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BLUE ENCOUNT
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(1)
「私ハンバーガー食べたい」
「後で食べたらいいでしょ?」
「わざわざ橋を渡って戻って来る意味が分からない!」
「誠司郎もいるんだから少しくらい付き合ってあげなさい」
「ちゃんと雪の分も頼んでおくから」
「冬吾さんもこういう時くらい少しは娘に付き合ってください!」
だったらパパとハンバーガー食べていたいんだけどな。
「まあ、一回くらい渡っておいた方がいいぞ」
そしたら来年から「もう一回渡ったからいい」って言い訳が出来る。
天音がそんなことを言って愛莉と喧嘩していた。
ハンバーガーを食べたいのも理由の一つなんだけどもう一つ理由がある。
この橋はとても高い位置にある吊り橋。
そしてコンクリートで作ってるのに揺れる。
率直に言おう。
怖かった。
「こんなところから落ちたら死んじゃうよ!」
私は一歩も橋に踏み入ろうとしなかった。
「雪は高所恐怖症なの?」
ママが驚いていた。
流石にパオラや誠司も驚いたらしい。
「心配しないでも雪が生まれる前からある橋だから」
だったらなおさら老朽化とか気にしないのだろうか?
するとパパが悩んだ末私を持ち上げて肩車をする。
「ほら、パパがちゃんと持ってあげるから」
余計に高さが上がって怖い。
「やだ!おろして!!」
私は必死にパパに訴えると「冬吾さん、それ逆効果ですよ」とママが伝えてくれて下ろしてもらった。
もう戻る!
戻ってハンバーガー食べる!
すると意外な人間が私の手を掴んだ。
「ほら、一緒に行こう」
誠司郎が私の手を取ってゆっくりと歩く。
「こんなに一杯人がいるのに落ちないんだ。平気だよ」
「う、うん……」
こんなに頼りになる子だっけ?
「手……離したら嫌だよ?」
「分かってるよ」
そうして向こう側まで行って戻って来る。
戻ってくるときに誠司郎が教えてくれた。
「ほら、あっちに滝が見えるよ」
誠司郎が指す方向には滝と紅葉が広がっていた。
「綺麗……」
「……遠くを見てると怖くないだろ?」
足下ばかり見てるから怖いんだよ。
気づいたら誠司郎は手を離していた。
本当だ。怖くない……けれど。
ぽかっ
「嘘つき。手離さないって約束したじゃない!」
「あ、ごめん。つい……」
「だめ、許さない!」
「どうしたらいいんだよ?」
困っている誠司郎を見ていたずら心が湧いた。
誠司郎を指で招いて顔を近づけるように言う。
何も気づいてない誠司郎の顔が近づいてくる。
そんな誠司郎の頬に軽くキスをした。
驚く誠司郎。
亜優にされてた時はそんな事無かったのに。
「それでチャラにしてあげる」
そう言って私は呆然と立っている誠司郎を後にしてパパとハンバーガーを食べに行った。
(2)
つり橋からいつものレストランに向かって僕達は誠司達と一緒の席になった。
誠司郎はまだ雪のキスの余韻に浸っている様だ。
「早く食べないと誠司郎の分も食べるよ」
雪が言うと我に返って食べ始める。
「火傷しないようにね」
食べることに関しては雪の方が成長しているみたいだ。
「愛莉も退院した早々面白いもの見れたろ」
神奈さんが母さんに言った。
「あの子だけが私を安心させてくれるの」
まるっきり普通の女の子だから。
危険な能力を持っている割には高所恐怖症という弱点を持っている。
「待て!私達は不安だといいたいのか!?」
「天音はさんざんやりたい放題やって来たでしょ!」
「翼だって一緒じゃん。私なんて風呂に入らなかっただけだよ!」
天音と翼と茜がそれぞれ不満を言う。
「この子達の孫がいる限り私は死ねないと思ったのよ」
「当たり前だ。愛莉に何かあったらあの馬鹿トーヤを止める人間がいないぞ」
「……空も一緒だよ」
翼がそう言っていた。
空も我慢の限界を超えている。
地元だけで済ますつもりはないみたいだ。
地上からFGを消滅させてやるつもりだと翼が言ってた。
本来は翼が空のブレーキになるべきなのに母さんをやられて黙ってる翼ではない。
