姉妹チート

和希

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ともだち

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(1)

 それはある日の音楽の授業だった。
 桜子がオルガンを弾きながら俺達は歌っていた。
 茉莉と菫は「こんながきくせぇ歌やってられるか」と文句をいいながらも、喉が潰れそうな声でアレンジを加えていた。
 その方が面倒な気がしたけどやりたいようにやればいいと思ったから放っておいた。 
 しかし、どうしても気になる事があった。
 以前じいじが言ってた「どうして1+1は2なの?」という疑問は早速桜子に聞いてみた。

「片桐君は数字がとりあえず1から10まで言えるかな?」
「うん」

 そう言って数字を言った。
 すると桜子は言った。

「1の次……つまり1歩だけ進むと2だよね?」

 それが「+」という意味らしい。
 なるほど……。
 ちゃんと理由があるんだ。
 
「ありがとう」
「問題解決できてよかったね」

 桜子はそう言っていた。
 その晩母さんの所に電話があったらしい。

「そう言わずに先生ならちゃんと勉強教えてあげてよ」

 そう言ってママは笑っていた。
 そして今日も桜子に聞いていた。

「みみずに赤い血がながれてるの?」

 オケラというのは見た事がない。
 オカラは知ってる。
 父さんとじいじと大地が嫌いな食べ物だ。

「なんか見た目と舌触りが苦手なんだよね」
「二人とも子供に何を教えてるんですか!」

 愛莉が怒っていた。
 それは置いておいてこの歌にはどうも不思議な事がたくさんある。
 ミミズも生きているから歌うという。
 生きていたら皆友達だという。
 生きていたら悲しいらしい。
 だったら死ねばいいのに。
 天音に言ったらきっと手伝ってくれるだろう。
 天音も恵美も言っていた。

「気に入らない奴がいたらすぐに言え。地獄に突き落としてやる」

 まあ、天音に言わなくても茉莉や菫達がきっと処分するんだろうけど。
 この歌は生きていくことが辛いことを訴える歌なのだろうか?
 生きていれば皆友達だから仲良くしなさいという歌なのだろうか?
 歌詞にはちゃんと作詞家の思いがあると冬莉が言っていた。
 志希が作詞している歌を歌っているんだから多分あっているんだろう。
 冬莉に似合っていそうな歌を作って歌ったら愛莉から苦情があったらしい。
 F・SEASONの曲は路線変更した。
 手のひらを太陽にかざしてみても僕の血管は透けてこなかった。
 それも前にママが言っていた「フィクション」というやつなんだろうか?
 そんな質問を桜子に言うと桜子は「ちょ、ちょっと調べるから時間くれないかな?」と言ってた。

「それなら自分で調べる」

 人から聞いたことをうのみにしたらダメだ。
 自分で調べて何が正しいのかを判断しなさいとじいじから言われていたから。
 給食の時間は茉奈と二人で食べる。
 たまに箸を持ってこないといけない時がある。
 好物が出た時は嬉しい。
 しかしたまに不可解な行動に出る子がいる。
 今日もそんな日だった。
 皿うどんが出ていた。
 餡の中に細くてかたい麺を入れて食べるやつ。
 父さんは餡は餡だけ食べて麺はお菓子の様に食べるらしい。
 しかしその子は生まれて初めて見る食べ方をしていた。
 袋に入ったままの状態で麺を粉々にして粉末を口の中に入れていた。
 そんな食べ方もあったんだな。
 関心して見ていた。
 しかし片桐家では麺を食べる時は他の炭水化物を取らないようにしている。
 なのに今日は揚げパンもついていた。
 結莉も俺も大好きなパンだ。
 当然皆が欲しがるからあまりはない。
 茉莉の事を緑の悪魔・グリーンピースと呼ぶそうだけど、そのグリーンピースの混ぜご飯の時はあまり誰も食べようとしない。
 だから余るから僕や結莉が全部たべる。
 好き嫌いはよくないと親から聞いてないのだろうか?
 鍋の中に余ったおかずを見てそう思う時がある。
 そんな中に食べ残した残骸を入れる奴を見るとイライラする。
 俺がイライラするときは大体茉莉達も怒っている。
 だから俺が何もしなくても茉莉が殴り飛ばす。

