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4thSEASON
愚者は恋人を嘲笑う
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(1)
「冬夜君朝だよ~」
今日もいつも通りの朝を迎えた。
愛莉の声で目を覚まし、愛莉との口づけで夢の中に入り……。
「はい起きようね!」
突然布団をはぎ取られ夢から覚める。
「起きたら準備だよ~」
愛莉に朝から管理されながら一日を過ごす。
今日も朝から日課だ。
日課をこなすと僕はシャワーを浴びて愛莉は朝食の準備をする。
朝食を食べると歯を磨きひげをそって寝癖を直すとコーヒーを入れてマグカップを二つ持って自分の部屋に戻る。
愛莉がシャワーを浴びている間にネットを見たりテレビを見たりする。
朝から地元の事件で持ち切りだ。
サークル同士の抗争。
そう題されたニュースは大々的に取り上げられていた。
解説者と題したタレントが好き勝手なことを並べ立ててる。
当事者としては苦笑するしかない事態。
彼等がしきりに取り上げるのが片方のグループ「ユニティ」の参加メンバーに僕がいるからだ。
それに対しても言いたい放題のタレントたち。
ネットのニュースも似たようなものだった。
「またやってるんだね~」
愛莉が戻ってきた。
愛莉はドライヤーで髪を乾かしながらニュースを見てる。
僕はそのころ愛莉を家から連れ出す策を考えていた。
休日に愛莉を家にいさせたらいけない。
親に言われている事。
「社会人になったら構ってやりたくても構ってやれなくなる。結婚を望んでるなら今のうちに仲良くなっておけ」
これ以上仲良くなってどうするんだってほどに仲良くなってると思うんだけど遊べなくなるってのは木元先輩から聞いている。
その分妻の不満を解消してやることも難しくなると聞いている。
そんな愛莉の不満を今から貯めていたら大変なことになる。
どうにかして外に出さないと……。
去年みたいに旅行でも行けたらよかったのに今年は時間が無かった。
加えてエゴイストだのアーバニティだの問題が押し寄せてくる。
「でもその分冬夜君優しくしてくれるから平気だよ」
愛莉は突然僕の心に侵入してくる。
気がつくと愛莉は僕の膝の上に頭を乗せて転がっていた。
「今日行きたいところない?」
「いつも遊んでばっかりで大丈夫なのかな?」
親はむしろ遊んで来いと言ってるのだが。
「いつも海ばかりだからたまには山かなぁ~」
「わかった、山で良い所探しておくね」
「いいところあるよ~、冬夜君が去年連れて行ってくれたところ」
「そんな近場でいいのか?」
「だから遠回りするの~こういうルートで……」
愛莉が前のめりになってノートPCに記された地図を辿っていく。
何度見てもやっぱり気になってしまう。
愛莉の胸元から見える乳房が……。
愛莉もその視線に気がつく。
「人の話聞いてた~?」
「あ、ああ聞いてるよ。こっちのルートだろ?」
「うん。それなら冬夜君の好きなハンバーグ食べられるでしょ?」
そうやって今日の一日の予定を組んでいると、突然スマホが鳴る。
愛莉のも鳴っているから多分ユニティの連絡だろう。
スマホを見て見る。
「片桐君今日の昼からちょっと会えないかな?会わせたい人がいるんだけど」
亜依さんからだった。
会わせたい人?
「愛莉も一緒でいい?」
こういう時は愛莉も一緒にいないと……。
それに愛莉を一人家に残すわけにはいかない。
「いいよ。変な誤解を生むのもいやだし」
「そういう相手なの?」
「あ、全然平気。相手も彼氏持ちだし」
誰だろう?
「渡辺君には話したの?」
「渡辺君も深雪さんも知ってる」
深雪さんも?
「分かったどこに行けばいい?」
「私立大近くのファミレスでいいかな?」
「分かった。昼に私立大近くのファミレスね」
「よろしくね~」
メッセージのやり取りは愛莉も見ていた。
「誰だろう?」
愛莉も首を傾げる。
女子グルでもその話題はでてないらしい。
とりあえず今日の予定は変更だ。
私立大近くに昼までなら時間はまだある。
愛莉といちゃつきながらテレビを見て時間を潰した。
(2)
昼前に私立大近くのファミレスに着くと桐谷夫妻と渡辺夫妻、それに知らない男女が2人いた。
皆が注文をすると、亜依さんが話を始める。
「まず二人紹介するね、女性が工藤雫、男性が竹下武史。どっちとも高1の時一緒だったはず」
「お久しぶり~」
「よお」
工藤さんは別府大に、竹下君は働いているらしい。怪我でもしたのだろうか?頭に包帯を巻いている。
「で、僕達を呼んだ理由は?」
僕が単刀直入に聞くと亜依さんが話を始めた。
「この二人アーバニティのメンバーなの」
桐谷夫妻と渡辺夫妻はもう聞いてたらしい。全く動じなかった。
僕と愛莉は流石に動揺した。
「どうして入ったの?」
愛莉が聞いていた。
「大学の友達に勧誘されたの。私彼氏いるから無理って言ったら彼氏も一緒でいいからお願いって言われて、彼氏も一緒ならいいかって思ってつい……」
で、アーバニティに入ってサークル活動の内容を知った二人はサークルから抜けようとした。
しかし幹部は抜けるなら多額の退会金を払うか最低二人は勧誘してから抜けろと脅された。
一人につき二人だから最低四人。
「ふざけるな!」と竹下君が怒鳴りつけたら袋叩きに会って怪我をした。
退会金は払えない、だとしたら四人別の友達を入れるしかない。
そこで亜依に目をつけたという。
「亜依なら彼氏いるって聞いてたから……。あと一組は武史が見つけてくれた」
工藤さんは震えながら喋った。
「で、二人に相談ってわけ。ちょうど調べてるところだったし内情知りたいならおとり捜査もありかなと思って」
「そんなの絶対にダメ!亜依が危なめにあうのをのほほんと見てるユニティじゃないはずだよ!」
亜依さんの提案を真っ向から否定する愛莉。
確かに危険すぎる。
「で、アーバニティってどんなサークルなの?」
「違法な事を限りなくやってるわ。関係者以外立ち入り禁止の密室の中で」
「密室?どこにあるの?」
「それは私達にもわからない、目隠しをされて車に乗せられて連れて行かれるから」
やってる事が真っ黒じゃないか?さすが暴力団がらみだね。
「紹介するときってどうやって紹介するの?」
「決められた日時に喫茶店で待ち合わせするの。そこで【面接】が行われるわ」
「なるほどね……」
ハンバーグ一つ食べ終わった。
あと一個。
「次の待ち合わせの時間は決まってるの?店は?」
「明日会うことになってる。違約金を払うか4人連れてくるかどちらか準備しておけって」
「わかった。明日の何時にどこの店に行けばいいの?」
「夜21時に別府のカフェで……」
「冬夜お前まさか!?」
「冬夜君!?」
「ありがとう、準備はしておくよ。工藤さん達は何も心配することなくお店に行くと良い。竹下君も友達を引き込むなんて馬鹿な真似やめなよ」
「ああ……でも手があるのか?」
「君たちに感謝したいくらいだよ。事がスムーズに運びそうだ。大丈夫君たちに迷惑かけるような真似はしない。その4人てカップルじゃないとダメなの?」
「私達二人分だから最低女性2名は必要ね」
「つまりカップル二組は必要か……わかったありがとう。また状況が変わったら連絡頂戴。僕とスマホの連絡先交換しよう?」
工藤さんとスマホをフルフルして連絡先を交換する。
「こっちからも何かわかったら連絡するよ。じゃ、今日はいいよ」
二人は店を出ていった。
「ちょっと片桐君どういうつもり!?愛莉を危険な目にあわせるの?」
「俺も今の話には賛同しかねるぞ。自分で桐谷さん達は行くなって言っておいて自分たちは行くって、お前どうかしてるぞ」
亜依さんと渡辺君が反対するが黙々とハンバーグを食べる。
