優等生と劣等生

和希

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1stSEASON

進路

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(1)

昼休み。

「はぁ……」

誠が大きくため息を吐く
僕たち4人は中庭に居た。
僕もため息を吐きたい気分だ。
やれやれ……。

「二人ともどうしたんだ?」
「どうしたの?」

カンナと愛莉が尋ねてきた。
誠が答える。

「いや、昨日の家庭訪問でさ……」

誠も同じか……。

「ん?進学ヤバいって言われたのか?」

カンナが誠に聞く。
誠は首を横に振った。

「それはいいんだけどな……。ミッキーがさ……」
「やっぱりか……」
「て、ことは冬夜君も美樹本先生の事?」

愛莉の言葉に僕は頷いた。

「何があったんだよ?」

カンナが尋ねると誠は話し出した。

(2)

誠の場合。

「いや~誠君は非常にサッカーがうまい。伊田高の特待生枠は間違いないでしょう。強いて言えばもう少し実績があるといいんですけどね。こればかりはチームの問題だから仕方ない」

ミッキーは終始笑顔だった
母さんもそれを聞いて安心していたのかにこやかにしていた。

「しかし誠君はモテますね。美形だし性格もいいし運動能力も抜群ときた。僕の若いころを見ているようですよ」
「は、はあ」
「彼女もすでにいるそうで。音無さんだったかな?彼女もいいですね。整った顔立ち。そしてスタイルもいい。あの子ももてるみたいですね」

何を言い出すんだミッキー。

「い、今話すことじゃないだろ。ミッキー」
「いいじゃないか、こういうことは隠すことじゃない、堂々としてればいいんだ。もう、キスの一つや二つしてるんだろ?」
「ミッキーには関係ないだろ!」
「まあ、いいじゃないか?彼女はキスは上手いか?誠君は上手にリード出来てるか?なんなら。先生が手ほどきを……」
「帰れ!!」


……てな具合だよ。

「なんだよそれ、セクハラじゃねーか!」

憤慨する神奈さん。

「だよな~何考えてるんだミッキー」
「そんな人が良く教師になれたね~」

不思議そうに言う遠坂さん。
そういや、遠坂さんはミッキーの事知らなかったっけ?

ミッキー。本名、美樹本修三。
3年2組の担任。体育教師。
趣味、体を鍛える事。妻子持ち。
長所、ピアノが弾けること、なかなかうまい。
短所、エロい。セクハラの塊。女子の敵。厄介なのはそれを女子が喜んでると本気で思ってる事。妻子がいるにも関わらず生徒の母親を口説こうとする。

  
「ふ~ん。全く知らなかった」

遠坂さんは話を真面目に聞いていた。
そうか、遠坂さんはミッキーの事何も知らないんだな。
体育も男子担当だし。
あんな奴を女子担当にしたら大変だ。

「あいつHRで……配ってたからな」
「そうなの!?信じられない」
「連休前にさ『連休楽しめよ!ただし避妊はしとけ!』って……」
「信じられない……でも冬夜君持ってたんだ……」

そういや、遠坂さん冬夜と2泊したんだっけ?
話からして使うことはなかったみたいだけど。
まあ、冬夜だしな。

「よく問題にならないね」
「あいつ妙に人気あるからな。私は無理だけど」

神奈さんはミッキーが嫌いらしい。
でも、女子にも人気あるんだよなあ。女子ってわからねえ。
あれ?さっきから冬夜のやつ妙に黙ってるな。

「どうしたんだ冬夜?」

冬夜に声をかける。

「いや、うちでそのまさかが起こってさ……」

(3)

冬夜の場合。

「うん、2年の間に随分成績伸びてますね。これなら本命は大丈夫でしょう」

ミッキーがそう言うと、母さんは喜んでた。
ここまでは良かった。

「ところで、1組の遠坂さんとの関係なんですけど……」
「愛莉ちゃんと何かあったんですか?」
「いえ、随分クラスで揶揄われていたので大丈夫かな?と」
「そうなの!?冬夜!」

今話すことじゃないだろ。

「気にすることないですよ。二人共逆にラブラブっぷりを見せつけてますから。大した度胸ですよ」
「そうなんですか」
「そうですね、それで成績が落ちてたら問題ですが成績は右肩上がりですからね」
「そうですか」
「ところで冬夜君、先生が渡したアレ使う機会はあったかな?」
「アレってなんですか?」

母さんが訝し気に尋ねてきた。
言うな、言うなよ。

「ああ(自主規制)ですよ。連休に入りましたからね。二人のいちゃつき具合からそろそろ使い時かな~と」
「そ、それもそうですね」

否定しろ!母さん!

