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1stSEASON
約束された未来
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スマホの着信音が鳴る。
時間は22時。
ゲームをしていた。
誰からだろう……愛莉からだ。
「もしもし」
「もしもし~?麻耶さんから聞いてる?」
「……なにを?」
「やっぱり聞いてないんだね~電話してよかった」
「何かあったの?」
「あのね~明日から2泊3日で旅行行くから~」
旅行好きな家族だな。
ちなみに今年のゴールデンウィークは前半3日、間に3日間学校後半4日間のスケジュールだ。
まあ、愛莉の成績なら余裕なんだろうな。
てことは3日間カンナと勉強か。
誠は最後の部活で忙しいだろうからな。
「分かった。行って来いよ」
「行ってこいって他人事みたいな言い方だね~」
ちょっとムッとしているみたいだ。
「ごめん、気を付けてね」
「……冬夜君達も一緒なんだよ~」
はい?
「今なんて?」
「だから~冬夜君とこの家族と一緒に行くんだよ~」
聞いてないぞ!
「今初耳なんだけど……」
「摩耶さんに聞いてみなよ~」
僕はスマホを手に部屋を出る。
リビングでくつろいでる親に話をする。
「あ、言うの忘れてたね。さっきお誘いがあってね。んじゃ行こうかって」
「朝早いから早く寝とけよ」
部屋に戻った。
「ね?言ってたでしょ~」
「……宿題どうするんだよ」
「帰ってからやったら終わるよ~。先に終わらせても後で終わらせても一緒でしょ~?」
「僕たち受験生だぞ?」
「いつも言ってるじゃん。普段から勉強しておけば連休くらい休んでも平気だって~」
そういう奴だった……。
「じゃ、確かに伝えたからね~準備しておいてね」
愛莉は言いたい事を言うと電話を切った。
僕はメッセージを愛莉に送る。
「カンナに伝えたのか?」
返事はすぐに返ってきた。
「ちゃんと伝えてるよ」
……とりあえず旅行の準備を始めた。
(2)
次の日の早朝に出発したにも関わらずこの渋滞。
PAにトイレ休憩するのも一苦労だ。
休憩する毎に父さんと愛莉パパが運転を交代する。
結局目的地に着いたのは夕方だった。
ホテルの駐車場に駐車し、チェックインを済ませる。
3部屋もよくとれたな……。前から予定してたのか?
部屋の割り振りを確認する。
うちの両親。
愛莉の両親
愛莉と僕。
はい?
なんか間違ってないか?
それでいいのか?両親’s
「うちの娘をよろしくね~」
「……う、うむ」
と愛莉の両親。
うちの両親は……。
「あまり羽目を外すなよ?」
「優しくしてやるんだよ」
……まったく気にしてない。
「早く部屋に入ろ?冬夜君」
僕の考え方がおかしいのか?
部屋は結構な広さだった。
バスルームもついてるけどせっかく露天風呂あるんだしそっちに行こう。
ベッドも二つある。
「広いね~」
そう言うと愛莉はベッドにバッグを置き、もう一個のベッドにダイブする。
「ふかふか~」
ベッドの心地良さに満足する愛莉に僕は声をかける。
「おい」
「なに?」
「……俺はどこに寝るんだ?」
一個は荷物置き場と化しもう一つは愛莉が占拠してる。
当然僕のベッドがない。
「ここだよ?」
不思議そうな顔をして答える愛莉。
そうだよな。ただ荷物を置いて場所確保しただけだよな。
僕は安心して愛莉の寝てる方に荷物を置いた。
「何してるの?」
「何って荷物を置いたんだけど……」
「荷物はあっち~」
そう言って愛莉は自分の荷物を置いた方を指差す。
……へ?
「あっちは愛莉のベッドだろ?」
愛莉の表情が険しくなる。
「相変わらず鈍いなぁ~。乙女に最後まで言わせるつもり?」
いや、想定内だった。
薄々感づいてはいた。
ただ、考えたくなかった。
一番ダメなパターンだろ?
