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1stSEASON
ゴールデンウィーク 後半
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GW後半1日目
「冬夜!起きなさい!」
なんだよ、今日は休みだろ……寝かせてくれよ
「神奈ちゃんきてるわよ!」
カンナだって休み……カンナ!?
僕は慌てて身を起こす。
「なんでカンナが来てるんだよ」
「一緒に勉強しに来たって言ってるよ。見かけによらず真面目な子だねえ」
お前も見習いなさい。と、付け足された。
そんな約束してないぞ……。
呆然とする僕をよそに母さんは部屋を出る。
「神奈ちゃん。良いわよ上がってきて」
「はい、お邪魔します」
なぜ人は来客がくると部屋を慌てて片づけようとするのだろう?
無駄な抵抗だと分かっているのに。
そんなことを考えているうちにカンナが部屋に来た。
「へえ、思ったより綺麗だな」
「初めてじゃないだろ?」
「いやあ、愛莉がいないから油断してるだろうなと思ってさ」
そう言ってクッションの上にどすっと胡坐をかくカンナ。
今日はジーパンにグレーのシャツだった。
着替える暇も与えてもらえなかった僕はシャツにスウェットだったが。
「今日はどうしたんだよ」
準備をしながら、カンナに聞いた。
「いやあ、愛莉いないから暇してるかなぁ?と思ってさ。一人でするより楽しい方がいいだろ」
勉強する気になったのはいいが……。
愛莉は今頃飛行機の中だろうか?
早朝に「行ってくるね」とメッセージがあった。
爆睡していた僕は気づかなかったけど。
「気を付けてね」と今更ながら返信しておいた。
「へ、変な誤解するなよ。ただ教えてもらいたい事があるから来ただけだからな」
今更弁解をするカンナ。
「分かってる」
「ならいい」
そう言って自分も鞄から勉強道具を取り出す。
カンナが勉強。
クラスの皆が知ったらどんな顔をするだろう。
きっと驚くだろうな。
なんせ学力テストでは断トツの最下位だったからな……。
「ここはどうするんだ?」
「ああ、そこはこうして……」
「ここは?」
「そこはさっきやったろ?同じ要領で……」
今は、GW中に出された膨大な宿題をこなしてる。
はっきり言って僕が解いてカンナに丸写しさせた方が早い。
だけどそれだとカンナの身につかない。
だから一緒に解いてる。
その分時間がかかるが……。
「あ、ちょっとそこ見せて」
「みたら意味ないだ……ろ」
僕は言葉に詰まった。
理由は単純だった。
カンナは何度もいうがモデル体型だ。
そして襟が広いシャツを着ている。
そして前かがみにこっちを覗き込んでいる。
つまり……彼女の胸がちらりと見えたんだ。
「……冬夜聞いてるか?」
「な、なんだ!?」
「ちゃんと聞いてろよ。だからここおかしくない?」
カンナに見とれていたせいか、考え事をしていたせいか、自分がミスしているのに気が付いた。
「あ、そうだな。ごめん」
「ったく、しっかりしてくださいよトーヤ先生」
お昼を食べて、午後から勉強……のはずが。
爆睡していた、2人して。
気が付いたら夕暮れ時だった。
夕食を食べて、また勉強して9時ごろ送って、睡眠。
追記
「なにしてるのー?ヾ(。`Д´。)ノ彡☆ブーブーッ!!」と愛莉からメッセージが来てた。
GW後半2日目。
今度は早めに起きておいた。
昨夜「また明日な」と聞いていたから。
昨日と同じ頃にカンナはやってきた。
昨日頑張ったせいか今日の夕方には大方宿題は仕上がった。
「終わったー!!」