翼がそうなんだから天音がじっとしているわけがない。
本来なら雪がFGという存在を否定するだけで済むのだけどそれで天音達の気が晴れない。
毎日昼間にFG狩りを実行していた。
問題を起こしても恵美さんや警察がもみ消す。
政治的圧力がかかろうものならそのつながりを突き止めてマスコミに流す。
すでにSHのメンバーが通ってる小学校、中学校、高校は蹂躙を済ませている。
高校生は大学受験があるから天音達が地元中の高校に乗り込んでいた。
「黒いリストバンドつけてる馬鹿は全員出て来い!この場で処刑してやらぁ!」
天音は校庭に現れるとそう叫んだらしい。
恵美さんに特注で作ってもらったらしい。
ギロチン台を恵美さんの兵隊が設置している。
当然そんな状況で名乗り出る馬鹿はいない。
すると紗理奈と相談したらしい。
「茜の情報だとこの学校SHいないんだろ?」
「それがどうかしたのか?」
「SHじゃないならFGかリベリオンとかいうふざけた連中のどちらかだろ?」
どっちにしても糞野郎だからまとめて燃やしてしまわないか?
「それもそうだな!おい、水奈。ガソリン買ってこい」
「ばーか、そのくらい用意しているよ」
「んじゃ、適当に撒くか。こんなとき旦那がいないと面倒だな」
そう言って天音が一斗缶を持とうとすると兵隊が止めたらしい。
その行為自体を止めたわけじゃない。
仮にも石原家の嫁にそんな真似させたら恵美さんに怒られるから自分たちがやると言った。
そんな事をしてるとさすがに教員たちが止めに来る。
「恵美さんには私から言うからあんたらは作業しててくれ。邪魔する馬鹿は私が直々に殺してやる」
「生徒だろうが爺だろうが邪魔する奴は皆殺しだ!」
そう言って3人を筆頭に大暴れしたらしい。
さすがに学校を放火しているのを警察が見過ごすわけにはいかない。
パトカーが乱入してきて警官と教職員と天音達の乱闘になった。
最終的には「廃校と誤解して整地しようと思いました」で片づけたらしい。
当然天音や水奈は母さんや神奈さんに怒られたらしい。
「文句があるなら空に言え!皆殺しにしろといたのは空だぞ!」
「だからって関係ない子まで巻き込むつもりなのですか!?」
「それはさっき紗理奈が言っただろ!SHでない奴は皆敵だ!って」
「そんなわけないでしょ!」
「天音。上品にしてくれとはいわないけどそういう危険な現場に天音がいる事は容認できないわ」
恵美さんがそう言った。
だけど続きがある。
「SHがいないなら敵がいない。そこまではいい。でも火事なんか起こしたらたくさんの人に迷惑をかけるわ」
「……そうですね」
さすがに天音も恵美さんに言われると反論できないみたいだ。
する必要もなかった。
「廃墟だと思ったから整地しようとしたんでしょ?」
「そうだけど」
「だったら別に燃やさなくても爆撃してしまえばいいんじゃないの?」
恵美さんがそう言うと望さんが頭を抱えている。
「恵美、そういう問題じゃないの。どこにも属してない子だっているのよ?」
「そんなの関係ないでしょ。一々気にしてたら面倒じゃない」
何の罪もない人を「面倒だから」の一言で片づける恵美さん。
「冬夜さんは止めてもらえないんですか?」
最後の望みを父さんに託す母さん。
だけど今回ばかりは父さんも止める気がないみたいだ。
「僕は片桐家の家長だ」
「そうですね」
「FGとやらを放っておいたらまた愛莉たちを狙ってくるかもしれない」
瞳子だって学校で働いている。
孫だっている。
孫の方が厄介な能力を持っているみたいだけど。
片桐家に手を出したらどうなるか徹底的に見せつける必要があると父さんは言った。
父さんは今回は口出ししないと言った。
空はそれを”父さんの命令はまだ生きている”と解釈した。
「止まるつもりはない」
空はそう言った。
その結果SHの暴動は日を追うごとに過激になっていく。
演習で標的を間違えた。
そんな理由で廃校になる学校まで出てくる始末。
その最悪の集団の長はのんきにハンバーグを食べている。
母さんが見ていると空が気づいたようだ。
「まだ時間ある?」
ハンバーグをもう一個食べたいと言いだす空。
