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4thSEASON
焔の真実で
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(1)
スマホの着信音が鳴る。
佐(たすく)を起こさない様に部屋の外に出て電話に出る。
「もしもし冬夜君?おはよ~」
「今何時?」
「6時半だよ」
「愛莉昨日遅くまで騒いでたんだろ?眠くなかったの?」
「冬夜君にモーニングコールしてあげようと思って頑張ったんだよ!」
「ありがとう」
「えへへ~」
愛莉の嬉しそうな声でテンションが上がる。
「じゃあ、佐起こして飯食ってくるから」
「冬夜君今日も頑張ってね」
「ああ、やれるだけの事はやるよ」
「そうじゃないでしょ!絶対勝たなきゃダメ」
「勝負に絶対はないよ」
「私お祈りしてるもん」
それなら勝てそうな気がする。
「負けられないな」
「でも……無理して怪我とかしちゃだめだからね」
「わかってるよ」
「じゃあ、私朝食の準備とかあるから」
「僕いないのに愛莉がやってるの?」
「だって、やらなかったら私ただの居候だよ?」
「まあ、そうだけど……」
何やってんだうちの親は。
「お洗濯とかもさせてもらってるよ」
昨日佐倉さんに言ったな。僕もその手に乗ろう
「帰ったらデートしような」
「わ~い……でも」
でも?
「冬夜君前に言ってたよ。それ死亡フラグって言うんだって」
ああ。
「愛莉とゴールインする前に死ぬわけには行かないよ」
「帰ったら結婚するんだ……的なセリフもNGって言ってたよ」
そうだったな。
「ぶーっ。気をつけて帰ってきてね。あ……」
「大会終わるまで帰ってこなくていいからね!決勝は見に行くから」
決勝まで残れって事ね。
「わかったよ。待ってる」
「うん、皆と行くから?」
「ああ」
「じゃあまた夜に」
「はい」
電話を終えると部屋に戻る。佐が準備してた。
佐は僕を見ると一言いう。
「お前も早く準備しろよ」
「ああ」
今日もホテルのレストランで朝食。
朝食を食べながら佐倉さんの解説入りでタブレットの動画を見る。
「気づくことありませんか?」
「3Pが殆どだな」
佐が言うと佐倉さんがうなずく。
「相手身長が無いからインサイド捨ててアウトレンジからの精度を高めてます。片桐先輩並みのシュート力と思ってください。ノーマークで打たせたら確実に決めてきます」
「マンツーで守るしかないって事か?」
真司が言う。
「ゾーンを広げるって手もありますが……」
その先は聞かなくてもわかる。うちにはインサイドでしっかり決められる選手がいない。それに……。
「相手もオールコートのマンツープレスです。藤間先輩狙われますよ」
佐倉さんは蒼汰にプレッシャーをかける。
「マジっすか!?勘弁してくださいよ」
蒼汰は悲鳴を上げる。
「大会前から言ってきましたよね?片桐先輩が押さえられないならパスの供給源を断つって。まさか何の対策もしてないなんてないですよね」
「そりゃ、してますよ。女子のゾーンプレスにも対応してきたし」
「じゃあ、問題ないはずです。準々決勝くらいで抑えられてたら話になりませんよ」
決勝は確実にダブルチーム仕掛けてくるはずだからと付け足す佐倉さん。
「ま、任せてください。ちゃんとパスだすから!」
「他の皆も覚悟してください。ここから運動量は確実に増えますよ。藤間先輩にパスコース作ってあげないと!」
「練習の成果みせてやるから、安心して見とけって」
恭太が言う。
朝食を終えると、皆部屋に戻り準備をしてからバスに乗り込む。
会場につくと第一試合の選手が練習を行っていた。
「よお!」
誰かが声をかける。
別府の大学の帆秋さんだ。
「やあ、別府の大学も勝ち残っていたんだね」
「ああ、お前らとは準決で当たるらしいな」
「お互い勝ち残れたらね?」
「勝ち残ってもらわないと困るんだよ。今度こそ勝って桜子ちゃんにアタックするんだ」
「それは無理だと思うよ」
「なんで?」
「佐倉さんには彼氏できたから」
「はあ?マジかよきいてないぞ!本当か桜子ちゃん!?」
帆秋さんは佐倉さんに聞くと佐倉さんは佐の腕を掴んだ。
「この人が私の彼氏です」
「お前はいつぞやのでこすけ!」
「覚えていてくれたか?」
余裕の表情の佐。
「じゃあ準決で勝負しようじゃないか!桜子ちゃんをかけて」
「大事な彼女を賭けにつかうわけねーだろ」
帆秋さんの提案に乗る様子もない佐。だけど。
「うちのチームに勝てると思うならどうぞ。ただし付き合うかどうかは別だけど」
「アタックはしていいんだな?」
「勝てると思うなら」
「よっしゃ、燃えてきた!桜子ちゃん見ててくれよ、俺達だって遊んでたわけじゃねーから」
「こっちも同じセリフです」
「じゃあ、また明日コートで会おう」