「食べ物に謝れ!食べ物を粗末にするなって教わってないのか!?」
「だったらお前が食べたらいいだろ!どうせ残って捨てられるんだからどうでもいいだろうが!」
「ああ、捨てれられるからどうでもいいのか?だったらてめぇも今から捨ててやるよ!」
「ナイスアイデアだな茉莉。こいつの体くらいバラバラにしたら鍋に収まるだろ」

 今からお前は廃棄処分だ。
 そう言って茉莉達が暴れて大事件になった。

「残ってるなら結莉食べようと思ったのにな」

 結莉が残念そうにしていた。
 その日学校が終わると天音が来ていた。

「ったく……海翔の世話で忙しいのに余計な真似しやがって。そのガキの親も呼んで来い!」

 私に無駄な時間を取らせやがって落とし前つけてやる。
 
「天音……あなたもいい加減母親なんだからさ……」
「茉莉達の言う通りじゃねーか!?食べ物粗末にするような奴はアフリカにでも放り込んで食料の大切さを教えた方がいいだろ!?」
「天音の言う通りだと思うんだけど。食料の有難みを知らないからそういう馬鹿な真似をしでかすんでしょ?」

 翼と天音はそうやって菫と茉莉と一緒に桜子と話があるから、悪いけど結莉は後で迎えに行くから冬夜の家で預かってくれと言っていた。
 結莉と一緒に家に帰ると母さんが「何かあったの?」って結莉を見ながら聞いてきた。
 事情を説明すると「……またやらかしたのね」と笑っていた。

「お菓子とジュース持っていくから結の部屋で遊んでなさい」

 母さんがそう言うので結莉を部屋に案内する。

「あんまり何もないんだね」

 まあ、本棚とベッドと学習机とテレビくらいか。
 結莉の部屋は生首が並んでいたなあ。
 きっとお化けとかすきなんだろうな。
 
「結莉お化けは苦手」

 暗いし怖いから。
 やっぱり女の子なのかな。
 すると比呂やカミル達も部屋に来る。
 4人がおしゃべりしている間に俺は机に置いてるPCを起動する。

「へえ、結はPC持ってるんだ」

 結莉はそっちの方が興味あったらしい。
 僕と一緒に画面を見ていた。

「どんなのを見るの?」

 エッチなやつとか見てたら茉奈に言いつけるよ?

「今日の音楽の授業の歌が気になってさ」
「それなら捕まえてバラバラにしてみたら分かるんじゃない?」
「でも、友達らしいからそんなことできないだろ?」

 そう結莉に説明しながら検索サイトで検索する。
 この歌3番まであったらしい。
 その3番でさらに謎が増えた。
 スズメもイナゴも皆友達らしい。
 まあ、生き物は皆友達って言ってる歌だから当然なんだろう。
 しかしスズメもイナゴも食べる地方があると聞いた。
 大体牛や魚も生きているから友達じゃないのか?
 死んだら友達じゃないから食べてもいいのだろうか?
 だけど死ぬまで待ってから食べるのだろうか?
 魚は間違いなく生きているうちに釣りあげて捌くはずだ。
 鶏肉を加工するところで働いてた人は「とても鶏肉なんて食えない」って言っていたそうだ。
 そういや、ロボットアニメであったな。
 友達だったのに戦う羽目になるお話。
 友達という食料。
 さすがにそんな矛盾を歌っている歌はこの曲だけの様だった。
 結莉と悩んでいると天音が迎えに来る
 