「私ずっと入院していたくなりました」
母さんはそう言っていた。
「愛莉さん、悪いけど出来れば家で養生して欲しい」
深雪さんがそう言う。
理由は簡単。
24時間体制で石原家の私兵が警護する。
他の患者さんが怯えるから。
「冬夜だって自分が相手なら絶対にしないと言う程の馬鹿な真似をしたんだ。ちゃんと清算させないとな」
誠さんが言う。
だけど神奈さんは違うらしい。
「水奈、正直に言え。お前優奈達に何持たせてる?」
「え?普通に学校に通ってるんだから勉強道具じゃないのか?」
私は知らないと言い張る水奈。
「水奈。なずなから聞いてる。遊の馬鹿も琴音や進に持たせようとして大ゲンカしたそうだ」
学が言うと「ば、馬鹿!今それを言うな」と水奈の口が滑る。
何を持たせたか?
あの日ボーリング場に集まった時ロッカーの中には大量の銃火器を保管していた。
それを受け取って優奈達に持たせているらしい。
「学校は泥棒を養成する場所じゃない!」
拡声器で周辺の人にまで聞こえるくらいのでかい声でそう叫んだ校長がいるそうだ。
そして優奈達の学校でも同じ事が起きた。
「学校は人を殺すところじゃない!」
「ふざけんな禿!無抵抗でやられる間抜けになるなって歌があるだろ!」
禿だから知らないのか!?
そう菫と茉莉が反論した。
「学校で人を殺すって宣言する馬鹿がどこにいるんだ!?」
焦点が若干ずれてる気がするけど天音は茉莉に説明した。
アニメでも女の子が「お前を殺す」とか言わねーぞ!と天音が説明している。
「じゃあ、学校じゃなかったらいいのか!?」
「あまり恵美さんに迷惑をかけるな」
学校を燃やそうとした天音がそう言っていた。
やるなじゃない。
ばれないようにやれだ。
それを聞いていた母さんが怒り出す。
「あなたは自分の娘に何を教えてるのですか!」
「水奈もだ!お前らいつになったら娘をちゃんと指導する気になるんだ!」
「私だって結婚して子供産んでちゃんと子供を育てているんだから大丈夫だって!」
「水奈がいつちゃんと子育てしていたのか説明しろ!」
学も水奈を説教していた。
そんな様子を僕達が見ていると食事を終えた茉奈が神奈さんに言った。
「ねえ、時間あるなら外でお馬さん見ててもいいかな?」
「一人だと危険だぞ」
学がそう言うと茉奈はにこりと笑って言った。
「結と一緒ならいいでしょ?」
世界で一番安全な場所だ。
そう言われた結は追加の注文を頼もうとメニューを見ていた。
「結、食べ過ぎだから少し運動しなさい」
美希が言う。
こういう時は美希に従った方がいいと学習したらしい。
渋々茉奈と一緒に外に出た。
「やはり結もそうなるのか」
誠さんが言った。
「あれで自分が人気があると気付かないのが不思議でしょうがないんだけど」
神奈が言う。
「あの子を見ていると空を見ているようで不安なの」
母さんが言う。
女の子に興味を示さない。
そして食べ物に興味を持つ。
僕の時はまだ瞳子や誠司がいたから多少女の子に興味があった。
「それはそうと楽しみだな。クラブワールドカップ」
誠さんが話題を変えた。
「冬吾はすぐ熱くなる癖は止めなさい」
父さんが言った。
K国のチームとの準々決勝の時だった。
酷い試合だった。
ありもしないオフサイドで得点が2点も無駄になった。
ユニフォームを引っ張ったり足を引っかけたりするのはまだましな方。
仲間は頭から血を流していた。
ボールを持っていない仲間の頭を蹴り飛ばしていた。
さすがに誠司が抗議すると誠司がレッドカードを取られる。
湧きたつ相手サポーター。
他の仲間が抗議しようとするのを僕が抑えていた。
監督もぎりぎりのところでこらえていた。
「このままやられっぱなしでいいのか?」
「……俺に考えがある」
「?」
そう言って誠司のポジションに俺が入る。
ボールを受け取ると何人かが止めに来る。
分かっているからこの位置で受け止めた。
父さんは言っていた。
「試合を重ねるごとに弱点が露呈する。だから試合を重ねるごとに弱点を克服しないといけない」
文字通りその事を実行した。
いつから俺が至近距離での右足シュートをしないと錯覚していた?