そういって別府の大学のチームは去っていった。
「大丈夫なのか?桜子」
佐が聞く。
佐倉さんはにこりと笑って言った。
「私達の目標は優勝です。こんなところで躓くわけにはいきませんよね?それに皆さんだって確実にレベルアップしてます。マネージャーの私が保証します。自信もって」
だが第一試合、番狂わせが起きた。
第一試合熊工大が別府の大学を破った。
それも大差をつけて。
完全にインサイドを支配され、パスも尽く断たれ迂闊にドリブルすればチャージングを取られ、ディフェンスも相手のポンプフェイクに翻弄されあっという間に5ファールで退場。
佐倉さんも完全にノーマークだったらしい。
それもそのはず、途中まで出場していなかったのだから。
今年の新人らしい。
項垂れて帰る別府の大学のメンバー。
声をかけづらい。
「まずはみなさん、この一試合ですよ!」
「そうだな!まずは勝つぞ!話はそれからだ!」
佐倉さんと真司が言うと皆気合を入れる。
ベンチに座ると監督が言う。
「慢心は禁物だというのはさっきの試合でわかったでしょう。そしてこの試合、日頃の練習の成果を試すいい機会です。勝ちますよ」
女バスはもうベスト4を決めたと付け足す。
「じゃあ、勝ちに行きますか。気合入れるぞ!」
「おお!」
真司が言うと皆雄たけびを上げる。
相手の選手と整列する。
相手の方がはるかに背が低い。
それでも勝ち残ってきた相手。足が勝負か?
今ジャンプボールがあげられた。
(2)
昨日のテレビ報道には驚いた。
まさか、自分たちから宣戦布告してくるとはな。
此方の規模を知らないらしい。
俺はにやりと笑う。だが、エゴイストの名前は出さなかったらしいが明らかにイメージを悪くさせられた。
何か対策を講じねば。
ネットの書き込みにはすでに対策を講じている。
だが妙だ。
あれだけ挑発しておいて何も仕掛けてこない。
あの報道が仕掛けと言えば仕掛けだが。
あそこまで開き直られるとどうしようもない。
あの後ゴッドから電話があった。
警告だ。
俺は焦った。
だがゴッドは言う
「お前の事は高く評価している、こんなところで躓く奴ではないはずだ」と。
プレッシャーがかかる。
しくじれば粛正……。
ゴッドが直々に粛正に乗り出せば俺は社会的にも抹殺される。
これまでのようやスキャンダルのタレコミは通用しない。
どうすればいい?
相手が何か仕掛けてくればそれに対応すればいいのだが何も仕掛けてこない。
ただのにらみ合いが続く。
それとも何か裏で動いている?
ウィザードの住所は転居させた。
そして明後日にはエゴイスト初の会合がある。
こんなところで目的を潰されるわけには行かない。
だが、どうすればい?
焦る。
焦ったら負けだ。
焦らせるのが奴らの手口か?
先に手を出したら負ける。
こんな勝負エゴイスト発足以来初だ。
どんな相手も潰していった。
だが、ユニティは潰すどころか逆に挑発される始末。
失態だ。
汚名を返上せねば。
どうすればいい?
奴らの急所であった竹本と西松はもう急所ではなくなった。
別の弱点を探さねば。
とりあえずはウィザードに連絡する。
「首尾はどうだ?」
返事がない。
「どうしたウィザード」
「すまん、明後日の会合まで待ってくれ、必ず行く」
「何があった?」
「今連絡を取るのは危険だ」
「どういう事だ?」
「エンペラーもPCの電源を落としてくれ」
それでは皆と連絡がつかない。
「理由を言え」
「ここで話せない」
「わかった。だがサーバーは落とせんぞ」
「どうしても無理か?」
「理由を聞くまでは無理だ」
「奴らの方が一枚上手だった。と言えば察しが着くか?」
まさか……。
「また住所の変更か?」
「出来ればお願いしたい」
この役立たずが!
「お前に接触して俺達の事が分からないという確証はあるのか?」
「それは大丈夫だ。俺の素性は何とか隠せた。だが住所は特定されてる」
「いいだろう?すぐに手配する」
「助かる」
引越しばかりしていては目立つのではないのか?ゴッドに判断を仰ぐしかないな。
「お前は二度しくじった。次は無いと思え」
「分かってる……次はやり方を変える予定だ」
「ほう?」
「その内容も後で報告する。ここは危険だ」
「わかった」
「じゃあ、あまり長く通信してるのも危険なので落ちる」
「失望させるなよ」
「任せてくれ」
「期待している」
もはやあてにはしてないがな。
ゴッドに電話する。
「次のウィザードの手配をお願いします」
「またしくじったのか?」
「そのようで」
「処分はどうする?」
「次しくじったら粛正だと脅しはかけています」
「次は上手くいくのか?」
「いい手を思いついたそうです」
「……次は無いぞ?」
「そう言ってあります」
「わかった」
電話が切れた。
俺も何か策を練らねばならない。
次の狙いは誰にする?