「また明日ね~」

 結莉がそう言って帰って行くと夕食の時間まで考えていた。

「何を調べてるんだい?」

 カミルが聞いてきた。

「友達を食べるってどういう気持ちなんだろう?」
「え?」

 カミルの国でもそんな歌はないらしい。

「二人とも夕飯できたよ」

 ママが言うとダイニングに向かう。
 そしてテーブルに並べられた料理を見て考えていた。

「結。どうしたの?」

 母さんが聞いてきたので聞いてみた。
 自分で調べてもどうしても分からないから仕方ない。

「友達を食べるって良いことなんだろうか?」
「……誰からそんな話聞いたの?」
「今日音楽の授業で教わったんだ」

 母さんに事情を説明する。
 すると母さんは「なるほどね」と笑顔だった。
 じいじや父さんも一緒だった。

「美希、片づけは私がやるから結に教えてあげて」

 愛莉がそう言うと母さんは頷いて僕に言った。

「お風呂済んだら母さん達の部屋においで」
「わかった」

 そして食後にお風呂に入ると母さんの部屋に行く。
 母さんの部屋は図書室の様に本棚に漫画が敷き詰められている。
 そしてとても大きなベッドがあった。

「気になる漫画あったら持って行っていいよ」

 母さんが言う。
 父さんが子供のころからずっとあるんだそうだ。
 パパや父さんが死守してきた宝物らしい。

「さてと、ちょっと待ってね」

 母さんがそう言ってPCを起動させる。
 その中にある一曲を聞かせてくれた。

「古い曲なんだけどね」
 
 その歌のテーマは「休戦」
 戦争していた両国がクリスマスだからと戦闘を止めて相手の塹壕に向かったそうだ。
 戦争を止めて戦場を止めてサッカーをして楽しむ。
 それぞれの理由で争い合うのは仕方のないことだ。
 だけど今夜だけは友達同士の様に踊ろう。
 皆生き延びるために必死だから食物連鎖が起こる。
 譲れないものがあるから守るために戦う。
 だけど離れていても伝わる思いがあるように、誰もが皆争いのない世界に生まれ変わるのを望んでいる。
 それを「生きているから皆友達なんだ」と表現したかったのだろう。
 ママがそう説明してくれた。
 なるほど、争いのない世界。
 それはとても難しい事。
 神様が信者に人殺しを命じる世界。
 そんな中でもそんな希望を胸にしまって活動している人だっている。
 僕がいったように動物を殺して肉を食べるのを禁じている思想の持ち主もいるらしい。
 だけどそんな事言い出したら植物だって食べたらいけないんじゃないのか?
 だから自分の糧になるために命を落とした動物に敬意を払って食事をする。
 それが食べ物を粗末にしてはいけない理由だとママは言った。
 さすが母さんだ。
 じいじもだけど色んなことを知っている。
 どうしてだろう?

「それをこれから小学校や中学校で学ぶの」

 興味がないことでもいつか何か役に立つからしっかり勉強しなさい。

「……じゃあ、今日の宿題して寝るよ」
「風邪ひかないようにね」

 夜更かししたらダメだよと言われて俺は部屋に戻る。
 争いのない夜。
 だけど現実はいつも残酷だと言っていた。
 恋人同士や夫婦で喧嘩をする現実でそんなことは絶対にありえない。
 だけどそうなる日が来るといいな。

(2)

「な、何するんだよ!?石原」

 僕は今年入って来た楠木碧を虐めている奴の腕をつかんだ。

「さっきから見てたけどそういうのダメだと思うんだけど」
「お前には関係ないだろ。それともお前こいつの事好きなのか?」
「どうしてそうなるのか、理由が分からないんだけど」
「関係ないんだったら引っ込んでろ!」
「そうだ、そんなの関係ないんだよ!」

