優等生と劣等生

和希

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3rdSEASON

巡り会うのは偶然

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(1)

朝起きると着替えてジョギングを始める。
その後朝食まで自主トレ。
キャプテンの聖人が付き合ってくれた。
聖人は誰からも信頼される頼もしいキャプテンって感じだ。
そんな聖人のプレイスタイルは意外性を持つ僕とは対照的に常に前へ前へと押すパス。
そんなパスを出されていれば自然とパスランが身についてくるだろう。
今の代表のプレイスタイルは聖人が作り出したと言っても過言ではない。
そんな聖人と練習しているとやってくるのが安土義明と柿谷涼真。
二人共3Pシューター。直線で早い3Pを打つ涼真と高く弧を描く義明。
そんな2人のSGというポジション争いに僕も加わることになる。
3Pを打つのは2人だけじゃない。
センターの武蔵五郎丸も3Pを打ってくる。
SFの藍井彩(ひかる)とPFの南雄介がゴール下に陣取ってる時限定だが。
他のメンバーも自主練を始める。
しばらくして、朝食の時間になるとご飯を食べる。
TKG!TKG!!
トレーナーの組み立てた献立を全て食べ終えると再び自主練をしていれば、監督がスタッフを率いてやってくる。
何も言わず雄一郎が笛を吹くと皆並んでディフェンスフットワークの練習に入る。
その後シャトルランををしたり基礎的練習をこなす。
散々フィジカルの強化をした僕はまだ余力があった。
ここからはAチームとBチームの練習。
それを見る為にコートの外に出る。
すると監督から叱られる。

「冬夜、何をやってる!コートに入れ!」

え?Dチームの皆外にいるけど?
戸惑っていると聖人が声をかける。

「お前今日からAチームだ。ほら」

そう言って聖人はビブスを渡す。

「Aチームはいつも通り聖人がゲームを組み立てろ!Bチームは義明お前がやれ!」

オフェンスのフォーメーションは昨日聖人から大体聞いた。
夜にDVDを見て研究もした。
だから動き方は大体わかった。
聖人のパスは早くそして前を向かせる。
中を固める相手に対し手容赦なくパスを出す聖人。
ディフェンスがつく前に容赦なくシュートを打つ僕。

「Bチーム何をやっている!冬夜にシュート打たせっぱなしじゃないか!」

Bチームの守備が広がると次はインサイトにパスを繰り出す。
地元大学と違ってインサイドは強い。
センターの五郎丸が強固で自らシュートを打ちに行ったり外にパスを散らす。
どこまでも攻撃的なバスケ。
Bチームはゾーンじゃ無理と踏んだのかマンツーに守備を切り替える。
そうなるとAチームの真価が発揮される。
センターにパスが通ると他の4人が縦横無尽に走り出す。
闇雲に走ってるわけじゃない。ボール保持者との距離を一定に保ちつつスクリーンを仕掛けたり。マークを振り切りながら走る。
常に三角形の位置関係を保ちながらフォーメーションを変えていくスタイル。
ボール保持者がフリーになったらシュートを決める。
そんな攻撃を決めていた。
聖人から大体の事は聞いていたので何とか動きにくらいつく。
予想以上にしんどい。
位置関係はなんとなく頭にはいってくるのでいいんだけど。
Aチームに休みは無い。相手チームを切り替えながらゲームを繰り広げていく。
一通り回ると小休憩をもらえる。
休憩をもらえるからと言ってぼーっとしてるわけにもいかない。
皆シュート練習に入る。
きつい時だからこそのシュート練習。
そんな練習を重ねながらフォーメーションの確認をしていく。
僕の為のフォーメーション確認だったのかもしれない。
そしてお昼ごはんを食べて、再び練習に入る。
フォーメーションが解ってくれば僕の真価が出る。
ボールを受け取った手でそのままパスを出す。
受け取る方は大変だけどくらいついてくれる。
練習は夕方まで続いた。

