優等生と劣等生

和希

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4thSEASON

休息の終わり

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(1)

「トーヤ!!」
「カンナ!!」

飛びつくカンナを受け止める。

「誠が……誠が……」

目を赤くはらしているカンナ。
暫くすると処置室から深雪さんがやってきた。

「誠の容体は!?」
「問題ないわ。ちょっと表面を切っただけ。脳や頭蓋骨に損傷はない」

深雪さんの言葉に胸をなでおろすカンナ。

「念のため今日一日は入院させるわ。大丈夫、明日の新年会には間に合うから」

そう言って深雪さんは笑う。
しかしカンナにそんな余裕は無かったようだ。
愛莉に抱き着いて泣いている。
震えるほど何があったのだろう?

「誠と話できますか?」
「今はまだ麻酔が聞いてて眠ってるわ。今日のお昼には回復してると思うからまた来てくれない?」
「わかりました。ありがとうございます。カンナ……行こう?」
「冬夜君……私神奈についててもいいかな?」
「まあ、それがいいだろうね」

ただそれだと僕も残らないわけには行かないか?

「僕も残ります。敵の襲撃がまた起こる可能性ありますから」

酒井君が言う。

「……愛莉」
「パパさん!」

愛莉パパがやってきた。
ここは東署の管轄のはず、大丈夫なのか?

「……おじさんは君達の担当もしていてね、所轄を飛び越えて行動できるように配慮してくれた。……誠君が無事でよかった」
「無事でよかった?」

カンナが反応する。

「良いわけ無いだろ!危うく殺されるところだったんだぞ、誠は!」

カンナが叫ぶ。

「神奈落ち着いて!ここ病院だよ!」

愛莉がカンナを宥める。
愛莉パパはカンナに頭を下げる。

「警察も実は気づいていた。が、おじさんは年を越すまで動きが取れなかった。敵の陽動にまんまと嵌ってしまた。我々の不手際だ。すまない」
「警察はいつもそうだ!事が起こってからじゃないと動いてくれない!」
「それは違うぞ神奈さん」

渡辺君達がやってきた。

「今回の事は俺達がやってきたその報復だ。責任は俺にある」

渡辺君がそう言って頭を下げる。

「渡辺君があやることは無いよ。僕の判断ミスだ。責任は僕に……」
「片桐君が謝ることじゃないわ。現に片桐君は多田君が狙われるのを察知してみせた。私達が駆け付けなかったら多田君の命は危なかった」
「そこらへんも含めて話を署で聞かせてもらえませんかね?」

いつかの新人刑事がやってきた。

「あんたは?」

渡辺君が聞く。

「遠坂警視正の補佐役になりました。中央署の渡瀬新次郎です。よろしくお願いします」

そう言って渡瀬さんは手帳を見せる。

「……渡瀬は信頼できる俺の直属の部下だ。なんでも相談してくれ」

愛莉パパが言う。

「残念だが、署には出頭できない。話があるならここでお願いしたいんだが」
「……渡瀬、彼等に従ってくれ」
「分かりました。じゃあ一人ずつ状況を教えてくれ」

僕達は順番に説明した。
取り調べは朝まで続いた。
最期に渡辺君が説明を終えた頃誠の病室から看護師が出てきた。

「患者の意識が戻りました!」

僕達は病室にはいる。

「よお!」

誠は元気そうだ。

「よお!じゃねーだろ!!こっちはどれだけ心配したと思ってるんだ!?」

神奈が抱きつく。

「うわぁ、神奈が抱きついて来るとは……。悪い、このベッドつかわせてくれね?」
「そんな冗談が言えるくらいならもう大丈夫ね?」

深雪さんがそう言って笑う。
こいつ多分本気だと思うけど。
そしてカンナに怒られるのが約束。

「誠君だったっけ?意識が回復したばかりで悪いんだけど昨夜の状況を教えてくれないか?」
「そうですね、皆にも迷惑かけたし……。聞いてもらった方がいい」

それから誠の話が始まった。

(2)

夜遅くに来客か?
神奈と相談した結果俺が出ることになった。

「誰ですか?」
「宅急便です、時間指定でお届けにあがりました」

心当たりがない。
俺は鍵を開けると黒いフード付のベンチコートを着た男が立っていた。

「見~つけた」

男は何かを振り上げる。
夜に光る銀色の刃。

やばい!