 そう言ってそいつらにむかって飛び蹴りを入れる優奈と愛菜。

「お前らが黒いリストバンドをつけてふざけた真似をしているからぶっ殺す!それなら問題ないだろ?」
「私達女だから手加減なんてゴミ箱に捨ててきたから覚悟しろよ!」

 ゴキブリは一匹潰すとたくさん湧くって茉莉が言ってた。
 その通りにゴキブリの様に現れる群れ。

「たった3人で何が出来る」

 逆に袋叩きにしている。
 だけどそんなの関係ない。
 僕はにいにに言われた。

「あとの事は任せるよ」

 にいにに託されたことを全うするのみ。
 僕は手のひらを彼らに向ける。
 パパが言ってた。

「最初だけは相手に逃げだす時間を与えてあげなさい」

 自分に手を出したらどうなるか警告を与える必要がある。
 なんだって、まずは威嚇からするだろ?
 ママは「黒いリストバンドをしたクソガキがいたらさっさと焼却しろ」と言っていたけど。

「か、海翔。それはまずい!」

 優菜は気づいたみたいだけど遅い。
 
「ずどん」

 僕がそう言うとこんな晴れた日でも突然落雷が発生する。
 彼らの目の前で。

「さっさと逃げた方がいいんじゃない?ブギーマンがやってくるよ」

 そう言うと彼らは全員逃げ出した。

「あ、ありがとう……」
「いいよ。僕の目の前で馬鹿な真似は絶対に許さない。それより君一人なの?」
「いえ……」
「何があったんだ?碧」
「あ、光一君」

 一人の見た目良さそうな清潔感のある子が現れた。
 その光一君に事情を説明する。
 
「ありがとうございます。助かりました」
「いいよ、にいにに言われたことを全うするだけだから」
「何があったの?」

 保母さんが来るけど、優奈と愛菜がとぼけていた。

「こんなに天気がいいのに雷が落ちる事もあるんだね」
「やっと茉莉達が卒園してくれたのに……お願いだからくれぐれも問題をおこさないでね」

 そう言って保母さんが職員室に戻っていた。

「じゃあ、俺達も遊戯の時間だから」

 そう言って碧さんと光一君は部屋に戻った。
 その日家に帰ると誰もいない。
 多分ママは小学校に行っているんだろう。
 多分そうなるだろうとママが家の鍵を預けてくれた。

「そうならないように努力する気が天音にはないの!?」

 あーりにそう怒られていたけど。
 部屋に行くと着替えて洗濯籠に入れて、ベッドで寝ていた。
 そしたら帰って来たママが起こしてくれる。

「お勤めご苦労。なんかあったか?」
「大丈夫」
「そっか、頼もしいな」

 そう言ってママは笑っていた。
 夕食を食べてパパとお風呂に入ると部屋で寝ようとしたら結莉がやって来た。
 結莉はスマホを持っている。
 どうしたんだろう?

「とーやの事気になるんでしょ?」

 そう言って結莉はスマホを見せる。
 すまほにはにいにの顔が映っていた。

「幼稚園はどう?」
「大丈夫、頑張ってる」
「信用してるよ」
「うん」

 その後も小学校の話を聞いたりして電話を終えると、結莉は部屋に戻って行った。
 僕もベッドに入って眠りにつく。
 にいにから託されたことを忠実に全うするだけ。

(3)

「菫達大丈夫?」
「どういう意味だ?」

 カミラ達が聞いてきたので返事をした。
 良くも悪くも私達に手を出してくる馬鹿はいなかった。
 理由は簡単。
 自分たちと違う髪の色と瞳の色。
 それだけで自分たちの輪の外に追いやっていた。
 カミル達はもともとそうだったからあまり気にしていないらしい。