ホットな話題を送らねばな……。
だが、それもまずはサイトの復興からだ。
ゴッドの力を使えばマスコミにリークも可能だと思うが、それは奥の手だ。
ウィザード次第か?
しかしウィザード一人にすべてを任せるのは危険な気がしてきた。
もっと優秀な人材を準備する必要があるのではないか?
そんな予感がした。
(3)
「嵌められた!」
俺は叫んでいた。
「どうした誠?」
神奈が不思議そうに聞いている。
「奴らに一歩先を行かれた」
「どういう意味だ」
あいつらはサーバーに仮想空間を作っていてそこにまんまとおびき寄せられた。
捕獲される前に逃げ出せたが、足跡を急いで消さないと。
慌ててPCを操作する。
「誠……?」
「静かにしててくれ!」
ただならぬ俺の様子を察したのか神奈は何も言わない。
しばらく作業を続ける。
そして終わった。
「ふぅ助かった」
「どうしたんだ誠?」
不安気に俺を見る神奈。
「すまん、ちょっとドジ踏んだ」
「ドジ踏んだって?」
「あまりにもセキュリティが無い、誰もアクセスした痕跡がない。違和感を感じた時には手遅れだった。奴らサーバーの中に仮想サーバーを構築してたんだ。そこにまんまとはめられた」
「それで?」
「間一髪で逃れた。大学のサーバー踏み台にしてたからこっちのIPまでは抜かれてない。大丈夫だ」
「大学バレたら問題じゃないのか?お前不正アクセスしてたことバレちまうじゃないか?」
「そこまで間抜けじゃない。ちゃんと足跡消したよ」
「私達大丈夫なのか?」
「ああ、これまで通り生活できるよ」
「無理するなよ。もう相手の顔分かってるんだろ?後は恵美に任せてれば」
「大丈夫さ、こっちもちょっと悪戯してきた」
「悪戯?何やったんだお前?」
神奈の表情が険しくなる。
「PCとスマホのアカウントさ。同期させてる奴多いよな?」
「ああ、SNSサイトとかか。確かに一々変えるのは面倒だよな」
神奈がそう言うと俺はにやりと笑う。
「そのSNSサイトのアカウントを引っこ抜いてきた。これでスマホも傍受可能だ」
「それってつまり?」
「最近Wi-Fi使って普通の電話じゃなくてSNSの通話する奴多いだろ?多人数同時通話とか」
「お前ハッキングの次は盗聴か!?」
「それだけじゃない、ウィルスに感染した奴ら全員のスマホの番号抜きとれる。恵美さんに渡せば調査が楽になるだろ?」
「お前本当にヤバいやつになっちまったな」
神奈は呆れていた。
反撃の準備は整った。いつでもいけるぜ!渡辺君!
(4)
「くくく、まんまと罠にはまったな」
俺はにやりと笑っていた。
部屋には無数のPCとモニターとキーボードが並んである。
それらを同時に操りながら、サーバーに侵入してきた奴を特定する。
が、特定する前に逃げられた。
私立大のサーバーを踏み台にして侵入してたらしい。
私立大のサーバーから先もいくつか踏み台のPCを用意していたらしい。
本人の特定までは至らなかったが。
私立大のサーバーに侵入できるユニティのメンバーは限られる。
多田誠か桐谷瑛大、神崎咲良だ。
この三人の住所等は既に特定できてる。
エンペラーに土産話を送ってやらないといけないな。
3人について調べ上げる。
1つ興味深い情報があった。
多田神奈。多田誠の配偶者。
彼女の母親はバツイチらしい。
そしてその前夫は……。
「ははは」
俺は笑い声をあげる。
俺はその情報を匿名掲示板に流す。
彼女の性格まで把握してる。
しかもこんなトラウマを抱えていたとはな。
その事をエンペラーに伝える。
エンペラーは「よくやった」と言ってくれた。
この分だと他の連中にもまだ粗がありそうだ。
じっくりと調べることにした。
やられっぱなしじゃ済まない質でな、悪く思うなよ?
先に仕掛けたのはそっちだ。覚悟はできてるんだろ?
