姉妹チート

和希

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(1)

「結、はぐれないようにしっかり手を繋いでなさい」
「うん」

 そう言って母さんと手を繋いで歩いていた。
 人間というのは不思議だ。
 ただ、葉っぱの色が変わるだけでこんなに人が集まる。
 そして人が多くて葉っぱが見れないというよくわからない状況に直面していた。
 紅葉っていうのにどうしてだろう?
 ここにある木の葉っぱは殆どが黄色い。
 なんでだろう?
 それよりも気になるのはあれは美味しいのだろうか?

「結、葉っぱは食べたら駄目だよ」

 茉奈が教えてくれた。
 そっか、じゃあどうでもいいや。
 しかし人間というのはすごい。
 この岩を一人で手で掘ったらしい。
 あの話は実話だったんだな。
 よほど暇人だったんだろう。
 俺だったら一瞬で済ます作業を何十年もかけたそうだ。
 あれ?
 でも父さんとテレビを見てた時にやっていた。
 もみじ饅頭というお菓子があるらしい。
 お菓子になるのにどうして食べられないのだろう?
 やっぱり茉奈が答えてくれた。

「あれは形がもみじってだけでもみじが入ってるわけじゃないんだよ」
「……じゃあ、もみじおろしは?」
「あれは色がもみじにみえるだけ。実際は大根おろしに唐辛子とニンジンをすりおろしたものを混ぜてるだけなの」

 ふぐやなべ物の時につけて食べると美味しいらしい。
 ふぐかぁ……。
 ふぐは高いって聞いた。
 分厚いステーキよりも高いそうだ。
 どんな味なのか気になるな。
 そんな僕を見ていた恵美が言った。

「そうね、結が小学生になったらお祝いに連れて行ってあげる」
「本当か!?」

 茉莉と菫、あとなぜか天音も食いついていた。

「あの、結は私達の子供だからそこまでしなくても」

 母さんが言うと恵美はにこりと笑って返す。

「孫にそのくらいさせてちょうだい」

 それに冬吾やパパ達の様に美味しい物を知らないままというわけにはいかない。
 冬吾は帰国後はいろんなものを食べさせるそうだ。
 一番おいしいのは久留米のとんこつラーメンという価値観を変えないといけないらしい。

「恵美、ごめんね」
「いいのよ。さすがにふぐを食べて”味がしないよ”なんて大人になって言われても困るから」

 しかし天音や翼がいるのに大丈夫なのだろうか?

「いざとなったら店ごと貸し切るから大丈夫」

 恵美がいうから大丈夫なんだろう。

「ふぐか……確かに最近食ってなかったな」

 天音の方が楽しみにしているらしい。

「そういえば冬夜さんの会社は歓迎会兼花見はあそこなの?」

 愛莉が聞いていた。

「そうだよ。花見に行くとゴミの始末や誰かが飲めないとかそういう問題がでるからね」
「パパの会社って花見どこに行くんだ?」

 天音は知らないらしい。
 愛莉は知っていた。

「ふぐ料理の店」
「ふざけるな!私達はしょぼい弁当で我慢してるのにずるいぞ!」

 天音が怒り出す。

「大地、花見だから外って我慢していたけど構うことない。天のホテル貸し切ってごちそう食わせろ!」
「それもそうね。人数的にあの公園はちょっと狭いしホテルでいいかもしれないわね」

 天音が言うと恵美も賛成していた。

「天音には花を見て感じる情緒というのを結莉達に教えるつもりはないのですか?」
「花じゃ腹は膨れないだろうが!」
「結莉達は女の子ですよ!」
「こんな時だけ女の子だからとか言い訳聞きたくねーぞ!」

 天音がそう言うと愛莉はにやっと笑って琴音を見ていた。

「パパ、綺麗だね」
「そうだな」
「あの木はなんていうの?」
「へ?」
「知らないの?」

 遊が困っていた。
 すると母さんが琴音に説明する。

「美希、ごめんね。助かった」
「母親も色々勉強しておかないとこういう時に困るみたいだよ」

 なずなが言うと母さんがそう言って笑っていた。

「……で、琴音も茉奈も結莉達と同い年なのにどうしてこんなに違うのか天音が説明しなさい」
「す、すいません。僕も色々試してはいるんですけど」

 大地が愛莉に謝っていた。
 大地は人形やぬいぐるみ、化粧道具のおもちゃなど色々買ってきて渡すそうだ。
 しかし結莉達はそれをバラバラにするのが趣味らしい。
 飛散した綿なんかを掃除するのが大変だからやめてくれてと天音が言ったしい。