「島国だからしょうがないんだろうね」

 そんなに渡航してくる海外の人間もいない。
 観光には来るけど、在住しようとは思わない。
 日本人ですら税金が高すぎると海外に在住する芸能人も数少なくない。
 髪が黒くても顔つきからゴキブリの国の人間だと判断して差別する。
 そう、私達はクラスのみんなから無視されていた。
 さすがに黒板に罵声を書いたりはしない。
 すぐに見つけて始末するから。
 天音が「屋上から投身自殺させとけ。遺書は偽造してやる」と言っていた。
 もちろん愛莉に怒られていたけど。
 だから、今の状態はお互いにいいのかもしれない。
 とりあえず被害は生じない。
 別に菫や茉莉達もいるし、カミラ達もいる。
 それはクラスの中だけではなかった。
 私達を一目見ようと小学校の全校生徒が見に来る。
 そして私達が睨みつけると慌てて逃げる。
 何もない状態だけどイライラする。
 だけどママとの約束がある。
 よほど体調が悪くない限り学校には行きなさい。
 それがママが自分に課した義務だから。
 どんな子でも平等に教育を受ける権利がある。
 だからママはその義務を果たします。
 菫もせっかく保証された権利を利用しない手はないはずだよ。
 それは菫達でも分かっているはずだよ。
 ママがそういう。
 学校に行くのは義務。
 学校に行く権利があるだけで行かないといけないわけじゃない。
 そんな甘えた事を言うような娘ではないとママは信じてる。
 だからよほどのことが無い限りサボらないようにしていた。
 それに私達にはカミラや紀子だっている。
 寂しくなんかない。
 そう思っていた。
 しかし事件は突然起きる。
 今日の給食はご飯食だった。
 パパやママが美味しいと教えてくれたわかめご飯。
 そう、混ぜご飯だ。
 ふりかけなんて必要なわけがない。
 なのにその馬鹿は私のご飯にふりかけと称して黒板消しを叩いてチョークの粉を振りかけた。

「ありがたく思え」

 もう小学生だ。
 入学式の時から教師にマークされている。
 ママも何度も学校に来て同じ説明を繰り返している。
 これ以上ママに迷惑をかけられない。
 我慢するべきなんだろうか?
 怒りを抑えていた。
 辛い。
 それでも私達は恵まれているんだ。
 そんな事を考えると涙がにじんでくる。

 もういやだ。

 すると陽葵がやって来た。

「らしくないじゃん」

 そう言って陽葵はチョークが降りかかったご飯を取ると振りかけた相手のご飯と取り換えた。

「何やってんだ酒井!」

 男子がそう言うと紀子や秋久に健太も立ち上がる。

「で、どの酒井に用があるの?」

 陽葵がそう言った。

「お前、ふざけてるとぶん殴るぞ!」
「ふざけてなんかないよ。みんな酒井。で、誰に相手して欲しいの?」
「お前耳が遠いのか!?一人に決まってるだろ!」
「そう?じゃあ正直者さんにはプレゼントを用意してあげないとね」

 そう言ってチョークの粉がかかったご飯のプレートを男子の顔にめがけて叩きつけた。
 男子は吹き飛んだ。
 すると何人の男子が立ち上がった。

「お前ら俺達がFGだと知らないわけじゃないよな」
「知ってるわよ。そのダサいリストバンド見たら誰でも分かるよ」

 だから望み通り処刑して差し上げます。
 そう言って陽葵は私を見る。

「ママが言ってた。子供の後始末くらいちゃんとしてあげるから思うがままに行動しなさい」

 自分の中に正義があるのならその正義を全うしなさい。
 子供は親に迷惑をかけるもの。
 そうやって少しずつ色々学んでいく。
 だから自分の中にある心の赴くままにやって見なさい。
 それが間違っていたら正すのが親の役目。
 子供が親に迷惑をかけるからとか生意気な配慮をする必要はない。

「帰ったら一緒に怒られてあげるよ」

 紀子が言う。

「そういう事なら私達も混ざっていいよな?」
「やれやれ、厄介事はごめん被りたいんだけど姉が奮闘してるのにぼーっとしてましたじゃ僕の命が幾つあっても足りないんだ」
「ってことは俺もか」
「待って」