足で止められる程度の威力だとどうして勘違いしていた?
胸でボールをトラップすると振り向きざまに右足シュートを放つ。
一人は足を骨折し、一人は頭に直撃して気を失い、そして止めに両手で止めようとした相手キーパーの腕を破壊した。
一度に3人の選手を交代させる。
監督から制限されているのは3発だけ。
3発で相手を恐れさせるには十分だった。
3発の制限は誰にも教えていない。
いつでも撃つぞ。
そういう脅しを利かせながら勝ち進んだ。
監督からも注意された。
「冬吾はそうやってすぐムキになるのが弱点だ。冬吾にはゲームメイクを任せたのに、お前一人で試合をしてどうする?」
同じ事を誠さんや父さんから注意された。
「冬吾もやっぱり片桐家の男ってわけね」
翼はそう笑っていた。
しかしそんな性格を雪が持っていたらどうなるのだろう。
それを止められるのは誠司郎だけ。
誠司郎は神奈とパオラがしっかり見ているそうだ。
「上手くいくと良いな。俺と冬吾の子供なんだ。すごい子供が生まれるぜ」
「一つだけ不安があるんだ。誠司の子供だから……愛莉はどうだ?」
「多分神奈と同じ。片桐家の娘だから……もう私達では手に負えない子供になるかも」
そんな話を父さんと誠さんは笑って聞いていた。
「私ハンバーガー食べたい」
「後で食べたらいいでしょ?」
「わざわざ橋を渡って戻って来る意味が分からない!」
「誠司郎もいるんだから少しくらい付き合ってあげなさい」
「ちゃんと雪の分も頼んでおくから」
「冬吾さんもこういう時くらい少しは娘に付き合ってください!」
だったらパパとハンバーガー食べていたいんだけどな。
「まあ、一回くらい渡っておいた方がいいぞ」
そしたら来年から「もう一回渡ったからいい」って言い訳が出来る。
天音がそんなことを言って愛莉と喧嘩していた。
ハンバーガーを食べたいのも理由の一つなんだけどもう一つ理由がある。
この橋はとても高い位置にある吊り橋。
そしてコンクリートで作ってるのに揺れる。
率直に言おう。
怖かった。
「こんなところから落ちたら死んじゃうよ!」
私は一歩も橋に踏み入ろうとしなかった。
「雪は高所恐怖症なの?」
ママが驚いていた。
流石にパオラや誠司も驚いたらしい。
「心配しないでも雪が生まれる前からある橋だから」
だったらなおさら老朽化とか気にしないのだろうか?
するとパパが悩んだ末私を持ち上げて肩車をする。
「ほら、パパがちゃんと持ってあげるから」
余計に高さが上がって怖い。
「やだ!おろして!!」
私は必死にパパに訴えると「冬吾さん、それ逆効果ですよ」とママが伝えてくれて下ろしてもらった。
もう戻る!
戻ってハンバーガー食べる!
すると意外な人間が私の手を掴んだ。
「ほら、一緒に行こう」
誠司郎が私の手を取ってゆっくりと歩く。
「こんなに一杯人がいるのに落ちないんだ。平気だよ」
「う、うん……」
こんなに頼りになる子だっけ?