大の字になって寝転ぶカンナ。
「お疲れ様」
「さて、トーヤ」
直ぐに起き上がるカンナ。
「なんかして遊ぼうぜ」
さっきより生き生きしてるぞ……。
「何するんだよ……?」
「あ、この漫画読みたかったんだよね。へえ、冬夜こんなのに興味あるんだ」
勝手に本棚を物色し始めるカンナ。
「冬夜、神奈ちゃん。夕食よー」
母さんに呼ばれて下に降りる。
休みの間やけに張り切ってるな母さん。
メニューが豪勢だ。
「神奈さん、勉強の方はどうかね?」
「はい、トーヤ君のお蔭で今日無事宿題は終えました」
「そうか、それはちょうどいい!」
父さんがビールをグイっと飲み干す。
「明日公園に行こうと思うんだが、一緒にどうかね?」
「え!?いいんですか?」
「いいの、いいの。うちの冬夜がお世話になってるんだから」
母さんまで話に乗り出した。
「ちょっと母さんも父さんも、カンナにだって都合が」
「行きます。ありがとうございます」
即答するカンナ。
まあ、親も一緒だしいいだろ……。
夕食後、部屋でくつろいで漫画を読みだすカンナ。
僕はテスト範囲の復習をやってる。
「なあ?」
「なんだよ?」
「愛莉の事……正直どう思ってるんだ?」
「な、なんだよ突然に」
「いやさ……前に愛莉から話聞いたからさ。トーヤ昔っからそういうの奥手っていうか鈍かったからさ」
「好きだよ。じゃ、なかったら付き合ってないだろ?」
突然なんだ?
「そっか……それならいいんだ……。前にも言ったけど大切にしてやれよ」
「分かってるよ。どうしたんだ突然」
「いや、愛莉はこっちに戻ってきてから初めての女友達だからさ。色々心配するわけだよ」
そして、いつもの時間に送り。帰る。
「じゃあ、また明日な……お弁当くらい持って行った方が良いかな?」
「いいよ、母さんが張り切って用意するだろうし」
「そっか。わかった。」
家に帰り部屋にもどるとほぼ同時にスマホに着信があった。
愛莉だ。
電話に出る。
「もしもし」
「もしもしじゃないよ!何回もメッセージ送ったのに……」
「え!?」
慌ててスマホを確認する。
愛莉からのメッセージがたくさんたまってた。
「ごめん、勉強してて気づかなかった」
「……神奈一緒だった?」
「なんでそれを!?」
って言ってしまった!と思った。
後ろめたいことをしてるわけじゃないんだが。
「妙な事してたら怒るからね。明後日には帰るから」
「わかった。気をつけてな」
「うん。冬夜君……」
「どうした?」
「友達を疑うのは良くないことだと思うんだけど……気をつけてね」
「何の心配してるんだよ」
「なんでもない。じゃあ、また明日」
「あ、愛莉。明日さ……」
プープー。
切れてしまった。
また明日報告すればいっか。
GW後半三日目。
九重にある公園にはネモフィラ・ポピー・リビングストンデージー・春彩の畑などがあり綺麗だった。
ただ、人が多い。
さすがGW終盤ともあって、車も混む。
僕を除いた3人は色々話をしていて盛り上がっていた。
今日は珍しく黒のスカートをはいていた。
やはり丈が短くて膝の上にバッグを乗せているとはいえ……気になる。
上はパーカー、靴はシューズだった。
3人から見たらつまらなそうにしてるように見えたかもしれないがそうじゃない。
カンナを直視できないから窓に映る景色を見ていた。
「少しは楽しそうにしろよ」
カンナが腕を引っ張る。
「そうだぞ冬夜、折角彼女を招待したというのに」
何か勘違いしてるぞ父さん。
「違います」
にっこり笑って否定するカンナ。
「そうですよ、ちゃんと愛莉ちゃんて彼女がいるんだから」
母さんがいうと「そうなのか?」と驚いた顔をするわが父。
