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4thSEASON
襲撃
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(1)
ピピピピ……。
アラームを止める。
今日も雨だ。
ずっと雨が続いている。
でもあと1週間もしたら梅雨が明ける。
それまでの我慢だ。
そしたら暑い日々が待っているんだけど。
とりあえず今はずっとしがみ付いている愛莉をどうにかしなければならない。
方法はたった一つしかないんだけど。
愛莉は僕の事を何だと思ってるんだろうか?
単なる抱き枕?
それはないか。
多分愛されているんだろう。
僕も愛莉の事を愛している。
朝から何を考えているのやら。
とりあえず愛莉を起こす唯一つの方法を試みる。
しがみつかれたままでは埒があかないから。
「おはよう愛莉」
言葉と共に唇を重ねる。
するとぱっちり目を開けると愛莉の僕の背中に回した腕に力がこもる。
「おはよう冬夜君~」
「まったく、毎朝毎朝……」
「えへへ~」
愛莉は窓の外を見る。
「今日も雨なんだね」
「そうだな」
「じゃあ今日もゆっくりできるね」
「ゆっくりさせてくれるの?」
「う、うぅ……そうきますか?」
愛莉は困っている。
そんな愛莉を見て自然と笑みがこぼれる。
「とりあえず起きようか?」
「えぇ~、いつも寝坊助の冬夜君が起きるなんて。絶対意地悪してるでしょ~?」
愛莉の腕をほどくと上身を起こす僕、そんな僕の腰に愛莉は再び腕を回す。
「や~だ~。もっとのんびり過ごすの~」
そんなに胸をくっつけると、僕だって健全な男子なんだぞ?
愛莉は下半身の異変にすぐに気づく。
「ほら、こんなに反応してるじゃない~」
したり顔で言う愛莉。
「反応してたらどうするんだい?」
愛莉は前は時間がないから駄目って言ってたろ?
「う~ん……」
愛莉は悩んでいる。
愛莉は時計を見る。ご飯の時間まで30分も無い。
「うん!今の私なら出来る!」
愛莉はいきなり僕のズボンをパンツ事引き下ろす。
「ちょっと愛莉何やってるの!?」
「私の事は夜構ってくれたらいいから今は冬夜君を満足させてあげる~♪」
そう言って愛莉は僕の硬くなったそれを口にくわえる。
いつの間にそんなこと覚えたんだ……って前からやってたか。近頃上手になってきたんだよなあ。
ってそんな事言ってる場合じゃない!
何とかしないと。
愛莉を無理やり引き離す。
「やだ、私へたっぴだった?」
寂しそうな顔をする愛莉。
「愛莉が夜まで我慢するなら僕も夜まで我慢するから」
「今日の冬夜君は冷たいね。いつもならがばーってくるのに……」
「ご飯食べたらいちゃつこう?時間今日はあるし……」
「だから~お化粧直ししたり大変なんだよ~?」
最近夜は遅いしと……不満をこぼす愛莉。
拗ねられるのも困るしな……。
仕方ない、愛莉と一緒にベッドに横になる。
「ほら、おいで……」
「わ~い」
愛莉は遠慮なく抱きついてくる。
そんな愛莉を受け止めて、催してくる欲情を押さえながら、30分間愛莉とスキンシップを楽しんだ。
時間になるとスイッチが切り替わったように愛莉は僕から離れると部屋を出る。
朝食の準備だ。
僕はそれを見届けると誠にメッセージ送ってみた。
「朝の欲情どう整理してる?」
誠からすぐに返事がきた。
「……お前もやっと俺の気持ちが分かるようになったか!」
ああ、良く分かるよ。
「で、どうしてるんだ?」
「神奈に優しくソフトにぶつけてるよ。でも遠坂さんなら問題ないんじゃないか?」
「問題あるから相談してるんだよ」
「そういう時の為の動画あるぜ?遠坂さん朝食の準備でいないときあるんだろ?その時にでも自分で処理しろ……いてぇっ!」
わざわざ痛い事まで伝えてこなくていいのに。
「おい、誠に妙な事聞いてるんじゃない!どうせろくでもない回答しかしねえんだから!」
これはカンナだな。
「男同士の相談てあるだろ?誠なら分かると思ってきいただけだよ」
「今ログ読んだ……やっぱりろくでもない事じゃないか!」
「まあ、そうなんだけど」
男にとっては重要な事なんだよ。
「お前が妙な事やってるのを目の当たりにしたときの愛莉の気持ち考えろ!」
「カンナは……見たことあるのか!?」
「しょっちゅうだよ」
「どんな気持ちなんだ?」
「複雑な気持ちだよ。それこそ女性同士でしか分からない事だよ」
「男同士の会話は覗いておいて女性同士は秘密って不公平じゃないか?」
「……そんなに知りたいなら教えてやるよ。凄く悲しくて怒りが沸いてきて、でもしょうがないんだって諦めもあって……」
「……難しいんだな」
「冬夜君ご飯だよ~」
愛莉が呼んでいる。
「じゃあ、そろそろご飯だからまた学校で」
「ちょっと待て話は終わってない」
「学校で聞くよ」