咄嗟に後ろに飛び退く。
刃は振り下ろされる。
框に足を取られた俺はこける。

しまった!

だが振り下ろされることは無かった。

ドアの上枠に引っかかって抜く事が出来ないでいる間抜けな事態。
俺は咄嗟に立ちあがって玄関に飾ってあったトロフィーで刀を叩きつける。
刀は折れた。
折れた刀を突きさそうとするのを俺は半身で躱すとトロフィーで男の手を叩く。
男は刀を落す。
トロフィーを投げ捨てると男を外に追いやる、

「神奈玄関を閉めろ!」

神奈は言われた通り扉を閉めてロックする。
男を殴り飛ばし倒れた男の胸ぐらを掴む。

「お前ら何者だ!?」

しかし男ににやりと笑う。
何がおかしい?
その時後頭部に鈍痛が走った。
男は二人いた。
俺はよろめく。

「油断し過ぎだよ~誠ちゃん」

男はそう言うと懐からナイフを取り出す。
避けようとするものの体に力が入らない。

「バイバイ、誠ちゃん」

そう言って俺の胸部に刃物を突き刺そうとした瞬間扉が開くと変身した神奈が素早く男の腕を蹴りつける。
男の腕は妙な方向に曲がる。
腕を押さえ苦しむ男。
二人目の男が拳銃を構えると神奈は飛び蹴りを男に加えていた。
二人目の男の腕もへし折る神奈の蹴り。

「誠!大丈夫か……頭から血が出てるじゃないか!!すぐ救急車呼ぶからな待ってろ!……」

そこで俺の意識は途絶えていた。

(3)

「プリズムスーツが無かったら危なかったわね」

晶さんが言う。

「まさか神奈に助けられるとは思わなかったよ」

誠が言う。

「妙な鈍い音がしたからな、ヤバいと思って咄嗟に行動に出たよ」

カンナが言う。
熱心にメモを取る渡瀬警部補。
女性が変身して旦那を救いました。
なんかメモしててあほらしくなったりしないんだろうか?

「しかし危なかったな、誠。カンナがもしスーツもってなかったら今ごろ笑ってもいられないぞ」
「わかってるよ。マジヤバいと思ったし」
「わかってねーよ!笑い話にしようとしてるし。こっちは本気で心配したんだぞ!?」

カンナが怒鳴りつけてる。
カンナも心配してたもんな。

「でもなんで、冬夜は気づいたんだ?狙われるのは誠だって」

渡辺君が聞いてくると僕はカンナに頭を下げた。

「僕の判断ミスだ。全ての始まりは最初のまこちゃんを侵入させるときから始まっていたんだ」
「どういう意味だよ?」
「敵はこちらのサイバー攻撃を誰がやっているのか目星がつかなかった。だから餌を巻いた」
「それがアーバニティのリスト……」
「まこちゃんはちゃんと起動したよ。だけど相手はネットワークから完全に遮断したPCを用意していたんだろう?それを使って行動に出た。こちらのファイルは消えてないと思わせるために」

僕の話に皆が頷く。

「その結果、誠は慌てて確認に相手のサーバーに入った。罠を張っているとも知らずに……」
「それで誠君の正体を突き止めたと?」
「多分ね」
「なるほどな……じゃあ、これから迂闊にネットには繋げないか?」

渡辺君が聞いてくる。

「カンナには悪いけど誠はもう身バレしてるんだ。第一うちのサーバーを防衛してもらわないと……」
「神奈さん、俺からも頼む。今誠に退かれたら俺達は反撃の手がかりすらつかめずに終わってしまう」

