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Are you fuckin' ready?
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(1)
「あれ?友諠どこ?」
私が目覚ますと隣で眠っていた友諠がいなかった。
あたりを見回すといつもと違う部屋。
私の家でもない。
どこだろう?
それより友諠どこ行ったんだろう?
「友諠どこー!?」
不安になって叫んでいた。
すると友諠がエプロンをつけて部屋に入って来た。
「何かあったの?」
「ここはどこ?」
私がそう言うと友諠はあきれていた。
「今日入学式だぞ?何寝ぼけてるんだよ」
「入学式……あっ」
そうだった。
私と友諠は今日から大学生になる。
大学生くらいならもう二人で同棲しても別におかしくないだろうと恵美さんが家を建ててくれた。
そう、家を建ててくれた。
「やっぱり大学の近くがいいの?」
恵美さんはそれだけ聞いてきた。
「どうせ車だからこの辺でいいよ」
思考が追い付かない私に替わって友諠が返事をした。
大学の側なら通学に便利だけど買い物をするのが余りにも不便すぎた。
私立大学ならともかく地元大ならこの辺で借りた方がいい。
少し混む場所があるけどそれは少しだけ早く出るとか裏ルートを使うとか方法はいくらでもある。
同棲するならバイトも探さないとと求人雑誌を買ってきたけどそれを見た恵美さんが友諠を叱っていた。
「友諠!あなた勉強もしなきゃいけない凜にバイトまでさせるつもりだったの!?」
二人の生活費くらい恵美さんが負担するから、たった4年間しかないのだから思うように最後の学生生活を楽しみなさい。
「ごめん、凜に説明するの忘れてた」
「いや、いいんだけどさ……でもやっぱりバイトくらいしないと」
遊んだり服を買ったりするお金どうするの?
それを聞いた友諠はくすっと笑っていた。
そして少し考えて自分の財布からいくらか抜いて私にくれた。
ついでにキャッシュカードとクレジットカードも。
クレジットカードは私名義になっている。
「友諠、私そんなつもりで友諠と付き合ってるわけじゃない」
本当に大好きだから一緒にいるだけだよ。
お金目当てなんかじゃない。
「知ってるよ。だから預けるんだよ」
「どうして?」
「一つずつ説明するね。そのキャッシュカードは僕名義だけど母さんが毎月振り込んでくれる」
一緒に暮らすのならお金の管理は彼女に任せた方がいいだろう?
デートの時にもめるのを嫌った彼氏が「じゃあ、俺の財布預けるからそこから出してよ」と言ったらしい。
同棲しているんだから私の方が買い物したり色々するだろう。
私が他の男性とデートしたりするわけがないと信じてる。
だから私に預ける。
「で、最近電子マネーとか多いからカードを預けた」
多分私のスマホにもお金がチャージされているはず。
それらを全く使えない時に現金が必要だからとりあえず渡しておく。
それを全部使いつくしてしまうのは学生ではちょっと豪遊しすぎだから許さない。
まあ、受け取った紙幣を見て確かにそれはないと思ったけど。
「って事は幸もそうなの?」
「多分そうじゃないかな」
やっぱり家で拓斗と恵美さんが話し合っていたらしい。
「バイトなんかしてる暇あったら幸に構ってあげて」
友諠の兄や姉も同じように生活してきたらしい。
で、大学の入学祝いにもらった家に引っ越してきたのが昨日。
なるほど……でも。
「なんで友諠がエプロンしてるの?」
「だって朝食作ってた」
「え!?」
私は慌ててダイニングに向かう。
鮭の切り身のいい匂いが漂っていた。
「ごめんなさい!明日から私作るから!」
これじゃただの居候じゃないか。
「気にしないでいいよ。昨日荷ほどきに時間かかってたから。それより早く準備した方がいい」
今日は入学式。
私も準備大変だろ?
俺も朝食終わったら急いで着替えるから。
そう言って私達は同棲生活初めての朝食をした。
その後私と友諠は慌てて着替えて準備をする。
「どっちの車で行く?」
「どっちも使わない」
「え?」
あのホテルの側に止まるバスがあるからそれで行こう。
「多分幸や拓斗もそのつもりでいるだろうから」
あ、そういう事か。
「分かった」
そして家を出てバスに乗って会場に行く。
拓斗達は先に来ていた。
そして幸がなぜか落ち込んでいる。
「何かあったのか?」
友諠が幸に聞いていた。
幸は私と違って先に起きていたらしい。
幸が朝ご飯を作るつもりだった。
幸は料理が出来ないとかそういう事はない。
この日の為に恵美さんからしっかり教えてもらったらしい。
だけど肝心な事を忘れていた。
石原家の朝はご飯食なんだそうだ。
しかし幸は知らなかった。
ご飯は前もって炊飯器にあるタイマーで炊いておくものだという事を。
そして起きてから慌てて炊いたけど間に合いそうにない。
それで来る途中にコンビニでおにぎりを買って済ませたそうだ。
家事を習っていても器具の使い方を知らなかった。
洗濯等も洗剤を入れすぎたり自分の下着をネットに入れる事を忘れてブラのワイヤーが曲がってしまったらしい。
改めて家事の難しさを体験して落ち込んでいるらしい。
拓斗は大体の事をこなすから幸のフォローをしたそうだ。
それが逆効果で気分が沈んでいる。
「これから覚えていけばいいだろ。その為の同棲なんだ」
いきなり結婚なんて無理って分かっただろ?