「話せるか!」
「誠によろしく、じゃあな」
「おい、待て!」
部屋を出た。
朝食を食べると支度をして。部屋に戻って着替える。
着替え終えるとデスクトップのPCを起動してネットを見てると誠からファイルが送られてた。
開いてみる。うわあ……。
誠は何でもありだな。
さてこれをみてどう処理するかだけど、今からだと愛莉戻ってくるよな。
ほら話をしていたら愛莉が戻ってきた。
慌てて動画ソフトを消す。
「何見てたの?」
愛莉が聞いてくる。
「うん?いつも通りネット見てただけだよ?」
「そう?」
愛莉は不思議そうな顔をしながら。マグカップをテーブルの上に置くと着替え始めた。
さっきの動画と重なって愛莉が凄くそういう対象に見えてしまう。
毎回言うけど朝の男性の性欲はすごい。
僕でも抑えきれないくらいにすごい。
今日も抑えきれずに着替えてる最中の愛莉を抱いてしまう。
「だから朝からだめだってば~」
本気では怒ってないようだ。
「着替える前なら良いだろ?化粧の前ならいいだろ?」
「うぅ……しょうがないんだから……じゃ、ベッド行こ?」
今日はやけにおとなしく僕の要求を受け入れてくれたな。
まあ、受け入れてくれるならそれでもいいや。
愛莉をベッドに押し倒す。
「乱暴にしちゃいやだからね」
「わかってるよ」
その時愛莉のスマホがなる。
「あ、ごめん。ちょっと出るね」
愛莉が電話に出る。
「あ、神奈おはよう~どうしたの?朝から。……え?今冬夜君に襲われてたところ~♪」
なんでそう言う事を正直に話すんだろうこの子は。しかも嬉しそうに「♪」なんかつけちゃってさ……。
「え?冬夜君と誠君が?……うん、わかった。じゃあまた後でね」
雲行きが怪しくなってきたぞ。
愛莉は僕を見るとにこりと笑って言う。
「冬夜君スマホ見せて♪」
「愛莉それより早く続きやろ?」
「良いから見せて♪」
「時間無いから早くしちゃおう?ゆっくりしたいだろ?愛莉も」
「見せて♪」
大人しく愛莉にスマホを差し出す。
誠との会話を見ているんだろう。
しかし愛莉の笑顔は崩れない。
「だから朝してあげようって言ったのに……」
「それは……愛莉は大事なお嫁さんだろ?性処理の為だけに使うなんて出来ないよ。やっぱり気持ち入れてしたいし」
「私は気持ち込めてしてるよ?」
「愛莉とするならちゃんとしたい」
「その気持ちだけで嬉しいから。仕方ないよね。冬夜君も男だもん」
「愛莉はやっぱり怒る?……そういことしてたら」
「私じゃ駄目なのかな~?って悩むかな~」
現に愛莉は悩んでいるようだ。
「昔冬夜君に怒ったことあったでしょ?そういうの見たら駄目!って。やっぱり妬いちゃうよ。相手がたとえAV女優でも」
「そっか……」
「その代わり冬夜君が求めてきたら出来るだけ応えてあげたいと思ってる」
「それは嬉しいんだけど……」
「逆に聞くけど冬夜君はどうしてそういうの見たいの?私がいるのに」
「愛莉とAV女優は別物だよ。僕がエルトのボーカルが好きなのと同じ感じかな」
「……の、割には私似の人が多いね?」
それなんだよな。なぜか愛莉似の子を無意識に選んでしまう。
愛莉はその間に着替えてしまった。
ああ、朝からするのは失敗か。
落胆する僕に愛莉はとんでもない事を要求する。
愛莉はデスクトップを置いてる机の椅子に座ると「さっき見てたの出して」という。
逆らっても無駄なんだろうな。神奈に全部聞いてるんだろうな。
愛莉の言われたとおりに動画ファイルを開く。
「うわあ、いつ見てもやっぱりすごいね。私にはこんなの無理だよ。……冬夜君もこういうのに憧れる?」
「……まあ、凄いな~とは思うよ」
愛莉と一緒にAVを見てる。若干抵抗があった愛莉も今は食い入るように見てる。
そんな愛莉を見てると……やっぱり欲情するよね。
思わず後ろから愛莉に抱き着いて胸を揉んでしまう
「あっ……」
「ご、ごめん」
そう言って愛莉から離れようとするが愛莉は手を掴んだ。
「それでいいんだよ?」
「へ?」
「今度から一緒に見よう?それで気分が盛り上がったら私にぶつけて。私も精一杯受け止めるから」
愛莉がまぶしく見える。
「ありがとう」
「そんな事しか出来ないから。冬夜君の気持ち少しでも理解したいから……でも今日は帰ってからだね」
愛莉はそう言って笑った。
「ところで、カンナと何話してたんだ?」
「『トーヤと誠またろくでもない相談してる。朝の性処理で困ってるらしい。でも愛莉も頭ごなしに怒るのは止めてトーヤの気持ち受け止めてやれ。浮気されるよりマシだろ?』って」
そんなこと話してたのか……。
「でもさあ~冬夜君って本当に私の気持ち分かってもらえないんだね?」
「え?」
「私が求めたときは受け入れてくれるんだから、冬夜君がそう言う気持ちになったら私だって受け入れるって事くらい分かってよ」
「さっきだめだったじゃん」