僕が言うと、渡辺君もカンナに頼む。

「……お前ら何か勘違いしてないか?」

カンナが言う。

「ここで尻まくって逃げ出すような根性なしを旦那にした覚えはねーよ。ただ、これからは注意してくれって意味で言っただけだ。足をやられたらこいつの将来は台無しなんだ」
「大丈夫、神奈ちゃんの家には警備を増員するわ、ユニティの頭脳だもんね」
「そうしてもらったほうがいいかもな」

晶さんが言うと、僕は晶さんに同意した。

「警察も巡回するように手配するよ。あの二人の情報も君達には提供する」

渡瀬警部補が言う。

「そんなことして大丈夫なんですか?」

僕が渡瀬警部補に聞いていた。

「君達には協力するように言われているからね。ただしそっちの情報も提供して欲しい。警察で対処できることはこっちで対応するから」
「分かりました」
「じゃ、僕は失礼するよ。あとは皆で話し合ってくれ。何かあったらこちらに」

渡瀬警部補と連絡先を交換する。
渡瀬警部補は帰っていった。

「信用していいのか?」

渡辺君が聞く。
愛莉パパ直属って言ってた。愛莉パパを信用しよう。

「それより次の狙いに注意した方がいい」

僕は言う。

「次の狙いって?」

晶さんが聞くと、晶さんを指差した?

「相手は最初にこちらの目を潰そうとした。次に狙うのは両手足。実行部隊の二人だ」
「私と恵美が狙われると?」
「そう考えるのが妥当だと思う」
「無理ね、私達にはSPがついてる、善君や石原君がついてる。私たち自身にもプリズムスーツがある。狙えっこない」

だといいけどな。

「極力一人で行動は避けた方が良いよ」
「……わかったわ」

その事を恵美さんにも知らせる愛莉。

「じゃ、僕達は戻ろうか」

そう言って退室する僕と愛莉。
渡辺君と酒井夫妻も部屋を出る。

「渡辺君も晶さんもスーツあるからって過信しないで!」
「わかった……」

僕が言うと渡辺君がうなずいた。
その時誠の部屋に迫る異様な存在に気が付いた。
異様な髪形に、バンダナを巻いて。12月だというのにタンクトップでカーゴパンツをはいている。両手には小手をつけてあり体格は良い。
男はにやりと笑って誠の部屋に入ろうとする。

「待て!!誰だお前!?」

男は立ち止まる。

「俺か?……俺の名前はカムイ!お前らの命を刈り取る者だ!」

男はバク宙すると僕達の背後に回る。両手を上げて突進する。

「最初に誠を狙えと言われたが、お前らがまとまってるならお前らでもいいよなあ!?」

男は突進するけど途中で止まった。

「おや?意外と冷静なんですね。猪突猛進なタイプだと思ったんですが」
「この小細工はお前の仕業か?死神(リーパー)」
「その名前には些か不満があるんですけどね」

酒井君がカムイと名乗る男の後ろに回っていた。
酒井君の手には極細のワイヤーが握られている。
それはカムイの手首にくくられカムイがそれ以上突進すればカムイの両腕は切断されていただろう。
しかし男は手首に力を籠めるとそのワイヤーを引きちぎる。

「こんな小細工で俺を止めるとは笑止!」

カムイは再び突進するがその一瞬が僕達の立場を優位にした。
酒井君を覗く全員が変身しカムイに立ち向かう。
渡辺君が前に出る。
カムイが片腕を上げてラリアットしようとするが渡辺君はその腕を掴み背負い投げをする。
が、カムイはくるりと空中で回転すると逆に渡辺君を持ち上げバックドロップをしようとする。
渡辺君はカムイの腰を掴みくるりと回転すると逆にバックドロップをする。
カムイの体はドアを破り誠の部屋に乱入する。
カムイに気づいたカンナは変身して誠との間に割って入る。
カムイは両手を伸ばして地面に着くと両足で渡辺君の首を挟みヘッドシザースホイップを仕掛ける。
カンナがカムイの両腕を足で払うと、カムイはバランスを崩して倒れる。落下する渡辺君を支える神奈。

「なるほど、こいつはおもしれぇ!ボスが言うだけのことはある!今日は分が悪いみたいだ。また出直すとしよう」

カムイがそれ以上突進しなかったのは首に酒井君のワイヤーがまかれていたから。
カムイはそのワイヤーを引きちぎると。部屋を出る。
部屋の外には無数の警官が銃を構えて待っていた。