今までもお互いの事を知って来た。
拓斗もバイトしないで済むからちゃんとフォローしてやるからいつまでも悩むな。
「しかしやっぱり知ってる人少ないな」
拓斗が笑っていた。
入学式が終わると4人で昼食を取る。
それからSAPで遊んだりして夜はたった4人で祝う。
「今度先輩たちが歓迎会してくれるってさ」
友諠が言った。
社会人組も来るらしい。
だから今日は早めに帰ることにした。
家に帰るとお風呂に入る。
友諠と二人でくつろいで、明日も早いから早く寝る。
こうして新しい生活が始まった。
(2)
「あら~似合ってるわね」
愛莉がランドセルを背負った俺を見てそういった。
「好きな色を選んでいいよ」
母さんがそう言ったけどやっぱり黒が一番いい気がしたので黒を選んだ。
他にもカラフルなのがあったし比呂やカミラはカラフルなのを選んでいた。
洋服も入学式だからと母さんが選んでくれたものを着ている。
胸には名札をしている。
家を出る前にじいじが一枚だけ写真を撮りたいというので、撮ってもらった。
「じゃあ、ちょっと行ってくる」
母さんが愛莉に言う。
「しっかりね……それと……」
「分かってる。ちゃんと注意しておく」
母さんがそう言うと父さんと一緒に天音の家に向かう。
呼び鈴を押すと大地が出た。
「ご、ごめん。ちょっと中に入って待ってて」
「待ってて……ってもうそんなに時間ないよ?」
「そ、それがちょっと問題があって」
「……入学式の日に何をやらかしたの?天音は」
「天音じゃなくて茉莉がさ……」
どうしたんだろう?
「お、お前いつのまにこんな服買ってきたんだ!?」
「この前天音が好きなの選んでいいって言ったじゃん?」
その時に選んでこっそり入れておいたらしい。
「ま、茉莉急いで母さんが選んだ服に着替えろ!」
そんな天音の叫び声が聞こえてきた。
「こっちの方が可愛いじゃん」
「馬鹿!こんなキャラクターのどこが可愛いんだ!?お前のセンスは大地レベルなのか!?」
茉莉と天音が口論してる中結莉は一人で準備を済ませて部屋を出来てた。
そして僕を見つけると駆け寄ってくる。
「素敵な服だね」
えーとこんな時なんて言うんだっけ?
母さんも急かしている。
あ、思い出した。
「結莉も綺麗だよ。似合ってる」
「ありがとう♪」
機嫌が良さそうだから多分あっているんだろう。
その間も結莉達の部屋から大声が聞こえてくる。
「もう温かいんだから下にジャージ穿かなくてもいいだろ!」
「だって下半身冷やさない方がいいって天音言ってたじゃん」
「だったらミニスカートを止めろ!」
「長いと鬱陶しいんだよ」
「……ちょっと空達そこにいて。私天音の援護してくるわ」
時計を見ながら母さんが言った。
これ以上時間を使えない。
それから少ししてから茉莉達も出てきた。
あまり見た事のない茉莉の姿に見とれていた。
「なんだ?結莉より私の方が良くなったか?」
「うぅ……」
ぽかっ
結莉に小突かれた。
それから小学校に向かうと菫達と会う。
菫もお嬢様な感じの服を着ていた。
でも冬莉がやってた。
ウェディングドレスを着て暴れる女性。
多分そんな感じだろう。
「しかし美希の方が説得早いとはな……」
「大地で慣れてるから」
「大地もすごかったのか?」
「そりゃもう凄かったよ」
「何かあったのか?」
母さんと天音が話していると祈が聞いていた。
「……絶対ぶっ壊れたセンスを持ってるのは海翔だと思ったら、茉莉だったよ」
この先どうにかしないと大惨事だ。
男性はスーツを着るようになるからいい。
だけど女性はスーツの時もあるけど大体が普段着に近い。
今の茉莉のセンスで服を選ばせていたら大惨事になる。
恵美さんだって見に来る。
その時にあんな格好で出てこられたらヤバイ。
「そんなにすごいのか?」
祈が聞いていた。
「そうだな……こんな春にミニスカート穿いて……下にジャージだったよ」
「……それはまずいな」
祈も驚いたようだ。
天音の怒りは大地に向かう。
「大地!お前も他人事だと思うなよ!あんな格好でパーティに行かせたらやばいことくらいわかるだろ!」
あのセンスは絶対にお前譲りだ!!
「あ、天音が選んでやればいいだろ?」
「今日だって私が選んでおいたのに勝手にあれを着てきたんだよ!」
中学生くらいになったら自分で服を選びだす。
下着だってそうだ。
茉莉はアニメのキャラクターがプリントされたパンツ穿いて男と寝る勢いだぞ!
別に下着ならいいんじゃないだろうか?
何か問題あるのかな?
「結は気にしなくていいんだよ」
結莉が言うから気にしないことにした。
「随分お嬢様な服着てるじゃねーか、分厚い化粧してるババアみたいだな」
「お前こそ寝小便ばかり垂れるから服に気を使ってないみたいじゃないか?」
「このボケナス。ふざけたこと言ってると小学校に行く前に病院に送り付けるぞ!」
「上等だおもらし姫。小学校生活が始まる前に茉莉との決着つけてやらぁ!」
二人は本当に喧嘩が好きだな。
そんなに面白いのだろうか?