「この後の時間は各自に任せる」

監督がそう言って練習は終了……なわけがない。
その後もシュート練習やらフォーメーションの確認をする。
監督が去った後指示を出すのは聖人だった。
夕食の時間になり、夕食を食べた後部屋に戻る。
雄一郎がノートPCで何かをしていた。

「お前凄いな……」

雄一郎がふと漏らした言葉。

「能力の高さは知っていたがまさかうちのフォーメーションにすぐについてくるとは思ってなかったよ」
「勉強はしてたからね」
「皆がお前に期待する理由もわかったよ。悔しいけどな」

雄一郎からそんな言葉を頂けるとは思いもしなかった。

「自惚れるなよ、しっかり練習しろ!お前まだ伸びしろ残ってる」
「ありがとう、がんばるよ」

そう言ってスマホを手に部屋を出る。

「もしもし?」
「あ、冬夜君。お疲れ様~」
「今大丈夫?」
「うん、ご飯食べてきたところ~。明日には帰ってくるんでしょ?」
「ああ、帰るよ」
「楽しみに待ってるね」
「うん」
「今日は落ち込んでないみたいだね?いいことあった~?」
「なんとかAチームに入れたよ」
「すごいじゃん、昨日の今日だよ!」
「練習はハードだけどね。」
「頑張ってね」
「ああ、じゃあまた明日解散したら電話するよ」
「は~い」

そう言って電話を切る。
すると、もう一人電話をしていることに気がついた。
彩だ。

「ああ、明日には東京に帰るから」

彼女いるって前に言ってたな。彼女に電話してるのかな?

彩は電話を終えると僕に気がついたようだ。

「おつかれさん」

彩に声をかける。

「……お前この後練習するんだろ?」

彩が突然言う。

「そのつもりだけど」
「ちょっとつきあえよ……」

そう言って自分の部屋に戻って行った。
僕も部屋にスマホを置いて体育館に向かう。
彩とコートの端に座って話を始めた。

「神奈……音無は元気か?」

その話か……。

「今は多田って姓を変えてるよ」
「結婚したのか?」
「うん」
「そうか、それなら良かった。アイツには悪い事したと思ってるから……」
「そうなんだ……」
「あれは小5の時だったか」

彩が神奈の過去について話し始めた。

(2)

転校して間もないアイツは大人しくて、方言も出ててな。いじめの恰好の的だった。
虐められても黙って我慢してるあいつを見ているのが我慢できなくなってとうとう行動に出ていた。

「見ててウザいんだけど。いい加減にしてくんない?」

そう言うと蜘蛛の子を散らすように皆神奈に手を出さなくなった。
多分俺だけが頼りだったんだろうな。
俺の周りにいるようになった。
まさか好意を抱いてるとは思いもよらなかった。
女子と男子が一緒にいるだけで付き合ってると思われる年頃だったから、ゆかりを紹介してった。
ゆかりとすぐに仲良くなって。それから服装が変わって髪形も二人で一つだと言わんばかりに対象にサイドポニーにしだした。
中学になると最初にゆかりが告ってきてな、それから恋人の関係になった。
その後しばらくしてると冬頃にゆかりに言われた。

「神奈と仲良くしてやってくれない?」
「どういう意味だ?」
「神奈、彩の事好きみたい」
「そういう話ならきっぱり言った方がいいんじゃないのか?」
「でも、神奈転校しちゃうんだよ?最後に良い想い出作ってあげたいじゃない」
「人の心を弄ぶのはどうかと思うぞ」
「お願い!神奈にいい気分で転校させてあげて」

断り切れなかった俺にも責任がある。でもまさか告白までしてくるとは思わなかった。



「その後の事は……知ってるんだろ?」

彩の話は終わった。

「知ってるよ。カンナから聞いた」

その後高2の時にゆかりさんと再会したこと、そして電話で和解したことを彩に伝えた。

「それはゆかりから聞いた」

彩はそう言って黙っていた。

「あいつ転校してくる前にも男に振られたとか言ってたから心配だったんだ。良い男に巡り合えないんじゃないかって。それで余計に自分を責めた。でも結婚したと知って安心したよ。どんな奴なんだ?結婚相手」
「イケメンでサッカー上手くて大学もサッカーで通って今も活躍している。優しい奴だよ」
「そうか、それならよかった」