「それは電話が来たから。そんなに朝したいならちょっと早く起きよっか?」
「ジョギングの前にやれって言うのか?」
俺の体力ももたないぞ……。
「女の子だって性欲あるんだよ?」
「?」
「だから冬夜君がイチャイチャしてくれてる時は嬉しいの♪」
イチャイチャしてやりたいけど……。
「そろそろ時間だね」
愛莉はそう言うと化粧を終えてバッグを手にする。
僕もバッグを手に持ち二人で部屋を出た。
(2)
「この馬鹿が!!」
学食でカンナに会うといきなり怒鳴られた。
「まあまあ、冬夜も男なんだ察してやれ」
渡辺君が庇ってくれる。
「私は嫌じゃないよ。今の冬夜君。私に構ってくれるし~」
一人嬉しそうな愛莉。
「それより話なんだが、予定が決まったらしい」
「予定?」
僕は渡辺君に聞いていた。
「高橋蒼良の輸送日時……来週明けにやるらしい」
話題が一変した。
「止める方法はあるの?」
海外に逃げられたらアウトだ。
「計画は恵美さんと晶さんが練ってある」
渡辺君がそう言うと二人を見る。
恵美さんは話す。
「今回は相手もかなりの警戒網を敷いてる。強引に突破するのは可能だけど、蒼良を人質にされたら打つ手がない。だから手薄な時を狙うわ」
「手薄な時?」
「相手が自分の陣地から飛び出した時よ」
「……移動中を狙うって事?」
僕が言うと恵美さんが頷いた。
「そう?この地図を見て」
恵美さんがノートPCを開く。二つのポイントがありそれを結ぶ線がある。恐らく現在地と船の停泊してる港。それを結ぶ経路だろう。
「山道ってそんなに選択肢がないでしょ?多分その経路であってるはず」
「経路があってても移動中に狙うなんて不可能でしょ」
「質問です。車が必ず止まる時っていつだと思う?」
「は~い、信号が赤の時~」
愛莉が答えると恵美さんはにこりと笑った。
「正解よ。愛莉ちゃん」
「わ~い」
喜んでいる愛莉。でも、山道だろ?信号なんてそんなにないし必ず赤とは限らないんじゃ?
「交通管制センターって知ってるか?トーヤ」
カンナが言うと僕は首を振った。
「分かりやすく言うと信号を制御してるシステムだ。……あの馬鹿それを弄るらしい」
……お前の将来はどこに向かっているんだ誠。
「でも、山道なら信号で車を止めるにも限界がある。誰もいなければ突っ切ってしまう事も」
「そうね、でも必ず一度は止まる。皆もそうじゃない?見通しの悪い深夜の交差点なら絶対に止まってしまう。そうでしょ?」
「そうだね、車がきたらあぶないもんね」
「その一瞬があれば十分、あとは望が何とかしてくれる」
石原君が?
皆が石原君を見る。
「自信はあります、訓練は受けました」
何の訓練を受けたんだ、石原君。
「一瞬車が止まれば望が足止めする。あとは晶さんの兵隊が何とかしてくれる」
凄く簡単に言ってるけど、それってもう未成年の飲酒とか言うレベル通り越した立派な犯罪だよ?
愛莉はさすがに理解し難い様だ。
「あとは拉致して、いつもの場所に収容するだけ。そうだな?」
渡辺君が言うと、恵美さんがはにこりと笑った。
「大丈夫、兵の手配は済んでるわ。今は相手の小屋を監視してる。万が一予定に変更があればいつでも襲撃できるように」
大学の学食で話す話題じゃないぞ。
もっともみんなサバゲーの話か何かと混同してると思うけど。
「じゃあメンバーは当初の予定に酒井夫妻を連れて行こう。週明けだけど大丈夫か冬夜」
「……僕がいかないと話にならないでしょ?」
酒井君は「え?僕も巻き込むんですか?」という顔をしている。
こうして僕達の2度目の戦いが始まった。
(3)
「こちらデルタ4よりアルファ1へ。標的の位置を確認したい」
「こちらアルファ1データ・リンクを開始する」
無線が飛び交う中、僕達は道路を見下ろす形で茂みの中に待ち構えていた。
そこは山を下りてきて平たんな道になっている。
信号機は既に赤のまま変わろうとしない。
多田君からは「捕獲完了」とメッセージが来ている。
君はどこかの鷹かい!?
「目標まもなくポイントAに到着予定」
「目標の数を確認したい」
「3台だ標的は中心の車の後部座席」
「了解」
石原君が匍匐して手にした大型ライフルの照準を道路に向けてあわせる。
「望、どう?」
「遮蔽物特になし。視界は良好」
どう考えてもBB弾じゃないよね。
晶ちゃんはタブレットを見ている。
迷彩柄のカーゴパンツにパーカーを着ている。
ちなみに僕はいつものジャージ姿。
黒にしたけど。
情報通り3台の車がやってきた。前後の高級車に挟まれるような形でワンボックスカーが走っている。
信号で止まった。
「最初に先頭の車両を狙います」
そういうと石原君は引き金を引いた。
弾丸は窓ガラスを突き破り。後部座席中心の床を突き抜けた。
後輪駆動の車はシャフトを撃ちぬくと自然と動かなくなってしまう……って前に爆発したよ。
ちょっと何やってんの!?