僕はあまりしない。
する前に秋久達が始末してしまう。
結莉が「結は何もしなくていい。だって一番強いのは結だから。弱い奴いたぶっても面白くないでしょ?」と言っていたから。
確かに一々暴れるのも面倒だ。
そんな事を考えながら暴れ出そうとする茉莉と菫を親が止めていた。
「お、お願いだから今日は大人しくしてておくれ」
「す、菫。せっかくお洒落したのに汚れたら元も子もないよ」
「茉莉、やめてくれ。入学式に乱闘なんて愛莉に知れたらシャレにならない」
何とか宥めている親を見ていると茉奈が肩を叩いた。
「おはよう、結。服似合ってるよ」
「茉奈も綺麗だよ」
「本当に?」
茉奈も水奈に選んでもらったらしい。
しかし茉奈と水奈の好みはかなり違いがある。
それで不安だったらしい。
分かりやすく言うと足とか露出が多くて恥ずかしかったそうだ。
「気にしなくていいんじゃないかな。綺麗だと俺は思うぞ」
「ありがとう。あそこに私達の名前貼り出されてる」
茉奈が指差す方向をみると、大きな掲示板があってそこにクラスと名前が書かれた紙が貼られていた。
俺達はみんな同じクラスだった。
「教室に行こう?」
茉奈が言うので母さん達と一緒に教室に向かう。
席が決められているようだ。
俺と茉奈の席は近かった。
結莉や茉莉、秋久は少し離れていた。
だけど皆近くに集まっていた。
当然その席だった子が「どけよ」と言う。
「お前の席は今からあっちに変わった。さっさと行け」
結莉が言うと天音達が慌てているのを感じた。
男の手首には黒いリストバンドがしてある。
天音の言ってたのはこれか。
窓から投げ捨てろと天音に言われていたけど、今日は大人しくしてないといけないらしいから様子を見てた。
「10秒だけやる。殺されたくなかったらとっとあっちに行け」
「ふざけるな、誰に物言ってんだてめぇ」
そう言うと結莉は立ち上がると男の手を掴む。
「入学式に面倒な真似させやがって。さっさとあっちいけばいいんだよ!」
そう言って結莉は男子を投げ飛ばした。
本来の結莉の席の机にたたきつけられる男子。
するとクラスの何人かの男子が立ち上がった。
「お前らFGに喧嘩売ってるのか!?」
確かそれ遺書みたいなもんだって言ってたな。
「FG?そんなに死にたいならまとめて始末してやらぁ!」
「茉莉の言うとおりだ!お前らの席は立った今から棺桶の中だ!」
茉莉と菫に火をつけたらしい。
母さん達を見ると少し困ってる。
面倒だけど仕方ない。
僕が立ち上がると結莉が投げつけた男子の所に向かった。
「結莉は女の子で君は男の子。女の子に優しくしてあげないとだめって教わらなかったのか?」
「こんな時だけ女を使うなんて卑怯だろ!」
「確かにお前のいう事も一理あるな」
勝ち誇った顔の男子の目の前で机を真っ二つに叩き割った。
「じゃあ、言い方を変えるよ。大人しく言う事を聞かないとお前をこの机みたいにしてやるぞ?」
さすがに男子も怯えたらしい。
大人しく椅子に座る。
茉莉にお願いして机を元に戻してもらった。
やがて担任が入ってくると結莉達の席が違うのに気づいたから。
「石原さん、席が違うんじゃないの?」
「お、俺がここがいいってお願いしたんです」
結莉が睨みつけているのに気づいたんだろう。
男子がそう言った。
担任も何か察したらしい。
「あまりそういうわがままを言ったらだめだよ」
そう言って担任が自己紹介を始めた。
水島桜子というらしい。
……桜子?