乙女って自称してるけど乙女の考える事じゃないぞ?
「まさかとは思うけど……一緒に寝るの?」
愛莉は恥ずかしそうにこくりと頷いた。
確かこのホテルに2泊だったな……。
てことは2日も一緒なのか?
落ち着け、まだ説得すればなんとかなる……。
「愛莉、いいか。恋人同士が2人っきりで同じ部屋にいて同じベッドで寝る……どういうことか分かってるのか?」
ここまで言えば分かってくれるだろ。
「……何かあるなら期待しちゃうけど、冬夜君いつも寝ちゃうじゃない」
不服そうに答える愛莉。
そうか。そうだったな。
安心する僕。
だが安心するのはまだ早かった。
愛莉の表情は険しいままだ。
俺なんかしたか?
「なにかあった?」
そう言うと彼女は僕に抱き着く。
「ど、どうしたんだ?」
「いい加減気づけバカ!」
ん?何かあったのか?
すると愛莉から漂うほのかな匂いに気がついた。
この甘酸っぱい匂い、どこかで嗅いだような……あ!
僕が買った香水……。
愛莉使ってくれたのか。
「ごめん、車の芳香剤と似てて……」
「嘘!車の中ずっと寝てたじゃない!」
う、しまった!そうでした。
「折角だからって使ってみたのに~相変わらずだね~」
「ごめん……」
まずい、空気を悪くしてしまったか。
この空気が2日続くのは耐えられないぞ。
その時愛莉のスマホが鳴る。
「もしもし……うん、わかった」
愛莉は電話を切ると言った。
「パパさんたちが外でご飯食べようって」
あれ?そんなに機嫌悪くない?
「ん?」
ぼーっとしてる僕。
彼女は微笑む。
「大丈夫だよ。怒ってないから」
それを聞いて安心する僕。
「じゃ、行こうか」
「うん!」
そう言って腕にしがみつく愛莉。
両親’sの前でもそうしてるつもりか愛莉。
夕飯は適当な店に入って食べた。
聞きなれない物があった。
トルコライス
ピラフ、ナポリタンスパゲティ、ドミグラスソースのかかった豚カツという組み合わせ。
今夜の飯はお前だ!
美味しそうに食べる僕を見て愛莉が一言。
「そのくらい私にも夢中になってよ」
むせた。
「だ、大丈夫!?」
背中をさすってくれる愛莉。
「急に変な事言いだすから」
「変な事じゃないも~ん」
その後ホテルに戻って行った。
さて、風呂でも入ってくるか。
ホテル、温泉とくれば浴衣だね。
さっそく浴衣に着替える僕……。
ジーっと見てる愛莉。
……
「何してるの?」
「いいのいいの、さあ早く着替えて」
「そんなに見られると着替えらえないんだけど」
「なんで?」
「恥ずかしいだろ!?」
「私の胸は見て、冬夜君は見せてくれないんだ!」
そんな事もあったっけ?
「……いっとくけどパンツは脱がないぞ?」
えーっと言う顔する愛莉。
浴衣に着替えるのにノーパンは無いと思うぞ。
「んじゃいいや上半身だけでも」
……しょうがないなと着替え始める。
「あ、結構いい肉付きしてるんだね」
美味しそうな言い回し止めろ。
「んじゃ、私も着替えよう」と服を脱ぎだす愛莉。
わあ!せめて俺が部屋を出るまで待て!!
「だって一度見てるんだし気にする必要ないでしょ?」
慌てて部屋を飛び出す僕。
一人残される愛莉。
「意気地なし」
風呂に入り部屋に戻るとすぐに眠った。
車での移動って何故か疲れるよね?
(3)
「冬夜君起きて……」
ん?今日は学校か?
「起きてってば?」
ああ~起きて着替えなきゃ……。
目を覚ますと浴衣姿の愛莉が……。
胸元が開いていて胸が……。
……浴衣姿?