「劣化ウラン弾だから当然です」
そんなドヤ顔で言わないで。
中央の車は爆風でフロントガラスにひびが入り操作不可能な状態になる。
後ろの車から警護の人間が飛び出すと。忍んでいた、特殊部隊が警護の人間に襲い掛かる。
さすがに殺しはしないよ。殺したらラブストーリーどころじゃなくなるよ。
スタンガンで気絶させていく特殊部隊。
しかし中央の車両に配置されていた警護兵はこちらの事情などお構いなくパンパンと乾いた音を立てて銃を撃ってくる。
たしかに先制攻撃したのはこっちだけどね。
そんなことしたら駄目だよ。そんな手持ちのトカレフじゃ特殊部隊のボディアーマーは破れないよ。
撃ってきたらこちらの特殊部隊も遠慮しない。いや、元々遠慮なんて言葉もちあわせていなかったけどね。
アサルトライフルのストックで窓ガラスをたたき割り銃口を向ける。
4人の特殊部隊に降りろって言われたら降りるしかないよね。
「標的確保!護送を願う!」
「こちらブラボー1直ぐに向かう。」
すると黒いワンボックスカーか現れて、二人を乗せて。逃走する。
これじゃどっちが加害者か分からないよ。
「撤収急ぐわよ、相手の増援が来てる」
晶ちゃんが指示を出すと皆急いでその場を離れる。
特殊部隊はその場に待機して増援の足止めをしていた。
そりゃもう、昔の刑事ドラマ張りに撃ちまくっていたね。
ショットガンじゃないだけまだかわいい方か。
特殊部隊も増援部隊を一掃すると撤収する。
燃え上がる一台の車両とその場に倒れる何人かの群。
警察が来たときには大惨事と化していた。
その後、警察は何らかの事故による車の爆発による【事故】と断定。
それでいいのか?日本の警察。
(4)
唖然としていた。
炎に包まれる、先頭車両。
車を側にとめると後部ドアを開く。
特殊部隊の人が2人の男を押し込めるとすぐに出るように指示する。
車を運転していた冬夜君は、すぐに車を出す。
私は助手席に乗っていた。
後部座席に乗っていた、渡辺君が事情を説明する。
2人とも自分の置かれている状況を把握したのだろう。
渡辺君の話をすんなり受けていた。
「あんた達の身柄は俺達が保証する。その代わり俺達の指示に従ってもらう」
ゴッドさんとルークさんは大人しく従う。
車はウィザードさんの居る別荘に向かった。
追跡が来ないのは志水さんの兵隊さん達の足止めと誠君のルート案内のお蔭だろう。
誠君は上手く誘導しながら信号を弄っていく。
別荘に着くと二人を下ろす。
「ここでしばらく大人しくしてもらおうか?」
渡辺君がそう言うと、冬夜君を見て言う。
「君が片桐冬夜か?」
ゴッドさんがそう言う。
「そうだけど」
「地元銀行の人間もいると調べはついてるが」
「いるけど」
冬夜君はあっさり答えた。
「地元銀行”サンキュー”な。忘れるなよ」
ゴッドさんは謎の言葉を残して別荘に入った。
「冬夜君どういう意味?」
私は冬夜君に聞いてみた。
「わからない、檜山先輩と相談してみるよ」
「そうだね」
「よし、任務完了。俺達も撤収するか。向こうもすでに撤収済みだってよ」
渡辺君が言うと、やっと皆が笑みをこぼす。
「後の事は明日考えよう。今日はみんなおつかれさんでした」
護送に使った車は廃棄処分にした。
私達は自分の車で帰りに着く。
「冬夜君お疲れ様」
「ありがとう」
「これでエゴイストは壊滅だね」
「どうかな?」
「え?」
「やっぱりハーミットの存在が気になる。それに高橋グループの事も何も解決していない」
「それはこれから……」
「それ以前にエゴイストの組織を解明する必要があるよ」
「ゴッドさんに聞くのじゃ駄目なの?」
「その尋問は晶さんに任せるとしよう」
「そうだね」
時間は既に夜が明けようとしていた。
「まいったな、今日も徹夜か」
「そうだね、でもちゃんと寝ないとダメだよ?」
「わかったよ」
車が家に到着すると私たちは車を降りて家に入る。
冬夜君は部屋着に着替えるとベッドに入る。
スマホを弄っていたけど。
「どうしたの?」
「いや、誠に相談しておこうと思って」
「『地元銀行サンキューな』どういう意味か分かるか?」
「それは、お前の得意分野だろ?何かの暗号だと思う」
「やっぱり暗号か……」
冬夜君は考え込んでいる。
そんな冬夜君に抱き着いてみた。
「愛莉?」
「今日はゆっくり寝よう?そんなに寝る時間無いけど、少しでも寝ておいたほ方がいいよ」
「そうだね、おやすみ愛莉」
「うん、おやすみなさい」
私達はまた一枚切札を手に入れた。
だけど肝心のエゴイストの全容を解明するには時間が必要だった。
ピピピピ……。
アラームを止める。
今日も雨だ。
ずっと雨が続いている。
でもあと1週間もしたら梅雨が明ける。
それまでの我慢だ。
そしたら暑い日々が待っているんだけど。
とりあえず今はずっとしがみ付いている愛莉をどうにかしなければならない。
方法はたった一つしかないんだけど。
愛莉は僕の事を何だと思ってるんだろうか?