どっかで聞いたな。
ああ、母さん達が言ってた先生か。
この後の説明を聞いて体育館で入学式を受ける。
すると校長先生の話が始まる。
当然意味が分からないし、無駄に長い。
そんなことしてたらまた……菫達が爆睡していた。
いびきを聞いた校長が注意する。
「うるせぇぞはげ!一々気にするからヅラなんだよ!」
「子供の安眠妨害するならこの場でぶっ殺すぞ!」
二人が怒り出す。
世間では逆切れというらしいけど。
入学式が終わって教室で桜子の話を聞くと今日は終わりになった。
母さん達と帰る時に桜子と話をしていた。
「……まさか初日からこうなるとは思わなかった」
「ま、まあ多分何とかなるから気にするな」
桜子に迷惑かけるなと言い聞かせてるから。
桜子と天音が話をしている。
茉莉は「はやく寿司!!」と天音の手を引っ張っていた。
「茉莉は頭の中まで胃袋なのか?」
「てめぇが食っても胸にしかいかないから、頭は成長止まったままだろうな?ホルスタイン」
「まな板よりはましだ」
「だったらまな板のうちにぶっ殺してやる!」
「やれるもんならやってみろ!」
「二人とも、学校は暴れるところじゃないから大人しくしていようね」
桜子が仲裁に入ろうとする。
天音の表情が「やばい」と言っている。
二人は桜子を見て行った。
「すっこんでろ!このくそババア!」
桜子はどうしたらいいか悩んでるみたいだ。
結莉も早くお寿司食べたいみたいだし、母さんに言われていた。
「結、茉莉達を止められるのはあなただけ。もし茉莉達が暴れ出したら結が抑えるの。それが母さんからのお願い」
きっと学校の中で何を始めるか分からない。
学級崩壊なんて言葉が生易しいくらいに酷い状態になる。
そうなる前に俺が二人を抑えるの。
それは俺にしか出来ない事だから。
「わかった」
俺はそういう立場の人間らしい。
で、今まさに俺の出番なんだろう。
現に母さん達は俺を見ている。
期待に応えてあげなきゃいけない。
俺は二人を見る。
二人は時が止まったかのように硬直した。
二人に注げる。
「俺はお腹が空いた。これ以上無駄な時間が必要なら二人だけどこかに吹き飛ばしてもいいけどどうする?」
あとは自由に暴れてたらいい。
俺は寿司が食べたい。
余計な事するな。
そう言って力を解く。
二人とも大人しくしていた。
それを見ていた桜子が言う……。
「美希……この子が結?」
「そうなの。結には言ってあるからそんなに心配しないで」
ただし俺を怒らせないようにしてくれ。
俺が怒ったら誰にも止められない。
厳密に言えば茉奈が止められると思うけど。
「片桐先輩の言ってた意味が分かった。確かにこの子にスポーツは危険かもしれない」
何をさせてもでたらめな能力を行使するだろう。と、桜子が言っていた。
俺達がお寿司屋さんに行くと母さんが必ず言う事がある。
「時間は今から1時間半。スタート!」
母さんがそう言うと俺と比呂はどれから行くか考える。
俺は最初にラーメンとあさりの味噌汁から始まる。
比呂は同じくラーメンと茶碗蒸しを頼む。
これらは時間がかかるから。
注文が届くまでに回っているお皿の寿司を次々と食べていく。
「朔!お前も食わないとでかくならないぞ!」
「あ、ああそうだね」
そう言って結莉と同じように食べまくる茉莉を見ながら食べる。
「大地!お前いつもそのエビだけ食わないとかふざけるな!エビさんに申し訳ないと思わないのか?」
「だから取ってないんだけど」
「愛莉が言ってたぞ!親が好き嫌いすると子供が真似するって」
「それは絶対ないから気にする必要ないよ」
母さんが天音に言っていた。
その母さんの隣で父さんが端末を操作しながら寿司を食べるという荒業を披露していた。
大人は色々相談していたけど俺達は構わず食べる。
そして時間になると終わり。
店を出て家に帰る。
帰ったらリビングでじいじが呼ぶ。
するとじいじが俺にスマホを渡してくれた。
「あえてフィルタリングとかそう言うのはしていないから大体の事はネットで調べられる」
部屋には新しく買ってくれた学習机にPCを用意している。
当然インターネットも出来る。
だから分からないことがあったら、とりあえずは自分で調べてみなさい。
「ありがとう」
「冬夜さん、大丈夫ですか?変なサイト見たりしませんか?」
「愛莉。多分結は愛莉と同じだ。翼や天音と同じように教科書の中の事なんてすぐに理解するよ」
問題はその後だ。
疑問に思ったことを自分で調べる癖をつけた方がいい。
なんでも人に聞くなんて甘えた思考じゃ、常人離れした結では危険すぎる。
自分で調べて、自分で納得して、自分で判断できる子に育てないといけない。
じいじ達が話している間に部屋に戻る。
お昼寝はしたらいけないと言ってたから、今日もらった教科書をなんとなく読んでみた。
夕食の時間の頃には読み終わっていた。
だから夕食の時間にパパに聞いてみた。
「学校の授業って教科書に書いてる事を習うんだよね?」
「そうだよ?」
「全部読み終わって分かった事をまた聞くの?」
するとじいじが質問した。
「算数も読んだのかい?」
「うん」
「じゃあ、1+1は?」
「2」
「どうして?」
じいじに聞かれると気付いた。
理由は書いてなかった。
悩んでいる俺を見てじいじは言う。
「わかった?そう言うのを学ぶところなんだ」
「わかった!」
「冬夜さん、いいのですか?桜子また悩みますよ?」
「それが仕事だからしょうがないよ」
「本当に人を困らせるのが好きですね。冬夜さんは」
あーりがそう言っていた。
「もう小学生だからお風呂には一人で入れるかな?」
母さんが言うと「うん」と頷いて初めて一人でお風呂に入った。
体をしっかり拭いて服を着ると部屋に戻る。
初めて触るPCとスマホで何をしようかと悩んでいると菫がノックして入って来た。
「夜に男と女が二人っきりでいたらいけないって母さんが言ってたよ」
するとカミラが笑った。
「まだ小さい結には関係ないよ。本当は比呂と二人っきりがいいんだけどね」
ただ教科書読み終わって退屈だろうと思ったからさ。
そう言ってカミルも交えて4人で話をしていた。
いつもより遅くまで起きていたかったけど昼寝してないから眠くなると、カミル達に言って俺はベッドに入って眠りについた。
明日からの小学校生活が楽しみで仕方なかった。
後で天音から聞いた。
桜子はさらに難題が出来たと悩んでいるらしい。
「あれ?友諠どこ?」
私が目覚ますと隣で眠っていた友諠がいなかった。
あたりを見回すといつもと違う部屋。
私の家でもない。
どこだろう?