誰もカンナが振られるなんて想像もつかないだろう。
僕も誠とカンナが結ばれるなんて想像もつかなかった。
巡り会うのは偶然なのか必然なのか。
そんなの後になってみないと分からない。

「カンナは今幸せだから気にすることないよ」
「ありがとな」
「いえいえ」
「お前ら、いつまで喋ってるんだ!?練習する気無いなら部屋に戻って休んでろ!」

雄一郎が怒ってる。

「じゃあ、帰ったら神奈におめでとうって伝えておいてくれ」
「わかった」

そうして練習に戻った。

(3)

私は佐(たすく)先輩の練習に付き合う。
肩を使わない練習。
主に下半身を鍛える練習に付き合った。
後はしっかり肩を冷やして包帯をきつく巻く。

「悪いな、面倒なことに巻き込んで」
「気にしないでください。マネージャーの務めですから」

病院へも連れて行き付き添う。

「うん、回復してるよ。もうちょっとの辛抱だ」

介護の甲斐があったようだ。

「ありがとうな。お前のお蔭だ。お前がいなかったらきっと無理して取り返しのつかない事態になってたかもしれない」
「いいんです。骨に異常があるとかじゃなくてよかったです」」

そんな話をしながら、病院から大学に戻っていた。

「冬夜の話……聞いてるか?」
「片桐先輩は初日はDチームからだったそうです」
「やっぱり厳しいんだな」
「やる気のなさを指摘されたそうですよ」
「あいつの最大の欠点だな」
「今は変わってるそうですけど」
「だと良いんだがな……」

2人で車に乗っているとなにか気まずい。
別に悪い事をしてるわけじゃない。
マネージャーが選手を送っているだけだ。
それだけの事なのに……。

「なあ。佐倉さあ、片桐の事どう思ってるんだ?」
「え?」
「片桐には遠坂って彼女いるだろ?やっぱり妬いたりするのか?」
「遠坂さんは彼女じゃないそうですよ、お嫁さんだそうです」

私は笑いながら答えた。

「え?冬夜結婚してたのか!?」
「籍は入れてないけど、もう奥さんみたいなものですよ」
「お前冬夜に憧れてバスケの世界に引きずり込んでバスケ部に入ったんだよな?その……辛くないのか?」
「私は、片桐先輩の恋人にはなれません。ですが私にしかできないサポートもあります。そうやって片桐先輩の力になれればいいんです」
「そうか……」
「とはいえ、もう片桐先輩も代表入りした事だし私の役割はほぼ終えましたけどね」
「……辞めるとか言うなよ」
「え?」
「……まだバスケ部には佐倉のサポート必要だからさ」
「やめませんよ。心配しなくてもみっちり先輩の面倒見させてもらいますからね!」

そう言って私は笑った。

「よかった」と胸をなでおろす先輩。

「ところで、別府の大学のロン毛とはどんな関係なんだ?」

どうして男の人ってこう鈍いんだろう?片桐先輩が鋭いだけなのだろうか?

「何の関係もありませんよ。私ああいう軽い人嫌いなんです」
「そうか……」

実際帆秋先輩は何度も私に接触しては佐先輩に助けられていた。
そして今日も類にもれず……

「やあ、また来たよ桜子ちゃん」

この調子だ。

「何度も言いますけど私そういう余裕ないので」
「そうは言うけどいつもそこのでこすけと一緒じゃないか。……お前彼女の何なんだよ」

帆秋先輩は佐先輩にそう問い詰める。

「佐先輩は……」
「ただのパートナーだけど」

え?
佐先輩は私の肩を抱き寄せ帆秋先輩に言う。

「バスケ部の大事なマネージャー。それだけだけど?」
「ただのマネージャーの肩抱くかよ普通!」
「それだけ分かってるなら説明する必要なくない?」
「うっ……」
「行くぞ佐倉、家まで送ってくれるんだろ?」
「はい……」