単なる抱き枕?
それはないか。
多分愛されているんだろう。
僕も愛莉の事を愛している。
朝から何を考えているのやら。
とりあえず愛莉を起こす唯一つの方法を試みる。
しがみつかれたままでは埒があかないから。
「おはよう愛莉」
言葉と共に唇を重ねる。
するとぱっちり目を開けると愛莉の僕の背中に回した腕に力がこもる。
「おはよう冬夜君~」
「まったく、毎朝毎朝……」
「えへへ~」
愛莉は窓の外を見る。
「今日も雨なんだね」
「そうだな」
「じゃあ今日もゆっくりできるね」
「ゆっくりさせてくれるの?」
「う、うぅ……そうきますか?」
愛莉は困っている。
そんな愛莉を見て自然と笑みがこぼれる。
「とりあえず起きようか?」
「えぇ~、いつも寝坊助の冬夜君が起きるなんて。絶対意地悪してるでしょ~?」
愛莉の腕をほどくと上身を起こす僕、そんな僕の腰に愛莉は再び腕を回す。
「や~だ~。もっとのんびり過ごすの~」
そんなに胸をくっつけると、僕だって健全な男子なんだぞ?
愛莉は下半身の異変にすぐに気づく。
「ほら、こんなに反応してるじゃない~」
したり顔で言う愛莉。
「反応してたらどうするんだい?」
愛莉は前は時間がないから駄目って言ってたろ?
「う~ん……」
愛莉は悩んでいる。
愛莉は時計を見る。ご飯の時間まで30分も無い。
「うん!今の私なら出来る!」
愛莉はいきなり僕のズボンをパンツ事引き下ろす。
「ちょっと愛莉何やってるの!?」
「私の事は夜構ってくれたらいいから今は冬夜君を満足させてあげる~♪」
そう言って愛莉は僕の硬くなったそれを口にくわえる。
いつの間にそんなこと覚えたんだ……って前からやってたか。近頃上手になってきたんだよなあ。
ってそんな事言ってる場合じゃない!
何とかしないと。
愛莉を無理やり引き離す。
「やだ、私へたっぴだった?」
寂しそうな顔をする愛莉。
「愛莉が夜まで我慢するなら僕も夜まで我慢するから」
「今日の冬夜君は冷たいね。いつもならがばーってくるのに……」
「ご飯食べたらいちゃつこう?時間今日はあるし……」
「だから~お化粧直ししたり大変なんだよ~?」
最近夜は遅いしと……不満をこぼす愛莉。
拗ねられるのも困るしな……。
仕方ない、愛莉と一緒にベッドに横になる。
「ほら、おいで……」
「わ~い」
愛莉は遠慮なく抱きついてくる。
そんな愛莉を受け止めて、催してくる欲情を押さえながら、30分間愛莉とスキンシップを楽しんだ。
時間になるとスイッチが切り替わったように愛莉は僕から離れると部屋を出る。
朝食の準備だ。
僕はそれを見届けると誠にメッセージ送ってみた。
「朝の欲情どう整理してる?」
誠からすぐに返事がきた。
「……お前もやっと俺の気持ちが分かるようになったか!」
ああ、良く分かるよ。
「で、どうしてるんだ?」
「神奈に優しくソフトにぶつけてるよ。でも遠坂さんなら問題ないんじゃないか?」
「問題あるから相談してるんだよ」
「そういう時の為の動画あるぜ?遠坂さん朝食の準備でいないときあるんだろ?その時にでも自分で処理しろ……いてぇっ!」
わざわざ痛い事まで伝えてこなくていいのに。
「おい、誠に妙な事聞いてるんじゃない!どうせろくでもない回答しかしねえんだから!」
これはカンナだな。
「男同士の相談てあるだろ?誠なら分かると思ってきいただけだよ」
「今ログ読んだ……やっぱりろくでもない事じゃないか!」
「まあ、そうなんだけど」
男にとっては重要な事なんだよ。
「お前が妙な事やってるのを目の当たりにしたときの愛莉の気持ち考えろ!」
「カンナは……見たことあるのか!?」
「しょっちゅうだよ」
「どんな気持ちなんだ?」
「複雑な気持ちだよ。それこそ女性同士でしか分からない事だよ」
「男同士の会話は覗いておいて女性同士は秘密って不公平じゃないか?」
「……そんなに知りたいなら教えてやるよ。凄く悲しくて怒りが沸いてきて、でもしょうがないんだって諦めもあって……」
「……難しいんだな」
「冬夜君ご飯だよ~」
愛莉が呼んでいる。
「じゃあ、そろそろご飯だからまた学校で」
「ちょっと待て話は終わってない」
「学校で聞くよ」
「話せるか!」
「誠によろしく、じゃあな」
「おい、待て!」
部屋を出た。
朝食を食べると支度をして。部屋に戻って着替える。
着替え終えるとデスクトップのPCを起動してネットを見てると誠からファイルが送られてた。
開いてみる。うわあ……。
誠は何でもありだな。
さてこれをみてどう処理するかだけど、今からだと愛莉戻ってくるよな。
ほら話をしていたら愛莉が戻ってきた。