それより友諠どこ行ったんだろう?
「友諠どこー!?」
不安になって叫んでいた。
すると友諠がエプロンをつけて部屋に入って来た。
「何かあったの?」
「ここはどこ?」
私がそう言うと友諠はあきれていた。
「今日入学式だぞ?何寝ぼけてるんだよ」
「入学式……あっ」
そうだった。
私と友諠は今日から大学生になる。
大学生くらいならもう二人で同棲しても別におかしくないだろうと恵美さんが家を建ててくれた。
そう、家を建ててくれた。
「やっぱり大学の近くがいいの?」
恵美さんはそれだけ聞いてきた。
「どうせ車だからこの辺でいいよ」
思考が追い付かない私に替わって友諠が返事をした。
大学の側なら通学に便利だけど買い物をするのが余りにも不便すぎた。
私立大学ならともかく地元大ならこの辺で借りた方がいい。
少し混む場所があるけどそれは少しだけ早く出るとか裏ルートを使うとか方法はいくらでもある。
同棲するならバイトも探さないとと求人雑誌を買ってきたけどそれを見た恵美さんが友諠を叱っていた。
「友諠!あなた勉強もしなきゃいけない凜にバイトまでさせるつもりだったの!?」
二人の生活費くらい恵美さんが負担するから、たった4年間しかないのだから思うように最後の学生生活を楽しみなさい。
「ごめん、凜に説明するの忘れてた」
「いや、いいんだけどさ……でもやっぱりバイトくらいしないと」
遊んだり服を買ったりするお金どうするの?
それを聞いた友諠はくすっと笑っていた。
そして少し考えて自分の財布からいくらか抜いて私にくれた。
ついでにキャッシュカードとクレジットカードも。
クレジットカードは私名義になっている。
「友諠、私そんなつもりで友諠と付き合ってるわけじゃない」
本当に大好きだから一緒にいるだけだよ。
お金目当てなんかじゃない。
「知ってるよ。だから預けるんだよ」
「どうして?」
「一つずつ説明するね。そのキャッシュカードは僕名義だけど母さんが毎月振り込んでくれる」
一緒に暮らすのならお金の管理は彼女に任せた方がいいだろう?
デートの時にもめるのを嫌った彼氏が「じゃあ、俺の財布預けるからそこから出してよ」と言ったらしい。
同棲しているんだから私の方が買い物したり色々するだろう。
私が他の男性とデートしたりするわけがないと信じてる。
だから私に預ける。
「で、最近電子マネーとか多いからカードを預けた」
多分私のスマホにもお金がチャージされているはず。
それらを全く使えない時に現金が必要だからとりあえず渡しておく。
それを全部使いつくしてしまうのは学生ではちょっと豪遊しすぎだから許さない。
まあ、受け取った紙幣を見て確かにそれはないと思ったけど。
「って事は幸もそうなの?」
「多分そうじゃないかな」
やっぱり家で拓斗と恵美さんが話し合っていたらしい。
「バイトなんかしてる暇あったら幸に構ってあげて」
友諠の兄や姉も同じように生活してきたらしい。
で、大学の入学祝いにもらった家に引っ越してきたのが昨日。
なるほど……でも。
「なんで友諠がエプロンしてるの?」
「だって朝食作ってた」
「え!?」
私は慌ててダイニングに向かう。
鮭の切り身のいい匂いが漂っていた。
「ごめんなさい!明日から私作るから!」
これじゃただの居候じゃないか。
「気にしないでいいよ。昨日荷ほどきに時間かかってたから。それより早く準備した方がいい」
今日は入学式。
私も準備大変だろ?
俺も朝食終わったら急いで着替えるから。
そう言って私達は同棲生活初めての朝食をした。
その後私と友諠は慌てて着替えて準備をする。
「どっちの車で行く?」
「どっちも使わない」
「え?」
あのホテルの側に止まるバスがあるからそれで行こう。
「多分幸や拓斗もそのつもりでいるだろうから」
あ、そういう事か。
「分かった」
そして家を出てバスに乗って会場に行く。
拓斗達は先に来ていた。
そして幸がなぜか落ち込んでいる。
「何かあったのか?」
友諠が幸に聞いていた。
幸は私と違って先に起きていたらしい。
幸が朝ご飯を作るつもりだった。
幸は料理が出来ないとかそういう事はない。
この日の為に恵美さんからしっかり教えてもらったらしい。
だけど肝心な事を忘れていた。
石原家の朝はご飯食なんだそうだ。
しかし幸は知らなかった。
ご飯は前もって炊飯器にあるタイマーで炊いておくものだという事を。
そして起きてから慌てて炊いたけど間に合いそうにない。
それで来る途中にコンビニでおにぎりを買って済ませたそうだ。
家事を習っていても器具の使い方を知らなかった。
洗濯等も洗剤を入れすぎたり自分の下着をネットに入れる事を忘れてブラのワイヤーが曲がってしまったらしい。
改めて家事の難しさを体験して落ち込んでいるらしい。
拓斗は大体の事をこなすから幸のフォローをしたそうだ。
それが逆効果で気分が沈んでいる。
「これから覚えていけばいいだろ。その為の同棲なんだ」
いきなり結婚なんて無理って分かっただろ?