食べ終わったら紙ナプキンで口元を拭いて次は大盛りポテトだな……。
ぽかっ
「冬夜君食べてばかりじゃなくて皆に分かるように説明して!」
「そうだね、あと一組は石原夫妻か酒井夫妻が都合いいかもしれない」
「説明になってない!」
「愛莉は分かってるんじゃない?相手のやってる事は立派な違法だって」
「ほえ?」
「契約書もない、約款もない、事前説明もない、それどころか契約をした形跡すらない。なのに違約金を払えって思わずハンバーグ吹きそうになったよ」
「……言われてみると確かにそうだね」
愛莉は納得したようだ。だけど亜依さんが言う
「じゃあなんで片桐君達が出向く必要あるわけ?無視してたらいいじゃん」
「あの二人を助けてあげようと思った。じゃ、だめかい?」
「だめだね、それに石原君達を巻き込む意図がわからない」
「石原君たちの兵隊を借りたいと思っただけだよ」
「ああ、なるほどな。理解した。相手のしっぽを捕まえようってわけか」
渡辺君は理解したようだ。
「そう、相手はユニティを警戒しているのかどうか知らないけど中々目の前に現れない。どうしたものかと思ったら、のこのこ鴨が葱背負ってきた。これを利用しない手は無いでしょ」
「理論的には正しいが、そんな理屈が通る連中だとは思わないが」
「だから力づくで引きずるのさ。時間と場所さえ設定してくれてるしね……あ、そうだ」
誠にメッセージを送る。
「誠頼みたい事があるんだけど今どこ?」
「おう、今練習から上がってきたところ、家にいる」
「すぐにノーパソ持ってファミレスに来てくれないか?」
「ああ、いいけど……【仕事】か?」
「そんなところ」
「OK、10分で行く」
スマホを仕舞うと愛莉が聞いてくる。
「誠君に何させるつもりなの?」
「相手が感づいてこなかった時の保険だよ」
「保険?」
「そう」
10分後に誠がきた。
「で、俺は何をすればいいんだ?」
誠にスマホを見せる。
「このIDのアクセスログを割り出して欲しい」
「そんなの10分で終わるぜ」
誠は早速作業を始めた。
「最初からこれが狙いで雫から連絡先聞いたの!?」
亜依さんが驚いていた。
「せっかくのアーバニティの足跡だ。逃す手は無いよ」
「あったぜ!アーバニティのグループ!」
誠が捕獲したらしい。
「例の『誠君特製ウィルス』全員に仕込めるか?」
「40秒で終わらせる!」
誠の作業を皆で見つめる。
「でもよく短時間で思いついたな冬夜」
桐谷君が驚いていた。
「亜依さんがアーバニティの関係者と紹介した時から手立ては考えていたよ」
「捕獲完了!」
本当に40秒でやってのけた。
「で、次はどうするんだ?」
「誠のウィルスはどうやって感染していくんだ?」
「ちょっとやんちゃな奴でな、一度でも通信した相手全員に感染していくぜ!」
本当にやんちゃな奴だな。
「わかったありがとう。その中に絶対エンペラーがいるはずだから特定して欲しい」
「OK」
次にやることは……。
恵美さんは立て込んでるみたいだし、晶さんでいいか。
晶さんに電話する。
その間に愛莉が誠に事情を説明している。
「どうしたの?」
「頼みたいことがあってさ」
晶さんに事情を説明する。
「わかったわ、ついに攻撃開始なのね」
「ああ、ちょっと兵隊を借りたい」
「いいわよ、善君の初陣も見たいし協力するわ。あと私の弁護士を使えばいいのね?」
「そうしてくれると話が早くて助かる」
「わかった明日の21時に別府の喫茶店ね」
「うん」
「じゃあ、また明日」
これで準備は出来た。
後は明日を待つだけだ。
(3)
バイクの爆音で目が覚めた。クラス中の皆が窓からグラウンドを見てる。
僕も人ごみに紛れてみると見たこともないエンブレムの旗を掲げたバイクと車が走り回ってる。
大声で何か叫んでいた!
「ウォーロックとポープ!!出てこい!こっちはアーバニティの特隊『ソード』だ!!」
すぐに隣のクラスに走る。
廊下で奈留と遭遇した。
「公生!これは!?」
「僕達を要求してるみたいだね」
僕達は職員室の様子を伺う。
「くそっ!何で電話が繋がらないんだ!」
「スマホも役に立たない!」
僕と奈留はスマホを確認する。
繋がらない。
電波が圏外になってる。
奈留は不安そうに僕を見る。
僕は奈留の肩を叩く。
「心配ないよ。手は打ってある」
僕は充電用のコンセントに見せかけた装置をスマホに接続する。
電気回線を使ってネットに接続する。
「学校が襲われてる」
「石原君から聞いてる。もう少し持ちこたえてくれ」
安心してる場合じゃない。
乗り込んでこられたら皆の迷惑になる。
仕方ないな。
僕は昇降口に行くと靴を履き替える。
すると奈留も靴を履き替える。
「奈留はここに残るんだ。素性もばれてしまう」
「それはあなたも一緒でしょ?」
「麗しき君を危ない目になんて合わせられない」
「若き騎士をむざむざ死地に送るわけにはいかない」
二人で口論していても埒が明かない。
「……危険だよ。守れないかもしれない」
「いつも一緒だってあの晩誓った」
そう言って僕の腕を掴む奈留。
「じゃ、いこうか?」
そう言ってグラウンドに出る。
リーダー格の男が僕達を見る。
目がイってるのはきっと手に持った缶のせい。
「おまえらがウォーロックとポープかぁ?」
「その名前はとうに捨てたんだけどね」
「エンペラーが言ってたんだよぉ、新しい手札が揃ったからお前らは『用済み』だってなぁ」
男はそう言うと車を降りた。
時代錯誤も甚だしい特攻服を来て腹に晒を巻いている。
男は缶を捨てると長い棒のようなものから銀色の刃を抜き出す。
日本刀か……。
「そんなの振り回していいの?銃刀法違反だよ?」
「そんなの関係ねぇ、お前らはここで死ぬんだからよぉ」
男が僕達に切りかかろうとした時僕は奈留を庇った。
すると土煙をを巻き上げて僕と男の間に二台の車が割り込む。
「大丈夫っすか?2人とも!?」
「子供は隠れてろ。危険だ」
楠木君と檜山君、白鳥さんと神崎さんもいる。
「なんだおまえら?」
「名乗る必要などない」
檜山君が答えた。
「折角のデートの際中だったのに~。……覚悟はできてるんだろうな!」
「無粋な真似は許さない」
神崎さんと白鳥さんが言う。
「かまわねえ、6人とも皆殺しだ!」
男がそういうとぞろぞろと出てくる。
「咲良、いざという時は車の中に入ってろ」
「冗談きついですよ~。……こんな雑魚なんてことない」
「春奈も車に入っててください!」
「……背中は預ける」
「わかったっす」
皆やる気のようだ。
「てめぇら、さっさと終わらせちまいな」
男が叫ぶと大群が押し寄せてくる。
2人一組になって攻撃に備える。
襲い掛かる男たちをあっさりと倒していく4人。
次々と相手を殴り飛ばす楠木君。
急所を的確に撃ちぬく白鳥さんと檜山君。
檜山君の背後に回る敵を蹴り倒す神崎さん。
次々と倒れた男が積み重なっていく。
一瞬の油断だった。
日本刀を持った男が近づいて来るのに気がつかなかった。
気づいた時にはもう手遅れ。
咄嗟に奈留と男の間に割って入る。
「逝ってしまいなぁ!」
男が日本刀を振り下ろそうとしたとき楠木君が後ろから男の手首をつかんだ。
「かっこいいっすね、公生」
「楠木君!」
だけど楠木君の後から敵が木刀を振りかざして襲い掛かる。
それを防いだのは白鳥さん。
男の両腕にとびかかり掴むと肩で肘を極め背負い投げをする。
小柄の白鳥さんからは想像もつかないアクションだった。
「晴斗の背中は私が預かってる」
日本刀を持った男は後ろを向くと楠木君に襲い掛かる。
だが、男の手首を楠木君が蹴り上げると日本刀を落す。
僕は咄嗟に転がった日本刀を取りあげる。
日本刀を持っていた男に殴る蹴る頭突き等の打撃を与える楠木君。
最後の拳打が男の左頬に食い込み男は吹き飛ぶ!
