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3rdSEASON
素敵だね
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(1)
「冬夜君朝だよ~」
愛莉の声で目が覚める。
起きると着替える。
そしていつものコースを回る。
1時間ほど走って帰る。
「ご飯作らなくちゃ……」
愛莉はよろよろとキッチンに向かう。
その間にシャワーを浴びて準備を済ませる。
ダイニングに戻るとみんな揃ってる。
「いただきます」
そう言うと食事をする。
食事が終われば部屋に戻る。愛莉はシャワーを浴びに行く。
その間にネットとかをささっと見る。
テレビをつけてPCをシャットダウンする。
テレビを見てると愛莉が戻ってくる。
「お疲れ」
愛莉に労いの言葉をかけてやる。
愛莉がベッドに倒れるとその上に跨る。
「ちょ、ちょっと冬夜君だめだよ朝から~」
あまり嫌がってない様子だが無視して目的を遂行する。
愛莉の腰、肩、背中を揉んでやる。
うわあ、凝ってるなぁ。
「愛莉にもマッサージが必要だな」
「ありがとう~♪」
男だもん、少しは悪戯したくなるよね。
「こっちは凝ってないかな」
「きゃっ。ダメだったら~」
愛莉は嬉しそうだ。
「冬夜君着替えて準備しないと遅くなっちゃうよ?」
「今日はオフだろ?」
「でも結婚式でしょ?」
「あ、そうだった」
今日は酒井夫妻の結婚式。
朝から着替えて美容室に寄るんだった。
スーツは成人式の時のでいいか。
愛莉はこの前かったパーティードレスを着ていた。
2人着替え終えると美容室に向かう。
愛莉が予約してあった。
僕は別に良いと言ったんだけどこういう時くらいお洒落しなさい!と言うので仕方なく来た。
愛莉は髪を切らずにただセットするだけ。
僕はついでだからカットしてもらった。
髪を洗う時に美容室のお姉さんの胸が……。
顔に当てられたタオル越しに感じる。
細かく注文を聞いてくる。
そして途中でコーヒーを差し出してくれる。
愛莉は慣れてるらしく髪をセットしてもらいながらスマホを触ってた。
二人共終わると一度家に帰って母さんに式場まで送ってもらう。
式場で記帳してご祝儀を渡す。
ロビーには佐たちの姿もあった。
「片桐先輩!」
佐倉さんが僕達を見つけたようだ。
「いや、まだ慣れなくてな。渡辺班ってのに」
「授業が終わったら青い鳥って喫茶店に来ると良いよ。誰かいるから」
「おや、また顧客を増やしてくれるのかい?」
そう言うのは青い鳥のマスター。
「は、初めまして」
佐は本当に緊張しているらしい。
チャペルが開かれる。
皆席につく。
皆が席につくとチャペルの門はとじられ荘厳なパイプオルガンの曲が流れ始めた。
壇には酒井君とその親が立っている。
そして扉が開かれる。
(2)
「本当に大丈夫なんだろうな」
父さんから何度も聞かされた言葉。
「なんとかするよ」
何度も言う父さんへの言葉。
そして登壇する。
皆集まってきてる。
パイプオルガンの荘厳な音が流れると扉が開かれる。
バージンロードを父親と歩く晶ちゃん。
ゆっくりと確かめるような足取りで一歩ずつ歩く。
そして僕の前に立つと「娘を頼んだよ」と一言。
晶ちゃんの手を取ると牧師の前に誘導する。
誓いの言葉を聞く。
それを聞いて「はい、誓います」という。
晶ちゃんも「はい、誓います」という。
「では指輪の交換を」
晶ちゃんの左手の薬指に指輪をはめ、僕の指にもはめられる。
「今、この両名は天の父なる神の前に夫婦たる誓いをせり。神の定め給いし者、何人もこれを引き離す事あたわず」
そう言うと拍手が送られる。
僕達は2人で式場を出る。
式場を出ると披露宴会場の準備が出来るまで控室で待つ。
「結構かたっ苦しくて疲れるわね」
晶ちゃんがそんな事を言っている。
「綺麗だよ晶ちゃん」
「ありがとう。私今凄く幸せよ」
「僕もだよ」
「そろそろ会場の方に移動をお願いします」
そう言われると会場に向かった。
(3)