今までもお互いの事を知って来た。
拓斗もバイトしないで済むからちゃんとフォローしてやるからいつまでも悩むな。
「しかしやっぱり知ってる人少ないな」
拓斗が笑っていた。
入学式が終わると4人で昼食を取る。
それからSAPで遊んだりして夜はたった4人で祝う。
「今度先輩たちが歓迎会してくれるってさ」
友諠が言った。
社会人組も来るらしい。
だから今日は早めに帰ることにした。
家に帰るとお風呂に入る。
友諠と二人でくつろいで、明日も早いから早く寝る。
こうして新しい生活が始まった。
(2)
「あら~似合ってるわね」
愛莉がランドセルを背負った俺を見てそういった。
「好きな色を選んでいいよ」
母さんがそう言ったけどやっぱり黒が一番いい気がしたので黒を選んだ。
他にもカラフルなのがあったし比呂やカミラはカラフルなのを選んでいた。
洋服も入学式だからと母さんが選んでくれたものを着ている。
胸には名札をしている。
家を出る前にじいじが一枚だけ写真を撮りたいというので、撮ってもらった。
「じゃあ、ちょっと行ってくる」
母さんが愛莉に言う。
「しっかりね……それと……」
「分かってる。ちゃんと注意しておく」
母さんがそう言うと父さんと一緒に天音の家に向かう。
呼び鈴を押すと大地が出た。
「ご、ごめん。ちょっと中に入って待ってて」
「待ってて……ってもうそんなに時間ないよ?」
「そ、それがちょっと問題があって」
「……入学式の日に何をやらかしたの?天音は」
「天音じゃなくて茉莉がさ……」
どうしたんだろう?
「お、お前いつのまにこんな服買ってきたんだ!?」
「この前天音が好きなの選んでいいって言ったじゃん?」
その時に選んでこっそり入れておいたらしい。
「ま、茉莉急いで母さんが選んだ服に着替えろ!」
そんな天音の叫び声が聞こえてきた。
「こっちの方が可愛いじゃん」
「馬鹿!こんなキャラクターのどこが可愛いんだ!?お前のセンスは大地レベルなのか!?」
茉莉と天音が口論してる中結莉は一人で準備を済ませて部屋を出来てた。
そして僕を見つけると駆け寄ってくる。
「素敵な服だね」
えーとこんな時なんて言うんだっけ?
母さんも急かしている。
あ、思い出した。
「結莉も綺麗だよ。似合ってる」
「ありがとう♪」
機嫌が良さそうだから多分あっているんだろう。
その間も結莉達の部屋から大声が聞こえてくる。
「もう温かいんだから下にジャージ穿かなくてもいいだろ!」
「だって下半身冷やさない方がいいって天音言ってたじゃん」
「だったらミニスカートを止めろ!」
「長いと鬱陶しいんだよ」
「……ちょっと空達そこにいて。私天音の援護してくるわ」
時計を見ながら母さんが言った。
これ以上時間を使えない。
それから少ししてから茉莉達も出てきた。
あまり見た事のない茉莉の姿に見とれていた。
「なんだ?結莉より私の方が良くなったか?」
「うぅ……」
ぽかっ
結莉に小突かれた。
それから小学校に向かうと菫達と会う。
菫もお嬢様な感じの服を着ていた。
でも冬莉がやってた。
ウェディングドレスを着て暴れる女性。
多分そんな感じだろう。
「しかし美希の方が説得早いとはな……」
「大地で慣れてるから」
「大地もすごかったのか?」
「そりゃもう凄かったよ」
「何かあったのか?」
母さんと天音が話していると祈が聞いていた。
「……絶対ぶっ壊れたセンスを持ってるのは海翔だと思ったら、茉莉だったよ」
この先どうにかしないと大惨事だ。
男性はスーツを着るようになるからいい。
だけど女性はスーツの時もあるけど大体が普段着に近い。
今の茉莉のセンスで服を選ばせていたら大惨事になる。
恵美さんだって見に来る。
その時にあんな格好で出てこられたらヤバイ。
「そんなにすごいのか?」
祈が聞いていた。
「そうだな……こんな春にミニスカート穿いて……下にジャージだったよ」
「……それはまずいな」
祈も驚いたようだ。
天音の怒りは大地に向かう。
「大地!お前も他人事だと思うなよ!あんな格好でパーティに行かせたらやばいことくらいわかるだろ!」
あのセンスは絶対にお前譲りだ!!
「あ、天音が選んでやればいいだろ?」
「今日だって私が選んでおいたのに勝手にあれを着てきたんだよ!」
中学生くらいになったら自分で服を選びだす。
下着だってそうだ。
茉莉はアニメのキャラクターがプリントされたパンツ穿いて男と寝る勢いだぞ!
別に下着ならいいんじゃないだろうか?
何か問題あるのかな?
「結は気にしなくていいんだよ」
結莉が言うから気にしないことにした。
「随分お嬢様な服着てるじゃねーか、分厚い化粧してるババアみたいだな」
「お前こそ寝小便ばかり垂れるから服に気を使ってないみたいじゃないか?」
「このボケナス。ふざけたこと言ってると小学校に行く前に病院に送り付けるぞ!」
「上等だおもらし姫。小学校生活が始まる前に茉莉との決着つけてやらぁ!」
二人は本当に喧嘩が好きだな。
そんなに面白いのだろうか?