「手……離したら嫌だよ?」
「分かってるよ」
そうして向こう側まで行って戻って来る。
戻ってくるときに誠司郎が教えてくれた。
「ほら、あっちに滝が見えるよ」
誠司郎が指す方向には滝と紅葉が広がっていた。
「綺麗……」
「……遠くを見てると怖くないだろ?」
足下ばかり見てるから怖いんだよ。
気づいたら誠司郎は手を離していた。
本当だ。怖くない……けれど。
ぽかっ
「嘘つき。手離さないって約束したじゃない!」
「あ、ごめん。つい……」
「だめ、許さない!」
「どうしたらいいんだよ?」
困っている誠司郎を見ていたずら心が湧いた。
誠司郎を指で招いて顔を近づけるように言う。
何も気づいてない誠司郎の顔が近づいてくる。
そんな誠司郎の頬に軽くキスをした。
驚く誠司郎。
亜優にされてた時はそんな事無かったのに。
「それでチャラにしてあげる」
そう言って私は呆然と立っている誠司郎を後にしてパパとハンバーガーを食べに行った。
(2)
つり橋からいつものレストランに向かって僕達は誠司達と一緒の席になった。
誠司郎はまだ雪のキスの余韻に浸っている様だ。
「早く食べないと誠司郎の分も食べるよ」
雪が言うと我に返って食べ始める。
「火傷しないようにね」
食べることに関しては雪の方が成長しているみたいだ。
「愛莉も退院した早々面白いもの見れたろ」
神奈さんが母さんに言った。
「あの子だけが私を安心させてくれるの」
まるっきり普通の女の子だから。
危険な能力を持っている割には高所恐怖症という弱点を持っている。
「待て!私達は不安だといいたいのか!?」
「天音はさんざんやりたい放題やって来たでしょ!」
「翼だって一緒じゃん。私なんて風呂に入らなかっただけだよ!」
天音と翼と茜がそれぞれ不満を言う。
「この子達の孫がいる限り私は死ねないと思ったのよ」
「当たり前だ。愛莉に何かあったらあの馬鹿トーヤを止める人間がいないぞ」
「……空も一緒だよ」
翼がそう言っていた。
空も我慢の限界を超えている。
地元だけで済ますつもりはないみたいだ。
地上からFGを消滅させてやるつもりだと翼が言ってた。
本来は翼が空のブレーキになるべきなのに母さんをやられて黙ってる翼ではない。
翼がそうなんだから天音がじっとしているわけがない。
本来なら雪がFGという存在を否定するだけで済むのだけどそれで天音達の気が晴れない。
毎日昼間にFG狩りを実行していた。
問題を起こしても恵美さんや警察がもみ消す。
政治的圧力がかかろうものならそのつながりを突き止めてマスコミに流す。
すでにSHのメンバーが通ってる小学校、中学校、高校は蹂躙を済ませている。
高校生は大学受験があるから天音達が地元中の高校に乗り込んでいた。
「黒いリストバンドつけてる馬鹿は全員出て来い!この場で処刑してやらぁ!」
天音は校庭に現れるとそう叫んだらしい。
恵美さんに特注で作ってもらったらしい。
ギロチン台を恵美さんの兵隊が設置している。
当然そんな状況で名乗り出る馬鹿はいない。
すると紗理奈と相談したらしい。
「茜の情報だとこの学校SHいないんだろ?」
「それがどうかしたのか?」
「SHじゃないならFGかリベリオンとかいうふざけた連中のどちらかだろ?」
どっちにしても糞野郎だからまとめて燃やしてしまわないか?
