優等生と劣等生

和希

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1stSEASON

自由行動

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(1)

3日目・京都

午前中は京都で自由行動だった。
京都からでなければどこに行ってもいいというわけ。
映画村に行きたいと言う誠とカンナ。
嵐山に行きたいという愛莉。
どっちでもいいと思ってる僕。
……。
二手に分かれて行動することになった。
13時にホテルに集合。昼飯は各自で食え。
12時半に京都駅前で合流ということになった。

「上手くやれよ」

と去り際に言う誠。
何を言ってんだか。


嵐山までは電車で行った。
この時思い知る。

電車ってJRだけじゃないんだな。

改札口で迷う僕をリードする愛莉。
愛莉は慣れてるのだろうか?

「前に家族で旅行に来たことあるし」

よく旅行に行く家族だな。


嵐山・渡月橋。
見事な紅葉だった。

「綺麗~!!」

と、はしゃいで写真を撮る愛莉。
ついでだから愛莉もとってやるよとスマホを取る。

「ん~それなら~……」

と、僕からスマホを取り返し道行く人に「すみませーん」と頼んで一緒に撮った。
「そちらの君は撮らなくていいかい?」と撮ってくれた人が言った。
折角だから僕も撮ってもらうか。
「お願いします」と、スマホを渡す。

さっきの時もそうだが異様に愛莉が近づいt来る。
もう慣れたけど。
慣れって怖いね。

「はい、チーズ」

撮ってもらった。
スマホの写真を撮るときは音が鳴らないのでいつ撮ったかわからない。

「はい、撮れたよ」

と、声をかけられるまでわからない。

「ありがとうございます」

そう言うと撮ってくれた人は去って行った。

「ねえねえ、あれ乗ろうよ」

腕を組んで指差すのはトロッコ列車だった。
一応言おう、同じ学校の奴も来てる。



「わ~い、凄い凄い」

写真を撮りまくる愛莉。
普通の電車と何が違うんだ?
まあ、紅葉の中を突っ切るのは壮観だったが。


時間はそんなにかからなかった。
が、降りたら結構時間ギリギリ。
京都駅にもどって適当な店で昼食を食べカンナ達を待つ。
予想通り遅刻してきた。

「いやあ、悪い悪い」
「ごめんな、ちょっとはしゃぎすぎて時間忘れてたよ」
「……大阪では一緒に行動だね」

ため息交じりに言う愛莉。

「あ、大丈夫。大阪はそんなに離れてないし」
「うん、心配しないで二人で楽しみなよ」

二人がそう言うので「それなら……」と承諾する愛莉。
実は喜んでるのかもしれない。


(2)

大阪に着いた。
ここでも自由行動。
18時までに戻ればいい。

「とりあえず梅田に行こうぜ」

と、人ごみを掻い潜って先を行くカンナ。
僕たち3人もあとをついていく。
一番後ろは僕だったが。
相変わらずだが、乗り場が分からない。
カンナは分かってるのだろうか?

「ほら切符を買って買って」

カンナに言われるままに切符を買う僕。

「そんなに急がなくても電車がまだ……」
「来るんだよ!」

先に言われた。

改札口を抜け下に降りる。
地下鉄だ。
表示板を見る。
あと何分って書いてある。
丁度良かったのかな?
時間通りに列車が来た。
乗り込む。
昼過ぎの割には人多すぎだろ。
梅田に着いた時には面食らった。
人人人。
これだと、すぐにはぐれてしまいそうだ。

「どっちだよカンナ」
「こっちだよ、はぐれるなよ!」
「分かった」

その時自然に、ごく自然に愛莉の手をつないでいた。
はぐれないためとの理由もあったかもしれないが、もう慣れていたのだろう。
商業施設に入る。
この中にテーマパークはあるらしい。
が、テーマパークは閉店していた。
唖然とする4人。

「おっかしいな、前に来たときはあったのに」

戸惑う愛莉。

「これからどうする?」
「まあ……適当に時間潰すか」
「誠どっかいきたいところあるか?」
「ネカフェでも行って時間潰すか?
「大阪まで来てネカフェかよ!」
「……買い物でもしてくか?」
「私行きたいところあるんだけど良いかな?」

愛莉が珍しく主張する。

「じゃあ、ここの入り口を待ち合わせ場所にして別行動にしようか」
「17時半くらいでいいか?」
「わかった」
「私冬夜君と行きたいところあるの!」

そう言って愛莉は腕を掴んで。建物の上階へ向かう。

「分かったから急ぐなって」



着いた先には観覧車。
同志て建物の上に観覧車が?

