優等生と劣等生

和希

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5thSEASON

優しい風がうたう

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(1)

「それじゃ、乾杯!!」

蒼汰が言うと宴の始まり。
目の前の肉に没頭する。

「冬夜君、ちゃんと焼いてから食べないと駄目!!」

愛莉に怒られる。

「片桐先輩肉ばっかり食べてないで野菜もとってください」

佐倉さんが言う。
米も野菜の一部だろ?

「佐(たすく)飲んでばっかりじゃなくて肉も食べて」
「食ってるよ!」

佐も大変そうだ。

「高槻君、お肉焼けてるよ」
「ありがとう、千歳さん」

高槻君の肉をとってやるちぃちゃん。
仲良くなってるんだな。
僕達は春季大会の祝勝会を男子バスケ部主催でやっていた。
女バスを招いてだった。
なんだかんだ言って女バスの皆と仲良くやってる面々。
僕達のテーブルには僕と愛莉、佐と佐倉さん、高槻君とちぃちゃんがいた。
バスケ部主催だから話題もバスケの話になると思いきやそうでもなかった。
羽海野さんと藤堂さんと突然の告白タイム。
困惑する洋平と祐樹。
特に好きな人がいるわけでもない二人が突然告白されてどうして断れようか?
二組のカップルが出来上がった。
酔いの勢いを使って告白は続く。
次々のカップルが出来上がっていく。
それぞれのテーブルが盛り上がっていた。
今日は男バスも女バスも監督が来ている。

「今日は大目に見るけど来週からまたみっちりいくからね」と女バスの監督は言う。

しかし女バスは恐らく国内でもトップクラスの強さを持ってるんじゃないか?

「男バスも負けてませんよ。止められるとしたら新日大くらいじゃないですか?」

佐倉さんが強気で語る。酒の勢いが手伝っているのだろうか?いつになく雄弁だ。

「日本代表も負かせちゃうんだから冬夜君いたら日本一になれるよ!」

愛莉も言う。

「まあ、そうですね。日本で最強の大学かもしれませんね」

東山監督が語る。

「片桐君の成長はすごい、それでもまだ伸びしろを持っている。本当に片桐君一人で金メダルをとってしまうかもしれませんね」
「東山監督ならどう采配しますか?たとえばアメリカ戦」
「私でしたらシューティングガードに片桐君はぶつけませんね。南選手を当てるでしょう。その代わり片桐君には徹底的に得点を重ねてもらう。得点がきっちりとれるプレイをしてもらいますね」

個人的にはマイケルとやり合ってみたいけど勝ちにこだわるなら。マイケルにぶつけないか……。
そんな佐倉さんと東山監督の話を聞いていた。
東山監督は他のテーブルに呼ばれていった。
そんな中浮かない表情をするのは高槻君だった。
インターハイに出たことがあるというプライドを完全にへし折られた大会だった。
無理もない。
うちの大学のレベルはそういう領域に達しているのだろう。
簡単にレギュラーをもぎ取れるものじゃない。
皆必死に練習を重ねてる。
恭太も同じだ。
その恭太からポジションを奪おうというのは難しい話だろう。

「気を落すなよ翔。お前にはまだ来年があるんだ。来年にはレギュラーになれるよ。いやスタメン張れるくらいの実力になってもらわないと困る」

佐が言う。

「そうですね。今のおれでは実力不足だ」
「でも試合に出れたんだし良いじゃない?」

ちぃちゃん今そんな事を言ったらだめだ。

「その出れた試合で結果を残せなかった。相手のディフェンスボロボロだったのに!」

翔が怒鳴る。
怯えるちぃちゃん。
翔が我に返ってちぃちゃんに謝る。
だけど突然の事に驚いたちぃちゃんは泣き出した。

「ごめんなさい……私バスケの事良く知らないから」
「そんな事無いよ、千歳ちゃんも頑張って覚えようとしてるじゃない」

愛莉が慰める。

「そうですよ、千歳さん。誰かのためと思えば何にだって必死になれる。私だって今バスケの勉強必死にやってる」

佐倉さんが言う。

「桜子だって最初は素人だったんだぜ。それを『片桐先輩の為』って頑張って今の立場を作り上げたんだ」

佐が言うと「一言余計!」と佐倉さんが怒る。

「ごめん……千歳さんを悲しませるために言ったんじゃないんだ」

翔もそう言う。
皆がちぃちゃんに気を取られてる間に僕は肉を食べる。

ぽかっ

「冬夜君今それどころじゃないでしょ!」

愛莉に怒られる。

「だって食べないと焦げちゃうよ?」
「だから~……」
「前にも言ったよね?たらればは禁物だって。後悔してる暇があったら次の行動に移らないと。肉だって焦げちゃうよ」
「良い事言うのね。片桐君は」