「使うわけないだろ!」
「なんだ?使わないと危険だぞ!それとも使い方を知らないのか?なんなら先生が使い方を実践してやろうか?お母さんに協力してもらって」

ちょ……おま……。

「はい?」

母さんが驚きの声を上げる。

「大丈夫ですよ僕の方が年上ですけどまだまだ現役ですから、お母さんは年上は苦手ですか?」
「い、いえ……」
「どうです?ここは冬夜君の為にも一肌脱いで。いや一枚脱いで……」
「帰ってください!」
「帰れ!」

僕の話はここでお終い。



「信じられない!麻耶さんにそんな事言ったの!?」

愛莉が大声をあげる。

「ああ……悪夢だったよ。激おこだったしな。母さんも……」
「そりゃ怒るよ……」

愛莉がため息を吐く。

「私担任がまゆみちゃんでよかったよ。神奈、今日だったよね?気を付けなよ」
「うち母子家庭だって知ってるしな……今から考えると気が重いよ」

神奈も気が重いらしい。

「で、でも二人共志望校いけそうでよかったね!」

「まあな」
「俺はまだ分かんないけどね。冬夜~一試合だけでいいから助っ人で入ってくれよ」
「だから60分走る体力ないって」
「10分だけでいいから」
「クラスマッチと同じってわけにはいかないぞ」
「お前なら大丈夫だって」
「……他の3年生優先してやれよ」
「勝った方が嬉しいと思うんだけどなぁ」
「まるで俺が入ったら勝てるみたいな言い方だけどそんな保障できないぞ」
「うーん……」
「まあ、県立も一応受けとけよ」
「そうだ、誠君も防府受けたらいいんだよ。4人で同じ高校♪」

突然、言い出す愛莉。

「無茶言うなよ。受験勉強なんてほとんどできてない」
「部活終わったら冬夜くんの家で皆でお勉強すればいいよ」
「……まあ考えとくよ」

あまり乗り気じゃないな。

キーンコーンカーンコーン

「あ、予鈴だ。じゃあ、また後でね」

そう言って教室へ向かう愛莉。
僕たちも教室に戻った。

(4)

神奈の場合。

ピンポーン。

どうやら来たみたいだ。
母さんにはあらかじめ忠告しておいた。

「あら、いらっしゃいませ」
「おお~綺麗なお母さんだ、娘さんはお母さんに似たんですね」
「あら!ありがとうございます」

流石母さん。こういう男の扱いに慣れてる。

「それではお邪魔します」
「どうぞ~」


成績には問題ないみたいだ。
志望校は問題ないと言われた。

「出来ればもう少し上げておいた方がいいかもですけどね」
「そうですか。最近勉強頑張ってるみたいだから」
「保険に私立を受けておいた方が良いと思いますが」
「無理、家に金はない」

私はきっぱり言った。
本当は県立だってギリギリだってのに。

「お金の心配ならしなくていいのよ」

母さんが心配そうに聞いてきた。
でもこれ以上心配かけられない。

「伊田高でも受けておいたらどうだ?多田君と一緒になれるぞ」

ば……何言ってんだよ!

「多田君とまた付き合ってるのかい?」

母さんが食いついてきた。

「まだ付き合ってねーよ。勝手に決めんな」
「なんだ?まだなのか?多田君は否定しなかったが」

……誠め。

「後半の連休で進展するかもな。アレを使うときがくるかもな」
「アレって何ですか?」

母さん突っ込むな!
ミッキーが驚くべき行動に出た。
財布を取り出すとソレを取り出す。

「これを配ったんですよ」
「あら、最近の中学生は進んでるんですね」
「そうなんですよ~」
「つかわねーよ!」
「お、神奈さんは(自主規制)でするタイプなのか?危険だぞ」
「そうだよ、中学生でお母さんになるのは流石に反対だよ?」
「てかしねーし!!」
「もったいないなぁ、良いからだしてるのに、片桐君といい多田君といい、いい男に恵まれてるのに二人共(自主規制)なのか?」
「ちげーよ!!」

イライラしてきた。

「まあ、この子にはこの子なりの恋愛観がありますから」

母さんがフォローしてくれた。

「もっと恋愛観を広げた方が良い。なんなら僕と母さんも恋愛しませんか?」
「私が?あらやだわあ」
「何言ってんだミッキー!」

私が割って入った。

「良いじゃないか?先生がパパになるんだぞ!?」
「いいわけないだろ!大体お前妻子持ちだろ!」
「あら?そうなんですか?それじゃ無理ですね」
「先生は学校では独身だぞ」
「ふざけんな!」

(5)

愛莉の場合

「……では防府でいいんですね?」
「はい」
「うーん、でも勿体ないですね。せ、せっかくだからもう1ランク上の高校を狙った方が……」
「片桐君と一緒の高校行きたいから♪」
「ま、まあ三重野高校よりはマシですよね……」

がっくりと肩を落とすまゆみちゃん。

「さ、最近片桐君と噂になってますけど本当なんですか?」

その話まゆみちゃんもするのか?
正直先生と話すのは嫌だった。だって……

「こ、交際は別に構わないと思うのですが、行き過ぎるのはちょっと……」

ほら始まった。

「学業が疎かになるのはどうかと思います」

私別に勉強疎かになんてしてない。
ちゃんとやることはやってる。
どうしてそこまで言われなきゃいけないの?

