっとそこに立ちなさい!」

恵美さんの剣幕に思わず達ががる長谷部君。

「あなたこれだけ悠木さんがアピールしてるのに何とも思わないの!?」

恵美さんが言うと次々と文句が出る。

「そうだぞ長谷部!まさか彼女からの告白待ってるとか狡い事考えてるんじゃないだろうな!?」

美嘉さんが言う。

「考えてませんよ。そんな夢のような話あり得ない」

長谷部君が答える。

「夢じゃねーよ!今目の前に転がってるんだよ!自分でゴール決めろよ!急にボールに来たのでじゃすまさねーぞ!」

カンナがいう。

「決めたわ!こうなったら意地でも言わせる!言うまで帰れると思わない事ね!」

晶さんが言う。
石原君と酒井君は頭を抱えている。
渡辺君も作り笑いをしてる。

「冬夜さん、やはり冬夜さんから何か言った方がいいのでは……」

愛莉が僕に言う。

「大丈夫だよ、今は見守っていよう」

愛莉に言い聞かせる。

「こっちだって仕事明けでイライラしてんだ!手間とらせるんじゃねえ!」
「そうだよ。あの般若に帰り間際にグダグダ言われて虫の居所が悪いんだからね!」
「亜依と同感!あのスケベじじいに胸揉まれてイライラしてんだ!」

カンナと亜依さんと穂乃果さんが言う。
もはや全く関係ない愚痴が飛び出してる。
イライラしてるのは亜依さんや恵美さんだけじゃなかった。

「私も頭に来た!!」

悠木さんが立ち上がった。

「ここまで言っても私の気持ちに気付いてもらえないって鈍い通り越してどうかしてるわよ!あんた私の事どう思ってるのよ!?」
「そ、それは素敵な先輩だなって……」
「今までアピールしたのにたったそれだけ!?この根性なし!」

やっぱり一言言った方が良かったかな……。

「片桐君!余計な入れ知恵はしなくていいからね!この腐りきった根性徹底的に叩き直さないと気が済まないわ!」

恵美さんに釘を刺された。

「大体てめえは悠木さんの事どう思ってるんだよ!?」

美嘉さんが言う。

「だから素敵な先輩だって……」
「そういう問題じゃねーだろ!女として見てるのか見てないのかはっきりしろ!」
「そ、そりゃ見てますよ……」
「どう思ってるんだよ!?」
「え、えーと綺麗で知的で器用で愛想よくて……」
「だあ!めんどくさい男だな!」

カンナが立ち上がる。

「回りくどい事はどうでもいいんだよ!!好きか嫌いかはっきりしやがれ!」
「好きに決まってるじゃないですか!」

長谷部君が叫んだ。

「だ、そうだが?悠木先輩」

渡辺君が言う。これで解決した。少なくとも男性陣はそう思っていた。
だけど女性陣的には不満が残っているようだ。
悠木さんがテーブルを叩く。

「あのね!その好きな女性があなたが彼氏だったらなーって言ってるのよ!?だったら言う事は一つでしょ!?」
「そ、それは……」
「本当に煮え切らない男ね!付き合いたいの!?付き合いたいたくないの!?はっきりしなさい!」

愛の告白というよりは脅迫に近いんだけど女性的にはこれでいいのか?

「……付き合いたいです」
「もっとシャキッと言え!」

カンナが怒鳴る。

「僕は悠木先輩と交際したいです!」

長谷部君はやっと言った。
これで事件は解決した。そう思っていた。
が、女性陣はこのくらいじゃ気が済まないらしい。

「最初から素直にそう言えば良いのよ!!なんでそれができないの!?そんなんだからあなたの稟議書は中々通らないのでしょ!」
「あ、あの返事は……?」
「返事……?そうね、いいわよ付き合ってげるわよ。私がそのうじうじした性根1から教育してあげるわ」
「悠木さんに同感だね!渡辺班が徹底的に教育してやる!」
「美嘉と同意見だ!こいつは今までで一番質が悪い奴だ!今日帰れると思うなよ!」
「いいわね……久々に鍛えがいのある奴だわ」

悠木さんと美嘉さんとカンナと恵美さんが言う。

「か、神奈お前明日仕事だろ?」
「一日徹夜くらいどうってことない!」

誠が言うがカンナは聞く耳持たない。
が、なんとか皆で説得して亜依さん達も深夜勤ということもあって1次会でお開きになった。

悠木さんと長谷部君は連絡先の交換をしただけじゃ物足りないらしい。
長谷部君は悠木さんにひきずられて2件ハシゴした挙句、家までお持ち帰りされたらしい。

(5)

風呂から出ると愛莉がスマホを見て笑っている。

「どうしたの?」
「あ、冬夜さん」

愛莉が僕に気付いた。

「何かあった?」

愛莉の隣に座る。

「長谷部さんについて皆でお話してました」
「……なるほどね。愛莉お風呂空いたから入っておいで」
「はい」

愛莉はお風呂に向かった。
その間に僕もスマホを見る。
男性陣は何も反応が無かった。
渡辺班を見てみると……うわぁ……。

「長谷部!明日の朝何も無かったなんて言ってみやがれ。今度こそ徹夜で説教だからな!」
「男ならちゃんと決めなよ!」
「今日の流れで何も無かったなんて絶対言わせないからな!」
「大丈夫!私がそんな事許さない!」

美嘉さんと亜依さんとカンナと悠木さんが言ってる。
これでよかったんだろうか?
スマホを置くとテレビをつけてぼーっと見てる。

「あら?まだ起きてらしたんですか?」

愛莉が戻って来た。

「愛莉待ってた」
「先にお休みになっても良かったのに」
「明日も休みだろ?」
「そうですが、今日はお疲れでしょうに」

愛莉はそう言うとスマホを確認してテーブルの上に置くと先にベッドに入る。
それをみて、僕もテレビを消して照明を落とすとベッドに入る。

「冬夜さん」
「どうした?」
「本当に冬夜さんの言う通りになりましたね」
「え?」
「女性陣だけで解決しちゃいました」

あれを解決と言っていいのかわからないけどね。

「なあ愛莉」
「どうされました?」
「あそこまでして告白ってされたいもの?」
「そうですね、好きな人にならそうかもしれませんね。私は自分からしたからわかりません」
「ごめん」
「でも……クリスマスイブの時冬夜さんの気持ち聞けたときは嬉しかったですよ」
「そっか」
「ではおやすみなさい」
「おやすみ」

愛莉は眠りにつく。
穏やかな優しい寝顔。
あの日を思い出す。
想いを伝える事が難しかった日々
予感。
喜びと愛しさの連鎖。
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