司会者が「新郎新婦入場」というとBGMが流れて酒井夫妻が入場してくる。
入場が済むと披露宴の開始が宣言されお礼の言葉を言われる。
その後新郎新婦の紹介がなされ、ウエルカムスピーチがされる。
酒井君が「本日はお越しいただき誠にありがとうございます。皆さまのおかげで無事に式を挙げることができました。日頃の感謝の気持ちをお伝えしたくこのような場を設けさせていただきました。」と、言い。晶さんが「本日はお越しいただきましてありがとうございます。私たちにとって大切な方たちに見守っていただき、大変うれしく思っています。ささやかな席ですが、お開きまでどうぞゆっくりとお過ごしください」という。
その後主賓の挨拶があった。二人共親戚から選んだらしい。
主賓の挨拶が終わると乾杯する。
その後ウェディングケーキ入刀があって、ファーストバイトをする。
司会者が挨拶すると歓談が始まる。
僕の席にはカンナと誠、佐と佐倉さんがいた。
6人で話をしながら僕は食べることに集中する。
すると酒井君たちの両親と晶さんの両親からお酌を受け簡単に挨拶する。
渡辺君と……僕と愛莉がスピーチすることになっていた。
渡辺君はともかく、僕は聞いてないぞ。
愛莉は知っていたらしい。謀ったな!!
「ほら、早く行かないと……」
愛莉に勧められマイクの前に立つ僕。
「二人共おめでとうございます。……お餅のようにくっついたら剥がれないそんな二人の仲が羨ましいです。これからもお幸せに」
そう言って席に戻る。
その後に愛莉が挨拶する。
その後中島君と一ノ瀬さん、あとは晶さんの友達とかが挨拶して二人はお色直しに入った。
「お前いつも食べ物をネタにするのか?冬夜」
佐が言うと愛莉がぽかっとやる。
「そうなんですよ。困ってるんです」
そんなに困ってないくせに。
しばらく歓談していると、照明が消える。
キャンドルを持った二人がそれぞれのテーブルのキャンドルに火をつけて行く。
終わると照明がつき、カンナが美声を披露する。
その後もプログラムが進行して新郎新婦が退場する。
その後庭に出て新郎新婦の周りを女性陣が囲む。
ブーケトスだ。
2人で投げたブーケは放物線を描いて一人の女性のもとに渡される。
受け取ったのは深雪さんだった。
嬉しそうにする、深雪さん。
渡辺君が2次会の場所を指示する。
どうやら渡辺班だけで2次会をするようだ。
2次会の場所まではタクシーを使った。
「二人共幸せそうだったね」
「そうだね」
愛莉は何か物欲しそうに見つめている。
「わかっているよ……約束は守るから」
「……はい。楽しみにしてるね」
(4)
2次会は駅近くのホテルの地階で行われた。
貸し切りのパーティーホールだ。
バイキング形式の店でお皿を二つ持って次々と料理を取る僕。
ぽかっ
こうなることは分かっていたけどね。
佐倉さんと愛莉に説教を食らう。
「片桐君達楽しんでる?」
酒井夫妻が挨拶に回ってきた。
「晶おめでとう」
「ありがとう愛莉。どう?愛莉もその気になった?」
「なってるんだけど冬夜君が……」
「待ってくれるってさっき言ったじゃないか?」
「うぅ……わかってるよ~」
「必ずするから、待っていて」
「いつも言うけどそれ卑怯だよ?いつになったらプロポーズしますって言われて期待しない女性なんていないよ」
そう言われるとそうだな。
「片桐君や、勢いも必要だよ。先に入籍だけしちゃってもいいんでないかい?」
「それは酒井君だから言えるんだよ。バイトして生計たててるから。親の世話になってるうちに誰かを娶るなんてできないよ」
「じゃあ、独立したら愛莉と結婚するの?」
晶さんが言うと皆聞いていたのか静まり返る。
僕も気分が持ち上がっていたんだろう。
「プロポーズを言う日は決めてあるし入籍する日も決めてある」
シーンと静まり返る。
「まあ、そういうことだ。まってやれよ遠坂さん」
渡辺君が言うと、愛莉はただ黙ってうなずいていた。
「僕達よりも中島君たちはどうなんだい?」
僕達は中島君達を探すと隅っこの方で二人で話しをしていた。
また別れ話か?