今まで何を見てきたのだ。
「ああ、そうなのか……。こんな美人さんがいるのにもったいないなぁ」
「愛莉の方が可愛いですよ」
「ごめんね、神奈ちゃん。お父さんが失礼な事ばかり」
「いえ、大丈夫ですよ……それより、綺麗ですねここ」
「中に入ればもっときれいよ」
ようやく車を止めることができ、中に入って行った。
どこも人だらけだ。
時間は12時を回っていた。
芝生にシートを広げ、母さんが朝早くから作ってた弁当を食べる。
「美味しい!」
本当に美味しそうに食べるカンナ。
「たくさん作ったからどんどん食べてね」
お茶を注ぎながらそう言う母さん。
「はい!」
本当にかなりの量を食べていた。
公園を見て回る。
色とりどりの花が咲いている。
様々な花をスマホで写真を撮るカンナ。
花壇に作られたベンチを見つけた父さん。
「折角だから一緒に撮れば」
「え!?それはまずいですよ」
「写真くらい構わんだろ!さあ、冬夜も座って」
本気かよ……。
嫌々ながらベンチに座る。
するとカンナが意外な行動に出た。
手を握ってきたのだ。
手を握り反対の手でピースサインするカンナ。
パシャッ
「ちゃんと撮れてるかな?」
「えーと。あ、大丈夫です。ありがとうございます」
凄く喜んでる。
「壁紙にしなきゃバレやしないだろ?」
耳打ちするカンナ。
まあ、大丈夫だろ……。
お土産屋で愛莉へのお土産を選ぶ僕とカンナ。
当然カンナは買わない。
ただ一緒に選んでくれるだけ。
「あ、これいいんじゃね?」
と、二つのキーホルダーをとった。
それはとうやとあいりと名前の入ったキーホルダーだった。
「こんなのどこにでも売ってるだろ?」
「馬鹿だなぁ、気持ちの問題だよ。これにしとけ!」
言われるままに買った
帰路は死んだように眠っていた。
はしゃぎすぎて疲れたんだろう。
すーすーと寝息を立てている。
「よっぽど楽しかったんだろうな」
父さんがルームミラー越しにカンナを見て言う。
多分気づいていないだろう。
カンナの左手が僕の右手を握っていたことを。
「で、前も聞いたけどどっちが本命なの?」
突然突拍子もない事を聞いてくる母さん。
「母さん自分で言ったろ?僕には愛莉が……」
「今日の行動みてるとねえ、神奈ちゃんもまんざらじゃないって感じだったし」
「母さんもそう思ったか。俺もそう思ってたんだ」
「カンナは友達だよ……愛莉の前でそんな話するなよ」
「分かってるわよ……」
そう言って僕は再び窓の外を見る。
だから気づかなかったんだ。
カンナの頬を伝わる涙のあとに。
カンナの家の前に車を止めるとカンナは車を降りた。
「おじさん今日はありがとうございました」
「いいよいいよ、また行こう」
「冬夜、じゃあまた明日な」
「ああ」
そう言って家に入っていくのを見届けて父さんは車を走らせた。
GW最終日
カンナは朝から僕の部屋に入り浸って漫画を読んでいた。
本当に暇なんだな。
ぴろりーん
僕のスマホが鳴る。
スマホを見ると、愛莉からメッセージが届いていた。
「今帰りました」
その事をカンナに伝えると。
「じゃ、愛莉の家に行こうぜ」
と、言いだした。
「い、今からか!?」
「理由ならあるだろ?それ届けないと」
そう言ってカンナが指さしたのは昨日買ったキーホルダー。
「行こうぜ」
愛莉の家につくと呼び鈴を鳴らす。
「は~い?」
愛莉のお母さんの声だ。
「片桐ですけど、愛莉さんいますか?」
「あ、冬夜君?ひさしぶり~愛莉呼んできますね」
ドア越しに聞こえるどたどたという音。
ガチャ
「冬夜くーん!」
いきなり僕に抱き着く愛莉。
そんなキャラだったか!