女バスの監督が来た。

「言ったことに、やったことに後悔してる暇があったら行動に移しなさい。過ぎた時間はもどらない。後悔してる間も時間はすぎているのだから。くよくよしてる暇があったら何をするべきか考えるべきよ」

女バスの監督が言う。

「そうですね」

ちぃちゃんが答える。

「そういう話は抜きにして今日は盛り上がろうっす!」

蒼汰が言う。

「翔。試合はまだ終わりじゃない。リーグ戦が残ってるんだ。それまでに実力磨いてみせみろ」

佐が言うと翔は無言でうなずいた。
リーグ戦。僕が出る最後の公式戦。
最後にしないと駄目だ。
そう誓った。
愛莉は何も言わない。
分かってくれてるはず。

「冬夜君まだちゃんと焼けてない!生は駄目っていったでしょ!鶏肉は特に駄目!」

愛莉がそう言う。
焦るなとも言いたいのだろうか?
愛莉の表情はとても優しかった。
1次会が終ると千歳さんと翔は先に帰ると言い出した。

「じゃあカラオケ予約してあるんで!移動しましょう!」

蒼汰が言う。
僕も行こうとすると愛莉が腕を掴む。

「今から代行呼ぶから帰ろうね?明日も渡辺班の祝勝会あるし」
「でもせっかくだから、皆とも交流深めるべきだとお思うよ!」
「暴飲暴食は駄目って言われたよね?帰りましょうね」
「いや、どうせそんなに食べないから」
「帰りましょうね♪」

これ以上は無理か……さらば食い物たち。

「佐も同じだよ、帰りますよ!」

佐倉さんも代行を呼んでるみたいだ。

「俺は大丈夫だよ二日くらいどうってことない」
「駄目です!今日は飲み過ぎです!帰ります」
「2人ともきっちり管理されてるのね。二人の生活は遠坂さんと佐倉さんに任せて安心ですね」
「佐の調整も私の仕事ですから!」
「お嫁さんの務めは果たすつもりで~す」

そう言って僕と佐は強制送還となった。
皆美味しい物食べるんだろうな~。

家に帰るとお風呂に入って、愛莉がお風呂に入ってる間テレビを見てた。
関西のお笑い芸人が出て来る。割と面白い。
スマホを弄りながらみてる。
色んな店をはしご酒しながらゲストとトークを繰り広げるんだけど食い物がどれも美味しそうで困る。
そんなのに見とれてると。

ぽかっ

「冬夜君はまだ食べ足りないわけ?」
「そ、そんな事無いよ。ほら、お酒もお洒落で美味しそうだし」
「うぅ……酎ハイじゃ駄目?」

そう言って愛莉は缶を差し出す。

「ありがとう」
「えへへ~」

愛莉と乾杯して飲む。

「ところで愛莉」
「な~に?」
「今日は二次会無しって理由だけど……」
「だ、だから暴飲暴食は駄目だって言ったじゃない」
「本当にそれだけ?だったらどうして酎ハイなんてもちだすの」
「う、うぅ……」

愛莉の困ってる顔は可愛い。
そんな愛莉の顔を見て一言いう。

「約束だったもんな。大会終わったら構ってやるって」
「……うん!」

愛莉を手招きすると愛莉は体を密着させてテレビを見る。
そんな愛莉の肩を抱いてやる。
それだけで愛莉は満足するらしい。
番組が終わるとテレビを消して照明を落としてベッドに入ると手招きする。
愛莉も無言でベッドの中に入り込む。

「愛莉もありがとうな。いつもいつも」
「ううん、冬夜君をサポートするのがお嫁さんの役割だよ」
「じゃあ、そんなお嫁さんをメンテしてやらないとな」
「お嫁さん想いの旦那様で幸せです」