次に興味が湧いたのは神崎咲良だった。
神崎自体に問題はないがその彼氏檜山春樹に問題がある。
彼の父親の銀行とユニティのメンバー白鳥春奈の父親の会社に何か問題があるらしい。
現に、白鳥カンパニー、白鳥春奈の父親の会社は、地元銀行の全株を酒井カンパニー・酒井善幸の会社に売却してる。
何かあったに違いない。
攻撃の手がかりは掴んだ。
これで粛正は免れるな。
じわりじわりと痛めつけてやる。
(5)
この日も試合には勝った。
あと二つ勝てば優勝だ。
その日ホテルの会議室でミーティングが行われた。
相手のポンプフェイクに惑わされない事。ドリブルは慎重に行う事、特に僕と祐樹。
相手の身長が高い事。インサイドにむやみに突っ込むのは危険だと指摘された。
ならロングレンジから攻撃すればいい。
いつも通りの攻撃でいい。
その代わりディフェンスで迂闊にファールをとられない様に気をつける事。
カウントワンスローなんてとられたら3Pをとる意味が無くなってしまう。
恭太にプレッシャーがかかる。
だけど佐倉さんは言う。
「これは決勝の前哨戦です。決勝に勝ち上がってくるだろう福岡大のセンターに比べたら格下です。ここで負けてたら話になりませんよ」
佐倉さんは恭太にプレッシャーをかける。
それでミーティングは終わった。
部屋に戻ると佐倉さんのマッサージが始まる。
「ああ、極楽極楽~」
「呑気な事言ってないで少しは明日の試合の事考えたらどうなんですか?絶対先輩の3P潰しにかかりますよ」
「大丈夫だよ、僕が少しでもディフェンス引き付けたらいいんだろ?」
「言ってる事は正しいですけど、もう少し緊張感を持ったって……」
「冬夜これって、神奈さんのことじゃないのか!?」
佐がスマホを見せる。
内容を見て愕然とした。
多田神奈は父親に犯された。
「なにそれ……酷い」
佐倉さんは怒りを露にする。
しかしそれだけじゃなかった。
その父親に二度目の接触があった時、片桐冬夜を盾にして逃げた。片桐冬夜は父親に刺されて入院した。
そんな書き込みにものすごいレスが着く。
渡辺班のグループメッセージを開く。
皆その話題でもちきりだ。
渡辺班しか知らない事実。
どうして漏れた?
誰もリークしていないという。
ならばネットで検索をかけた?
当時の神奈の姿も投稿されている。
僕の険しい表情を見て佐が言う。
「まさか、事実なのか?」
「……刺されたのは事実だよ」
「こりゃ、別の意味で明日大変だな」
佐が頭を抱える。
「ここまで卑劣な事をやるなんて、またエゴイストですか?」
「多分ね」
佐倉さんの質問に僕は答える。
マッサージを終えた佐倉さんは部屋を出る。
そこまでは普通だった。
「ちょっと何してるんですか!」
その声に真っ先に反応する僕。
部屋を出るとカメラを持った男が逃走を図っていた。
逃がすか!?
咄嗟に追いかけ男を取り押さえる。
何事かと他の宿泊客が外に出る。
「お前もエゴイストか!?」
僕が怒鳴りつけると。男は首を振る。
佐があとからやってきてカメラを押収すると中身を確認する。
僕達の部屋から佐倉さんが出てきた瞬間だ。
佐は無言でそのファイルを削除する。
「冬夜もういい、離してやれ」
「でも」
「今は大会中だ。妙な騒ぎは起こさない方が良い」
佐がそう言うと男を解放する。
佐がカメラを返すと「行けよ」といい、男は逃げて行った。
「放っておいていいの?」
僕が聞くと佐は佐倉さんに言う。
佐倉さんはにこりと笑ってスマホを見せる。
男の画像が収められていた。
その画像をユニティのグループに送信する。
「大変だったな?」
渡辺君は言う。
「そっちは?カンナ大丈夫か?」
僕が聞くと「その事で皆集まってる」という。
「桜子は部屋に戻ってろ。気をつけてな」と佐が言うと、佐倉さんは部屋に戻る。
「ごめん、僕愛莉に電話するから」
「気をつけろよ」
そう言って、佐は部屋に戻る。
愛莉に電話する。
「もしもし冬夜君~」
いつもの調子で話す愛莉。
「愛莉、そっちは大丈夫か?」
「うん、大丈夫だよ。ただ神奈がちょっと動揺してるだけ。あ、神奈に替わるね」
そう言って愛莉はカンナと替わった。
「トーヤか、済まない。わたしのせいで……」
「大丈夫だよ。カンナこそ大丈夫か?」
「ああ、大丈夫だ。まさかあんな過去の事まで蒸し返されるとはな……」
全然大丈夫じゃないじゃないか。
「明後日の試合にはみんなで応援いくからな!?明日負けるなよ!」
「分かってる。心配しないで」
「ああ、じゃあ愛莉に替わるわ」
「もしもし冬夜君?」
「どうした?」
「渡辺君から伝言『こっちの事は気にするな、今は試合に集中しろ』だって。私もそう思う」
「わかった、ありがとうって伝えておいて」
「冬夜君、明日帰ってこなくていいからね!」
「分かってるよ」
「じゃあ、また」
「ああ、おやすみ」
電話はそれで終わった。
「冬夜お前が一番心配なんだぞ?ユニバーシアード大丈夫か?」
「僕が悪いことしたわけじゃないんだから大丈夫でしょ」
「ならいいんだけどな」
「それより、大会終わった後の取材とか大変かも。佐たちも」
「バスケの話題で取材なら歓迎なんだけどな」
「確かに」
やられたらやり返すのがユニティの流儀。
それをただ実行するのみ。
その反撃の機会を今はただ伺っていた。
スマホの着信音が鳴る。
佐(たすく)を起こさない様に部屋の外に出て電話に出る。
「もしもし冬夜君?おはよ~」
「今何時?」
「6時半だよ」
「愛莉昨日遅くまで騒いでたんだろ?眠くなかったの?」
「冬夜君にモーニングコールしてあげようと思って頑張ったんだよ!」
「ありがとう」
「えへへ~」
愛莉の嬉しそうな声でテンションが上がる。
「じゃあ、佐起こして飯食ってくるから」
「冬夜君今日も頑張ってね」
「ああ、やれるだけの事はやるよ」
「そうじゃないでしょ!絶対勝たなきゃダメ」
「勝負に絶対はないよ」
「私お祈りしてるもん」
それなら勝てそうな気がする。
「負けられないな」
「でも……無理して怪我とかしちゃだめだからね」
「わかってるよ」
「じゃあ、私朝食の準備とかあるから」
「僕いないのに愛莉がやってるの?」
「だって、やらなかったら私ただの居候だよ?」
「まあ、そうだけど……」
何やってんだうちの親は。
「お洗濯とかもさせてもらってるよ」
昨日佐倉さんに言ったな。僕もその手に乗ろう
「帰ったらデートしような」
「わ~い……でも」
でも?