一人呆然と立ち尽くす帆秋先輩をよそに佐先輩は私を連れて駐車場へと向かう。

「あれでよかったか?」
「助かりました。ありがとうございます」
「気にするな。いつもの事だ」
「ところで佐。先輩私がパートナーってどういう意味ですか?」
「言ったろ。バスケ部の大事なマネージャーだって」
「それだけですか?」
「他に理由必要か?」
「いえ……」

今はそれだけで良しとしよう。

「ところで佐先輩」
「なんだ?」
「私片桐先輩にも話してないんですけど。私の小学校の話」
「そうなのか」
「そうです」
「それがどうかした?」
「いつになったら私の事佐倉じゃなくて桜子って呼んでもらえるんですか?自分は佐って呼ばせておいて」
「……お前が佐って呼び捨てにしてくれたら考えるよ」
「じゃあ、佐……」
「……桜子」

車の中で二人の時間を作り出す。
車は佐の家の前で止まっていた。

「やっぱり男の俺から言わないとカッコ悪いよな」

そう言って頭を掻きむしる。

「俺と付き合ってくれないか?桜子」
「はい、よろしくお願いします」
「……うちに寄ってくか?」
「今度私の家に遊びに来てくれるなら」
「ああ、お邪魔するよ」
「じゃあ車どこに止めたらいいですか?」

佐は駐車場に誘導してくれる。
そして初めて男性の家に上がって話をした。

(4)

「新名さん、第一会議室に資料準備しておいて!」
「はい!」

新名さんは椎名さんのアシスタントとして懸命に働いてる。

「真鍋君何ぼーっとしてるの!?午後一から客先とミーティングって言ってたでしょ!?サンプル用意して車の用意」
「はい」

原田さんに言われると俺は準備をして車をビルの入り口に回す。
原田さんを乗せて客先に赴く。
原田さんと車の中で二人きりの時は殆ど何も喋らない。
やっぱりあの事件の後からが原因か?
やっちまった感がすごい。
客先とのミーティングは長時間に渡って続き、帰る頃には日が沈んでいた。
原田さんは電話をしている。

「ええ、今日は直帰で帰るから。あとお願い」

そう言うと電話を切る。

「真鍋君お疲れ様」
「お疲れ様です。家まで送ります」
「その前に寄りたいところがあるんだけど良いかしら?」

どこへでも行きますよ。

「じゃあ、佐賀関に向かってちょうだい」

佐賀関の道の駅を越え港に車を止めると原田さんは車を降りた。
俺も降りる。
精錬所の灯りがとても綺麗だった。

「もう一か所良いかしら?」
「はい」

車をさらに南下させ津久見に出ればセメント工場の明かりがとても綺麗だった。
津久見のファミレスで夕食にする。

「昔主人と来たことがあってね。とても綺麗だったから今はどうなってるんだろうと気になってきたかったのよ」
「……」
「今も変わらないのね」

そう言って消え入りそうな笑みを浮かべる原田さん。
その後原田さんを家に送る。

「今日は付き合わせて悪かったわね」

原田さんはそう言って部屋に入ろうとする。
俺は無意識に原田さんの背後から抱き着いていた。

「もう忘れてしまえよ!あんたを泣かせる奴の事なんか!忘れてしまえ!あんたには俺がついてる」
「……真鍋君が忘れさせてくれるの?」

原田さんの声は泣き声になっていた。

「忘れさせてやるさ。意地でも、何年かかっても忘れさせてやる」

その晩原田さんの家に泊った。

そして朝……。

「真鍋君朝よ」

そう言われて起きると原田さんが朝食を作ってる。

「す、すいません」
「シャワー先に浴びる?昨日入ってなかったし」
「じゃあ、そうさせてもらいます」

そう言ってシャワーを浴びると、朝食を取り支度をして家を出る。
その時左手の薬指から指輪が無くなっているのに気がついた。
視線が無意識にそっちに行く。
その視線に気がついた原田さんは笑って言う。

「貴方が忘れさせてくれるんでしょ?約束守ってね」

その時の笑顔は今まで見てきた中で一番綺麗なものだった。

(5)