愛莉はそう言って目を閉じる。
そんな愛莉の服を丁寧に脱がしていって夜を楽しんだ。

(2)

「千歳さん大丈夫?」

高槻さんが言うと私は答える。

「私の事なら心配しないで。私の勉強不足だから」

私の予想と違っていたようだ。

「そうじゃなくてちょっと遅くなってもいいかな?」
「いいよ」

そう言いながら家族に遅くなることを告げる。
家の鍵は持ってる。
私だってもう大人だ、高槻さんの事も家族は信頼してる。
特段お咎めは無かった。

「どこに行くの?」

私は高槻さんに聞いてみた。

「内緒」

高槻さんはそう言って笑う。
車は山を上っていく。
兄が良く遊びに来ていたという山だ。
夜照明の無い暗闇の中をヘッドライトの明りだけを頼りに進む。
ふと思い出した。
合宿の時に神奈さん達と見てた動画。
合宿の間に遠坂さん達に兄がかけた言葉

「まだ野外は寒いと思うぞ?」

高槻さんはそれを望んでいるのだろうか?
そっと兄に助けを求める。

「山に連れて行かれてる」
「どの山だ?」
「近所の山」
「それは……もしかして……いてぇ!」

どうして兄は痛い事まで知らせてくるのだろう?
神奈さんから電話がかかった。

「もしもし?」
「あ、ちぃちゃん。心配しなくていい。そこの山なら私も誠に連れて行ってもらったことがある。素敵な夜をすごすといい」
「素敵な夜って千歳は初めてなんだぞ!?」
「この馬鹿は黙ってろ!」

兄と神奈さんが言い争ってるようだ。

「この馬鹿の言う事を真に受けるな。トーヤが大丈夫って言ったんだ。ちぃちゃんが心配してるような事態にはならない」
「千歳!その山でなくてもふもとにはラブホがたくさん……いてぇ!」
「黙ってろって言っただろうが……高槻も良い奴じゃないか。楽しい夜をな。じゃあ」

そう言って電話は切れた。

「誰から?」
「神奈さんから」
「そうか」

山の頂上付近の駐車場で車を止めると後部座席から懐中電灯をとって外に出るように言われた。
山の中少し歩く。
真っ暗で何も見えない。
見えるのは懐中電灯で照らされた辺りと他のカップルの懐中電灯の明り。
広場に出る。
そこから見える夜景はとても綺麗で幻想的だった。
高槻さんはこれを見せたかったの?

「今日はごめん、俺自身いらいらしててそれを千歳さんにぶつけてしまった。その罪滅ぼしにと思ってここに来たんだ」

そんなことしなくてもいいのに。
何だろうこの暖かい感じ。彼といるだけで安心する。
だけど体が強張ってる。緊張してる?
胸がドキドキする。脈拍も早い。
ふと彼の手が私の肩に触れる。
駄目!無理!!
合宿で訓練を受けていたのは男性だけじゃない、女性もしっかり護身術を身につけている。
とっさに高槻さんを投げてしまう。

「痛ぇっ!」
「ご、ごめんなさい」

急に肩を抱くから。

「ごめん、変なつもりは無かったんだ」

謝るのは私の方なのに。
ちゃんと言わなきゃ。

「ごめんなさい、私の方こそ変な勘違いしちゃって。私はまだあなたの事を知らない。あなたの気持ちすらちゃんと理解できていなかった。そんな気持ちで軽々しくして良い行為じゃないと思ったから」
「それは誤解だよ。千歳さん」
「そうだね、まだ上手くあなたの気持ちを理解してない。そんな自分が情けない」

こんなプレゼントを用意してくれたのに。
情けなくて涙が出て来る。
そんな私を彼は温かく包んでくれた。

「大丈夫だよ、まだ付き合って2か月もたってないんだ。千歳さんにとって初めての彼氏なんだろ?千歳さんに合わせるよ」

どこまでも優しくしてくれる彼と二度目の口づけを交わす。
私は一言言った。

「ちぃちゃん」
「え?」
「親しい人はみんなちぃちゃんと呼んでくれてる。それが恥ずかしいなら千歳でいい。もう他人行儀に千歳さんなんて呼ばないで」
「千歳さん?」
「千歳でいいよ」
「千歳……」
「その代わり私も翔って呼んでもいい?」
「ああ、いいよ」
「ありがとう」

私は彼を抱きしめる。
彼にそれ以上の事を求めてる。
でもまだ躊躇いがある。

「ごめんなさい。でもやっぱりその……まだ怖いの」
「焦ることないさ」
「ありがとう」

彼の腕の中で目を閉じる。
彼の温もりが伝わってくる。
私上手く恋できてるかな?

