姉妹チート

和希

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God knows

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(1)

「あれ?冬夜達は?」
「今日は家で休むそうです」

 せっかく怪我も治ったばかりだしゆっくりしたいと、母さんは言ってたと冬莉達から聞いていた。

「だったらここで飲めばいいのにな」

 そんな状況を見て体調が悪くなりそうだからという理由もあるかもしれない。

「冬吾はなんで飲まないんだ?」

 飲むのが当然みたいに誠司が聞いてくる。

「子供達のかけっこみたらすぐ帰るつもりだし……」
「なんで?」

 何か僕達が間違っているのだろうか?
 
「孫の為にも残っていてやれないか?」

 神奈さんが言う。
 上手い断り方が分からず結局残っていた。

「冬莉、父兄参加はだいじょうぶなのか?」
「とりあえず縄にしがみついとけばいいんじゃないの?」

 誠さんがそう言っていたと言う。
 冬莉は飲んでいた。
 芸能人なのに大丈夫なの?と一応聞いてみた

「大人が酒を飲んで何が悪いのか説明してちょうだい!」

 恵美さんがそう言ったらしい。
 望さんは飲んでいない。
 善幸さんもだ。
 こういう大勢いる場所だから。
 戦闘経験のない一般人がたくさんいるから警戒しているそうだ。
 善明と大地は来ていない。
 来る理由がないから。
 それを言うと誠さん達もなんだけど。

「孫が頑張ってる姿を応援しに来ただけだ!」

 その割には酒を飲んで騒いでるだけだった。
 純也達も来ていた。
 僕達の世代の大半が子供が小学生になっている。
 純也もあまり飲んでいない。
 付き合い程度にとどめていた。
 理由は望さん達と一緒。
 FGがいつ襲撃に来てもいいように警戒している。
 だけど父さんは言っていた。

「今日は多分大丈夫」

 それにもう相手によほどの切り札がない限り攻勢に転じる事は許さないほどSHの攻撃は昼夜問わず行われていた。
 それは空があの日下した命令を忠実に実行していた。

「止まるつもりはない」

 その一言でSH全体が動き出す。
 ただ、僕と誠司、冬莉達は関わるなと言っていた。
 体が資本の僕達に万が一があってはいけない。
 年棒何億円と言われる僕達が怪我をしたら恵美さん達に申し訳ない。
 それに今年は待望のクラブワールドカップが年末に控えてある。
 だから僕達を巻き込むつもりはないという空の決断だった。
 SHは石原家達の兵隊も動員して文字通り昼夜問わずFGを喰らっていく。
 突然真夜中に発生する爆発。
 下校中のFGのメンバーを容赦なく襲撃する天音達。
 もちろんFGも指を咥えて待っているわけじゃない。
 だけはSHは反撃を許さない。
 空が「殺し合い」だと決断した時から茜達が奮闘していた。
 相手のネットワークに忍び込むと何もせずにただ相手の作戦を流していく。
 その裏をかいて空が指示を出す。
 武器の供給も4大企業が許さなかった。
 関連企業を芋ずる式に引きずり出し、そして片っ端から潰していく。
 ついでに誠心会とのつながりも突き止めて警察に垂れ込む。
 その代わり少々の事件には目をつぶれ。
 そんな暗黙の了解で地元の治安が乱れていく。
 相手はどうしてそれがバレているのか全く分かってないようだ。
 結果がでるのに一月もかからなかった。
 SHの勢力が存在する学校や会社からはFGの影は無くなった。
 だけどそれだけで済ますほど空も甘くない。
 当初は地元から排除する程度にとどめていたが母さんを襲った代償がそれでは気が済まないらしい。

「この世界からFGを消し去ってやる」

 空はそう判断した。
 FGの……誠心会の息がかかった暴力団の家に白昼堂々とダンプで突進する。
 運転するのは県知事の楠木さんだった。
 何事かと現れた構成員を片っ端から始末していく天音達。

「お前らがやらかしたつけは利息しっかりつけて払ってもらうからな!」

 そう言って片っ端から撃ちぬいていく天音や水奈。

「ああ、コントローラーのバイブが凄いのが分かった。結構反動あるんだな」
「そうだな。拳銃よりも結構重いし、兵隊がごつい体格の理由わかるわ」

 むしろ大地や善明が平然と打っているのが不思議なくらいだと水奈と天音が言っていた。

「ああ、それは多分姿勢が悪いんだよ」

 映画みたいに腰のあたりで構えて撃ったら絶対に標的に当たらない。
 肩でしっかり姿勢を構えて照準を合わせるのが重要だと大地が天音に教えていたそうだ。

「天音だけずるい!私も撃ちたい!」

 そういう事を平気で言うのが天音の子供達。
 もっとも結莉は興味なかったみたいだ。
 まあ、当たり前だろう。

「こんな物なくても火を出せる!」

 そんな事をMCで言っているライブがあった。

「そんな物使わなくても破壊くらいできるよ~」

 結莉は笑ってそう言ったそうだ。
 母さんが心配しているのを父さんが悩みを聞いていた。

「愛莉ちゃんはもう大丈夫なの?」
「雪の能力は本当に便利で恐ろしいね」
 
 怪我の痕すらなかった。
 ただ撃たれた出血やらのダメージで体力を消耗して入院していただけ。
 雪に知識があればそんなダメージすらなかったことにするだろう。
 冬莉がそう言っていた。
 母さんも言っていた。