「凶器だしてゴタゴタ言う前にてめぇの筋通してみろや!」
男はその言葉を聞く前にのびていた。
やがて警官が入ってくる。
通信が回復したのだろうか?誰かが通報したのだろうか?
その場にいた僕達も含めて全員連行されかけたが、あとからきた恵美さんが事情を話すと僕達は解放された。
「飛び込んできた瞬間かっこよかったっすよ。怪我無かったっすか?」
楠木君が聞いてきた。
「僕なら平気。それより奈留が泣き止まないんだ。もう終わったのに」
僕は神崎さんから小突かれた。
「だめですよ~男の子が女の子泣かせたら~」
僕は何もした覚えは無いけど。
「心配させたら駄目」
白鳥さんが言う。
心配?
僕は奈留を見る。
「無茶したら駄目、おもちゃじゃないんだよ?公生いなくなったら私悲しい」
「……ごめん」
「もういいよ。無事だったんだし」
ハッとしてスマホを見る。電波は回復している。
それで通報されたのか?
そのときどこかで銃声が聞こえた。どうしたのだろう?
(4)
パチっ!
男の眉間に命中した
男の注意がこっちにむく。
男は眼鏡をしていた。
眼鏡をしていて照準器よく覗けるな。
「やっぱり狙撃手の考えることはみんな一緒ですね。中学校を狙うならここが一番適所だ」
「なんだい僕ちゃん。おじさん今仕事中なの。邪魔しないでくれないかな」
「お生憎だけどそれを邪魔するのが僕が恵美から受けた任務(しごと)でね。ごめんね」
「謝ることは無いよ、坊ちゃん」
男は懐から何かを取り出そうとする瞬間、僕は男の懐に飛び込み男の右手を男の胸に押し当てたまま突き倒す。
こんな近距離でそんな動作するなんて素人だな。
予想外の出来事に男が混乱してる間に僕は男の右手から銃を奪い取り頭上に掲げて一発撃った。
これで今頃戦ってるはずの仲間に届いたはず。
「ダメですよ。こういう仕事やるときは消音器くらつけないと」
「お前、裏の者か?」
「勘違いしないでください、僕はただの大学生ですよ。色々と忙しいんだから仕事増やさないで下さい」
「ただの大学生の仕業じゃねーだろ!」
「言いたい事はごもっともですけどね。あ、それと電波妨害の機器破壊しておきました。あんなものまで持ち出してなんのつもりですか?」
「どうしてここを割り出した?」
「こっちの質問には答えてくれないんですね。こっちも急いでるんで迅速に解説します。まずあなた達が最初の尾行をしたときから張ってました。そしたら今日偶々あなた達が来ただけです。あ、もうとっくに警察に通報済みですから」
何かを言ってる男を無視して拳銃から指紋を拭きとって男の懐に忍ばせた。
手袋くらいしておかないとな。僕もまだまだ素人だな。
ちなみに男の両手は男がもっていた手錠で拘束してる。
警官が駆けつけてきた。
警官に事情を説明すると男は連行された。
それを見届けるとスマホで恵美に連絡を入れる。
「恵美、こっちのミッションは終わったよ」
「ご苦労様、思ったより簡単だったみたいね?」
「まあ、前回のミッションが過酷だったからね」
「そうね、今日はご褒美に何か作ってあげる。ろくなもの食べてないでしょ?何がいい?」
「肉がいいな、ポテトサラダは抜きにしてね」
「好き嫌いしてると背はのびないわよ。今日はミネストローネね」
「わかったよ」
「じゃあ、迎えに行くわ」
「了解」
ああ、最近お風呂にも入ってなかったから恵美に抱きつけないな。
僕は一人苦笑していた。
(5)
21時になった。
僕と愛莉、工藤さんと竹下さん、酒井夫妻がでご飯を食べていると男たちがぞろぞろと現れた。
人数は6人か。
「掛けなよ」
僕は目の前のオムライスを食べながら男たちに席に座るように促す。
男は僕を無視して工藤さん達に話しかける。
「お前、こいつらが……」
工藤さんは無言でうなずく。
「話はそいつから聞いてるんだろ?食ってないでついてこい」
「その件で疑問に思ったことがあるんだけど取りあえず話しない?」
「話だと?」
「そうそう、話」
男たちは笑う。
「何を聞いてたんだお前?」
「サークルに紹介してくれるからどうしても入ってくれって事しか聞いてないけど?そもそも何のサークルなの?」
「縁結びのサークルだよ?今流行ってるだろ?」
「ああ、そういうサークルだったんだね。悪いけどそういう話は彼女の居ないところでしてくれないか?」
ぽかっ
「彼女じゃないもん。婚約者だもん。それに私の居ないところでならいいってどういう事?」
「ああ、ごめん。ほら、こういうわけだから悪いけどその話無しにしてくれないか?」
「雫!!」
「ちょっと話が違う……」
「僕は君にサークルに入るように言われただけだよ?それを今断っただけ」
「それはそうだけど」
工藤さんは泣き顔になっている。
「雫と武史ちょっとこい!」
そう言って二人を連れ去ろうとする手を僕が引き止めた。
「2人をどうするつもり?」
「お前らにはもう関係ない」
「片桐君悪い癖よ!とぼけるのもいい加減にしなさい!」
晶さんがそう言った。晶さんは男たちを睨みつける。
「その二人に危害を食わせようって言うんだったら黙ってないわよ!」
「危害だと!?」
男が晶さんを睨みつける。
「ネタは上がってるのよ!あんた達この二人に言いがかりをつけてメンバーを増やそうとしてるんでしょ?」
「言いがかり……馬鹿な事言ったらいけねぇ。俺たちはちゃんと契約をしてるんだぜ?」
「じゃあ、その契約書とやらを拝見してもよろしいでしょうか?」
酒井君が言った。
「そんなものねーけどこの二人とはちゃんと約束してるんだよ。口約束でも約束は約束だろ?」
「工藤さんといいましたね。その契約とやらをする際にちゃんと説明受けましたか?」
「いえ……ただ楽しいサークルだから入ってと」
「それはいつ?」
「まだ一週間も経ってないと思います」
「ならクーリングオフの成立する時間だ。この件は無かったことで穏便に済ませられませんか?」
酒井君が言うと男は酒井君の胸ぐらをつかむ。
「あ、今暴力をふるいましたね?じゃあ、こっちも相応の対応を取らせていただきますよ?」
酒井君はそう言うと相手のこめかみを拳で撃ちぬく。
男はその場で失神した。
それを見た男たちは、懐から得物を取り出そうとするがその前に周りにいた兵隊に取り囲まれていた。
男たちは気づかなかったんだろうか。
男たちが恫喝した時。
酒井君の胸ぐらをつかんだ時。誰一人として叫ばなかったのを不思議に思わなかったのだろうか?