慌てて飛び起きる。
「やっと起きた~パパさん達もう下にいるって」
ここで一つの疑問。
「どうして先に着替えてないんだ?」
「私もさっき起きたから」
「……そうじゃなくて」
また昨夜と同じことの繰り返しだろ!
「どうせ冬夜君は私の着替えるところなんて興味ないんでしょ!」
そう言うと愛莉は浴衣を脱ぐ。
……男性諸君ならわかるよね?
まだ若くて元気な男性ならわかるよね?
朝どういう状態かを。
言っとく。
愛莉が起きたときに布団ははぎとられていた。
そしてなぜか浴衣の帯は外されていた。
犯人は言うまでもなく愛莉だ。
そして愛莉は下半身の異常事態に気づく。
きゃああああああああああああああああああああああああああああ!って叫ぶお思うだろ?
だけど愛莉は違った。
「よかった。冬夜君も男の子なんだね!」
と、一言言って喜んでるのだった。
そんなの前に泊まった時に知ってるだろ……。
午前中は観光名所の観光。
こういう場所に行くとさ、もうなりふり構わずいちゃついてるカップルがいるよね。
ていうかそういうカップルか親子連れしか見ないよね。
だから僕も開放的だったんだ。
二人で写真撮ったり、色んな店を見て回ったり。
ハートストーンを探したり。
はしゃぎまわってた。
午後は中心地に移動してお昼ごはん。
チャンポン……と皿うどんを食べた。
愛莉はポカーンとしてた。
「よく食べるね」
午後は中華街に移動。
焼売、餃子、中華まん……。
匂いにつられて出店をに流れる僕の腕をつかんで離さない愛莉。
「さっきあれだけ食べて良く食べる気になるね!」
お土産屋さんでチャイナドレスを見てた。
愛莉に着せたら……いいかも。
とか、思ってたら、愛莉に叩かれた。
「今神奈のこと考えてたでしょ。……どうせ私には似合わないですよ」
そんなことないよ。
出るところは出て、くびれははっきりしている見事な曲線美の愛莉が着たらどれだけ似合うだろう。
「愛莉にも似合うと思うよ」
「……本当?」
もじもじする愛莉。
喜んでるんだろ?可愛いなぁ。
その後カンナと誠へのお土産を選んで買った。
二人でいると、どれだけ時間がたつのが早いんだろう。
「そろそろ帰るぞ~」
両親’sに言われて気づいたら時計は5時を回っていた。
それから夕食を食べてホテルに戻る。
再びお互い浴衣に着替える。
もう気にならなくなっていた。
それから風呂を浴びようと部屋を出ると、父親’sに出くわす。
「今から風呂か。ちょうどいい一緒に行こう。話があるらしいんだ」
「……う、うむ」
話?
なんだろう?
(4)
3人で露天風呂につかる。
極楽極楽~♪
……じじくさい?別にいいだろ?
「ふぅ~」
「さあ、遠坂さん」
「う、うむ……冬夜君」
「はい!?」
僕はなぜか起立する。
「君は愛莉の事をどう思ってるのかね?」
はい?
「とてもいい人だなって」
まさかこの年でそんな質問をされるとは思ってなかったぞ
「……そんな他人行儀な事を聞いてるんじゃない」
「え、えと……」
「冬夜、遠坂さんはな。お前に愛莉さんのことを好きなのか嫌いなのかをきいてるんだ」
「す、好きです」
「そうか……」
そう言うと愛莉パパは黙り込む。
しかし少したって喋りだした。
「愛莉は頭もよく、見た目も綺麗な自慢の娘だ……あんな優秀な娘をどうして私たちが授かったのかわからない……。そんな娘の願いはただ一つ……君のお嫁さんになることだ。……私は父親として娘の唯一つの願いを叶えてやりたい」
え?え?もうそんな話してたんですか?