「そろそろ帰ろうか?あまり遅くなってもご家族が心配するし」

怖い先輩もいるしね。と彼は笑う。

「うん」

私達は来た道を引き返す。
ここは兄が言っていたような場所じゃない。お互いが恋を再確認する場所なんだ。そう思った。
未だ未熟な私達だけど。いつか成長したらまたここに来よう。
時折吹く優しい風が歌声のように聞こえる。
その後家に送ってもらって彼は帰っていった。

「また明日ねって」笑って言ってくれた。

私も彼に何かプレゼントしてあげたい。
何が良いだろう?
そんな事を考えながら眠りについた。

(3)

「じゃあ、今日は冬夜達の祝勝会だ!盛大に祝ってやろう!乾杯!」

渡辺君がそう言うと宴の始まり。
僕のテーブルには愛莉、多田夫妻、高槻君、ちぃちゃん。渡辺夫妻がいた。
まあ、時間が経てば席なんてどうでもよくなるんだけどね。

「翔!お前!ちぃに誰に断って手を出した!?」

誠がいきなり翔を怒鳴りつけてる。

「手なんてだしてませんよ!?」
「嘘つけあの山に行ったってことは……ちぃの初体験をなんだと……いてぇ!」
「お前の頭はそれしかないのか!」

カンナが誠の頭を叩いてそう言った。

「ははは、千歳さんももう年頃だ。誠君が口出しする事じゃないだろ」

渡辺君が言う。

あの山か、愛莉が拉致された山。
そういや愛莉とあそこの夜景見たことないな。

「愛莉、僕達も行こうか?」
「ほえ?」
「いや、あの山夜景綺麗みたいだし」
「冬夜!お前もついにその領域に達したか……いてぇ!」
「トーヤとお前を一緒にするな!トーヤあそこはお勧めだぞ」

カンナが良いって言うんだからさぞいいんだろう。

「うぅ……あの山って聞くだけで足がすくんじゃうんだよね。冬夜君の言葉は嬉しいんだけど」

やっぱり愛莉は気にしているようだ。

「大丈夫だよ。ごめんね嫌な事思い出させて」
「冬夜君の要求には出来れば答えたいんだけどごめんね」

は?

「愛莉勘違いしてるぞ。あの山地元の隠れデートスポットなんだ。夜景な綺麗なんだぞ」

カンナが説明する。

「え?そうなの……やだ、私なに勘違いしてるんだろう?ごめんね冬夜君」

わかんないんだよな。わざわざ外でやる意味。寒いし人に見られるし何よりあそこだと土で汚れるだろ?車内でするより質が悪い。

ぽかっ

「冬夜君はそういうの理解しなくていいんだよ」
「そうだね」
「あの、皆さんに聞きたい事が……」

ちぃちゃんが言う……その先は言わない方が良いような気がするけど……。

「その……男性と初めてするときって何か必要なものがありますか?」

高槻君がむせてる。

「翔!おまえやっぱり……」
「俺はまだ何もしてない。無実だ!」
「翔とはキスしただけだよ」

余計な事言わない方が良いよ。渡辺班を侮ったらいけないよ。

「キスまではいったんだ!」

亜依さんが隣の席からやってきた。

「しかも興味も示してる。善は急げだ!今晩やってしまえ!2次会は勘弁してやる!」

美嘉さんまで乗ってきた。言わんこっちゃない。

「あ、でも私の心の準備まだだし。どうしたらいいか分からないし」
「俺も心の準備がまだ……」
「あら?高槻君そんな軟弱な精神をまだ持っていたの?夏休みにもう一度合宿する?」