「愛莉久しぶり」
カンナが挨拶すると、ばっと僕から離れる。
そしてカンナに抱き着く。
「神奈も久しぶり!」
3日しか経ってないけどな。
「あ、お土産あるんだった」
僕にはネックレスセット、愛莉とセットで使うらしい。
カンナにはショルダーポーチを渡した。
「ありがとう」
カンナがそっと肘で押す。
「あ、僕からもお土産あるんだ」
「え?」
「なんか昨日家族で公園にいったらしいぜ。私もお菓子もらった」
自分で買ったお菓子の癖に……。
僕は愛莉にキーホルダーを渡す。
「ありきたりなものだけど」
「嬉しい!ありがとう!」
そう言って喜ぶ愛莉。
それを見届けるカンナ。
「じゃ、私はこの辺で……」
「え?神奈もゆっくりしてってよ」
「いや、連休も最終日だろ?二人でゆっくり過ごせよ」
そう言ってくるりと踵を返すと帰って行った。
「冬夜君たまには家でゆっくりしてって」
「でもこれからお昼じゃ」
「一緒に食べようよ、いつもご馳走してもらってばかりだったし」
そして僕はランチをご馳走になり、愛莉の部屋にいる。
愛莉の部屋はいかにも女の子の部屋って感じじゃない。
白い壁紙にメープルの木目の建付け家具と机といす。
それにベッドも木製だった。
フローリングに白いテーブルが置かれ白い化粧台もあった。
小学生の時に来たとき化粧台はなかったが。
クッションの上に座り一人女子の部屋に取り残される。
妙にそわそわする。
「お待たせ、どうぞ」
そう言って紅茶を差し出された。
「で、神奈と何してたの?」
ニコニコ笑いながら核心を突いてきた。
怖い……。
「な、何って勉強だよ」
「それだけ?」
「宿題が終わったら勝手にくつろいでた」
「そう……」
愛莉は何やら考え込む
「うん、信じる」
その後は、普通に大阪に行った旅の話を聞かされ、僕もカンナの事は伏せながら公園の話をしていた。
あっという間に時間は過ぎる。
夕食までお世話になって。9時ごろ家を出る。
「じゃあ、また明日ね」
愛莉はそう言って軽くキスをする。
「ああ、また明日な」
そう言って帰った。
「……信じてるよ」
見送る愛莉の方に一度振り向くと愛莉は大きく手を振っていた。
「冬夜!起きなさい!」
なんだよ、今日は休みだろ……寝かせてくれよ
「神奈ちゃんきてるわよ!」
カンナだって休み……カンナ!?
僕は慌てて身を起こす。
「なんでカンナが来てるんだよ」
「一緒に勉強しに来たって言ってるよ。見かけによらず真面目な子だねえ」
お前も見習いなさい。と、付け足された。
そんな約束してないぞ……。
呆然とする僕をよそに母さんは部屋を出る。
「神奈ちゃん。良いわよ上がってきて」
「はい、お邪魔します」
なぜ人は来客がくると部屋を慌てて片づけようとするのだろう?
無駄な抵抗だと分かっているのに。
そんなことを考えているうちにカンナが部屋に来た。
「へえ、思ったより綺麗だな」
「初めてじゃないだろ?」
「いやあ、愛莉がいないから油断してるだろうなと思ってさ」
そう言ってクッションの上にどすっと胡坐をかくカンナ。
今日はジーパンにグレーのシャツだった。
着替える暇も与えてもらえなかった僕はシャツにスウェットだったが。
「今日はどうしたんだよ」
準備をしながら、カンナに聞いた。
「いやあ、愛莉いないから暇してるかなぁ?と思ってさ。一人でするより楽しい方がいいだろ」
勉強する気になったのはいいが……。
愛莉は今頃飛行機の中だろうか?