僕はあまりしない。
する前に秋久達が始末してしまう。
結莉が「結は何もしなくていい。だって一番強いのは結だから。弱い奴いたぶっても面白くないでしょ?」と言っていたから。
確かに一々暴れるのも面倒だ。
そんな事を考えながら暴れ出そうとする茉莉と菫を親が止めていた。
「お、お願いだから今日は大人しくしてておくれ」
「す、菫。せっかくお洒落したのに汚れたら元も子もないよ」
「茉莉、やめてくれ。入学式に乱闘なんて愛莉に知れたらシャレにならない」
何とか宥めている親を見ていると茉奈が肩を叩いた。
「おはよう、結。服似合ってるよ」
「茉奈も綺麗だよ」
「本当に?」
茉奈も水奈に選んでもらったらしい。
しかし茉奈と水奈の好みはかなり違いがある。
それで不安だったらしい。
分かりやすく言うと足とか露出が多くて恥ずかしかったそうだ。
「気にしなくていいんじゃないかな。綺麗だと俺は思うぞ」
「ありがとう。あそこに私達の名前貼り出されてる」
茉奈が指差す方向をみると、大きな掲示板があってそこにクラスと名前が書かれた紙が貼られていた。
俺達はみんな同じクラスだった。
「教室に行こう?」
茉奈が言うので母さん達と一緒に教室に向かう。
席が決められているようだ。
俺と茉奈の席は近かった。
結莉や茉莉、秋久は少し離れていた。
だけど皆近くに集まっていた。
当然その席だった子が「どけよ」と言う。
「お前の席は今からあっちに変わった。さっさと行け」
結莉が言うと天音達が慌てているのを感じた。
男の手首には黒いリストバンドがしてある。
天音の言ってたのはこれか。
窓から投げ捨てろと天音に言われていたけど、今日は大人しくしてないといけないらしいから様子を見てた。
「10秒だけやる。殺されたくなかったらとっとあっちに行け」
「ふざけるな、誰に物言ってんだてめぇ」
そう言うと結莉は立ち上がると男の手を掴む。
「入学式に面倒な真似させやがって。さっさとあっちいけばいいんだよ!」
そう言って結莉は男子を投げ飛ばした。
本来の結莉の席の机にたたきつけられる男子。
するとクラスの何人かの男子が立ち上がった。
「お前らFGに喧嘩売ってるのか!?」
確かそれ遺書みたいなもんだって言ってたな。
「FG?そんなに死にたいならまとめて始末してやらぁ!」
「茉莉の言うとおりだ!お前らの席は立った今から棺桶の中だ!」
茉莉と菫に火をつけたらしい。
母さん達を見ると少し困ってる。
面倒だけど仕方ない。
僕が立ち上がると結莉が投げつけた男子の所に向かった。
「結莉は女の子で君は男の子。女の子に優しくしてあげないとだめって教わらなかったのか?」
「こんな時だけ女を使うなんて卑怯だろ!」
「確かにお前のいう事も一理あるな」
勝ち誇った顔の男子の目の前で机を真っ二つに叩き割った。
「じゃあ、言い方を変えるよ。大人しく言う事を聞かないとお前をこの机みたいにしてやるぞ?」
さすがに男子も怯えたらしい。
大人しく椅子に座る。
茉莉にお願いして机を元に戻してもらった。
やがて担任が入ってくると結莉達の席が違うのに気づいたから。
「石原さん、席が違うんじゃないの?」
「お、俺がここがいいってお願いしたんです」
結莉が睨みつけているのに気づいたんだろう。
男子がそう言った。
担任も何か察したらしい。
「あまりそういうわがままを言ったらだめだよ」
そう言って担任が自己紹介を始めた。
水島桜子というらしい。
……桜子?