「ほら、チケット買って並ぼ?」

愛莉に促され、並ぶ。
愛莉は僕の腕を離さなかったが、ここじゃ皆似たようなカップルばかりだったので気にならない。
順番が来た。
僕らは観覧車に乗り込む。
最初は対面に座っていたが、ある程度上に上がると隣に座っていた。
前後のカゴを見るが似たようなもんだったのでこれでいいんだろう?

「ねえ!見てみて」

その先には海が見えた。
結構高いんだな。ここ。
景色を見てはしゃいでいたが最上部に向かうにつれて、愛莉の表情が硬くなってきた。
表情だけじゃない、体も強張っている。
高所恐怖症か?
いや、違った。
最上部に到達する頃、彼女は目を閉じる。
幾ら鈍い僕でもそれが意味することは理解していた。
彼女の肩を抱き、そっと唇を重ねる。
僅か数秒間だった。
思えば僕からキスしたことってそんなになかったっけ?

キスが終わると、彼女はにんまりしていた。

「一度やってみたかったんだよね!」

なるほど、それで観覧車を選んだのか。
観覧車が半分ほど降りると僕たちは対面に座る。
なんかの儀礼なんだろうか?
観覧車を降りると「次どこ行く?」と尋ねる。

「冬夜君行きたいところないの?」

何も考えてなかった。

「……うーん」
「メイド喫茶は却下だからね」

先手を打たれた

「……じゃあお好み焼き」
「へ?」
「いや、本場の関西風食べてみたかったんだよね」
「……夕食食べれなくなるよ」
「お好み焼きとかおやつみたいなもんだろ?」
「食いしん坊だね、冬夜君は」
「悪かったな」
「じゃ、なんか食べに行こうか?」


お好み焼きを食べた後は
商業施設でウィンドウショッピングを楽しんでいた。
時間が来ると入口で待ってる。

「おーい」

カンナの声が聞こえてきた。
商業施設から出てきた。
手には紙袋が。

「なんか買ったの?」
「まあな」

二人ともニコニコしている。
何かいいことあったのか。

「じゃ、そろそろ行こうぜ」

そう言って僕たちはホテルに戻った。


(3)

ホテルでご飯を食べてお風呂にはいる。
仕切り壁の近くに岩があったのだがそこによじ登り覗こうとする男子。
当然バレバレなわけで。

「キャー!」という声と共に飛んでくるお湯と桶。
けが人続出だった。
そのけが人はあとで通路で正座させられたことは言うまでもない。

「なにやってんだかな?」

僕と誠はそんな男子をみながら浴槽でくつろいでいた。

「はしゃがない俺らもどうかしてると思うけどな」
「お前は見たいのか?」
「冬夜にはわかんねーよ、神奈さんも遠坂さんも見たいって言えば見せてくれるだろうしな」
「んなわけねーし!」
「何赤くなってんだよ、冗談だよ」
「のぼせただけだよ」

僕と誠は風呂を出ると部屋に向かう。
すると部屋の前には違うクラスの女子が。

「あの多田君、ちょっと話があるんだけどいいかな?」
「ん?いいけど。冬夜先部屋戻ってて」
「ああ」

多分告るつもりだろう。
まあ、誠が誰と付き合おうと僕には関係ないか。
暇だ。
布団にはいりウォークマンを聴く僕。
他の男子は枕投げやらトランプやらで遊んでいる。

やがて消灯時間になった。
誠は戻ってこない。
どうしたんだろう?