「それもそうだな!おい、水奈。ガソリン買ってこい」
「ばーか、そのくらい用意しているよ」
「んじゃ、適当に撒くか。こんなとき旦那がいないと面倒だな」
そう言って天音が一斗缶を持とうとすると兵隊が止めたらしい。
その行為自体を止めたわけじゃない。
仮にも石原家の嫁にそんな真似させたら恵美さんに怒られるから自分たちがやると言った。
そんな事をしてるとさすがに教員たちが止めに来る。
「恵美さんには私から言うからあんたらは作業しててくれ。邪魔する馬鹿は私が直々に殺してやる」
「生徒だろうが爺だろうが邪魔する奴は皆殺しだ!」
そう言って3人を筆頭に大暴れしたらしい。
さすがに学校を放火しているのを警察が見過ごすわけにはいかない。
パトカーが乱入してきて警官と教職員と天音達の乱闘になった。
最終的には「廃校と誤解して整地しようと思いました」で片づけたらしい。
当然天音や水奈は母さんや神奈さんに怒られたらしい。
「文句があるなら空に言え!皆殺しにしろといたのは空だぞ!」
「だからって関係ない子まで巻き込むつもりなのですか!?」
「それはさっき紗理奈が言っただろ!SHでない奴は皆敵だ!って」
「そんなわけないでしょ!」
「天音。上品にしてくれとはいわないけどそういう危険な現場に天音がいる事は容認できないわ」
恵美さんがそう言った。
だけど続きがある。
「SHがいないなら敵がいない。そこまではいい。でも火事なんか起こしたらたくさんの人に迷惑をかけるわ」
「……そうですね」
さすがに天音も恵美さんに言われると反論できないみたいだ。
する必要もなかった。
「廃墟だと思ったから整地しようとしたんでしょ?」
「そうだけど」
「だったら別に燃やさなくても爆撃してしまえばいいんじゃないの?」
恵美さんがそう言うと望さんが頭を抱えている。
「恵美、そういう問題じゃないの。どこにも属してない子だっているのよ?」
「そんなの関係ないでしょ。一々気にしてたら面倒じゃない」
何の罪もない人を「面倒だから」の一言で片づける恵美さん。
「冬夜さんは止めてもらえないんですか?」
最後の望みを父さんに託す母さん。
だけど今回ばかりは父さんも止める気がないみたいだ。
「僕は片桐家の家長だ」
「そうですね」
「FGとやらを放っておいたらまた愛莉たちを狙ってくるかもしれない」
瞳子だって学校で働いている。
孫だっている。
孫の方が厄介な能力を持っているみたいだけど。
片桐家に手を出したらどうなるか徹底的に見せつける必要があると父さんは言った。
父さんは今回は口出ししないと言った。
空はそれを”父さんの命令はまだ生きている”と解釈した。
「止まるつもりはない」
空はそう言った。
その結果SHの暴動は日を追うごとに過激になっていく。
演習で標的を間違えた。
そんな理由で廃校になる学校まで出てくる始末。
その最悪の集団の長はのんきにハンバーグを食べている。
母さんが見ていると空が気づいたようだ。
「まだ時間ある?」
ハンバーグをもう一個食べたいと言いだす空。
「私ずっと入院していたくなりました」
母さんはそう言っていた。
「愛莉さん、悪いけど出来れば家で養生して欲しい」
深雪さんがそう言う。
理由は簡単。
24時間体制で石原家の私兵が警護する。
他の患者さんが怯えるから。
「冬夜だって自分が相手なら絶対にしないと言う程の馬鹿な真似をしたんだ。ちゃんと清算させないとな」
誠さんが言う。
だけど神奈さんは違うらしい。
「水奈、正直に言え。お前優奈達に何持たせてる?」
「え?普通に学校に通ってるんだから勉強道具じゃないのか?」
私は知らないと言い張る水奈。
「水奈。なずなから聞いてる。遊の馬鹿も琴音や進に持たせようとして大ゲンカしたそうだ」
学が言うと「ば、馬鹿!今それを言うな」と水奈の口が滑る。
何を持たせたか?
あの日ボーリング場に集まった時ロッカーの中には大量の銃火器を保管していた。
それを受け取って優奈達に持たせているらしい。
「学校は泥棒を養成する場所じゃない!」
拡声器で周辺の人にまで聞こえるくらいのでかい声でそう叫んだ校長がいるそうだ。
そして優奈達の学校でも同じ事が起きた。
「学校は人を殺すところじゃない!」
「ふざけんな禿!無抵抗でやられる間抜けになるなって歌があるだろ!」
禿だから知らないのか!?