そう、客全員晶さんの兵隊だった。
男たちは床に武器を転がし両手をあげる。
「席に着く気になったかしら?」
晶さんが言うと男たちは大人しく座った。
「まあ、さっき言った通りでこの契約は無かったことにできますよ?」
「……それでおめおめと帰れると思ってるのか?」
「思ってません」
「じゃあどうしろって言うんだ」
「こっちの条件を受け入れてくれればそっちの身柄の安全は確保しますよ」
酒井君が言うと男たちは相談する。
「グダグダ言ってても状況は変わらないわよ。いい加減腹決めなさい!」
晶さんは半分脅しに入っている。
そして男たちは脅しに屈した。
「わかった、そっちの条件はなんだ?」
「今後工藤さん達に接触しない事、あんた達のパーティー会場をを一つ残らず教える事。それだけでいい」
「俺達の身柄はどうやって保証してくれるんだ?」
「使ってない別荘がある。そこにいればまず手が出せない。周りには兵隊がうようよいるしね」
「……わかった。あんたを信じるしかないようだ」
「その前にすることがある。全員スマホを出しなさい」
晶さんが言うと男たちはスマホを出した。
「これは全部没収する。あとは車の中でボディチェックを行わせてもらう」
「……わかった」
そう言うと男たちは兵隊に連行された。
「店の修理費等は私達が負担するから」と晶さんが小切手に適当な値段を入れて店主に渡す。
「じゃ、引き揚げましょう」
酒井さんが言うと皆引き上げた。
いつものファミレスで、皆で会議していた。
石原君の活躍、晴斗達の活躍、公生の勇気ある行動。
皆が頑張った成果だ。
「今後どうするの?パーティ会場に乗り込むの?」
「それは警察に委ねるよ」
「須藤グループは警察にコネクションを持ってる。捜査4課も例外じゃないわよ」
晶さんが言う。
「いつも通り派手にやろうぜ!」
美嘉さんが言う。
美嘉さんを窘める渡辺君。でも僕は敢えて乗った。
「それいいかもね?」
皆の視線を浴びる。
「それだと関係ない人まで巻き込んじゃう」
「そうだね、だからパーティしてない会場を狙ってみよう」
それだけで相手に恐怖を与えることが出来るはず。
「マスコミはどうするの?さすがに建物爆破ってなったら抑えきれないわよ」
「……そもそも何で相手が施設を隠してるかを考えると自ずと答えはでてくるね」
公生が言う。
「公生の言う通りだ。相手からもみ消しに図るよ。何の心配もいらない」
「……決行はいつに?」
「相手の出方を見てから見よう、切札は先に見せるなっていうしね」
「……わかった。その線で行こう」
「公生たちには厳重な警備をつけるわ。公生はエンペラーについて不利な情報を持っているらしいし」
恵美さんがそう言うと公生は神妙な顔をして一言言った。
「コトネアスター。それがキーワード」
「何かのパスワードか?」
「僕の裏コードが生きていればね」
「よし、それを探ろう!」
「公生用心してね。敵はソードと名乗った、だとすると」
「部隊はあと3つある……そうだね」
「ああ、そういうことだ」
「わかった、気をつける。皆も気をつけて」
「ああ、分かってる……」
「じゃあ、そろそろ時間だし帰るか」
そう言って皆店を出た。
(7)
「うぅ……」
愛莉が唸っている。
何事だろう?
「どうしたの?」
愛莉に聞いてみた。
「いくら芝居とは言え冬夜君がああいうサークルに興味持ったと思ったら嫌になったの」
ああ、そういうことね。
「度量の狭いお嫁さんだよね。ごめんね」
愛莉は落ち込んでる。
「嫌な気分にさせてごめんね」
愛莉に言葉を返すと左手で愛莉の頭を撫でる。
「ううん、私がいけないの。冬夜君に余計な心配かけてる」
「心配してくれてうれしいよ。けどそんな事絶対にないから」
「うん!信じてる」
愛莉の笑顔が見えた。
僕達をバカップルと嘲笑う者もいるかもしれない。
だけどいくら挑発しようと無駄だ。
そんな挑発で揺らぐほどの絆じゃないから。
相手のしっぽは掴んだ。
後は引きずり出して本体を押さえるだけだ。
本体を押さえつけて次は頭。
しかし公生の抱えているファイル「コトネアスター」何が入っているというのか?