「冬夜君前に言ってたよ。それ死亡フラグって言うんだって」
ああ。
「愛莉とゴールインする前に死ぬわけには行かないよ」
「帰ったら結婚するんだ……的なセリフもNGって言ってたよ」
そうだったな。
「ぶーっ。気をつけて帰ってきてね。あ……」
「大会終わるまで帰ってこなくていいからね!決勝は見に行くから」
決勝まで残れって事ね。
「わかったよ。待ってる」
「うん、皆と行くから?」
「ああ」
「じゃあまた夜に」
「はい」
電話を終えると部屋に戻る。佐が準備してた。
佐は僕を見ると一言いう。
「お前も早く準備しろよ」
「ああ」
今日もホテルのレストランで朝食。
朝食を食べながら佐倉さんの解説入りでタブレットの動画を見る。
「気づくことありませんか?」
「3Pが殆どだな」
佐が言うと佐倉さんがうなずく。
「相手身長が無いからインサイド捨ててアウトレンジからの精度を高めてます。片桐先輩並みのシュート力と思ってください。ノーマークで打たせたら確実に決めてきます」
「マンツーで守るしかないって事か?」
真司が言う。
「ゾーンを広げるって手もありますが……」
その先は聞かなくてもわかる。うちにはインサイドでしっかり決められる選手がいない。それに……。
「相手もオールコートのマンツープレスです。藤間先輩狙われますよ」
佐倉さんは蒼汰にプレッシャーをかける。
「マジっすか!?勘弁してくださいよ」
蒼汰は悲鳴を上げる。
「大会前から言ってきましたよね?片桐先輩が押さえられないならパスの供給源を断つって。まさか何の対策もしてないなんてないですよね」
「そりゃ、してますよ。女子のゾーンプレスにも対応してきたし」
「じゃあ、問題ないはずです。準々決勝くらいで抑えられてたら話になりませんよ」
決勝は確実にダブルチーム仕掛けてくるはずだからと付け足す佐倉さん。
「ま、任せてください。ちゃんとパスだすから!」
「他の皆も覚悟してください。ここから運動量は確実に増えますよ。藤間先輩にパスコース作ってあげないと!」
「練習の成果みせてやるから、安心して見とけって」
恭太が言う。
朝食を終えると、皆部屋に戻り準備をしてからバスに乗り込む。
会場につくと第一試合の選手が練習を行っていた。
「よお!」
誰かが声をかける。
別府の大学の帆秋さんだ。
「やあ、別府の大学も勝ち残っていたんだね」
「ああ、お前らとは準決で当たるらしいな」
「お互い勝ち残れたらね?」
「勝ち残ってもらわないと困るんだよ。今度こそ勝って桜子ちゃんにアタックするんだ」
「それは無理だと思うよ」
「なんで?」
「佐倉さんには彼氏できたから」
「はあ?マジかよきいてないぞ!本当か桜子ちゃん!?」
帆秋さんは佐倉さんに聞くと佐倉さんは佐の腕を掴んだ。
「この人が私の彼氏です」
「お前はいつぞやのでこすけ!」
「覚えていてくれたか?」
余裕の表情の佐。
「じゃあ準決で勝負しようじゃないか!桜子ちゃんをかけて」
「大事な彼女を賭けにつかうわけねーだろ」
帆秋さんの提案に乗る様子もない佐。だけど。
「うちのチームに勝てると思うならどうぞ。ただし付き合うかどうかは別だけど」
「アタックはしていいんだな?」
「勝てると思うなら」
「よっしゃ、燃えてきた!桜子ちゃん見ててくれよ、俺達だって遊んでたわけじゃねーから」
「こっちも同じセリフです」
「じゃあ、また明日コートで会おう」
そういって別府の大学のチームは去っていった。
「大丈夫なのか?桜子」
佐が聞く。
佐倉さんはにこりと笑って言った。
「私達の目標は優勝です。こんなところで躓くわけにはいきませんよね?それに皆さんだって確実にレベルアップしてます。マネージャーの私が保証します。自信もって」
だが第一試合、番狂わせが起きた。
第一試合熊工大が別府の大学を破った。
それも大差をつけて。
完全にインサイドを支配され、パスも尽く断たれ迂闊にドリブルすればチャージングを取られ、ディフェンスも相手のポンプフェイクに翻弄されあっという間に5ファールで退場。
佐倉さんも完全にノーマークだったらしい。