突然愛莉パパは頭を下げる。
「親ばかと言われても構わない……自慢の娘の願いを叶えてやってくれないか!」
ちょ……待って……。
「うちの娘に至らぬところがあるかね……!」
「い、いえ。僕にはもったいないくらい素敵なお嬢さんです」
「なら問題ないよな……うむ」
「うちの不肖の息子をありがとうございます」
「いえ……うちの娘の我儘をいつも聞いてくれる息子さんにはお世話になって」
「とんでもない、お世話になってるのはうちの息子の方で……」
……僕はそーっと風呂を出ようとしたが、捕まった。
「遠坂さん、この後飲みましょう。冬夜お前も付き合え」
「僕は飲めないよ!」
「ソフトドリンクでいい。娘さんを嫁にやる父親の気持ちを汲んでやれ」
ようやく気付いた。
この二人風呂に入る前に飲んだな?
「……じゃあ、上がりましょうか?」
「そうですな」
そうして僕の意思に反してホテルのラウンジで飲む羽目になった。
(5)
そうして両親’sに巻き込まれラウンジで飲んでいた。
明日運転だろ?大丈夫なのかよ。
「冬夜君~うちの娘をお願いね~」
そう言って泣く愛莉ママ。
「りえちゃん何言ってるの!?」
と、言いつつまんざらでもない様子の愛莉。
「遠坂さんうちの息子をよろしくお願いします」
母さんまで何言ってるんだ!
父親’sは相変わらずだ。
0時をまわった頃僕たちは先に退散する。
「冬夜、しっかりな。ちゃんとリードするんだぞ」
「う、うむ……冬夜君ならかまわん」
しっかり出来上がってる両親’sを放っておいて僕と愛莉は部屋に戻った。
「驚いたね」
「まったくだ……何考えてんだ親は」
「お風呂でなんて言われたの?」
愛莉が尋ねてくる。
「……娘を頼むって」
キャーっと喜ぶ愛莉。
それでいいのか?
「これでもう安心だね」
何が!
「さて、と……」
布団に入るように促す愛莉
いつもなら先に入るのに。
「ちゃんとリードしてって言われたでしょ!」
本気にしてるのか?酔っ払いの言ってることだぞ!
……仕方なくベッドに横になる。
……その後どうしたらいいんだ。
とりあえず愛莉にベッドに入るように促す。
躊躇いもなく布団に入ると、密着する。
「ねえ、腕枕して」
右腕を横にだすとそこに頭をのせる愛莉。
「この後どうしてくれるの?」
愛莉の目が輝いてる。
が、ちょっと恥ずかしげにも見えた。
僕は右腕を折り曲げ、愛莉の体を自分に寄せる。
愛莉は目を閉じている。
ここで何もしなかったらヘタレだよな。
きっと誠たちに笑われるよな。
意を決して行動に出る。
布団の中で愛莉を抱きしめる。
男性特有の問題が発生したが、気に掛けなかった。
「冬夜君……」
愛莉も僕の腰を抱きしめる。
「もう悩まなくていいね?」
「何を?」
「親も許してくれたし……私いつでもいいよ」
いやいや待て。
「いつでもいいんだって思ったら焦らなくてもいいんだって思った」
「愛莉……」
「ずっと待ってる、冬夜君が好きな時に……して」
「ああ……、でも今はこれが精いっぱいだ。」
「うん、こうしてるだけでも幸せだよ……あっ!」
「どうした?」
「今なら下着付けてないよ」
「?」
「触りたいなら、どうぞ」
「……」
「冬夜君?」
「……」
「寝たの?」
寝てた。
「もう!」
ぽかりと頭をたたかれた。
「少しは期待させてよ」
その晩夢を見ていた。
大学を出て、就職して……愛莉と結婚して。
まだ見ぬ未来。
どうなるか分からない。
……やめよう。
今は前向きに考えよう。
一番の困難を乗り越えられた。
それだけでも一歩進めた。
それでいい。
それ以上何を望む。
愛莉は僕が良いと言ってくれてる。
なら僕に出来る事は
愛莉を大事にすること。
ふと目を覚ますと愛莉は眠っていた。
愛莉を抱きしめる。
「大好きだよ」
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