「おい、中島君どうした!」
「あ、いや。ちょっと話を」
「お前たちまだ別れようとかそんな事考えてるんじゃねーだろうな!」
美嘉さんが言う。
「美嘉。今日言う言葉じゃないぞそれ。縁起でもない」
カンナが窘める。
「逆だよ……。俺達も幸せになろうなって」
中島君が言うと、皆盛り上がる。
楽しい時間はあっという間に過ぎていくもので。
すぐに時間が来る。
だが渡辺班は眠らない。
「みんな、この後もちゃんと会場セッティングしてある。今夜は眠らせないからな!」
渡辺君が言うと皆の歓声が響き渡る。
僕は愛莉の顔を見る。
「特別な日だもん。お祝いしてあげよ!」
その後僕たちはカラオケに向かった。
(5)
30人近くを収容するパーティールームのあるカラオケ。
「次は西松君たちの番だね」
そう言うと、西松君たちは照れくさそうに笑っていた。
「その後は誰なんだろう?」
愛莉が聞いてくる。
「話に上がってるのは丹下先生たちだね」
「後は皆卒業してからなのかな?」
「渡辺君たちはどうするの?」
「俺達か?俺たちも今プラン考えてるところだ」
「あ、もうじきするんだ?」
「今年の秋ぐらいを考えてる」
「冬夜は他人の心配する前に自分の心配しろ!聞いたぞ大手メーカーから専属契約結びたいって数社きてるそうじゃないか?すでに一人で食っていけるんじゃないか?」
佐が暴露する。
「そうなの!?冬夜君!」
愛莉にも言ってない事だった。
「まあね、いくつか来てる」
某有名メーカーとかね。
「なんだよそれ、じゃあ待つ意味ねーじゃん!」
カンナが言う。
「……まずは一つずつ片づけるよ。当面の目標は3月の韓国戦だよ」
「関係ないだろ!?契約金てすごいんだろ?」
「まあ、そうだけど……」
「冬夜君がまだって言ってるんだからいいじゃない?」
愛莉は察してくれたのかそう言った。
カンナも何か気づいたようだ。
「お前私達に隠してる事あるな?」
カンナの問いに僕は答えない。それは肯定してるも同然の事だった。
「黙ってないで何とか言えよ!」
カンナがヒートアップする。
「冬夜君には冬夜君の事情があるの!分かってあげて」
愛莉が宥める。
「て、事は遠坂さんは知ってるのかい?冬夜の秘密」
渡辺君の言葉に愛莉はうなずく。
「それで納得してるのかい?」
「冬夜君が決めたことだから私は口を挟まないって決めたの」
「先輩また、妙な事考えてないですか?」
佐倉さんがそう聞いてきた。
「先輩は卑怯です!そうやって立てる舞台が用意されているのに逃げようとする!他人が一生足掻いても立てない舞台ですよ!」
「だから責任もってやるべきことはやるさ。その先は自由にさせてくれたっていいだろ?」
「自由にってどういう意味ですか?」
「まあ、いいじゃないか?冬夜が自分で決断して遠坂さんが納得してるなら俺達の出る幕じゃないだろ?」
渡辺君がそう言ってくれる。
「……冬夜もそれで後悔しないんだな?」
佐が言う。
「後悔しないプレイをするつもりだよ」
「ああ、もうじれったいな!愛莉話せよ。とーやはなんて言ったんだ?」
美嘉さんが愛莉を問い詰める。
愛莉は僕を見る。
もうこうなったら隠すとややこしいだけだ。
「いいよ、愛莉の口から言って」
「いいの?」
「ああ」
愛莉は皆を見回すと言った。
「冬夜君はこう言ったの『世界の頂点を見てくるからそれができたら好きにさせて欲しい』って……」
「それって世界で一番になったらバスケ止めるってことか?」
カンナが言うとぼくはただうなずいた。
「そのかわり世界の頂点に立てなかったら挑戦し続けるからっても言ったの」