片桐家に来てから久しぶりに一人で休日を過ごしていた。
買い置きしてあった本をゆっくり読む時間が出来た。
本当は家事でもしようと思ったけど、麻耶さんとの約束もある。
お言葉に甘えてゆっくりさせてもらおう。
とはいえ、退屈な時間なのに違いはなく。
本を一冊読み終えるとスマホを弄っていた。
女子会グルの方に「みんな何してる?」と打ってみた。

「暇してるよー」と何人か返ってきた。

「お茶会でもしよっか」と打つと「良いね」と返ってきた。

そうして青い鳥に向かった。

来たのは亜依と恵美と晶と花菜の4名。
それぞれ飲み物を頼むと話を始めた。

「片桐君の調子はどう?」

最初の話題は冬夜君。

「うん、やっぱり最初からスタメンはきついみたい」
「そらそうよね……やっぱり」

恵美がそういう。

「でも、連携が出来ないからってだけで技術的には劣ってないみたい」

現にまたも一人でAグループを引っ掻き回したらしいし。

「そうなんだ、流石と言えば流石ね」と志水さん。

「それより恵美たちの生活が知りたいんだけど?」

私がそう言うと3人は話だす。

「特別変わったことは無いわよ?相変わらず望はバイトだし」
「善君もそうね、そこで働いてるわ」
「昼は部活、夜はバイトで全然かまってくれないんですよ」と花菜が愚痴をこぼす。

本当に3人ともそんなに変わらないようだ。

「でもあんまりそんな生活続けてたら倦怠期きちゃうんじゃない?」

亜依が聞く。

「そうですよね、私達もマンネリ感出ちゃってるし」と一ノ瀬さんが話に加わる。
「片桐君が部活始めてからここの売り上げ激減ですよ」と一ノ瀬さんが笑う。

亜依の疑問に答えたのは恵美だった。

「私達は夜はしっかりコミュニケーションとってるから。今日は何があったとか……後二人でテレビ観たり」
「私達もそうね。夜は2人で飲んだりしてるわ」と晶も言う。
「私はそうですね、朝しっかり見送りする時間は作ってるかな?『いってらっしゃい』の一言だけでも違うもんですよ」と花菜が言う。
「亜依ちゃんはどうなの?もう入籍すませたんでしょ?」

恵美が聞くと亜依は答えた。

「うん、瑛大もバイト見つけたみたいだし。来月に引っ越すつもり」
「やっぱり私立大近く?」
「うん、学生向けの安い物件一杯あるしね」

もう部屋も見つけてあるらしい。
皆羨ましいな。
私達が一番最後になってしまいそうだ。
でも冬夜君との『約束』もある。気長に待つこととしよう。
あの晩冬夜君が誓ったこと、出来るなら実現させてあげたい。
その為だったらなんでもしよう。
冬夜君は皆には内緒だって言ってた。
だけど佐倉さんには話した方がいいんじゃないかと思った。
でも冬夜君の意思を尊重しよう。

「これだけ結婚した人がいると渡辺班で一番最初に子供作るのはだれでしょうね」と一ノ瀬さんが言う。
「と、言ってるけど善君どうなのかしら?」と晶が言っていた。

酒井君は咳をしている。
ある程度時間が経ったところで皆解散した。

「ごめんね、嫁の愚痴だらけになったみたいで」

恵美が申し訳なさそうに言う。

「いいよ、そういうの参考になるし」と私が言うと恵美が「ありがとう」と言った。

「今度また女子会やろうね」と亜依が言うと皆了解した。

そして家に帰ると夕食を食べて風呂に入ってテレビを見てると冬夜君から電話が。
Aチームに入れたらしい。よかったね!
明日の夜には帰ってくるらしい。
明日の夜が待ち遠しい。
帰ったらマッサージしてあげよう。
ゆっくりさせてあげよう。
でも……少しは甘えさせて欲しいな。
麻耶さん達に知らせに行く。
冬夜君の土産話を心待ちにしながら今日は早めに眠りについた。
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