それもそのはず、途中まで出場していなかったのだから。
今年の新人らしい。
項垂れて帰る別府の大学のメンバー。
声をかけづらい。
「まずはみなさん、この一試合ですよ!」
「そうだな!まずは勝つぞ!話はそれからだ!」
佐倉さんと真司が言うと皆気合を入れる。
ベンチに座ると監督が言う。
「慢心は禁物だというのはさっきの試合でわかったでしょう。そしてこの試合、日頃の練習の成果を試すいい機会です。勝ちますよ」
女バスはもうベスト4を決めたと付け足す。
「じゃあ、勝ちに行きますか。気合入れるぞ!」
「おお!」
真司が言うと皆雄たけびを上げる。
相手の選手と整列する。
相手の方がはるかに背が低い。
それでも勝ち残ってきた相手。足が勝負か?
今ジャンプボールがあげられた。
(2)
昨日のテレビ報道には驚いた。
まさか、自分たちから宣戦布告してくるとはな。
此方の規模を知らないらしい。
俺はにやりと笑う。だが、エゴイストの名前は出さなかったらしいが明らかにイメージを悪くさせられた。
何か対策を講じねば。
ネットの書き込みにはすでに対策を講じている。
だが妙だ。
あれだけ挑発しておいて何も仕掛けてこない。
あの報道が仕掛けと言えば仕掛けだが。
あそこまで開き直られるとどうしようもない。
あの後ゴッドから電話があった。
警告だ。
俺は焦った。
だがゴッドは言う
「お前の事は高く評価している、こんなところで躓く奴ではないはずだ」と。
プレッシャーがかかる。
しくじれば粛正……。
ゴッドが直々に粛正に乗り出せば俺は社会的にも抹殺される。
これまでのようやスキャンダルのタレコミは通用しない。
どうすればいい?
相手が何か仕掛けてくればそれに対応すればいいのだが何も仕掛けてこない。
ただのにらみ合いが続く。
それとも何か裏で動いている?
ウィザードの住所は転居させた。
そして明後日にはエゴイスト初の会合がある。
こんなところで目的を潰されるわけには行かない。
だが、どうすればい?
焦る。
焦ったら負けだ。
焦らせるのが奴らの手口か?
先に手を出したら負ける。
こんな勝負エゴイスト発足以来初だ。
どんな相手も潰していった。
だが、ユニティは潰すどころか逆に挑発される始末。
失態だ。
汚名を返上せねば。
どうすればいい?
奴らの急所であった竹本と西松はもう急所ではなくなった。
別の弱点を探さねば。
とりあえずはウィザードに連絡する。
「首尾はどうだ?」
返事がない。
「どうしたウィザード」
「すまん、明後日の会合まで待ってくれ、必ず行く」
「何があった?」
「今連絡を取るのは危険だ」
「どういう事だ?」
「エンペラーもPCの電源を落としてくれ」
それでは皆と連絡がつかない。
「理由を言え」
「ここで話せない」
「わかった。だがサーバーは落とせんぞ」
「どうしても無理か?」
「理由を聞くまでは無理だ」
「奴らの方が一枚上手だった。と言えば察しが着くか?」
まさか……。
「また住所の変更か?」
「出来ればお願いしたい」
この役立たずが!
「お前に接触して俺達の事が分からないという確証はあるのか?」
「それは大丈夫だ。俺の素性は何とか隠せた。だが住所は特定されてる」
「いいだろう?すぐに手配する」
「助かる」
引越しばかりしていては目立つのではないのか?ゴッドに判断を仰ぐしかないな。
「お前は二度しくじった。次は無いと思え」
「分かってる……次はやり方を変える予定だ」
「ほう?」
「その内容も後で報告する。ここは危険だ」
「わかった」
「じゃあ、あまり長く通信してるのも危険なので落ちる」
「失望させるなよ」
「任せてくれ」
「期待している」
もはやあてにはしてないがな。
ゴッドに電話する。
「次のウィザードの手配をお願いします」
「またしくじったのか?」
「そのようで」
「処分はどうする?」
「次しくじったら粛正だと脅しはかけています」
「次は上手くいくのか?」
「いい手を思いついたそうです」
「……次は無いぞ?」
「そう言ってあります」
「わかった」
電話が切れた。
俺も何か策を練らねばならない。
次の狙いは誰にする?