それも気がかりだったが……今考えても仕方ない。
家に着くと玄関に入る。
すると、何か殺意のようなものを感じた。
玄関に愛莉を押しやる余裕もが無い。
「愛莉こっち!!」
愛莉を抱え。庭の方に倒れると。3発の銃声が響く。
全てドアに当った。男はそのままバイクで逃走を図ろうとしたが。愛莉パパが張っていたらしく、愛莉パパのラリアットで男はバイクから転倒した。
愛莉パパはその場で男を取り押さえると署に連絡する。
程なくしてパトカーがやってきた。
愛莉パパは事情を警官に話すと警官は男を拘束しパトカーに乗せて帰っていった。
そのあと別のパトカーが来て銃弾が撃ち込まれた扉などを調べて僕達も事情聴取を受けた、
それらがすべて終わった後、愛莉パパからきついお叱りを受ける。
「火遊びもほどほどにしないと、いつか大やけどを負うことになるよ」と……。
家に帰ると父さんからも注意を受けた。
部屋に戻るとユニティに連絡を入れる。
「いよいよ敵が本性を出し来たな」と渡辺君は言う。
「皆も気をつけて」と言うとみんな「分かってる」という。
「遠坂さんは無事か?」と渡辺君が聞く。
愛莉は今僕にしがみ付いて震えている。
「なんとか……」と返す。
「ちゃんとケアしてやれ」
「わかってる」
「皆も気をつけてな。相手の正体を忘れるな!」と渡辺君が念を押す。
皆が「わかった」と返事する。
やり取りが終わった後愛莉の肩を抱いてやる。
未だ震えている。無理もない銃撃されたんだから。
「心配いらないよ僕がついてるから」
「冬夜君が無茶して怪我しないかが心配なの!」
愛莉は僕の身を案じていたようだ。
「奈留ちゃんじゃないけど、冬夜君がいなくなったら私悲しいよ。一人にしないで」
「わかってるよ」
でも同じくらい愛莉の事が大事なんだ。
多分、皆同じだろう。
そんな僕達を嘲笑う様に僕達を狙ってくるアーバニティだった。
「冬夜君朝だよ~」
今日もいつも通りの朝を迎えた。
愛莉の声で目を覚まし、愛莉との口づけで夢の中に入り……。
「はい起きようね!」
突然布団をはぎ取られ夢から覚める。
「起きたら準備だよ~」
愛莉に朝から管理されながら一日を過ごす。
今日も朝から日課だ。
日課をこなすと僕はシャワーを浴びて愛莉は朝食の準備をする。
朝食を食べると歯を磨きひげをそって寝癖を直すとコーヒーを入れてマグカップを二つ持って自分の部屋に戻る。
愛莉がシャワーを浴びている間にネットを見たりテレビを見たりする。
朝から地元の事件で持ち切りだ。
サークル同士の抗争。
そう題されたニュースは大々的に取り上げられていた。
解説者と題したタレントが好き勝手なことを並べ立ててる。
当事者としては苦笑するしかない事態。
彼等がしきりに取り上げるのが片方のグループ「ユニティ」の参加メンバーに僕がいるからだ。
それに対しても言いたい放題のタレントたち。
ネットのニュースも似たようなものだった。
「またやってるんだね~」
愛莉が戻ってきた。
愛莉はドライヤーで髪を乾かしながらニュースを見てる。
僕はそのころ愛莉を家から連れ出す策を考えていた。
休日に愛莉を家にいさせたらいけない。
親に言われている事。
「社会人になったら構ってやりたくても構ってやれなくなる。結婚を望んでるなら今のうちに仲良くなっておけ」
これ以上仲良くなってどうするんだってほどに仲良くなってると思うんだけど遊べなくなるってのは木元先輩から聞いている。
その分妻の不満を解消してやることも難しくなると聞いている。
そんな愛莉の不満を今から貯めていたら大変なことになる。
どうにかして外に出さないと……。
去年みたいに旅行でも行けたらよかったのに今年は時間が無かった。
加えてエゴイストだのアーバニティだの問題が押し寄せてくる。
「でもその分冬夜君優しくしてくれるから平気だよ」
愛莉は突然僕の心に侵入してくる。
気がつくと愛莉は僕の膝の上に頭を乗せて転がっていた。
「今日行きたいところない?」
「いつも遊んでばっかりで大丈夫なのかな?」
親はむしろ遊んで来いと言ってるのだが。
「いつも海ばかりだからたまには山かなぁ~」
「わかった、山で良い所探しておくね」
「いいところあるよ~、冬夜君が去年連れて行ってくれたところ」
「そんな近場でいいのか?」
「だから遠回りするの~こういうルートで……」
愛莉が前のめりになってノートPCに記された地図を辿っていく。
何度見てもやっぱり気になってしまう。
愛莉の胸元から見える乳房が……。
愛莉もその視線に気がつく。
「人の話聞いてた~?」
「あ、ああ聞いてるよ。こっちのルートだろ?」
「うん。それなら冬夜君の好きなハンバーグ食べられるでしょ?」
そうやって今日の一日の予定を組んでいると、突然スマホが鳴る。
愛莉のも鳴っているから多分ユニティの連絡だろう。
スマホを見て見る。
「片桐君今日の昼からちょっと会えないかな?会わせたい人がいるんだけど」
亜依さんからだった。
会わせたい人?
「愛莉も一緒でいい?」
こういう時は愛莉も一緒にいないと……。
それに愛莉を一人家に残すわけにはいかない。
「いいよ。変な誤解を生むのもいやだし」
「そういう相手なの?」
「あ、全然平気。相手も彼氏持ちだし」
誰だろう?
「渡辺君には話したの?」
「渡辺君も深雪さんも知ってる」
深雪さんも?
「分かったどこに行けばいい?」
「私立大近くのファミレスでいいかな?」
「分かった。昼に私立大近くのファミレスね」
「よろしくね~」
メッセージのやり取りは愛莉も見ていた。
「誰だろう?」
愛莉も首を傾げる。
女子グルでもその話題はでてないらしい。
とりあえず今日の予定は変更だ。
私立大近くに昼までなら時間はまだある。
愛莉といちゃつきながらテレビを見て時間を潰した。
(2)
昼前に私立大近くのファミレスに着くと桐谷夫妻と渡辺夫妻、それに知らない男女が2人いた。
皆が注文をすると、亜依さんが話を始める。
「まず二人紹介するね、女性が工藤雫、男性が竹下武史。どっちとも高1の時一緒だったはず」
「お久しぶり~」
「よお」
工藤さんは別府大に、竹下君は働いているらしい。怪我でもしたのだろうか?頭に包帯を巻いている。
「で、僕達を呼んだ理由は?」
僕が単刀直入に聞くと亜依さんが話を始めた。
「この二人アーバニティのメンバーなの」
桐谷夫妻と渡辺夫妻はもう聞いてたらしい。全く動じなかった。
僕と愛莉は流石に動揺した。
「どうして入ったの?」
愛莉が聞いていた。
「大学の友達に勧誘されたの。私彼氏いるから無理って言ったら彼氏も一緒でいいからお願いって言われて、彼氏も一緒ならいいかって思ってつい……」
で、アーバニティに入ってサークル活動の内容を知った二人はサークルから抜けようとした。
しかし幹部は抜けるなら多額の退会金を払うか最低二人は勧誘してから抜けろと脅された。
一人につき二人だから最低四人。
「ふざけるな!」と竹下君が怒鳴りつけたら袋叩きに会って怪我をした。
退会金は払えない、だとしたら四人別の友達を入れるしかない。
そこで亜依に目をつけたという。
「亜依なら彼氏いるって聞いてたから……。あと一組は武史が見つけてくれた」
工藤さんは震えながら喋った。
「で、二人に相談ってわけ。ちょうど調べてるところだったし内情知りたいならおとり捜査もありかなと思って」
「そんなの絶対にダメ!亜依が危なめにあうのをのほほんと見てるユニティじゃないはずだよ!」
亜依さんの提案を真っ向から否定する愛莉。
確かに危険すぎる。
「で、アーバニティってどんなサークルなの?」
「違法な事を限りなくやってるわ。関係者以外立ち入り禁止の密室の中で」
「密室?どこにあるの?」
「それは私達にもわからない、目隠しをされて車に乗せられて連れて行かれるから」
やってる事が真っ黒じゃないか?さすが暴力団がらみだね。
「紹介するときってどうやって紹介するの?」
「決められた日時に喫茶店で待ち合わせするの。そこで【面接】が行われるわ」
「なるほどね……」
ハンバーグ一つ食べ終わった。
あと一個。
「次の待ち合わせの時間は決まってるの?店は?」
「明日会うことになってる。違約金を払うか4人連れてくるかどちらか準備しておけって」
「わかった。明日の何時にどこの店に行けばいいの?」
「夜21時に別府のカフェで……」
「冬夜お前まさか!?」
「冬夜君!?」
「ありがとう、準備はしておくよ。工藤さん達は何も心配することなくお店に行くと良い。竹下君も友達を引き込むなんて馬鹿な真似やめなよ」
「ああ……でも手があるのか?」