慌てて動画ソフトを消す。
「何見てたの?」
愛莉が聞いてくる。
「うん?いつも通りネット見てただけだよ?」
「そう?」
愛莉は不思議そうな顔をしながら。マグカップをテーブルの上に置くと着替え始めた。
さっきの動画と重なって愛莉が凄くそういう対象に見えてしまう。
毎回言うけど朝の男性の性欲はすごい。
僕でも抑えきれないくらいにすごい。
今日も抑えきれずに着替えてる最中の愛莉を抱いてしまう。
「だから朝からだめだってば~」
本気では怒ってないようだ。
「着替える前なら良いだろ?化粧の前ならいいだろ?」
「うぅ……しょうがないんだから……じゃ、ベッド行こ?」
今日はやけにおとなしく僕の要求を受け入れてくれたな。
まあ、受け入れてくれるならそれでもいいや。
愛莉をベッドに押し倒す。
「乱暴にしちゃいやだからね」
「わかってるよ」
その時愛莉のスマホがなる。
「あ、ごめん。ちょっと出るね」
愛莉が電話に出る。
「あ、神奈おはよう~どうしたの?朝から。……え?今冬夜君に襲われてたところ~♪」
なんでそう言う事を正直に話すんだろうこの子は。しかも嬉しそうに「♪」なんかつけちゃってさ……。
「え?冬夜君と誠君が?……うん、わかった。じゃあまた後でね」
雲行きが怪しくなってきたぞ。
愛莉は僕を見るとにこりと笑って言う。
「冬夜君スマホ見せて♪」
「愛莉それより早く続きやろ?」
「良いから見せて♪」
「時間無いから早くしちゃおう?ゆっくりしたいだろ?愛莉も」
「見せて♪」
大人しく愛莉にスマホを差し出す。
誠との会話を見ているんだろう。
しかし愛莉の笑顔は崩れない。
「だから朝してあげようって言ったのに……」
「それは……愛莉は大事なお嫁さんだろ?性処理の為だけに使うなんて出来ないよ。やっぱり気持ち入れてしたいし」
「私は気持ち込めてしてるよ?」
「愛莉とするならちゃんとしたい」
「その気持ちだけで嬉しいから。仕方ないよね。冬夜君も男だもん」
「愛莉はやっぱり怒る?……そういことしてたら」
「私じゃ駄目なのかな~?って悩むかな~」
現に愛莉は悩んでいるようだ。
「昔冬夜君に怒ったことあったでしょ?そういうの見たら駄目!って。やっぱり妬いちゃうよ。相手がたとえAV女優でも」
「そっか……」
「その代わり冬夜君が求めてきたら出来るだけ応えてあげたいと思ってる」
「それは嬉しいんだけど……」
「逆に聞くけど冬夜君はどうしてそういうの見たいの?私がいるのに」
「愛莉とAV女優は別物だよ。僕がエルトのボーカルが好きなのと同じ感じかな」
「……の、割には私似の人が多いね?」
それなんだよな。なぜか愛莉似の子を無意識に選んでしまう。
愛莉はその間に着替えてしまった。
ああ、朝からするのは失敗か。
落胆する僕に愛莉はとんでもない事を要求する。
愛莉はデスクトップを置いてる机の椅子に座ると「さっき見てたの出して」という。
逆らっても無駄なんだろうな。神奈に全部聞いてるんだろうな。
愛莉の言われたとおりに動画ファイルを開く。
「うわあ、いつ見てもやっぱりすごいね。私にはこんなの無理だよ。……冬夜君もこういうのに憧れる?」
「……まあ、凄いな~とは思うよ」
愛莉と一緒にAVを見てる。若干抵抗があった愛莉も今は食い入るように見てる。
そんな愛莉を見てると……やっぱり欲情するよね。
思わず後ろから愛莉に抱き着いて胸を揉んでしまう
「あっ……」
「ご、ごめん」
そう言って愛莉から離れようとするが愛莉は手を掴んだ。
「それでいいんだよ?」
「へ?」
「今度から一緒に見よう?それで気分が盛り上がったら私にぶつけて。私も精一杯受け止めるから」
愛莉がまぶしく見える。
「ありがとう」
「そんな事しか出来ないから。冬夜君の気持ち少しでも理解したいから……でも今日は帰ってからだね」
愛莉はそう言って笑った。
「ところで、カンナと何話してたんだ?」
「『トーヤと誠またろくでもない相談してる。朝の性処理で困ってるらしい。でも愛莉も頭ごなしに怒るのは止めてトーヤの気持ち受け止めてやれ。浮気されるよりマシだろ?』って」
そんなこと話してたのか……。
「でもさあ~冬夜君って本当に私の気持ち分かってもらえないんだね?」
「え?」
「私が求めたときは受け入れてくれるんだから、冬夜君がそう言う気持ちになったら私だって受け入れるって事くらい分かってよ」
「さっきだめだったじゃん」
「それは電話が来たから。そんなに朝したいならちょっと早く起きよっか?」
「ジョギングの前にやれって言うのか?」
俺の体力ももたないぞ……。
「女の子だって性欲あるんだよ?」
「?」