ホットな話題を送らねばな……。
だが、それもまずはサイトの復興からだ。
ゴッドの力を使えばマスコミにリークも可能だと思うが、それは奥の手だ。
ウィザード次第か?
しかしウィザード一人にすべてを任せるのは危険な気がしてきた。
もっと優秀な人材を準備する必要があるのではないか?
そんな予感がした。
(3)
「嵌められた!」
俺は叫んでいた。
「どうした誠?」
神奈が不思議そうに聞いている。
「奴らに一歩先を行かれた」
「どういう意味だ」
あいつらはサーバーに仮想空間を作っていてそこにまんまとおびき寄せられた。
捕獲される前に逃げ出せたが、足跡を急いで消さないと。
慌ててPCを操作する。
「誠……?」
「静かにしててくれ!」
ただならぬ俺の様子を察したのか神奈は何も言わない。
しばらく作業を続ける。
そして終わった。
「ふぅ助かった」
「どうしたんだ誠?」
不安気に俺を見る神奈。
「すまん、ちょっとドジ踏んだ」
「ドジ踏んだって?」
「あまりにもセキュリティが無い、誰もアクセスした痕跡がない。違和感を感じた時には手遅れだった。奴らサーバーの中に仮想サーバーを構築してたんだ。そこにまんまとはめられた」
「それで?」
「間一髪で逃れた。大学のサーバー踏み台にしてたからこっちのIPまでは抜かれてない。大丈夫だ」
「大学バレたら問題じゃないのか?お前不正アクセスしてたことバレちまうじゃないか?」
「そこまで間抜けじゃない。ちゃんと足跡消したよ」
「私達大丈夫なのか?」
「ああ、これまで通り生活できるよ」
「無理するなよ。もう相手の顔分かってるんだろ?後は恵美に任せてれば」
「大丈夫さ、こっちもちょっと悪戯してきた」
「悪戯?何やったんだお前?」
神奈の表情が険しくなる。
「PCとスマホのアカウントさ。同期させてる奴多いよな?」
「ああ、SNSサイトとかか。確かに一々変えるのは面倒だよな」
神奈がそう言うと俺はにやりと笑う。
「そのSNSサイトのアカウントを引っこ抜いてきた。これでスマホも傍受可能だ」
「それってつまり?」
「最近Wi-Fi使って普通の電話じゃなくてSNSの通話する奴多いだろ?多人数同時通話とか」
「お前ハッキングの次は盗聴か!?」
「それだけじゃない、ウィルスに感染した奴ら全員のスマホの番号抜きとれる。恵美さんに渡せば調査が楽になるだろ?」
「お前本当にヤバいやつになっちまったな」
神奈は呆れていた。
反撃の準備は整った。いつでもいけるぜ!渡辺君!
(4)
「くくく、まんまと罠にはまったな」
俺はにやりと笑っていた。
部屋には無数のPCとモニターとキーボードが並んである。
それらを同時に操りながら、サーバーに侵入してきた奴を特定する。
が、特定する前に逃げられた。
私立大のサーバーを踏み台にして侵入してたらしい。
私立大のサーバーから先もいくつか踏み台のPCを用意していたらしい。
本人の特定までは至らなかったが。
私立大のサーバーに侵入できるユニティのメンバーは限られる。
多田誠か桐谷瑛大、神崎咲良だ。
この三人の住所等は既に特定できてる。
エンペラーに土産話を送ってやらないといけないな。
3人について調べ上げる。
1つ興味深い情報があった。
多田神奈。多田誠の配偶者。
彼女の母親はバツイチらしい。
そしてその前夫は……。
「ははは」
俺は笑い声をあげる。
俺はその情報を匿名掲示板に流す。
彼女の性格まで把握してる。
しかもこんなトラウマを抱えていたとはな。
その事をエンペラーに伝える。
エンペラーは「よくやった」と言ってくれた。
この分だと他の連中にもまだ粗がありそうだ。
じっくりと調べることにした。
やられっぱなしじゃ済まない質でな、悪く思うなよ?
先に仕掛けたのはそっちだ。覚悟はできてるんだろ?