恵美さんが来た。

「俺は認めない!!千歳の初めては俺と……」

お前無茶苦茶いってるぞ誠。

「このド変態は黙ってろ!」

ほらカンナに叱られた。

「それは嫌」

ちぃちゃんはにっこり笑って断る。

「うっ、兄はショックだぞ……ちぃ」

誠は酔いで言ってるのか本気で言ってるのかたまに分からない。

「心配するなトーヤ。この馬鹿はいつも本気だ」

カンナが言う。

「まずは心の準備ね……」

白鳥さんが言う。
白鳥さんの顔がほんのり赤い。
晴斗が慌てている。

「その次にいかに相手にその気になってもらうか……」

白鳥さんの経験談を赤裸々に語る白鳥さん。
それを必死にメモるちぃちゃん。

「春奈の場合は自宅だったからありだったかもだけど出来れば勝負下着の一枚や二枚準備しといた方がいいかもな」

美嘉さんが言う。

「勝負下着?」
「ここぞという時に男を惑わす必殺兵器だよ。それで気づかないのはとーやくらいだ!」

失礼な。僕だって愛莉の勝負下着くらい把握してるぞ。

ぽかっ

「冬夜君は余計な事考えなくていいの」

そうか、いいのか。
だまって焼き鳥を食べる。

「でも高槻君も慣れてないみたいだし苦労しそうだね」
「そうね、千歳さんの場合は千歳さんからアクション起こす必要もあるわね」

女性がわらわらと集まって。ちぃちゃんに入れ知恵をしている。
因みに言おう。ちぃちゃんと朝倉さんと北村さん以外は全員飲んでる。
そんな中朝倉さんも。

「あれ?これ誰のウーロン茶?わたしもらっていいかな?」
「わあ!伊織よせ!僕がウーロン茶注文するから」
「いいよ、残ってるのにもったいないし」

やっちゃったね……。

男性陣はと言うと……。

「しょうがねえな、これやるからちゃんとしろよ、俺より先に子供作るなんて許さないからな」

そういって薄っぺらいビニールの袋を渡す誠。いつも持ち歩くものなのか?

「美里は塩とタレだと塩派なのかい?」
「濃い味付け駄目なんです」

栗林君達は二人の世界を作り出してるらしい。
他の男性陣は誠を慰めるのに精一杯。

「多田君いつかこういう日がくるんだから、嫁にやる父親みたいなこといわないで……」
「誠先輩どんまいっす!高槻なら問題ないっす!」
「お前らに妹を傷物にされる気持ちがわかるかよ」

椎名さんと晴斗が言ってるがよく分からない事を口にする誠。
あれは酔いだな。

「お前たちの祝勝会だというのにすまんな」

渡辺君が言う。

「大丈夫だ、こういうノリはもう慣れた」
「元はと言えば千歳があんなこと言い出したからだし……」

ああ、翔そういうこと今言わない方が良い。今言うと……。

「ちぃに問題があるっていうのか!?上等だ!表に出ろ!」

誠が激高する。
ジョッキをテーブルにたたきつけ立ち上がる誠を押さえる男性メンバー。
困り果てる翔。

「お客様、ラストオーダーのお時間ですが」

店員がやってくる。

「このウーロン茶不思議な味ですね~。これおかわり下さい」
「普通のウーロン茶でいいです!」

如月君も苦労してるなぁ。

「じゃあ、2次会に行くのは誰だ?」

公生と奈留。朝倉さんと如月君。翔とちぃちゃんを除く全員が残るらしい。
北村さんと栗林さんは。

「2次会って何するんですか?」
「カラオケだよ」
「私カラオケ大好きなんです。行きます純一も行きましょ」
「まあ、いいけど」
「私純一に歌って欲しい歌あるんですよ」
「ああ、その曲なら歌える」
「やった!」

いい感じになってるじゃないか二人共。
そうして二次会に場所を変えた。

(4)

二次会は誠を巡っての論争がまだ続いていた。

「いい加減にしろこのロリコン!」
「妹は特別だろ!?」
「お前の場合は異常って言うんだ!」

カンナと誠が論争している。
そして僕も巻き込まれる

「冬夜お前なら分かってくれるよな」
「いや、僕妹いないから」
「お前も分かってくれないのか?この男のロマンが……」

また誠のロマンの話か……まともに聞いてると愛莉に叱られるからやめとこう。

「冬夜君に変な事吹き込まないでって言ったでしょ!」

ほら愛莉が怒ってる。

「多田君、俺にはわかるぜ!妹っていいよな!」
「おお、瑛大。分かってくれるか男のロマンが!ちぃはな、今まで穢れずに育ってきたんだ。それをどこの馬の骨とも知れない輩に……」
「わかるぜ!でもそれもいいんじゃないのか?」