「まだ冬莉や茜に孫を任せて死ぬわけにはいかない」

 母さんに安息の日はないらしい。

「やっぱり飲んでるんですね」

 瞳子が来た。
 両手には桐谷進と朱鳥達がいた。
 それを見て亜依さんがため息を吐いた。

「今度は進達はなにをやらかしたの?」

 すると瞳子が答えた。
 徒競走の時間になっても集合場所に来ない。
 だから桜子のアドバイスを聞いて教室に向かうと4人でトランプで遊んでいた。

「まあ、子供はそのくらいやんちゃじゃねーと」

 正文の祖母の美嘉さんが言う。

「まあ、今年はまだ大人しい方だと桜子先生も言ってたんだけど」

 教師の立場になって気づくこともある。
 こう毎年問題を起こされると頭を抱えるらしい。

「瞳子、この程度の事気にしてたら禿げるぞ」

 神奈さんがそう言って笑っていた。

「雪達は大丈夫だと思うんだけど」
「誠司郎も今のところは大人しいみたい」

 そう言えば2人はどうしたんだろう?
 そんな事を考えていると雪が戻って来た。
 雪が落ち込んでいる様だ。
 誠司郎は困っている。

「何かあったの?」
「……別に」

 雪に聞いても分からなさそうなので誠司郎に聞いてみた。

「さっきのは悪かったって」
「て、ことはやっぱりしてたんじゃない」

 雪が突然怒り出す。
 とりあえず瞳子に任せてパオラが誠司郎から詳しい事情を聞きだす。

「何か心当たりはあるのね?」
「……一つだけある。かけっこが終わった後で亜優と話していたんだ」

 そう言って誠司郎が説明を始めた。

(2)

「すっごい、やっぱり誠司郎が一番速いんじゃない?」
「そんな事無いよ」

 それでも運動能力は良い方みたいだ。
 空みたいに球技が苦手という事もない。
 亜優くらいの歳の女の子には人気が出る要因だと父さんから聞いていた。
 亜優はいつも俺の側にいる。
 それを雪がよく思ってない事は知っている。
 だけど最近は雪に何があったのか知らないけどあまり文句を言わなくなった。 
 それならそれでもいいや。
 そんな事を考えていたらまだ亜優がそばにいた。

「どうしたんだ?」
「きっと一番速かったと思う。だから私からご褒美あげる」
 
 ご褒美?
 何だろう?
 そう考えている間に亜優からの褒美を受け取っていた。
 亜優は俺の頬にキスをしていた。
 
「海外ではあいさつ代わりにキスをすることがあるんだ」

 父さんがそう言っていた。
 だからその程度にしか思っていなかった。
 その後背中から凄い怒気を感じた。
 振り返ると雪が立っていた。

「ああ、雪も走り終わったのか?どうせ親の所に行くんだろ?」

 FGがいるかもしれないしついて行くよ。

「誠司郎なんか知らない!」
「何をそんなに怒ってるんだよ?」
「あんなの見せつけておいてよく言えるね。嘘つき!もう知らない!」
「……言ってる意味がわかんない」
「じゃ、私先に行くね」

 そういって早歩きで戻る雪に必死に説明しながら戻って来たらしい。 

「……なるほどね」

 父さんはそう言って笑っている。

「お前本当に俺の子か?」

 父さんがそう言っている。

「冬吾。雪はどうなってんだ?」
「さあね。誰に似たんだろうね」
「多分愛莉だよ。一途で純粋ですぐに妬くんだ」

 そんな事をして雪のじいじと喧嘩してたと神奈が教えてくれた。
 だけどそれと雪の機嫌が悪いのとどう関係するんだろう?