次に興味が湧いたのは神崎咲良だった。
神崎自体に問題はないがその彼氏檜山春樹に問題がある。
彼の父親の銀行とユニティのメンバー白鳥春奈の父親の会社に何か問題があるらしい。
現に、白鳥カンパニー、白鳥春奈の父親の会社は、地元銀行の全株を酒井カンパニー・酒井善幸の会社に売却してる。
何かあったに違いない。
攻撃の手がかりは掴んだ。
これで粛正は免れるな。
じわりじわりと痛めつけてやる。
(5)
この日も試合には勝った。
あと二つ勝てば優勝だ。
その日ホテルの会議室でミーティングが行われた。
相手のポンプフェイクに惑わされない事。ドリブルは慎重に行う事、特に僕と祐樹。
相手の身長が高い事。インサイドにむやみに突っ込むのは危険だと指摘された。
ならロングレンジから攻撃すればいい。
いつも通りの攻撃でいい。
その代わりディフェンスで迂闊にファールをとられない様に気をつける事。
カウントワンスローなんてとられたら3Pをとる意味が無くなってしまう。
恭太にプレッシャーがかかる。
だけど佐倉さんは言う。
「これは決勝の前哨戦です。決勝に勝ち上がってくるだろう福岡大のセンターに比べたら格下です。ここで負けてたら話になりませんよ」
佐倉さんは恭太にプレッシャーをかける。
それでミーティングは終わった。
部屋に戻ると佐倉さんのマッサージが始まる。
「ああ、極楽極楽~」
「呑気な事言ってないで少しは明日の試合の事考えたらどうなんですか?絶対先輩の3P潰しにかかりますよ」
「大丈夫だよ、僕が少しでもディフェンス引き付けたらいいんだろ?」
「言ってる事は正しいですけど、もう少し緊張感を持ったって……」
「冬夜これって、神奈さんのことじゃないのか!?」
佐がスマホを見せる。
内容を見て愕然とした。
多田神奈は父親に犯された。
「なにそれ……酷い」
佐倉さんは怒りを露にする。
しかしそれだけじゃなかった。
その父親に二度目の接触があった時、片桐冬夜を盾にして逃げた。片桐冬夜は父親に刺されて入院した。
そんな書き込みにものすごいレスが着く。
渡辺班のグループメッセージを開く。
皆その話題でもちきりだ。
渡辺班しか知らない事実。
どうして漏れた?
誰もリークしていないという。
ならばネットで検索をかけた?
当時の神奈の姿も投稿されている。
僕の険しい表情を見て佐が言う。
「まさか、事実なのか?」
「……刺されたのは事実だよ」
「こりゃ、別の意味で明日大変だな」
佐が頭を抱える。
「ここまで卑劣な事をやるなんて、またエゴイストですか?」
「多分ね」
佐倉さんの質問に僕は答える。
マッサージを終えた佐倉さんは部屋を出る。
そこまでは普通だった。
「ちょっと何してるんですか!」
その声に真っ先に反応する僕。
部屋を出るとカメラを持った男が逃走を図っていた。
逃がすか!?
咄嗟に追いかけ男を取り押さえる。
何事かと他の宿泊客が外に出る。
「お前もエゴイストか!?」
僕が怒鳴りつけると。男は首を振る。
佐があとからやってきてカメラを押収すると中身を確認する。
僕達の部屋から佐倉さんが出てきた瞬間だ。
佐は無言でそのファイルを削除する。
「冬夜もういい、離してやれ」
「でも」
「今は大会中だ。妙な騒ぎは起こさない方が良い」
佐がそう言うと男を解放する。
佐がカメラを返すと「行けよ」といい、男は逃げて行った。
「放っておいていいの?」
僕が聞くと佐は佐倉さんに言う。
佐倉さんはにこりと笑ってスマホを見せる。
男の画像が収められていた。
その画像をユニティのグループに送信する。
「大変だったな?」
渡辺君は言う。
「そっちは?カンナ大丈夫か?」
僕が聞くと「その事で皆集まってる」という。
「桜子は部屋に戻ってろ。気をつけてな」と佐が言うと、佐倉さんは部屋に戻る。
「ごめん、僕愛莉に電話するから」
「気をつけろよ」
そう言って、佐は部屋に戻る。
愛莉に電話する。
「もしもし冬夜君~」
いつもの調子で話す愛莉。
「愛莉、そっちは大丈夫か?」
「うん、大丈夫だよ。ただ神奈がちょっと動揺してるだけ。あ、神奈に替わるね」
そう言って愛莉はカンナと替わった。
「トーヤか、済まない。わたしのせいで……」
「大丈夫だよ。カンナこそ大丈夫か?」
「ああ、大丈夫だ。まさかあんな過去の事まで蒸し返されるとはな……」
全然大丈夫じゃないじゃないか。
「明後日の試合にはみんなで応援いくからな!?明日負けるなよ!」
「分かってる。心配しないで」
「ああ、じゃあ愛莉に替わるわ」
「もしもし冬夜君?」
「どうした?」
「渡辺君から伝言『こっちの事は気にするな、今は試合に集中しろ』だって。私もそう思う」
「わかった、ありがとうって伝えておいて」
「冬夜君、明日帰ってこなくていいからね!」
「分かってるよ」
「じゃあ、また」
「ああ、おやすみ」
電話はそれで終わった。
「冬夜お前が一番心配なんだぞ?ユニバーシアード大丈夫か?」
「僕が悪いことしたわけじゃないんだから大丈夫でしょ」
「ならいいんだけどな」
「それより、大会終わった後の取材とか大変かも。佐たちも」
「バスケの話題で取材なら歓迎なんだけどな」
「確かに」
やられたらやり返すのがユニティの流儀。
それをただ実行するのみ。
その反撃の機会を今はただ伺っていた。
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