皆静まり返った。
「いいじゃないか、冬夜なりにケジメつける気になったんだろ?世界に挑戦して勝ちあがったらやめる。俺はカッコいいと思うぜ」
渡辺君が言う。
「日本のランキング分かってて言ってるんだよな?」
佐が言うとうなずいた。
「ならやってみろよ。出来るもんならな」
「愛莉と約束したことだから必ず守るよ。今年はユニバーシアード、来年は東京5輪。二大会で勝ち続ける。」
皆がざわつく。
「そんな事言っていいわけ?負けたらずっとバスケやるって事でしょ?」
亜依さんが言うと僕はうなずいた。
「世界一になるまでは続けるよ」
「いよいよ本気になったってことだな?」
佐がそう言ってにやりと笑う。
「もうとっくになってるよ」
「じゃあ、やってみろよ。それが出来たら誰も文句言わないさ」
「ああ」
「ちょっと佐止めないと!片桐先輩がバスケ止めるなんて誰も許さない!」
「俺は許すぜ。それができたんなら」
「俺も応援したくなったかな。冬夜の本気が見れるんだったら文句ないさ」
渡辺君と佐は理解してくれたようだ。
他の男性も文句言う者は一人としていなかった。
「責任重大だぞ桜子、世界一のプレイヤー目指してる奴の面倒みなきゃいけないんだからな?」
「……わかりました。納得はしてないけど」
佐倉さんは渋々承諾する。
「私は理解し難いわ。愛莉を一生養っていけるお金が入るのにどうしてそれを拒否するわけ?」
晶さんが言う。
「拒否はしてない。世界の頂点を見れたらって話だから。見れなかったら続けるよ」
「それって卑怯じゃない?そんな事言ったら誰も片桐君止めれなくなっちゃうじゃん!」
亜依さんが言う。
「でもずるずるだらだら続けさせるよりは一瞬でも本気の誰も見たことのない冬夜君を見たい。ずっと悩んで苦しんでる冬夜君よりきっと素敵だよ」
愛莉がそう言うと女性陣も何も言わなくなった。
「本気の片桐君か。ここにきていよいよ見れるのね」
恵美さんがにやりと笑って言う。
「今年のユニバーシアード本戦出場はもう決めてるんですよね?」と桜子さんが言うと佐がうなずく。
「よし!取りあえずは韓国戦が冬夜の世界デビュー戦だそれを応援してやろう」
渡辺君が言うと皆「おお!」と声を出した。
「マネージャーとしては全力で支援するしかないですね」
佐倉さんも納得してくれたようだ、
「んじゃ、酒井君たちのお祝いもあるんだ。皆盛り上がろう!冬夜景気づけに何か歌え!」
渡辺君に端末を渡される。
酒井君のお祝いと自分を鼓舞する曲。
そんな曲を端末に入れると、皆が大笑いする。
「トーヤお前はじじいか!」
「片桐君のセンスはこういうところで発揮されないのが難点よね」
カンナと亜依さんがそう言って笑う。
字幕がでると僕は歌いだした。
明日の光をその体に浴びて。
振り返らずにそのまま進め。
僕は今まさに明日へ挑戦を始めていた。
「冬夜君朝だよ~」
愛莉の声で目が覚める。
起きると着替える。
そしていつものコースを回る。
1時間ほど走って帰る。
「ご飯作らなくちゃ……」
愛莉はよろよろとキッチンに向かう。
その間にシャワーを浴びて準備を済ませる。
ダイニングに戻るとみんな揃ってる。
「いただきます」
そう言うと食事をする。
食事が終われば部屋に戻る。愛莉はシャワーを浴びに行く。
その間にネットとかをささっと見る。
テレビをつけてPCをシャットダウンする。
テレビを見てると愛莉が戻ってくる。
「お疲れ」
愛莉に労いの言葉をかけてやる。
愛莉がベッドに倒れるとその上に跨る。
「ちょ、ちょっと冬夜君だめだよ朝から~」