「動くな!動けば撃つ!!」

渡瀬警部補が言うがカムイは首をこきっとならして意にも介さず歩く。
一発上に向かって警告の射撃をするがカムイは無視して警察に迫る。

「撃て!!」

渡瀬警部補が言うと一斉に警官が発砲する。
しかしカムイは両腕の小手で全てを弾いていた。
色々と突っ込みどころがあるけど、突っ込んだのはカムイだった。
膝を立てて射撃姿勢を取っていた警官を蹴散らし逃走する。
背後をねらって撃とうとするが、深雪さんがそれを止める。

「ここは病院よ!場所を考えて!怪我人を作るところじゃないわよ!」

深雪さんはそう言って蹴散らされた警官の容体を見る。
中には腕の折れてる人間もいた。
脇腹の骨を折ってる警官もいた。
全身凶器とはまさにこの事だろうか?

「俺達は厄介な相手を相手にしてしまったな」

変身を解いた渡辺君が言う。

「もっとやっかいなのもいますけどね」

酒井君が溜息をつく。
もう僕達の休息は終わった。
休みなき戦いが始まったのだと実感した。

(4)

次の日僕達はとある居酒屋に集まった。
1フロア貸し切りの状態で宴は始まった。

「皆酔う前に聞いて欲しい事がある!まずは誠が襲われたことについてだ」

渡辺君が言うと皆に動揺が見える。

「一時的に敵の情報収集が止まったが今は復旧している。少しずつだが全容を解明してる最中だ」
「それって私達もやっぱり危険てこと?私達も情報握られてるんでしょ?」

亜依さんが言う。

「晶さんと恵美さんがSPを配置してくれているが安全は保障できない。極力一人での外出は避けてくれ」
「私は主人は仕事してるんですよ!無理です」

花菜さんが言う。

「私も~春樹とは離れてるし~」

女性陣が次々と不安を言う。

「そういう人にはSPの数を増員するわ!みんな安心して」
「相手はSPで対処できる相手なんですか?警官を怪我させるような連中なんでしょ?」

一ノ瀬さんが言う。

「皆が心配する事じゃないよ。大丈夫だから。敵の手は大体読めてる」

僕が言うと皆が僕に言う。

「どうしてそう言い切れるんですか!?現にアーバニティの末端まで手が及んでるんですよ」
「それは陽動だよ。相手は誠の存在を確認したかっただけ」
「じゃあ、多田君一人が狙われてるってこと?」
「本命は誠、恵美さん、晶さん……そして僕と愛莉だ」

僕が言うと皆静かになる。

「もちろん、おびき出すために他の皆が狙われることもあるから油断はできないけどね」
「自分も狙われてるのに、どうして平気なんですか?」

一ノ瀬さんが言う。

「平気じゃないよ、ただ冷静でいないと同行どうしたらいいか分からない」

実際今も冷静でいられているのか分からない。

「これでも噛んでみて?」

白鳥さんがキャンディを差し出してくれた。

「思考が纏まるから。舐めちゃだめです。かみ砕いて」

言われたとおりにキャンディを口の中に入れるとかみ砕く。
まずは敵の正体を探ることが先決だ。恐らく須藤グループの実働部隊だと思うけど。

「誠、敵の正体は分かったんだよね?」
「それをこれから説明しようと思ってたところだ」

渡辺君がにやりと笑う。

「敵の正体は紅会、須藤グループの裏の素顔だ。そしてもっと厄介なのがいる。そいつらの名前は『九尾の狐』10人で構成されるプロの傭兵部隊だ。俺達が病院で遭遇したのもその中の一人だ。もともとはアーバニティの死神と呼ばれていた連中だ」
「ついに敵が本性を現したってところか……」
「須藤グループと太陽の騎士団の関係は?」
「正確に言えば太陽の騎士団と紅会の関係になるな、裏の部隊として活躍してる」
「管理してるのはどっち?」
「太陽の騎士団だ。ややこしい話なんだが、紅会の表の顔として須藤グループがいる。と解釈してくれたらいい」