「君たちに感謝したいくらいだよ。事がスムーズに運びそうだ。大丈夫君たちに迷惑かけるような真似はしない。その4人てカップルじゃないとダメなの?」
「私達二人分だから最低女性2名は必要ね」
「つまりカップル二組は必要か……わかったありがとう。また状況が変わったら連絡頂戴。僕とスマホの連絡先交換しよう?」
工藤さんとスマホをフルフルして連絡先を交換する。
「こっちからも何かわかったら連絡するよ。じゃ、今日はいいよ」
二人は店を出ていった。
「ちょっと片桐君どういうつもり!?愛莉を危険な目にあわせるの?」
「俺も今の話には賛同しかねるぞ。自分で桐谷さん達は行くなって言っておいて自分たちは行くって、お前どうかしてるぞ」
亜依さんと渡辺君が反対するが黙々とハンバーグを食べる。
食べ終わったら紙ナプキンで口元を拭いて次は大盛りポテトだな……。
ぽかっ
「冬夜君食べてばかりじゃなくて皆に分かるように説明して!」
「そうだね、あと一組は石原夫妻か酒井夫妻が都合いいかもしれない」
「説明になってない!」
「愛莉は分かってるんじゃない?相手のやってる事は立派な違法だって」
「ほえ?」
「契約書もない、約款もない、事前説明もない、それどころか契約をした形跡すらない。なのに違約金を払えって思わずハンバーグ吹きそうになったよ」
「……言われてみると確かにそうだね」
愛莉は納得したようだ。だけど亜依さんが言う
「じゃあなんで片桐君達が出向く必要あるわけ?無視してたらいいじゃん」
「あの二人を助けてあげようと思った。じゃ、だめかい?」
「だめだね、それに石原君達を巻き込む意図がわからない」
「石原君たちの兵隊を借りたいと思っただけだよ」
「ああ、なるほどな。理解した。相手のしっぽを捕まえようってわけか」
渡辺君は理解したようだ。
「そう、相手はユニティを警戒しているのかどうか知らないけど中々目の前に現れない。どうしたものかと思ったら、のこのこ鴨が葱背負ってきた。これを利用しない手は無いでしょ」
「理論的には正しいが、そんな理屈が通る連中だとは思わないが」
「だから力づくで引きずるのさ。時間と場所さえ設定してくれてるしね……あ、そうだ」
誠にメッセージを送る。
「誠頼みたい事があるんだけど今どこ?」
「おう、今練習から上がってきたところ、家にいる」
「すぐにノーパソ持ってファミレスに来てくれないか?」
「ああ、いいけど……【仕事】か?」
「そんなところ」
「OK、10分で行く」
スマホを仕舞うと愛莉が聞いてくる。
「誠君に何させるつもりなの?」
「相手が感づいてこなかった時の保険だよ」
「保険?」
「そう」
10分後に誠がきた。
「で、俺は何をすればいいんだ?」
誠にスマホを見せる。
「このIDのアクセスログを割り出して欲しい」
「そんなの10分で終わるぜ」
誠は早速作業を始めた。
「最初からこれが狙いで雫から連絡先聞いたの!?」
亜依さんが驚いていた。
「せっかくのアーバニティの足跡だ。逃す手は無いよ」
「あったぜ!アーバニティのグループ!」
誠が捕獲したらしい。
「例の『誠君特製ウィルス』全員に仕込めるか?」
「40秒で終わらせる!」
誠の作業を皆で見つめる。
「でもよく短時間で思いついたな冬夜」
桐谷君が驚いていた。
「亜依さんがアーバニティの関係者と紹介した時から手立ては考えていたよ」
「捕獲完了!」
本当に40秒でやってのけた。
「で、次はどうするんだ?」
「誠のウィルスはどうやって感染していくんだ?」
「ちょっとやんちゃな奴でな、一度でも通信した相手全員に感染していくぜ!」
本当にやんちゃな奴だな。
「わかったありがとう。その中に絶対エンペラーがいるはずだから特定して欲しい」
「OK」
次にやることは……。
恵美さんは立て込んでるみたいだし、晶さんでいいか。
晶さんに電話する。
その間に愛莉が誠に事情を説明している。
「どうしたの?」
「頼みたいことがあってさ」
晶さんに事情を説明する。
「わかったわ、ついに攻撃開始なのね」
「ああ、ちょっと兵隊を借りたい」
「いいわよ、善君の初陣も見たいし協力するわ。あと私の弁護士を使えばいいのね?」
「そうしてくれると話が早くて助かる」
「わかった明日の21時に別府の喫茶店ね」
「うん」
「じゃあ、また明日」
これで準備は出来た。
後は明日を待つだけだ。
(3)
バイクの爆音で目が覚めた。クラス中の皆が窓からグラウンドを見てる。
僕も人ごみに紛れてみると見たこともないエンブレムの旗を掲げたバイクと車が走り回ってる。
大声で何か叫んでいた!
「ウォーロックとポープ!!出てこい!こっちはアーバニティの特隊『ソード』だ!!」
すぐに隣のクラスに走る。
廊下で奈留と遭遇した。
「公生!これは!?」
「僕達を要求してるみたいだね」
僕達は職員室の様子を伺う。
「くそっ!何で電話が繋がらないんだ!」
「スマホも役に立たない!」
僕と奈留はスマホを確認する。
繋がらない。
電波が圏外になってる。
奈留は不安そうに僕を見る。
僕は奈留の肩を叩く。
「心配ないよ。手は打ってある」
僕は充電用のコンセントに見せかけた装置をスマホに接続する。
電気回線を使ってネットに接続する。
「学校が襲われてる」
「石原君から聞いてる。もう少し持ちこたえてくれ」
安心してる場合じゃない。
乗り込んでこられたら皆の迷惑になる。
仕方ないな。
僕は昇降口に行くと靴を履き替える。
すると奈留も靴を履き替える。
「奈留はここに残るんだ。素性もばれてしまう」
「それはあなたも一緒でしょ?」
「麗しき君を危ない目になんて合わせられない」
「若き騎士をむざむざ死地に送るわけにはいかない」
二人で口論していても埒が明かない。
「……危険だよ。守れないかもしれない」
「いつも一緒だってあの晩誓った」
そう言って僕の腕を掴む奈留。
「じゃ、いこうか?」
そう言ってグラウンドに出る。
リーダー格の男が僕達を見る。
目がイってるのはきっと手に持った缶のせい。
「おまえらがウォーロックとポープかぁ?」
「その名前はとうに捨てたんだけどね」
「エンペラーが言ってたんだよぉ、新しい手札が揃ったからお前らは『用済み』だってなぁ」
男はそう言うと車を降りた。
時代錯誤も甚だしい特攻服を来て腹に晒を巻いている。
男は缶を捨てると長い棒のようなものから銀色の刃を抜き出す。
日本刀か……。
「そんなの振り回していいの?銃刀法違反だよ?」
「そんなの関係ねぇ、お前らはここで死ぬんだからよぉ」
男が僕達に切りかかろうとした時僕は奈留を庇った。
すると土煙をを巻き上げて僕と男の間に二台の車が割り込む。
「大丈夫っすか?2人とも!?」
「子供は隠れてろ。危険だ」
楠木君と檜山君、白鳥さんと神崎さんもいる。
「なんだおまえら?」
「名乗る必要などない」
檜山君が答えた。
「折角のデートの際中だったのに~。……覚悟はできてるんだろうな!」
「無粋な真似は許さない」
神崎さんと白鳥さんが言う。
「かまわねえ、6人とも皆殺しだ!」
男がそういうとぞろぞろと出てくる。
「咲良、いざという時は車の中に入ってろ」
「冗談きついですよ~。……こんな雑魚なんてことない」
「春奈も車に入っててください!」
「……背中は預ける」
「わかったっす」
皆やる気のようだ。
「てめぇら、さっさと終わらせちまいな」
男が叫ぶと大群が押し寄せてくる。
2人一組になって攻撃に備える。
襲い掛かる男たちをあっさりと倒していく4人。
次々と相手を殴り飛ばす楠木君。
急所を的確に撃ちぬく白鳥さんと檜山君。
檜山君の背後に回る敵を蹴り倒す神崎さん。
次々と倒れた男が積み重なっていく。
一瞬の油断だった。
日本刀を持った男が近づいて来るのに気がつかなかった。
気づいた時にはもう手遅れ。
咄嗟に奈留と男の間に割って入る。
「逝ってしまいなぁ!」
男が日本刀を振り下ろそうとしたとき楠木君が後ろから男の手首をつかんだ。
「かっこいいっすね、公生」
「楠木君!」
だけど楠木君の後から敵が木刀を振りかざして襲い掛かる。
それを防いだのは白鳥さん。
男の両腕にとびかかり掴むと肩で肘を極め背負い投げをする。
小柄の白鳥さんからは想像もつかないアクションだった。
「晴斗の背中は私が預かってる」
日本刀を持った男は後ろを向くと楠木君に襲い掛かる。
だが、男の手首を楠木君が蹴り上げると日本刀を落す。
僕は咄嗟に転がった日本刀を取りあげる。
日本刀を持っていた男に殴る蹴る頭突き等の打撃を与える楠木君。
最後の拳打が男の左頬に食い込み男は吹き飛ぶ!