「か、片桐君もちょっと問題を起こしてるみたいだし」

去年の事をいつまでも引きずらないで!

「行き過ぎると言われましてもね~、うちの子もう結婚相手を決めてるみたいだし~」

話に口を挟んだのはりえちゃんだった。

「け、結婚相手!?」

まゆみちゃんは目を丸くしてる。
無理もない、まだ中学生なのにって思うよね普通。

「そ、そんなに焦らなくても……。まだちゅ、中学生ですよ!」
「そう言われましても~うちの娘が決めたことですから~」
「か、片桐君の親御さんもご存じなのですか?」
「知ってるも何も先日一緒に旅行に行きましたの~。二人相部屋で楽しそうでしたわよ~」
「あ、相部屋~!?し、失礼ですがあなたそれでも母親ですか~普通……」
「うちの娘が決めることですから~、自分の行動に責任を持てるように育てたつもりです~」

りえちゃんの相手をしてるまゆみちゃんが可哀そうになってきた。

「何か間違いがあったらど、どうするんですか?」
「何度も一緒に寝てるけど一度たりとも何もなかったそうですよ~。冬夜君真面目なんですね~」

開いた口が塞がらないまゆみちゃん。

「と、いうわけでご心配なく~、うちの娘はちゃんとした娘ですから~」
「……そ、そろそろ失礼します」
「は~い、ではまた~」

りえちゃんの完勝と言ったところか。
とぼとぼとまゆみちゃんが次の家に向かうのでした。

(6)

と、二人の報告を聞きながら勉強をしていた。

「……愛莉のお母さんってすごいんだな」

カンナが感心している。
いやいや、色々おかしいだろ!

「りえちゃんすごいでしょ!私もいつかああなりたいなぁ~」

いや、既にその素質あるぞ……愛莉。

「それにしてももうそこまで話してたんだなあ。敵わないな」

僕は承諾した覚えは一度もないけど……なんか色々話が進んでるのは確かだ。

「後はトーヤの頑張り次第だな」

出来れば話に混ざりたくなかったのだが、カンナは容赦なく振ってきた。

「そうだな……」
「冬夜君、私はいつでもいいんだよ?……もらってるんでしょ?アレ」

はい?

「言ってくれれば私ももうちょっと本気だしたのになぁ」

口が裂けても机にしまってるなんて言えない。

「トーヤ……私今持ってるんだけど」

こういう時は、生き生きしてるな。カンナ。

「神奈……怒るよ?」
「じょ、冗談に決まってるだろ?」

焦るカンナ。
絶対本気だったろ?

「あーあ。折角下着買って行ったのに全然気づいてくれないんだから」
「そこまで用意してたのに何もなかったって冬夜……お前やっぱり……」
「それはないよ!ちゃんと反応してたから~」
「そうなのか……」

草食系男子とかよく言うが、この二人は間違いなく肉食系女子だ。

「カンナも大変だったな。ミッキー……」
「先生じゃなかったらぶっ飛ばしてたよ。まあ、まず家に入れないけど」
「本当によく教師になれたね?そんな担任の言うこと当てになるの?」
「それは大丈夫だよ、なあカンナ?」
「ああ、大丈夫だよ。仕事とソレはちゃんと切り替えしてるみたいだし」

実際のところ、口はああ言ってるが実際に被害にあった女子はいない。
いたらまずクビだろうが……。


ピンポーン。

誠が来たみたいだ。
カンナも分かったのか黙って道具を片付ける。

「じゃ、お先~」
「は~い、また明日~」
「またな~、トーヤ頑張れよ。何なら明日の朝連絡くれたら来ないから」
「心配ないよ?冬夜君そんな度胸ないから」

ぐさっときたぞ愛莉。

カンナが帰った後も暫く勉強して愛莉を家に送る。

「じゃあ、また明日な」
「うん、また明日ね」

いつものスキンシップをした後、僕は家に帰る。

「下着買ったのにな~」か……。

……ちょっとでも見ればよかったかな?
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