早朝に「行ってくるね」とメッセージがあった。
爆睡していた僕は気づかなかったけど。
「気を付けてね」と今更ながら返信しておいた。
「へ、変な誤解するなよ。ただ教えてもらいたい事があるから来ただけだからな」
今更弁解をするカンナ。
「分かってる」
「ならいい」
そう言って自分も鞄から勉強道具を取り出す。
カンナが勉強。
クラスの皆が知ったらどんな顔をするだろう。
きっと驚くだろうな。
なんせ学力テストでは断トツの最下位だったからな……。
「ここはどうするんだ?」
「ああ、そこはこうして……」
「ここは?」
「そこはさっきやったろ?同じ要領で……」
今は、GW中に出された膨大な宿題をこなしてる。
はっきり言って僕が解いてカンナに丸写しさせた方が早い。
だけどそれだとカンナの身につかない。
だから一緒に解いてる。
その分時間がかかるが……。
「あ、ちょっとそこ見せて」
「みたら意味ないだ……ろ」
僕は言葉に詰まった。
理由は単純だった。
カンナは何度もいうがモデル体型だ。
そして襟が広いシャツを着ている。
そして前かがみにこっちを覗き込んでいる。
つまり……彼女の胸がちらりと見えたんだ。
「……冬夜聞いてるか?」
「な、なんだ!?」
「ちゃんと聞いてろよ。だからここおかしくない?」
カンナに見とれていたせいか、考え事をしていたせいか、自分がミスしているのに気が付いた。
「あ、そうだな。ごめん」
「ったく、しっかりしてくださいよトーヤ先生」
お昼を食べて、午後から勉強……のはずが。
爆睡していた、2人して。
気が付いたら夕暮れ時だった。
夕食を食べて、また勉強して9時ごろ送って、睡眠。
追記
「なにしてるのー?ヾ(。`Д´。)ノ彡☆ブーブーッ!!」と愛莉からメッセージが来てた。
GW後半2日目。
今度は早めに起きておいた。
昨夜「また明日な」と聞いていたから。
昨日と同じ頃にカンナはやってきた。
昨日頑張ったせいか今日の夕方には大方宿題は仕上がった。
「終わったー!!」
大の字になって寝転ぶカンナ。
「お疲れ様」
「さて、トーヤ」
直ぐに起き上がるカンナ。
「なんかして遊ぼうぜ」
さっきより生き生きしてるぞ……。
「何するんだよ……?」
「あ、この漫画読みたかったんだよね。へえ、冬夜こんなのに興味あるんだ」
勝手に本棚を物色し始めるカンナ。
「冬夜、神奈ちゃん。夕食よー」
母さんに呼ばれて下に降りる。
休みの間やけに張り切ってるな母さん。
メニューが豪勢だ。
「神奈さん、勉強の方はどうかね?」
「はい、トーヤ君のお蔭で今日無事宿題は終えました」
「そうか、それはちょうどいい!」
父さんがビールをグイっと飲み干す。
「明日公園に行こうと思うんだが、一緒にどうかね?」
「え!?いいんですか?」
「いいの、いいの。うちの冬夜がお世話になってるんだから」
母さんまで話に乗り出した。
「ちょっと母さんも父さんも、カンナにだって都合が」
「行きます。ありがとうございます」
即答するカンナ。
まあ、親も一緒だしいいだろ……。
夕食後、部屋でくつろいで漫画を読みだすカンナ。
僕はテスト範囲の復習をやってる。
「なあ?」
「なんだよ?」
「愛莉の事……正直どう思ってるんだ?」
「な、なんだよ突然に」
「いやさ……前に愛莉から話聞いたからさ。トーヤ昔っからそういうの奥手っていうか鈍かったからさ」
「好きだよ。じゃ、なかったら付き合ってないだろ?」
突然なんだ?