「凶器だしてゴタゴタ言う前にてめぇの筋通してみろや!」
男はその言葉を聞く前にのびていた。
やがて警官が入ってくる。
通信が回復したのだろうか?誰かが通報したのだろうか?
その場にいた僕達も含めて全員連行されかけたが、あとからきた恵美さんが事情を話すと僕達は解放された。
「飛び込んできた瞬間かっこよかったっすよ。怪我無かったっすか?」
楠木君が聞いてきた。
「僕なら平気。それより奈留が泣き止まないんだ。もう終わったのに」
僕は神崎さんから小突かれた。
「だめですよ~男の子が女の子泣かせたら~」
僕は何もした覚えは無いけど。
「心配させたら駄目」
白鳥さんが言う。
心配?
僕は奈留を見る。
「無茶したら駄目、おもちゃじゃないんだよ?公生いなくなったら私悲しい」
「……ごめん」
「もういいよ。無事だったんだし」
ハッとしてスマホを見る。電波は回復している。
それで通報されたのか?
そのときどこかで銃声が聞こえた。どうしたのだろう?
(4)
パチっ!
男の眉間に命中した
男の注意がこっちにむく。
男は眼鏡をしていた。
眼鏡をしていて照準器よく覗けるな。
「やっぱり狙撃手の考えることはみんな一緒ですね。中学校を狙うならここが一番適所だ」
「なんだい僕ちゃん。おじさん今仕事中なの。邪魔しないでくれないかな」
「お生憎だけどそれを邪魔するのが僕が恵美から受けた任務(しごと)でね。ごめんね」
「謝ることは無いよ、坊ちゃん」
男は懐から何かを取り出そうとする瞬間、僕は男の懐に飛び込み男の右手を男の胸に押し当てたまま突き倒す。
こんな近距離でそんな動作するなんて素人だな。
予想外の出来事に男が混乱してる間に僕は男の右手から銃を奪い取り頭上に掲げて一発撃った。
これで今頃戦ってるはずの仲間に届いたはず。
「ダメですよ。こういう仕事やるときは消音器くらつけないと」
「お前、裏の者か?」
「勘違いしないでください、僕はただの大学生ですよ。色々と忙しいんだから仕事増やさないで下さい」
「ただの大学生の仕業じゃねーだろ!」
「言いたい事はごもっともですけどね。あ、それと電波妨害の機器破壊しておきました。あんなものまで持ち出してなんのつもりですか?」
「どうしてここを割り出した?」
「こっちの質問には答えてくれないんですね。こっちも急いでるんで迅速に解説します。まずあなた達が最初の尾行をしたときから張ってました。そしたら今日偶々あなた達が来ただけです。あ、もうとっくに警察に通報済みですから」
何かを言ってる男を無視して拳銃から指紋を拭きとって男の懐に忍ばせた。
手袋くらいしておかないとな。僕もまだまだ素人だな。
ちなみに男の両手は男がもっていた手錠で拘束してる。
警官が駆けつけてきた。
警官に事情を説明すると男は連行された。
それを見届けるとスマホで恵美に連絡を入れる。
「恵美、こっちのミッションは終わったよ」
「ご苦労様、思ったより簡単だったみたいね?」
「まあ、前回のミッションが過酷だったからね」
「そうね、今日はご褒美に何か作ってあげる。ろくなもの食べてないでしょ?何がいい?」
「肉がいいな、ポテトサラダは抜きにしてね」
「好き嫌いしてると背はのびないわよ。今日はミネストローネね」
「わかったよ」
「じゃあ、迎えに行くわ」
「了解」
ああ、最近お風呂にも入ってなかったから恵美に抱きつけないな。
僕は一人苦笑していた。
(5)
21時になった。
僕と愛莉、工藤さんと竹下さん、酒井夫妻がでご飯を食べていると男たちがぞろぞろと現れた。
人数は6人か。
「掛けなよ」
僕は目の前のオムライスを食べながら男たちに席に座るように促す。
男は僕を無視して工藤さん達に話しかける。
「お前、こいつらが……」
工藤さんは無言でうなずく。
「話はそいつから聞いてるんだろ?食ってないでついてこい」
「その件で疑問に思ったことがあるんだけど取りあえず話しない?」
「話だと?」
「そうそう、話」
男たちは笑う。
「何を聞いてたんだお前?」
「サークルに紹介してくれるからどうしても入ってくれって事しか聞いてないけど?そもそも何のサークルなの?」
「縁結びのサークルだよ?今流行ってるだろ?」
「ああ、そういうサークルだったんだね。悪いけどそういう話は彼女の居ないところでしてくれないか?」
ぽかっ
「彼女じゃないもん。婚約者だもん。それに私の居ないところでならいいってどういう事?」
「ああ、ごめん。ほら、こういうわけだから悪いけどその話無しにしてくれないか?」
「雫!!」
「ちょっと話が違う……」
「僕は君にサークルに入るように言われただけだよ?それを今断っただけ」
「それはそうだけど」
工藤さんは泣き顔になっている。
「雫と武史ちょっとこい!」
そう言って二人を連れ去ろうとする手を僕が引き止めた。
「2人をどうするつもり?」
「お前らにはもう関係ない」
「片桐君悪い癖よ!とぼけるのもいい加減にしなさい!」
晶さんがそう言った。晶さんは男たちを睨みつける。
「その二人に危害を食わせようって言うんだったら黙ってないわよ!」
「危害だと!?」
男が晶さんを睨みつける。
「ネタは上がってるのよ!あんた達この二人に言いがかりをつけてメンバーを増やそうとしてるんでしょ?」
「言いがかり……馬鹿な事言ったらいけねぇ。俺たちはちゃんと契約をしてるんだぜ?」
「じゃあ、その契約書とやらを拝見してもよろしいでしょうか?」
酒井君が言った。
「そんなものねーけどこの二人とはちゃんと約束してるんだよ。口約束でも約束は約束だろ?」
「工藤さんといいましたね。その契約とやらをする際にちゃんと説明受けましたか?」
「いえ……ただ楽しいサークルだから入ってと」
「それはいつ?」
「まだ一週間も経ってないと思います」
「ならクーリングオフの成立する時間だ。この件は無かったことで穏便に済ませられませんか?」
酒井君が言うと男は酒井君の胸ぐらをつかむ。
「あ、今暴力をふるいましたね?じゃあ、こっちも相応の対応を取らせていただきますよ?」
酒井君はそう言うと相手のこめかみを拳で撃ちぬく。
男はその場で失神した。
それを見た男たちは、懐から得物を取り出そうとするがその前に周りにいた兵隊に取り囲まれていた。
男たちは気づかなかったんだろうか。
男たちが恫喝した時。
酒井君の胸ぐらをつかんだ時。誰一人として叫ばなかったのを不思議に思わなかったのだろうか?