「だから冬夜君がイチャイチャしてくれてる時は嬉しいの♪」
イチャイチャしてやりたいけど……。
「そろそろ時間だね」
愛莉はそう言うと化粧を終えてバッグを手にする。
僕もバッグを手に持ち二人で部屋を出た。
(2)
「この馬鹿が!!」
学食でカンナに会うといきなり怒鳴られた。
「まあまあ、冬夜も男なんだ察してやれ」
渡辺君が庇ってくれる。
「私は嫌じゃないよ。今の冬夜君。私に構ってくれるし~」
一人嬉しそうな愛莉。
「それより話なんだが、予定が決まったらしい」
「予定?」
僕は渡辺君に聞いていた。
「高橋蒼良の輸送日時……来週明けにやるらしい」
話題が一変した。
「止める方法はあるの?」
海外に逃げられたらアウトだ。
「計画は恵美さんと晶さんが練ってある」
渡辺君がそう言うと二人を見る。
恵美さんは話す。
「今回は相手もかなりの警戒網を敷いてる。強引に突破するのは可能だけど、蒼良を人質にされたら打つ手がない。だから手薄な時を狙うわ」
「手薄な時?」
「相手が自分の陣地から飛び出した時よ」
「……移動中を狙うって事?」
僕が言うと恵美さんが頷いた。
「そう?この地図を見て」
恵美さんがノートPCを開く。二つのポイントがありそれを結ぶ線がある。恐らく現在地と船の停泊してる港。それを結ぶ経路だろう。
「山道ってそんなに選択肢がないでしょ?多分その経路であってるはず」
「経路があってても移動中に狙うなんて不可能でしょ」
「質問です。車が必ず止まる時っていつだと思う?」
「は~い、信号が赤の時~」
愛莉が答えると恵美さんはにこりと笑った。
「正解よ。愛莉ちゃん」
「わ~い」
喜んでいる愛莉。でも、山道だろ?信号なんてそんなにないし必ず赤とは限らないんじゃ?
「交通管制センターって知ってるか?トーヤ」
カンナが言うと僕は首を振った。
「分かりやすく言うと信号を制御してるシステムだ。……あの馬鹿それを弄るらしい」
……お前の将来はどこに向かっているんだ誠。
「でも、山道なら信号で車を止めるにも限界がある。誰もいなければ突っ切ってしまう事も」
「そうね、でも必ず一度は止まる。皆もそうじゃない?見通しの悪い深夜の交差点なら絶対に止まってしまう。そうでしょ?」
「そうだね、車がきたらあぶないもんね」
「その一瞬があれば十分、あとは望が何とかしてくれる」
石原君が?
皆が石原君を見る。
「自信はあります、訓練は受けました」
何の訓練を受けたんだ、石原君。
「一瞬車が止まれば望が足止めする。あとは晶さんの兵隊が何とかしてくれる」
凄く簡単に言ってるけど、それってもう未成年の飲酒とか言うレベル通り越した立派な犯罪だよ?
愛莉はさすがに理解し難い様だ。
「あとは拉致して、いつもの場所に収容するだけ。そうだな?」
渡辺君が言うと、恵美さんがはにこりと笑った。
「大丈夫、兵の手配は済んでるわ。今は相手の小屋を監視してる。万が一予定に変更があればいつでも襲撃できるように」
大学の学食で話す話題じゃないぞ。
もっともみんなサバゲーの話か何かと混同してると思うけど。
「じゃあメンバーは当初の予定に酒井夫妻を連れて行こう。週明けだけど大丈夫か冬夜」
「……僕がいかないと話にならないでしょ?」
酒井君は「え?僕も巻き込むんですか?」という顔をしている。
こうして僕達の2度目の戦いが始まった。
(3)
「こちらデルタ4よりアルファ1へ。標的の位置を確認したい」
「こちらアルファ1データ・リンクを開始する」
無線が飛び交う中、僕達は道路を見下ろす形で茂みの中に待ち構えていた。
そこは山を下りてきて平たんな道になっている。
信号機は既に赤のまま変わろうとしない。
多田君からは「捕獲完了」とメッセージが来ている。
君はどこかの鷹かい!?
「目標まもなくポイントAに到着予定」
「目標の数を確認したい」
「3台だ標的は中心の車の後部座席」
「了解」
石原君が匍匐して手にした大型ライフルの照準を道路に向けてあわせる。
「望、どう?」
「遮蔽物特になし。視界は良好」
どう考えてもBB弾じゃないよね。
晶ちゃんはタブレットを見ている。
迷彩柄のカーゴパンツにパーカーを着ている。
ちなみに僕はいつものジャージ姿。
黒にしたけど。
情報通り3台の車がやってきた。前後の高級車に挟まれるような形でワンボックスカーが走っている。
信号で止まった。
「最初に先頭の車両を狙います」
そういうと石原君は引き金を引いた。
弾丸は窓ガラスを突き破り。後部座席中心の床を突き抜けた。
後輪駆動の車はシャフトを撃ちぬくと自然と動かなくなってしまう……って前に爆発したよ。
ちょっと何やってんの!?