あまり嫌がってない様子だが無視して目的を遂行する。
愛莉の腰、肩、背中を揉んでやる。
うわあ、凝ってるなぁ。
「愛莉にもマッサージが必要だな」
「ありがとう~♪」
男だもん、少しは悪戯したくなるよね。
「こっちは凝ってないかな」
「きゃっ。ダメだったら~」
愛莉は嬉しそうだ。
「冬夜君着替えて準備しないと遅くなっちゃうよ?」
「今日はオフだろ?」
「でも結婚式でしょ?」
「あ、そうだった」
今日は酒井夫妻の結婚式。
朝から着替えて美容室に寄るんだった。
スーツは成人式の時のでいいか。
愛莉はこの前かったパーティードレスを着ていた。
2人着替え終えると美容室に向かう。
愛莉が予約してあった。
僕は別に良いと言ったんだけどこういう時くらいお洒落しなさい!と言うので仕方なく来た。
愛莉は髪を切らずにただセットするだけ。
僕はついでだからカットしてもらった。
髪を洗う時に美容室のお姉さんの胸が……。
顔に当てられたタオル越しに感じる。
細かく注文を聞いてくる。
そして途中でコーヒーを差し出してくれる。
愛莉は慣れてるらしく髪をセットしてもらいながらスマホを触ってた。
二人共終わると一度家に帰って母さんに式場まで送ってもらう。
式場で記帳してご祝儀を渡す。
ロビーには佐たちの姿もあった。
「片桐先輩!」
佐倉さんが僕達を見つけたようだ。
「いや、まだ慣れなくてな。渡辺班ってのに」
「授業が終わったら青い鳥って喫茶店に来ると良いよ。誰かいるから」
「おや、また顧客を増やしてくれるのかい?」
そう言うのは青い鳥のマスター。
「は、初めまして」
佐は本当に緊張しているらしい。
チャペルが開かれる。
皆席につく。
皆が席につくとチャペルの門はとじられ荘厳なパイプオルガンの曲が流れ始めた。
壇には酒井君とその親が立っている。
そして扉が開かれる。
(2)
「本当に大丈夫なんだろうな」
父さんから何度も聞かされた言葉。
「なんとかするよ」
何度も言う父さんへの言葉。
そして登壇する。
皆集まってきてる。
パイプオルガンの荘厳な音が流れると扉が開かれる。
バージンロードを父親と歩く晶ちゃん。
ゆっくりと確かめるような足取りで一歩ずつ歩く。
そして僕の前に立つと「娘を頼んだよ」と一言。
晶ちゃんの手を取ると牧師の前に誘導する。
誓いの言葉を聞く。
それを聞いて「はい、誓います」という。
晶ちゃんも「はい、誓います」という。
「では指輪の交換を」
晶ちゃんの左手の薬指に指輪をはめ、僕の指にもはめられる。
「今、この両名は天の父なる神の前に夫婦たる誓いをせり。神の定め給いし者、何人もこれを引き離す事あたわず」
そう言うと拍手が送られる。
僕達は2人で式場を出る。
式場を出ると披露宴会場の準備が出来るまで控室で待つ。
「結構かたっ苦しくて疲れるわね」
晶ちゃんがそんな事を言っている。
「綺麗だよ晶ちゃん」
「ありがとう。私今凄く幸せよ」
「僕もだよ」
「そろそろ会場の方に移動をお願いします」
そう言われると会場に向かった。
(3)
司会者が「新郎新婦入場」というとBGMが流れて酒井夫妻が入場してくる。
入場が済むと披露宴の開始が宣言されお礼の言葉を言われる。
その後新郎新婦の紹介がなされ、ウエルカムスピーチがされる。
酒井君が「本日はお越しいただき誠にありがとうございます。皆さまのおかげで無事に式を挙げることができました。日頃の感謝の気持ちをお伝えしたくこのような場を設けさせていただきました。」と、言い。晶さんが「本日はお越しいただきましてありがとうございます。私たちにとって大切な方たちに見守っていただき、大変うれしく思っています。ささやかな席ですが、お開きまでどうぞゆっくりとお過ごしください」という。