どっかで聞いたな。
ああ、母さん達が言ってた先生か。
この後の説明を聞いて体育館で入学式を受ける。
すると校長先生の話が始まる。
当然意味が分からないし、無駄に長い。
そんなことしてたらまた……菫達が爆睡していた。
いびきを聞いた校長が注意する。
「うるせぇぞはげ!一々気にするからヅラなんだよ!」
「子供の安眠妨害するならこの場でぶっ殺すぞ!」
二人が怒り出す。
世間では逆切れというらしいけど。
入学式が終わって教室で桜子の話を聞くと今日は終わりになった。
母さん達と帰る時に桜子と話をしていた。
「……まさか初日からこうなるとは思わなかった」
「ま、まあ多分何とかなるから気にするな」
桜子に迷惑かけるなと言い聞かせてるから。
桜子と天音が話をしている。
茉莉は「はやく寿司!!」と天音の手を引っ張っていた。
「茉莉は頭の中まで胃袋なのか?」
「てめぇが食っても胸にしかいかないから、頭は成長止まったままだろうな?ホルスタイン」
「まな板よりはましだ」
「だったらまな板のうちにぶっ殺してやる!」
「やれるもんならやってみろ!」
「二人とも、学校は暴れるところじゃないから大人しくしていようね」
桜子が仲裁に入ろうとする。
天音の表情が「やばい」と言っている。
二人は桜子を見て行った。
「すっこんでろ!このくそババア!」
桜子はどうしたらいいか悩んでるみたいだ。
結莉も早くお寿司食べたいみたいだし、母さんに言われていた。
「結、茉莉達を止められるのはあなただけ。もし茉莉達が暴れ出したら結が抑えるの。それが母さんからのお願い」
きっと学校の中で何を始めるか分からない。
学級崩壊なんて言葉が生易しいくらいに酷い状態になる。
そうなる前に俺が二人を抑えるの。
それは俺にしか出来ない事だから。
「わかった」
俺はそういう立場の人間らしい。
で、今まさに俺の出番なんだろう。
現に母さん達は俺を見ている。
期待に応えてあげなきゃいけない。
俺は二人を見る。
二人は時が止まったかのように硬直した。
二人に注げる。
「俺はお腹が空いた。これ以上無駄な時間が必要なら二人だけどこかに吹き飛ばしてもいいけどどうする?」
あとは自由に暴れてたらいい。
俺は寿司が食べたい。
余計な事するな。
そう言って力を解く。
二人とも大人しくしていた。
それを見ていた桜子が言う……。
「美希……この子が結?」
「そうなの。結には言ってあるからそんなに心配しないで」
ただし俺を怒らせないようにしてくれ。
俺が怒ったら誰にも止められない。
厳密に言えば茉奈が止められると思うけど。
「片桐先輩の言ってた意味が分かった。確かにこの子にスポーツは危険かもしれない」
何をさせてもでたらめな能力を行使するだろう。と、桜子が言っていた。
俺達がお寿司屋さんに行くと母さんが必ず言う事がある。
「時間は今から1時間半。スタート!」
母さんがそう言うと俺と比呂はどれから行くか考える。
俺は最初にラーメンとあさりの味噌汁から始まる。
比呂は同じくラーメンと茶碗蒸しを頼む。
これらは時間がかかるから。
注文が届くまでに回っているお皿の寿司を次々と食べていく。
「朔!お前も食わないとでかくならないぞ!」
「あ、ああそうだね」
そう言って結莉と同じように食べまくる茉莉を見ながら食べる。
「大地!お前いつもそのエビだけ食わないとかふざけるな!エビさんに申し訳ないと思わないのか?」
「だから取ってないんだけど」
「愛莉が言ってたぞ!親が好き嫌いすると子供が真似するって」
「それは絶対ないから気にする必要ないよ」
母さんが天音に言っていた。
その母さんの隣で父さんが端末を操作しながら寿司を食べるという荒業を披露していた。
大人は色々相談していたけど俺達は構わず食べる。
そして時間になると終わり。
店を出て家に帰る。
帰ったらリビングでじいじが呼ぶ。
するとじいじが俺にスマホを渡してくれた。
「あえてフィルタリングとかそう言うのはしていないから大体の事はネットで調べられる」
部屋には新しく買ってくれた学習机にPCを用意している。
当然インターネットも出来る。
だから分からないことがあったら、とりあえずは自分で調べてみなさい。
「ありがとう」
「冬夜さん、大丈夫ですか?変なサイト見たりしませんか?」
「愛莉。多分結は愛莉と同じだ。翼や天音と同じように教科書の中の事なんてすぐに理解するよ」
問題はその後だ。
疑問に思ったことを自分で調べる癖をつけた方がいい。
なんでも人に聞くなんて甘えた思考じゃ、常人離れした結では危険すぎる。
自分で調べて、自分で納得して、自分で判断できる子に育てないといけない。
じいじ達が話している間に部屋に戻る。
お昼寝はしたらいけないと言ってたから、今日もらった教科書をなんとなく読んでみた。
夕食の時間の頃には読み終わっていた。
だから夕食の時間にパパに聞いてみた。
「学校の授業って教科書に書いてる事を習うんだよね?」
「そうだよ?」
「全部読み終わって分かった事をまた聞くの?」
するとじいじが質問した。
「算数も読んだのかい?」
「うん」
「じゃあ、1+1は?」
「2」
「どうして?」
じいじに聞かれると気付いた。
理由は書いてなかった。
悩んでいる俺を見てじいじは言う。
「わかった?そう言うのを学ぶところなんだ」
「わかった!」
「冬夜さん、いいのですか?桜子また悩みますよ?」
「それが仕事だからしょうがないよ」
「本当に人を困らせるのが好きですね。冬夜さんは」
あーりがそう言っていた。
「もう小学生だからお風呂には一人で入れるかな?」
母さんが言うと「うん」と頷いて初めて一人でお風呂に入った。
体をしっかり拭いて服を着ると部屋に戻る。
初めて触るPCとスマホで何をしようかと悩んでいると菫がノックして入って来た。
「夜に男と女が二人っきりでいたらいけないって母さんが言ってたよ」
するとカミラが笑った。
「まだ小さい結には関係ないよ。本当は比呂と二人っきりがいいんだけどね」
ただ教科書読み終わって退屈だろうと思ったからさ。
そう言ってカミルも交えて4人で話をしていた。
いつもより遅くまで起きていたかったけど昼寝してないから眠くなると、カミル達に言って俺はベッドに入って眠りについた。
明日からの小学校生活が楽しみで仕方なかった。
後で天音から聞いた。
桜子はさらに難題が出来たと悩んでいるらしい。
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