「で、誠司は女心を教えてないのか?」

 誠が父さんに聞いていた。

「いや、俺も雪みたいなタイプの子は初めてでさ」

 多分父さんに聞いても分からないだろうしと父さんが言った。
 するとパオラが俺に聞いてきた。

「それは本当に頬にしたの?」
「そうだけど?」
「……だって、茉菜は心配しなくていいよ。今の話だと誠司郎と亜優がキスしているところをちゃんと見てなかったのでしょ?」
「……うん、本当に頬なの?」

 雪が聞くと頷いた。
 すると雪の表情が一変した。

「それだったらそうだって説明してくれたらいいのに」
「それを説明しなきゃいけない理由が分からないのにどうして?それに俺が誰かとキスをするのって悪いことなのか?」

 俺がそう言うと誠司と誠たちは笑ってる。
 亜依達も怒り出すかと思ったら笑っている。

「雪、私から誠司郎に説明するからそこでお弁当食べてなさい」
「分かった」

 パオラが言うと雪は大人しく座ってお弁当を食べ始めた。
 パオラは俺にもとりあえず座って食べながらでいいから話を聞いてほしいと言った。

「私も日本に来て最初分からなかったことがあるの」

 それは異性とキスをすることをやけに誇張する恋愛ドラマ。
 海外ではキス自体に意味はなく、その人とキスをしたときどんな印象を持ったかが重要なんだそうだ。
 だから初めてのキスはあなたの為にという思考自体がまず驚いたらしい。
 要するに俺が亜優とキスをしたことが問題なのだろうか?

「そうじゃないの」
「じゃあ、どういう意味なの?」

 パオラは雪をちらっと見ながら言った。

「雪の初めての相手になる人が他の人と済ませたというのが許せないの」

 だから雪から見たら俺の初めての相手は亜優だったと勘違いして怒っている。
 理屈は分かったけど、どうしてそうなるのかが分からない。
 要するに雪とキスをすればいいのか?
 俺は雪に声をかけた。

「雪、キスしたいなら今してもいいぞ?」
 
 これでいいのだろうか?
 悪かったみたいだ。
 また雪の機嫌が悪くなっていくのが目に見えてわかった。
 
 ぱしっ

 雪の平手打ちが俺の頬を打つ。

「誠司郎の馬鹿!!」

 俺の頭が悪いのだろうか?
 その場から立ち去る茉菜を父さん達が追う。
 俺も追った方がいいのだろうか?
 
「ああ、誠司郎はそこにいろ。ややこしくなるだけだろうから」

 神奈が笑いながらそういうので座って弁当を食べる。

「誠司の子供にしては女の子の扱い方が酷いね」

 誠さんとかから聞いてないのと冬吾さんが聞いていた。

「ああ、雪のような清純派の扱い方は俺にも分からなくてな」

 ひょっとしたら雪のじいじの方が分かってるかもしれないと言った。

「すると私は清純じゃないっていいたいのか?」

 神奈が誠を睨みつけて誠が慌てている。
 父さんでもたまに不安になる時があるそうだ。
 だけど母さんは「優しい素敵な旦那様」と評していた。

「いや、見てて面白かった。神奈。片桐君もあんなのだったの?」
「あいつは奥手なだけで少し背中を押せばちゃんとやるんだけど誠司郎は誠の血が流れてるのかってくらい女の扱いが最悪だな」
「やっぱりそうかぁ……。でもそれもありかもね」
「まじめにさ、誠司も教えてやってくれないか?女性を上手に扱う方法」
「お前が良いって言うなら良いぜ」
「それはダメだ」

 神奈が止めていた。

「でも誠司は凄く優しいですよ」

 パオラから見た日本の男性は亭主関白というイメージだったそうだ。
 だけど試合の後に必ず電話をくれる。
 子供の世話をちゃんとしてくれる。
 当然俺とボールを蹴って遊んだりもしてる。
 誠司のリフティングは冬吾よりも凄いらしい。
 パオラが知っている理想の父親が誠司なんだそうだ。

「……パオラがそう言うなら信じるけど、絶対に誠は余計な事言うんじゃねーぞ!」

 愛莉の孫娘の相手なんだ。
 これ以上愛莉が孫で悩み始めたら本気で死ぬぞ!と神奈が誠に注意してた。

「お、俺だって誠司に教えてない事があるんだ」
「なんだそれは?」
「誠司にはきちんとロマンという物を説明出来てなかったから失敗したんだ。だから……」
「それを余計な事って言っているんだ馬鹿たれ!」

 そんな様子を見てるとパオラがそっと話した。

「分かる?あれでもちゃんとした夫婦なの。互いの事を思いやってる夫婦なの」
「俺は別にまだ……」
「そういう意味じゃなくて、例えばこの先結が好きな人が出来たとして……」

 出来ないかもしれないけど女性と接する事は必ずある。
 その時にさっきの様に怒らせない上手な付き合い方を勉強しないとね。
 パオラはそう言って笑っていた。
 俺はどうもそれが苦手みたいだ。
 だけどそんな俺にどうして亜優はついてくるのだろう?
 そんな事今まで考えてもみなかった。
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