桐谷君が誠を説得してる?嫌な予感しかしないんだけど。

「自分が一番よく知ってる妹が友達に寝取られる……ちょっとありなんじゃね?」
「……そういわれると確かにそそられるシチュエーションだな」

違う方向に納得してる気がするんだが……。
それを聞いていた嫁さんが放っておくわけがなく。

「このド変態!ちぃちゃんをそういう目で見るんじゃない!」
「瑛大も瑛大だ!多田君を変な世界に巻き込むんじゃない!」
「変な世界って何だよ!ロマンっていうんだよ!」
「そうだ、男のロマンだ!」
「やかましい!!」

この4人は放っておいた方が良いみたいだ。
カラオケは北村さんと栗林君が独占している。
余程好きなんだな。
佐はひたすら飲んでるのをただ注意する佐倉さん。

「晴斗、今日わたし晴斗の家に泊まるから。お泊りセットも用意してきた」
「了解っす。でも今夜はそろそろやめておいた方が良い気がするっす」
「晴斗は私とお酒飲みたくないの?」
「行ってみたい店はあるっす」
「じゃあ、行こう。今すぐ行こう」

言い出したら聞かないのはどこかの困ったお嫁さんと同じらしい。晴斗は折れる。

「じゃあ、俺らこの辺で失礼します」

そう言って晴斗達は抜けて行った。
晴斗達が抜けていくと亀梨君森園さん三沢君岸谷さんも河岸を変えるらしい。
そう言って抜けていくカップルが何組かいた。

「望、あなたにも妹がいたわね?」
「ええ、今高校生です」
「……ああはならないでね」
「ぼ、僕にはむりです」

恵美さん達も残ってる。

「正志にも妹いたよな?」
「ああ、今中3だが……」
「ああはなるんじゃねーぞ!女子だっていつ女になる時が来るんだ」
「わかってるよ」

皆兄弟とかいるんだな。

「愛莉は兄弟とか欲しいって思ったことはないのか?」
「ほえ?」
「いや、なんとなくさ」
「う~ん、兄が欲しかったかな?甘えさせてくれたり甘えてきたりする。りえちゃんも男の子がほしかったんだって」

そういや、愛莉の家に初めて行った時優しくしてくれたな。

「今はどうなんだ?」
「困った旦那様の面倒見るので手一杯だからいらない」
「そうか……」
「うん♪」

あんまり困ってなさそうだけどな。

「千歳~!!」
「いい加減にしろ!!ド変態!!」
「あ、次私歌う」

桐谷君は食べることに関心が言ったようだ。
あ、僕のから揚げがほとんどない!
最後のから揚げに手を伸ばそうとすると愛莉の手がそれを遮った。

「愛莉!?」
「冬夜君さっきのお店で私の分まで食べてたよね?から揚げもあったよね?」
「あったね、でも最後の一個」
「もういらないよね~?」
「いや、だから……」
「いらないよね?」

そんな問答を繰り返している間に最後の一個が桐谷君に食べられてしまった。
僕のから揚げが。もうお終いだ。
そんな感じで大盛り上がり?の二次会は朝まで続いた。
タクシーをひろって家に帰る。

「ねえ?冬夜君?」
「どうした?」
「冬夜君は妹とかお姉さん欲しいと思った?」
「どういう意味で?」
「普通の意味だよ~」
「別になかったなあ~あ、でも……」
「ほえ?」
「妹欲しかったのかもしれない」

だからカンナや愛莉……それに夏美さんを放っておけなかったのかもしれない。
困ってる女の子を放っておけなかった。
それは年齢は関係ないのかもしれないけど。

「なるほどね……」

愛莉は何かを考えている。

「じゃあ、私が妹になってあげようか?」
「それは無理だよ」
「私じゃ不満なの?」
「愛莉が妹だったら結婚できないだろ?」
「そっかぁ~」

嬉しそうに腕にしがみ付く愛莉。
それに妹はいつかは自分の元から離れていく。
姉でもそうだけど。
それよりはずっと一緒にいられる人を大切にしようと思う。
そんな人に巡り会えたキセキを大事にしようと思う。
いつまでも君の隣で笑っていたいから。
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