ガチャリ
ドアが開く。
誠が戻ってきた。

「冬夜ちょっと……」

そう言って外に呼び出す誠。

「どうしたんだよ?」
「静かに!……ちょっとついてこい」

そう言うと周囲を警戒しながら進む誠。
かえって怪しいぞ誠。
そうして辿り着いたところは……女子の部屋だった。

「ちょ!おま……」
「いいから入れって!」

そうやって部屋に押し込む誠。

「あ、冬夜君!」

こっちこっちと手招きする愛莉。
誠はカンナの隣に行った。

「いやあ、修学旅行と言えば付きものでしょ!」

そう言って誠は笑う。

「冬夜君座ってるとみつかるよ。布団の中に入って!まゆみちゃん来たら潜ればいいから」

布団の中に入れって……。
ちらりと誠を見る。
誠はちゃっかりカンナと一緒の布団に入っていた。
このままだと確かに見つかってしまう。
愛莉と一緒の布団に入る。
旅行に行った時より密着してる。当たりまえだが。
心臓がバクバクなってる。
愛莉は平気なんだろうか?
話題のメインは誠だった。
何の為に僕を連れてきたんだ?
そのときつんつんと僕の腕をつつく愛莉

「ごめんね、無理言って」

小声で囁く愛莉。

「いや、別にいいけど何で僕まで?」
「それはね……」
「なーに二人だけでこそこそやってんだよ」

カンナがそう言って来た。

「別にこそこそしてねーよ」
「今晩の主賓がそんなんじゃ困るじゃねーか」

主賓って誠の話ばっかじゃねーか。

「そうそう、今夜は冬夜に聞きたい事があって連れてきたんだった」

誠がそう言った。
聞きたい事……?
あまり聞きたくないが。

「なんだよ、聞きたい事って?」

周りの女子が代わりに答えた。

「昨日愛莉から冬夜君の好きなところは聞いたんだけどさ、冬夜君は愛莉のどこが好きになったの?」

やっぱりそう言う話か。

「わ、私も気になってたんだよね。どこが好きなの?」

愛莉も緊張して聞いてくる。

「どこがって……全部だよ」

他に上手く伝えることが出来ない。

「全部ってなんだよ。もっと具体的なところはないのかよ」

カンナが不満を言う。

「……だよ」

僕は呟くように言った。

「はあ?」

聞こえてないらしく聞き返すカンナ。

「だから!」
「声でかい!」

女子が注意すると同時だった。

ガラッ。

戸を開ける音が聞こえる。

「ま、また夜更かししてるんですか!?」

僕と誠はとっさに布団に潜りこむ。
息をひそめてじっとしてる。
するとぐるぐるって音が聞こえる。
愛莉のお腹からだ。
お腹空いてるのかな?

照明がつけられる。

「もっとくっついて、気付かれるよ」

愛莉がそう言ってくっついてくる、
やばい。
女子にこんなに密着したのは生まれて初めてだ。
あ、カンナとくっついてたことあったっけ?

「多田と片桐来てないか!?」

名前を呼ばれて思わずびくっとする。
まずい!ばれたか!」

「来てませーん」
「ていうかここ女子の部屋なんですけど大新田先生」
「入ってこないでよ!変態!」

女子のブーイングに圧されたのか先生は出て行った。

「あいつら明日は説教だ」

そんな声が聞こえる。

「み、皆さんも早く寝てくださいね」

そう言って、まゆみちゃんも出て行った。
しばらくしてから、愛莉が肩にふれる。

「もう大丈夫だよ」

そう言われて布団から顔を出す。

「危なかったなぁ。冬夜」
「危なかったなぁ。じゃねーよ。明日説教だぜ」
「まあ、それもいい思い出になるよ」
「なあ、さっさと部屋に戻ったほうが良くないか?」
「馬鹿、今部屋から出たら即バレるぞ。寝静まった頃が良いんだって」
「そ、そうか」

誠に説得される僕に愛莉が囁く。

「ごめんね。もうちょっとだけ一緒に居よ?」
「あ、今なんか遠坂さん片桐君になんか言ったよ」
「なんて言ったの!」

騒ぎ出す女子。
い、今騒いだら……。

「ま、まだ寝てないんですか!……片桐君!それに多田君まで」

大声を上げるまゆみちゃん。
僕たちの名前を聞きつけて駆け付ける先生たち。



その後1時間ほど通路に正座させられ説教をうけるのだった。
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