渡辺君が説明する。なるほどね……。
僕は次の質問に入った。

「凄腕のハッカーは紅会の人間?それとも九尾の狐?」

誠が答えた。

「九尾の狐の人間だ。九尾の狐の10人目の人間、コードネームは『エックス』」

続いて誠は九尾の狐のメンバーの説明を始める。
皆説明を聞くにしたがって顔に不安の色が見える。

「そんな人間離れした相手と戦うわけ!?」

まあ、そうなるね?亜依さんの話を黙って聞いてる。
皆がざわついてる。
そうしてる中僕は一人静かに料理を食べる。
愛莉は何も言わない。
愛莉は知ってるから。そうやって僕が冷静になろうとしてる事を。

「皆覚悟は決めたはずだ!今更ガタガタいってもしょうがないだろ!」
「そんな化け物相手にするなんて聞いてない!知ってたら止めてた!」
「仲間を見捨てるのか!?見損なったぞ亜依」
「皆美嘉みたいに強くないんだよ!仲間が傷つくことを怖いと思ったことは無いの!?」

バン!!

「皆さん落ち着いた方がいいですよ~。……敵の正体がわかって、震えてたって何も変わらない」

咲良さんが言うと皆静まり返った。

「私達どうなるんですか?」

涙声の花菜さん。

「警察でも手に負えない相手、戦えるのは私達だけ。ならばやるしかない」

白鳥さんが言う。

「戦う形はどんな形でもいい、直接戦闘するだけが戦うわけじゃない、仲間を信じて恐怖に立ち向かうことだって戦いになる」

白鳥さんが言う。

「わ、私はやるよ。あの時覚悟を決めた。私の運命はユニティと共にあるって。だったら戦うしかない」

咲さんが言う。

「俺もやりますよ、咲さんと気持ちは同じだ。俺と深雪の未来はユニティに託した」

西松君が言う。

「仕方ないですね、……ここまで来た以上『途中下車は許されない』ですよ……」

酒井君が苦笑いする。

途中下車は許されない

皆静まり返る。
各々自分の意思を固めているようだ。

「大丈夫、そんなに長引かせるつもりは無い。短期決戦で勝負をつける」

だからと言って焦っても駄目だ。まずは誠が情報を集めるまでが勝負だ、これだけ大規模な部隊なんだ。必ず炙り出せば出て来る。
手順を間違えたら駄目だ。出来るだけ効率よくショートカットでなおかつ慎重に慌てない攻略ルートを探る。

「あの、みんなちょっといいかな……?」

誠が言う。どうしたんだろう?

「冬夜は敵の情報を知りたいって言ってるけど……実は手に入れてるんだよね」

は?

皆が誠を見る。

「ウィルスを仕込む前に言ったろ?『情報は捕獲済み』って」
「それで何か解決の糸口にになりそうな情報あったのか?」

渡辺君が聞いていた。

「いやあ、警察に提出していい物かどうかわかんなかったんだけど見ちゃったんだよね」
「何を?」
「いや……この場で言っちゃっていいのかな~」
「誠、もったいぶらずに早く言え!」

カンナがしびれを切らしたようだ。

「言っとくけど個人的な趣味じゃないからな!それだけは先に言っとく」

いやな予感がする。

「奈留ちゃんと公生君はちょっとご飯食べてようね」

愛莉も気づいたらしい。そして公生と奈留も。

「僕達が見たらまずい事なの?」
「私達はそこまで子供じゃない」
「う、うぅ……冬夜君~」

愛莉ではどうにもならないらしい。

「誠、説明続けろよ」

僕は誠に言う。

「太陽の騎士団とアーバニティってつながってたわけだろ?結局」

まあ、そうだろうね。

「そのアーバニティの会員専用のサイトに妙なサイトがあってさ。男が多額の金を払って女性とエッチするサイトっての?」
「確かにそう言うサイトを運営してました」

亀梨君が言う。

「その中にさらにVIP専用のサイトがあってな?まあ、簡単に説明すると隠し撮りサイトっていえばいいの?」
「それは俺は知らないな……あっ!?」

亀梨君に思い当たることがあったらしい。

「どうした亀梨君?」

渡辺君が聞く?