 やる気になっている茉莉と秋久と健太
 私はそう言うとご飯にチョークの粉をかけたFGの馬鹿を見下ろした。

「そうね……私が馬鹿だった。すっかり忘れていたわ」
「そうだよ」

 陽葵がそう言うと私は思いっきりその男子を蹴とばした。

「いつまでも寝転がってスカートの中身除いてんじゃねーよど変態」
「お前ら俺達に手を出してどうなるか覚悟できてるんだろうな?」
「それは聞いてない。どうなるのか教えてくれない。参考にするから」

 でもやる気ならやられる覚悟もちゃんとしておいてね。
 あなた達がFGだと知った以上、あなた達を冥途に送る口実は出来た。
 私は死を司る娘。
 あなた達の運命をここで終わらせて差し上げましょう。

「ま、待ちなさい!」

 桜子が止めようとするけどもう遅い。
 すでに私は二人目の胸ぐらをつかんで窓にめがけて投げつけていた。
 窓ガラスが割れて窓が外れて外に投げ出される。
 ここが一階でよかったね。
 冬吾達は三階でも構わず放り投げたらしいよ。
 それから乱闘というよりは一方的な蹂躙が続いた。
 結が使えなくても私や陽葵や秋久、結莉と茉莉が使えるSHの戦術”ライド・ギグ” 
 半分くらい片付けると教室の外に逃げ出そうと二つの出入り口に群がるがそこにはカミラとカミルが立ちふさがっていた。

「FGに逆らったらどうなるか教えてもらったお礼に片桐家を怒らせたらどうなるか教えてあげるね」

 カミルがそう言って一人も逃さず始末していく。
 この程度で泣き叫ぶ情けない連中を相手にするのが面倒になってきた頃、FGのガキ共も戦意を失っていた。
 面白くないから合図を出す。
 そして放課後私達はママを呼び出される羽目になった。
 しかし事情を聞いたママは簡単に頭を下げるはずがない。

「陽葵達を注意する前にご飯にチョークの粉をかけたガキを注意するべきなんじゃないの?」

 それを桜子がしなかったからこうなったんでしょ。

「翼、勘弁してよ。まだ入学して半月なんだよ」
「だから陽葵達が始末したってだけでしょ」
「翼の言うとおりだ。もとはと言えば菫のご飯にふざけた真似をした馬鹿が引き金だろうが!」

 ご飯を無駄にする行為は片桐家では死に値するという事を教えただけ。
 陽葵達も給食食べ損ねて機嫌が悪いはず。
 しょうもないことで呼び出ししないで。
 あまりにも私達の手間をとらせるようなら黒いリストバンドしたガキまとめてウクライナに派遣してやるぞ!
 結局桜子が折れた。
 帰りにコンビニに寄った。

「確かこのコンビニゆかりご飯のおにぎりあったはずなんだよね」

 ママもパパとよく食べていたらしい。
 ママは愛莉に連絡していた。
 その日の夕食は食べ損ねたわかめご飯にしてくれた。
 大切な食べ物を冒涜するような行為は絶対に許さない。
 それは片桐家で絶対守られていた事。
 でもそれは裕福な日本だからこそやる行為だ。
 その日の食料に困る子供たちがするわけない。
 だからわずか3000円の寄付で……って広告が流れるんだろ?
 パパとママは私達を叱るつもりはみたいだ。
 むしろ相手は喜ぶべきだ。
 翼と天音で済んでいたからよかったものの、晶や恵美が出てきたらただじゃすまない。
 どうやら私達の主張は正しかったらしい。
 片桐家の人間は誰もが何かしら才能を預けられる。
 だからその力を間違った方向に使わないように徹底的に躾けられていた。
 翌日からまた相も変わらず無視されていた。
 だけど私達に手出しをしようとする愚か者はいなくなった。
 だけどそれは私達と同じクラスの人間だけ。
 他のクラスでは私達に目をつけている人間がいるようだった。
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