「そっか……それならいいんだ……。前にも言ったけど大切にしてやれよ」
「分かってるよ。どうしたんだ突然」
「いや、愛莉はこっちに戻ってきてから初めての女友達だからさ。色々心配するわけだよ」
そして、いつもの時間に送り。帰る。
「じゃあ、また明日な……お弁当くらい持って行った方が良いかな?」
「いいよ、母さんが張り切って用意するだろうし」
「そっか。わかった。」
家に帰り部屋にもどるとほぼ同時にスマホに着信があった。
愛莉だ。
電話に出る。
「もしもし」
「もしもしじゃないよ!何回もメッセージ送ったのに……」
「え!?」
慌ててスマホを確認する。
愛莉からのメッセージがたくさんたまってた。
「ごめん、勉強してて気づかなかった」
「……神奈一緒だった?」
「なんでそれを!?」
って言ってしまった!と思った。
後ろめたいことをしてるわけじゃないんだが。
「妙な事してたら怒るからね。明後日には帰るから」
「わかった。気をつけてな」
「うん。冬夜君……」
「どうした?」
「友達を疑うのは良くないことだと思うんだけど……気をつけてね」
「何の心配してるんだよ」
「なんでもない。じゃあ、また明日」
「あ、愛莉。明日さ……」
プープー。
切れてしまった。
また明日報告すればいっか。
GW後半三日目。
九重にある公園にはネモフィラ・ポピー・リビングストンデージー・春彩の畑などがあり綺麗だった。
ただ、人が多い。
さすがGW終盤ともあって、車も混む。
僕を除いた3人は色々話をしていて盛り上がっていた。
今日は珍しく黒のスカートをはいていた。
やはり丈が短くて膝の上にバッグを乗せているとはいえ……気になる。
上はパーカー、靴はシューズだった。
3人から見たらつまらなそうにしてるように見えたかもしれないがそうじゃない。
カンナを直視できないから窓に映る景色を見ていた。
「少しは楽しそうにしろよ」
カンナが腕を引っ張る。
「そうだぞ冬夜、折角彼女を招待したというのに」
何か勘違いしてるぞ父さん。
「違います」
にっこり笑って否定するカンナ。
「そうですよ、ちゃんと愛莉ちゃんて彼女がいるんだから」
母さんがいうと「そうなのか?」と驚いた顔をするわが父。
今まで何を見てきたのだ。
「ああ、そうなのか……。こんな美人さんがいるのにもったいないなぁ」
「愛莉の方が可愛いですよ」
「ごめんね、神奈ちゃん。お父さんが失礼な事ばかり」
「いえ、大丈夫ですよ……それより、綺麗ですねここ」
「中に入ればもっときれいよ」
ようやく車を止めることができ、中に入って行った。
どこも人だらけだ。
時間は12時を回っていた。
芝生にシートを広げ、母さんが朝早くから作ってた弁当を食べる。
「美味しい!」
本当に美味しそうに食べるカンナ。
「たくさん作ったからどんどん食べてね」
お茶を注ぎながらそう言う母さん。
「はい!」
本当にかなりの量を食べていた。
公園を見て回る。
色とりどりの花が咲いている。
様々な花をスマホで写真を撮るカンナ。
花壇に作られたベンチを見つけた父さん。
「折角だから一緒に撮れば」
「え!?それはまずいですよ」
「写真くらい構わんだろ!さあ、冬夜も座って」
本気かよ……。
嫌々ながらベンチに座る。
するとカンナが意外な行動に出た。
手を握ってきたのだ。
手を握り反対の手でピースサインするカンナ。
パシャッ
「ちゃんと撮れてるかな?」
「えーと。あ、大丈夫です。ありがとうございます」
凄く喜んでる。
「壁紙にしなきゃバレやしないだろ?」
耳打ちするカンナ。
まあ、大丈夫だろ……。
お土産屋で愛莉へのお土産を選ぶ僕とカンナ。
当然カンナは買わない。
ただ一緒に選んでくれるだけ。
「あ、これいいんじゃね?」
と、二つのキーホルダーをとった。
それはとうやとあいりと名前の入ったキーホルダーだった。
「こんなのどこにでも売ってるだろ?」
「馬鹿だなぁ、気持ちの問題だよ。これにしとけ!」
言われるままに買った
帰路は死んだように眠っていた。
はしゃぎすぎて疲れたんだろう。