「アーバニティのサークルの中でもゲストルームがあってそこに特別な客を入れるようになってたんです。俺達も素性を知らされてなかったけど」
「多分そいつらだろうな。まあ、男の顔にはマスクしてあったりモザイク入れてたりしてたんだけどな、隠されると覗きたくなるだろ?で、見ちゃったんだよ」

だから何を?

「ここから先は実際に見てもらった方が早いな」

そう言って動画再生ソフトを立ち上げる誠。
ファイルの名前は日時を示している。
20200102……昨日の日付だ。
誠は再生する。
ただのおっさんと若い女性がエッチしてる動画だった。
無修正だった。

「あっ!」

檜山先輩が声を出す。

「これうちの銀行の頭取だ」

檜山先輩の言葉に唖然とする。

「この人製鉄所の所長よ!」

恵美さんがいう。

「こいつ、須藤太我……須藤グループの総裁だわ」

晶さんが言う。

「やっぱりな。なんか新聞とかで見た顔だなと思ったんだよな」

誠が言う。

「これ暴露サイト作ってやれば痛手なんじゃない!?」
「交渉材料としても使えそうだな」

亜依さんと渡辺君が言う。
皆の顔が明るくなる。
反撃の糸口をつかんだ。
皆が盛り上がる。

「誠、紅会の新しい拠点ってわかってるのか?」
「そりゃもうもちろん、遠坂警視正に今日付けで送付しておいた」
「冬夜それってつまり……」

渡辺君が言う。

「また作り直すだけかもしれないけど一時的には麻痺できる」

問題はその先にある九尾の狐なんだけど。

「まずは須藤グループの動きを一時的にでも麻痺させよう。高橋グループは既に身動き取れない。そうですね?深雪さん」
「まだ、入院してるところを見るとそうでしょうね」

そしたら丸裸になるのは太陽の騎士団だ。
日時は愛莉パパと相談して決めよう。
やられたらやり返す。それがユニティの流儀なら。

「まだ懲りてない連中みたいだし、見せしめに派手にやりたいね」

僕が言うと皆が歓声を上げる。

「後は渡辺君の決断だよ」
「……徹底的に懲らしめてやろう。いや、それじゃ物足りないか?」

そうなるだろうね……。本当は一気に潰したいところだけど、こっちの被害が少ないうちに。

「まずは目を潰してそれから両手足をもいで……」

恵美さんがキャラ変わってきてる。

「同じ傷を負わせるなら心に傷をっていうわ……徹底的に恐怖心を植え付けてやりましょう」

晶さんが言う。

「同感だね、完全に壊滅させることは無理でもユニティに手を出したら割に合わない、そう思わせることが重要だよ。士気低下にもつながるしね」

士気の下がった兵隊ほど使い物にならないものはないと公生が言う。

「で、片桐さんはどういう作戦を?」

白鳥さんが聞く。
僕は皆に作戦を説明する。

「ま、マジっすか!?」

晴斗が聞く。

「言ったろ、やるなら徹底的にって……」

僕はそう言うと不敵に笑う。
キャラ的に違う気がするけど、指揮官としてはこのくらいしてみせた方が士気があがるんだろうね。
実際盛り上がってる。

「じゃ、みんな盛り上がる時間と行こうか」

詳しい詳細は後日決めていくと言う事で今夜は大いに盛り上がった。
宴は場所を変え夜明けまで続いた。
タクシーで家に帰るとベッドの中に入る。

「冬夜君上手くいくかな?」

愛莉が聞いてくる。

「勝ち目のない作戦なら最初からしない方がましだよ」

愛莉に言うと愛莉はにこりと笑う。

「がんばろうね!」

そう言うと愛莉は僕にしがみ付いて眠りについた。
僕も愛莉を抱く。
しかし、事態の展開は僕が思っているより早く、更なる決断を迫られることになる。
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