「劣化ウラン弾だから当然です」
そんなドヤ顔で言わないで。
中央の車は爆風でフロントガラスにひびが入り操作不可能な状態になる。
後ろの車から警護の人間が飛び出すと。忍んでいた、特殊部隊が警護の人間に襲い掛かる。
さすがに殺しはしないよ。殺したらラブストーリーどころじゃなくなるよ。
スタンガンで気絶させていく特殊部隊。
しかし中央の車両に配置されていた警護兵はこちらの事情などお構いなくパンパンと乾いた音を立てて銃を撃ってくる。
たしかに先制攻撃したのはこっちだけどね。
そんなことしたら駄目だよ。そんな手持ちのトカレフじゃ特殊部隊のボディアーマーは破れないよ。
撃ってきたらこちらの特殊部隊も遠慮しない。いや、元々遠慮なんて言葉もちあわせていなかったけどね。
アサルトライフルのストックで窓ガラスをたたき割り銃口を向ける。
4人の特殊部隊に降りろって言われたら降りるしかないよね。
「標的確保!護送を願う!」
「こちらブラボー1直ぐに向かう。」
すると黒いワンボックスカーか現れて、二人を乗せて。逃走する。
これじゃどっちが加害者か分からないよ。
「撤収急ぐわよ、相手の増援が来てる」
晶ちゃんが指示を出すと皆急いでその場を離れる。
特殊部隊はその場に待機して増援の足止めをしていた。
そりゃもう、昔の刑事ドラマ張りに撃ちまくっていたね。
ショットガンじゃないだけまだかわいい方か。
特殊部隊も増援部隊を一掃すると撤収する。
燃え上がる一台の車両とその場に倒れる何人かの群。
警察が来たときには大惨事と化していた。
その後、警察は何らかの事故による車の爆発による【事故】と断定。
それでいいのか?日本の警察。
(4)
唖然としていた。
炎に包まれる、先頭車両。
車を側にとめると後部ドアを開く。
特殊部隊の人が2人の男を押し込めるとすぐに出るように指示する。
車を運転していた冬夜君は、すぐに車を出す。
私は助手席に乗っていた。
後部座席に乗っていた、渡辺君が事情を説明する。
2人とも自分の置かれている状況を把握したのだろう。
渡辺君の話をすんなり受けていた。
「あんた達の身柄は俺達が保証する。その代わり俺達の指示に従ってもらう」
ゴッドさんとルークさんは大人しく従う。
車はウィザードさんの居る別荘に向かった。
追跡が来ないのは志水さんの兵隊さん達の足止めと誠君のルート案内のお蔭だろう。
誠君は上手く誘導しながら信号を弄っていく。
別荘に着くと二人を下ろす。
「ここでしばらく大人しくしてもらおうか?」
渡辺君がそう言うと、冬夜君を見て言う。
「君が片桐冬夜か?」
ゴッドさんがそう言う。
「そうだけど」
「地元銀行の人間もいると調べはついてるが」
「いるけど」
冬夜君はあっさり答えた。
「地元銀行”サンキュー”な。忘れるなよ」
ゴッドさんは謎の言葉を残して別荘に入った。
「冬夜君どういう意味?」
私は冬夜君に聞いてみた。
「わからない、檜山先輩と相談してみるよ」
「そうだね」
「よし、任務完了。俺達も撤収するか。向こうもすでに撤収済みだってよ」
渡辺君が言うと、やっと皆が笑みをこぼす。
「後の事は明日考えよう。今日はみんなおつかれさんでした」
護送に使った車は廃棄処分にした。
私達は自分の車で帰りに着く。
「冬夜君お疲れ様」
「ありがとう」
「これでエゴイストは壊滅だね」
「どうかな?」
「え?」
「やっぱりハーミットの存在が気になる。それに高橋グループの事も何も解決していない」
「それはこれから……」
「それ以前にエゴイストの組織を解明する必要があるよ」
「ゴッドさんに聞くのじゃ駄目なの?」
「その尋問は晶さんに任せるとしよう」
「そうだね」
時間は既に夜が明けようとしていた。
「まいったな、今日も徹夜か」
「そうだね、でもちゃんと寝ないとダメだよ?」
「わかったよ」
車が家に到着すると私たちは車を降りて家に入る。
冬夜君は部屋着に着替えるとベッドに入る。
スマホを弄っていたけど。
「どうしたの?」
「いや、誠に相談しておこうと思って」
「『地元銀行サンキューな』どういう意味か分かるか?」
「それは、お前の得意分野だろ?何かの暗号だと思う」
「やっぱり暗号か……」
冬夜君は考え込んでいる。
そんな冬夜君に抱き着いてみた。
「愛莉?」
「今日はゆっくり寝よう?そんなに寝る時間無いけど、少しでも寝ておいたほ方がいいよ」
「そうだね、おやすみ愛莉」
「うん、おやすみなさい」
私達はまた一枚切札を手に入れた。
だけど肝心のエゴイストの全容を解明するには時間が必要だった。
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