その後主賓の挨拶があった。二人共親戚から選んだらしい。
主賓の挨拶が終わると乾杯する。
その後ウェディングケーキ入刀があって、ファーストバイトをする。
司会者が挨拶すると歓談が始まる。
僕の席にはカンナと誠、佐と佐倉さんがいた。
6人で話をしながら僕は食べることに集中する。
すると酒井君たちの両親と晶さんの両親からお酌を受け簡単に挨拶する。
渡辺君と……僕と愛莉がスピーチすることになっていた。
渡辺君はともかく、僕は聞いてないぞ。
愛莉は知っていたらしい。謀ったな!!
「ほら、早く行かないと……」
愛莉に勧められマイクの前に立つ僕。
「二人共おめでとうございます。……お餅のようにくっついたら剥がれないそんな二人の仲が羨ましいです。これからもお幸せに」
そう言って席に戻る。
その後に愛莉が挨拶する。
その後中島君と一ノ瀬さん、あとは晶さんの友達とかが挨拶して二人はお色直しに入った。
「お前いつも食べ物をネタにするのか?冬夜」
佐が言うと愛莉がぽかっとやる。
「そうなんですよ。困ってるんです」
そんなに困ってないくせに。
しばらく歓談していると、照明が消える。
キャンドルを持った二人がそれぞれのテーブルのキャンドルに火をつけて行く。
終わると照明がつき、カンナが美声を披露する。
その後もプログラムが進行して新郎新婦が退場する。
その後庭に出て新郎新婦の周りを女性陣が囲む。
ブーケトスだ。
2人で投げたブーケは放物線を描いて一人の女性のもとに渡される。
受け取ったのは深雪さんだった。
嬉しそうにする、深雪さん。
渡辺君が2次会の場所を指示する。
どうやら渡辺班だけで2次会をするようだ。
2次会の場所まではタクシーを使った。
「二人共幸せそうだったね」
「そうだね」
愛莉は何か物欲しそうに見つめている。
「わかっているよ……約束は守るから」
「……はい。楽しみにしてるね」
(4)
2次会は駅近くのホテルの地階で行われた。
貸し切りのパーティーホールだ。
バイキング形式の店でお皿を二つ持って次々と料理を取る僕。
ぽかっ
こうなることは分かっていたけどね。
佐倉さんと愛莉に説教を食らう。
「片桐君達楽しんでる?」
酒井夫妻が挨拶に回ってきた。
「晶おめでとう」
「ありがとう愛莉。どう?愛莉もその気になった?」
「なってるんだけど冬夜君が……」
「待ってくれるってさっき言ったじゃないか?」
「うぅ……わかってるよ~」
「必ずするから、待っていて」
「いつも言うけどそれ卑怯だよ?いつになったらプロポーズしますって言われて期待しない女性なんていないよ」
そう言われるとそうだな。
「片桐君や、勢いも必要だよ。先に入籍だけしちゃってもいいんでないかい?」
「それは酒井君だから言えるんだよ。バイトして生計たててるから。親の世話になってるうちに誰かを娶るなんてできないよ」
「じゃあ、独立したら愛莉と結婚するの?」
晶さんが言うと皆聞いていたのか静まり返る。
僕も気分が持ち上がっていたんだろう。
「プロポーズを言う日は決めてあるし入籍する日も決めてある」
シーンと静まり返る。
「まあ、そういうことだ。まってやれよ遠坂さん」
渡辺君が言うと、愛莉はただ黙ってうなずいていた。
「僕達よりも中島君たちはどうなんだい?」
僕達は中島君達を探すと隅っこの方で二人で話しをしていた。
また別れ話か?