そう、客全員晶さんの兵隊だった。
男たちは床に武器を転がし両手をあげる。
「席に着く気になったかしら?」
晶さんが言うと男たちは大人しく座った。
「まあ、さっき言った通りでこの契約は無かったことにできますよ?」
「……それでおめおめと帰れると思ってるのか?」
「思ってません」
「じゃあどうしろって言うんだ」
「こっちの条件を受け入れてくれればそっちの身柄の安全は確保しますよ」
酒井君が言うと男たちは相談する。
「グダグダ言ってても状況は変わらないわよ。いい加減腹決めなさい!」
晶さんは半分脅しに入っている。
そして男たちは脅しに屈した。
「わかった、そっちの条件はなんだ?」
「今後工藤さん達に接触しない事、あんた達のパーティー会場をを一つ残らず教える事。それだけでいい」
「俺達の身柄はどうやって保証してくれるんだ?」
「使ってない別荘がある。そこにいればまず手が出せない。周りには兵隊がうようよいるしね」
「……わかった。あんたを信じるしかないようだ」
「その前にすることがある。全員スマホを出しなさい」
晶さんが言うと男たちはスマホを出した。
「これは全部没収する。あとは車の中でボディチェックを行わせてもらう」
「……わかった」
そう言うと男たちは兵隊に連行された。
「店の修理費等は私達が負担するから」と晶さんが小切手に適当な値段を入れて店主に渡す。
「じゃ、引き揚げましょう」
酒井さんが言うと皆引き上げた。
いつものファミレスで、皆で会議していた。
石原君の活躍、晴斗達の活躍、公生の勇気ある行動。
皆が頑張った成果だ。
「今後どうするの?パーティ会場に乗り込むの?」
「それは警察に委ねるよ」
「須藤グループは警察にコネクションを持ってる。捜査4課も例外じゃないわよ」
晶さんが言う。
「いつも通り派手にやろうぜ!」
美嘉さんが言う。
美嘉さんを窘める渡辺君。でも僕は敢えて乗った。
「それいいかもね?」
皆の視線を浴びる。
「それだと関係ない人まで巻き込んじゃう」
「そうだね、だからパーティしてない会場を狙ってみよう」
それだけで相手に恐怖を与えることが出来るはず。
「マスコミはどうするの?さすがに建物爆破ってなったら抑えきれないわよ」
「……そもそも何で相手が施設を隠してるかを考えると自ずと答えはでてくるね」
公生が言う。
「公生の言う通りだ。相手からもみ消しに図るよ。何の心配もいらない」
「……決行はいつに?」
「相手の出方を見てから見よう、切札は先に見せるなっていうしね」
「……わかった。その線で行こう」
「公生たちには厳重な警備をつけるわ。公生はエンペラーについて不利な情報を持っているらしいし」
恵美さんがそう言うと公生は神妙な顔をして一言言った。
「コトネアスター。それがキーワード」
「何かのパスワードか?」
「僕の裏コードが生きていればね」
「よし、それを探ろう!」
「公生用心してね。敵はソードと名乗った、だとすると」
「部隊はあと3つある……そうだね」
「ああ、そういうことだ」
「わかった、気をつける。皆も気をつけて」
「ああ、分かってる……」
「じゃあ、そろそろ時間だし帰るか」
そう言って皆店を出た。
(7)
「うぅ……」
愛莉が唸っている。
何事だろう?
「どうしたの?」
愛莉に聞いてみた。
「いくら芝居とは言え冬夜君がああいうサークルに興味持ったと思ったら嫌になったの」
ああ、そういうことね。
「度量の狭いお嫁さんだよね。ごめんね」
愛莉は落ち込んでる。
「嫌な気分にさせてごめんね」
愛莉に言葉を返すと左手で愛莉の頭を撫でる。
「ううん、私がいけないの。冬夜君に余計な心配かけてる」
「心配してくれてうれしいよ。けどそんな事絶対にないから」
「うん!信じてる」
愛莉の笑顔が見えた。
僕達をバカップルと嘲笑う者もいるかもしれない。
だけどいくら挑発しようと無駄だ。
そんな挑発で揺らぐほどの絆じゃないから。
相手のしっぽは掴んだ。
後は引きずり出して本体を押さえるだけだ。
本体を押さえつけて次は頭。
しかし公生の抱えているファイル「コトネアスター」何が入っているというのか?
それも気がかりだったが……今考えても仕方ない。
家に着くと玄関に入る。
すると、何か殺意のようなものを感じた。
玄関に愛莉を押しやる余裕もが無い。
「愛莉こっち!!」
愛莉を抱え。庭の方に倒れると。3発の銃声が響く。
全てドアに当った。男はそのままバイクで逃走を図ろうとしたが。愛莉パパが張っていたらしく、愛莉パパのラリアットで男はバイクから転倒した。
愛莉パパはその場で男を取り押さえると署に連絡する。
程なくしてパトカーがやってきた。
愛莉パパは事情を警官に話すと警官は男を拘束しパトカーに乗せて帰っていった。
そのあと別のパトカーが来て銃弾が撃ち込まれた扉などを調べて僕達も事情聴取を受けた、
それらがすべて終わった後、愛莉パパからきついお叱りを受ける。
「火遊びもほどほどにしないと、いつか大やけどを負うことになるよ」と……。
家に帰ると父さんからも注意を受けた。
部屋に戻るとユニティに連絡を入れる。
「いよいよ敵が本性を出し来たな」と渡辺君は言う。
「皆も気をつけて」と言うとみんな「分かってる」という。
「遠坂さんは無事か?」と渡辺君が聞く。
愛莉は今僕にしがみ付いて震えている。
「なんとか……」と返す。
「ちゃんとケアしてやれ」
「わかってる」
「皆も気をつけてな。相手の正体を忘れるな!」と渡辺君が念を押す。
皆が「わかった」と返事する。
やり取りが終わった後愛莉の肩を抱いてやる。
未だ震えている。無理もない銃撃されたんだから。
「心配いらないよ僕がついてるから」
「冬夜君が無茶して怪我しないかが心配なの!」
愛莉は僕の身を案じていたようだ。
「奈留ちゃんじゃないけど、冬夜君がいなくなったら私悲しいよ。一人にしないで」
「わかってるよ」
でも同じくらい愛莉の事が大事なんだ。
多分、皆同じだろう。
そんな僕達を嘲笑う様に僕達を狙ってくるアーバニティだった。
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