そう菫と茉莉が反論した。
「学校で人を殺すって宣言する馬鹿がどこにいるんだ!?」
焦点が若干ずれてる気がするけど天音は茉莉に説明した。
アニメでも女の子が「お前を殺す」とか言わねーぞ!と天音が説明している。
「じゃあ、学校じゃなかったらいいのか!?」
「あまり恵美さんに迷惑をかけるな」
学校を燃やそうとした天音がそう言っていた。
やるなじゃない。
ばれないようにやれだ。
それを聞いていた母さんが怒り出す。
「あなたは自分の娘に何を教えてるのですか!」
「水奈もだ!お前らいつになったら娘をちゃんと指導する気になるんだ!」
「私だって結婚して子供産んでちゃんと子供を育てているんだから大丈夫だって!」
「水奈がいつちゃんと子育てしていたのか説明しろ!」
学も水奈を説教していた。
そんな様子を僕達が見ていると食事を終えた茉奈が神奈さんに言った。
「ねえ、時間あるなら外でお馬さん見ててもいいかな?」
「一人だと危険だぞ」
学がそう言うと茉奈はにこりと笑って言った。
「結と一緒ならいいでしょ?」
世界で一番安全な場所だ。
そう言われた結は追加の注文を頼もうとメニューを見ていた。
「結、食べ過ぎだから少し運動しなさい」
美希が言う。
こういう時は美希に従った方がいいと学習したらしい。
渋々茉奈と一緒に外に出た。
「やはり結もそうなるのか」
誠さんが言った。
「あれで自分が人気があると気付かないのが不思議でしょうがないんだけど」
神奈が言う。
「あの子を見ていると空を見ているようで不安なの」
母さんが言う。
女の子に興味を示さない。
そして食べ物に興味を持つ。
僕の時はまだ瞳子や誠司がいたから多少女の子に興味があった。
「それはそうと楽しみだな。クラブワールドカップ」
誠さんが話題を変えた。
「冬吾はすぐ熱くなる癖は止めなさい」
父さんが言った。
K国のチームとの準々決勝の時だった。
酷い試合だった。
ありもしないオフサイドで得点が2点も無駄になった。
ユニフォームを引っ張ったり足を引っかけたりするのはまだましな方。
仲間は頭から血を流していた。
ボールを持っていない仲間の頭を蹴り飛ばしていた。
さすがに誠司が抗議すると誠司がレッドカードを取られる。
湧きたつ相手サポーター。
他の仲間が抗議しようとするのを僕が抑えていた。
監督もぎりぎりのところでこらえていた。
「このままやられっぱなしでいいのか?」
「……俺に考えがある」
「?」
そう言って誠司のポジションに俺が入る。
ボールを受け取ると何人かが止めに来る。
分かっているからこの位置で受け止めた。
父さんは言っていた。
「試合を重ねるごとに弱点が露呈する。だから試合を重ねるごとに弱点を克服しないといけない」
文字通りその事を実行した。
いつから俺が至近距離での右足シュートをしないと錯覚していた?
足で止められる程度の威力だとどうして勘違いしていた?
胸でボールをトラップすると振り向きざまに右足シュートを放つ。
一人は足を骨折し、一人は頭に直撃して気を失い、そして止めに両手で止めようとした相手キーパーの腕を破壊した。
一度に3人の選手を交代させる。
監督から制限されているのは3発だけ。
3発で相手を恐れさせるには十分だった。
3発の制限は誰にも教えていない。
いつでも撃つぞ。
そういう脅しを利かせながら勝ち進んだ。
監督からも注意された。
「冬吾はそうやってすぐムキになるのが弱点だ。冬吾にはゲームメイクを任せたのに、お前一人で試合をしてどうする?」
同じ事を誠さんや父さんから注意された。
「冬吾もやっぱり片桐家の男ってわけね」
翼はそう笑っていた。
しかしそんな性格を雪が持っていたらどうなるのだろう。
それを止められるのは誠司郎だけ。
誠司郎は神奈とパオラがしっかり見ているそうだ。
「上手くいくと良いな。俺と冬吾の子供なんだ。すごい子供が生まれるぜ」
「一つだけ不安があるんだ。誠司の子供だから……愛莉はどうだ?」
「多分神奈と同じ。片桐家の娘だから……もう私達では手に負えない子供になるかも」
そんな話を父さんと誠さんは笑って聞いていた。
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