「おい、中島君どうした!」
「あ、いや。ちょっと話を」
「お前たちまだ別れようとかそんな事考えてるんじゃねーだろうな!」
美嘉さんが言う。
「美嘉。今日言う言葉じゃないぞそれ。縁起でもない」
カンナが窘める。
「逆だよ……。俺達も幸せになろうなって」
中島君が言うと、皆盛り上がる。
楽しい時間はあっという間に過ぎていくもので。
すぐに時間が来る。
だが渡辺班は眠らない。
「みんな、この後もちゃんと会場セッティングしてある。今夜は眠らせないからな!」
渡辺君が言うと皆の歓声が響き渡る。
僕は愛莉の顔を見る。
「特別な日だもん。お祝いしてあげよ!」
その後僕たちはカラオケに向かった。
(5)
30人近くを収容するパーティールームのあるカラオケ。
「次は西松君たちの番だね」
そう言うと、西松君たちは照れくさそうに笑っていた。
「その後は誰なんだろう?」
愛莉が聞いてくる。
「話に上がってるのは丹下先生たちだね」
「後は皆卒業してからなのかな?」
「渡辺君たちはどうするの?」
「俺達か?俺たちも今プラン考えてるところだ」
「あ、もうじきするんだ?」
「今年の秋ぐらいを考えてる」
「冬夜は他人の心配する前に自分の心配しろ!聞いたぞ大手メーカーから専属契約結びたいって数社きてるそうじゃないか?すでに一人で食っていけるんじゃないか?」
佐が暴露する。
「そうなの!?冬夜君!」
愛莉にも言ってない事だった。
「まあね、いくつか来てる」
某有名メーカーとかね。
「なんだよそれ、じゃあ待つ意味ねーじゃん!」
カンナが言う。
「……まずは一つずつ片づけるよ。当面の目標は3月の韓国戦だよ」
「関係ないだろ!?契約金てすごいんだろ?」
「まあ、そうだけど……」
「冬夜君がまだって言ってるんだからいいじゃない?」
愛莉は察してくれたのかそう言った。
カンナも何か気づいたようだ。
「お前私達に隠してる事あるな?」
カンナの問いに僕は答えない。それは肯定してるも同然の事だった。
「黙ってないで何とか言えよ!」
カンナがヒートアップする。
「冬夜君には冬夜君の事情があるの!分かってあげて」
愛莉が宥める。
「て、事は遠坂さんは知ってるのかい?冬夜の秘密」
渡辺君の言葉に愛莉はうなずく。
「それで納得してるのかい?」
「冬夜君が決めたことだから私は口を挟まないって決めたの」
「先輩また、妙な事考えてないですか?」
佐倉さんがそう聞いてきた。
「先輩は卑怯です!そうやって立てる舞台が用意されているのに逃げようとする!他人が一生足掻いても立てない舞台ですよ!」
「だから責任もってやるべきことはやるさ。その先は自由にさせてくれたっていいだろ?」
「自由にってどういう意味ですか?」
「まあ、いいじゃないか?冬夜が自分で決断して遠坂さんが納得してるなら俺達の出る幕じゃないだろ?」
渡辺君がそう言ってくれる。
「……冬夜もそれで後悔しないんだな?」
佐が言う。
「後悔しないプレイをするつもりだよ」
「ああ、もうじれったいな!愛莉話せよ。とーやはなんて言ったんだ?」
美嘉さんが愛莉を問い詰める。
愛莉は僕を見る。
もうこうなったら隠すとややこしいだけだ。
「いいよ、愛莉の口から言って」
「いいの?」
「ああ」
愛莉は皆を見回すと言った。