すーすーと寝息を立てている。
「よっぽど楽しかったんだろうな」
父さんがルームミラー越しにカンナを見て言う。
多分気づいていないだろう。
カンナの左手が僕の右手を握っていたことを。
「で、前も聞いたけどどっちが本命なの?」
突然突拍子もない事を聞いてくる母さん。
「母さん自分で言ったろ?僕には愛莉が……」
「今日の行動みてるとねえ、神奈ちゃんもまんざらじゃないって感じだったし」
「母さんもそう思ったか。俺もそう思ってたんだ」
「カンナは友達だよ……愛莉の前でそんな話するなよ」
「分かってるわよ……」
そう言って僕は再び窓の外を見る。
だから気づかなかったんだ。
カンナの頬を伝わる涙のあとに。
カンナの家の前に車を止めるとカンナは車を降りた。
「おじさん今日はありがとうございました」
「いいよいいよ、また行こう」
「冬夜、じゃあまた明日な」
「ああ」
そう言って家に入っていくのを見届けて父さんは車を走らせた。
GW最終日
カンナは朝から僕の部屋に入り浸って漫画を読んでいた。
本当に暇なんだな。
ぴろりーん
僕のスマホが鳴る。
スマホを見ると、愛莉からメッセージが届いていた。
「今帰りました」
その事をカンナに伝えると。
「じゃ、愛莉の家に行こうぜ」
と、言いだした。
「い、今からか!?」
「理由ならあるだろ?それ届けないと」
そう言ってカンナが指さしたのは昨日買ったキーホルダー。
「行こうぜ」
愛莉の家につくと呼び鈴を鳴らす。
「は~い?」
愛莉のお母さんの声だ。
「片桐ですけど、愛莉さんいますか?」
「あ、冬夜君?ひさしぶり~愛莉呼んできますね」
ドア越しに聞こえるどたどたという音。
ガチャ
「冬夜くーん!」
いきなり僕に抱き着く愛莉。
そんなキャラだったか!
「愛莉久しぶり」
カンナが挨拶すると、ばっと僕から離れる。
そしてカンナに抱き着く。
「神奈も久しぶり!」
3日しか経ってないけどな。
「あ、お土産あるんだった」
僕にはネックレスセット、愛莉とセットで使うらしい。
カンナにはショルダーポーチを渡した。
「ありがとう」
カンナがそっと肘で押す。
「あ、僕からもお土産あるんだ」
「え?」
「なんか昨日家族で公園にいったらしいぜ。私もお菓子もらった」
自分で買ったお菓子の癖に……。
僕は愛莉にキーホルダーを渡す。
「ありきたりなものだけど」
「嬉しい!ありがとう!」
そう言って喜ぶ愛莉。
それを見届けるカンナ。
「じゃ、私はこの辺で……」
「え?神奈もゆっくりしてってよ」
「いや、連休も最終日だろ?二人でゆっくり過ごせよ」
そう言ってくるりと踵を返すと帰って行った。
「冬夜君たまには家でゆっくりしてって」
「でもこれからお昼じゃ」
「一緒に食べようよ、いつもご馳走してもらってばかりだったし」
そして僕はランチをご馳走になり、愛莉の部屋にいる。
愛莉の部屋はいかにも女の子の部屋って感じじゃない。
白い壁紙にメープルの木目の建付け家具と机といす。
それにベッドも木製だった。
フローリングに白いテーブルが置かれ白い化粧台もあった。
小学生の時に来たとき化粧台はなかったが。
クッションの上に座り一人女子の部屋に取り残される。
妙にそわそわする。
「お待たせ、どうぞ」
そう言って紅茶を差し出された。
「で、神奈と何してたの?」
ニコニコ笑いながら核心を突いてきた。
怖い……。
「な、何って勉強だよ」
「それだけ?」
「宿題が終わったら勝手にくつろいでた」
「そう……」
愛莉は何やら考え込む
「うん、信じる」
その後は、普通に大阪に行った旅の話を聞かされ、僕もカンナの事は伏せながら公園の話をしていた。
あっという間に時間は過ぎる。
夕食までお世話になって。9時ごろ家を出る。
「じゃあ、また明日ね」
愛莉はそう言って軽くキスをする。
「ああ、また明日な」
そう言って帰った。
「……信じてるよ」
見送る愛莉の方に一度振り向くと愛莉は大きく手を振っていた。
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