「冬夜君はこう言ったの『世界の頂点を見てくるからそれができたら好きにさせて欲しい』って……」
「それって世界で一番になったらバスケ止めるってことか?」
カンナが言うとぼくはただうなずいた。
「そのかわり世界の頂点に立てなかったら挑戦し続けるからっても言ったの」
皆静まり返った。
「いいじゃないか、冬夜なりにケジメつける気になったんだろ?世界に挑戦して勝ちあがったらやめる。俺はカッコいいと思うぜ」
渡辺君が言う。
「日本のランキング分かってて言ってるんだよな?」
佐が言うとうなずいた。
「ならやってみろよ。出来るもんならな」
「愛莉と約束したことだから必ず守るよ。今年はユニバーシアード、来年は東京5輪。二大会で勝ち続ける。」
皆がざわつく。
「そんな事言っていいわけ?負けたらずっとバスケやるって事でしょ?」
亜依さんが言うと僕はうなずいた。
「世界一になるまでは続けるよ」
「いよいよ本気になったってことだな?」
佐がそう言ってにやりと笑う。
「もうとっくになってるよ」
「じゃあ、やってみろよ。それが出来たら誰も文句言わないさ」
「ああ」
「ちょっと佐止めないと!片桐先輩がバスケ止めるなんて誰も許さない!」
「俺は許すぜ。それができたんなら」
「俺も応援したくなったかな。冬夜の本気が見れるんだったら文句ないさ」
渡辺君と佐は理解してくれたようだ。
他の男性も文句言う者は一人としていなかった。
「責任重大だぞ桜子、世界一のプレイヤー目指してる奴の面倒みなきゃいけないんだからな?」
「……わかりました。納得はしてないけど」
佐倉さんは渋々承諾する。
「私は理解し難いわ。愛莉を一生養っていけるお金が入るのにどうしてそれを拒否するわけ?」
晶さんが言う。
「拒否はしてない。世界の頂点を見れたらって話だから。見れなかったら続けるよ」
「それって卑怯じゃない?そんな事言ったら誰も片桐君止めれなくなっちゃうじゃん!」
亜依さんが言う。
「でもずるずるだらだら続けさせるよりは一瞬でも本気の誰も見たことのない冬夜君を見たい。ずっと悩んで苦しんでる冬夜君よりきっと素敵だよ」
愛莉がそう言うと女性陣も何も言わなくなった。
「本気の片桐君か。ここにきていよいよ見れるのね」
恵美さんがにやりと笑って言う。
「今年のユニバーシアード本戦出場はもう決めてるんですよね?」と桜子さんが言うと佐がうなずく。
「よし!取りあえずは韓国戦が冬夜の世界デビュー戦だそれを応援してやろう」
渡辺君が言うと皆「おお!」と声を出した。
「マネージャーとしては全力で支援するしかないですね」
佐倉さんも納得してくれたようだ、
「んじゃ、酒井君たちのお祝いもあるんだ。皆盛り上がろう!冬夜景気づけに何か歌え!」
渡辺君に端末を渡される。
酒井君のお祝いと自分を鼓舞する曲。
そんな曲を端末に入れると、皆が大笑いする。
「トーヤお前はじじいか!」
「片桐君のセンスはこういうところで発揮されないのが難点よね」
カンナと亜依さんがそう言って笑う。
字幕がでると僕は歌いだした。
明日の光をその体に浴びて。
振り返らずにそのまま進め。
僕は今まさに明日へ挑戦を始めていた。
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