「ほ、ほら。そういう趣味じゃない女の子がいてもいいだろ?」

 天音が笑ってごまかしている。

「天音、腹減った」

 茉莉が言い出した。
 確かにお昼頃みたいだ。
 すると天音が困っている。

「どうしたの?レストランなんて一か所しかないのだから悩む必要ないでしょ?」

 愛莉が言うけど天音は違う交渉を茉莉にしていた。

「地元に帰った方が美味い物食えるから我慢しないか?」
「昼食後に地元で食べたらいいじゃん」
「い、いや。しょぼいもん食ってもしょうがないだろ……」
「料理は平等に何でも食べろって天音が言ってたよ?」

 手こずる天音をママと愛莉は笑いながら見ていた。
 
「天音、諦めな。これ以上お腹空かせると結が怒り出して大変なことになる」
 
 翼がそう言うとしぶしぶとレストランに向かった。

(2)

「ざるそば5人前!」
「へえ、結莉じゃその程度かよ。私は10人前くれ!」
「なんか面白そうじゃないか。私も混ぜろ!私は20人前だ!」
「菫が私に勝とうなんざ100年早い。もう20人前追加!」
「あなた達いい加減にしなさい!」
「菫も無茶したらダメだ」

 俺はかつ丼とうどんのセットにしていた。
 父さんがそれだけしか食べないから不思議に思って聞いてみた。

「理由はいくつかあるんだ」

 そう言って父さんが説明する。
 こういう所のお店は値段はやけに高い癖に味は大したことない。
 だからそんな料理にお金を払ってもしょうがない。
 だから控えておく。
 当然お腹がすくけど俺も見ているはずだ。
 国道沿いにコンビニなんていくらでもある。
 そこでおにぎりとか買った方が安上がりだ。
 それにいい子にしてたら帰ってから焼肉に連れて行ってくれるらしい。
 それで納得した。
 海翔は俺の真似をするのが好きらしい。
 同じものを頼んでいた。

「蕎麦なら何杯でもいけるってなんかの漫画で見たぞ!」
「あの漫画家は策者以上に頭がおかしいんだ。真に受けたら駄目だ」
「その漫画だけじゃなくてもテレビでやってたよ!」
「それはこんなざるに乗ってなかっただろ?あれは何杯でも食えるように少なめにしてるんだ」
「それってただの詐欺じゃねーか!」

 そんな奮闘を天音と結莉と茉莉は繰り広げていた。
 結局菫は蕎麦を頼んであと、善明が取り分けた親子丼を食べていた。
 愛莉達は天音が困っている姿を見て笑っている。

「まさか自分に似た娘に食事で困らせられるとは思っていなかっただろうね」

 望がそう言うとじいじ達もうなずいていた。
 地元の弁当のヨタ盛りを平気で食べる結莉達は絶対に譲らないみたいだ。

「じゃあ、頼んでもし残したら今度からは私が注文を決めるって条件はどうだ?」
「上等だ!!」

 茉莉はそう言ってさっきの注文を頼む。
 結莉は?
 こっちを見ていたらしい。

「……私うどんだけでいい」
「え?」

 天音が驚いていた。

「どうしたんだ?結莉」
「彼氏より大食いってどうなのかなって思って」

 結莉でも遠慮することがあるらしい。

「結莉は偉いのね」

 愛莉が結莉の頭を撫でていた。

「本当に天音の子なのかな?」

 翼がそう言って揶揄っている。

「待て翼。むしろパパの孫だから茉莉が本来の姿だろうが!」

 その証拠に俺は父さんの様に食欲が旺盛になった。
 その父さんだってじいじを見て育ったからこうなった。
 でもじいじは困った癖しかなかった。
 それが徐々に愛莉が注意して喧嘩して今のじいじがある。

「それって私と知り合う前の話?」

 恵美が言うと愛莉は頷いた。
 まだ中学生の頃はじいじは自分の事を卑下していたらしい。
 何でもこなす愛莉に自分はつり合いが取れていない。
 そんな風に自分のことを嫌っていたらしい。
 だけど神奈が故郷に戻ってきて徐々に変わりだした。
 神奈の方がじいじにはちょうどいい。
 そんな不安が愛莉にはあったらしい。
 だけどじいじは愛莉の考えてる事とは全く違うことを考えていた。
 それを教えてくれた時愛莉は嬉しかったらしい。
 それから少しずつ自分に自信をもっていったそうだ。

「食べ物だけは全然変わらないけど」

 あと怒ると何をするかわからないのは片桐家の男子の特徴だそうだ。
 だけど滅多に怒ることはない。
 せいぜい自分の仲間が傷ついた時くらいだ。

「だけどさ、愛莉さん。それもちょっと違うぜ」
「え?」

 誠が言うと愛莉が返した。
 誠が話す。

「冬夜の奴は昔っからやる気が無くて弱気だったけど愛莉さんの存在が少しずつ冬夜を変えていたんだ」

 思い出してくれ。
 神奈が戻ってきてから、そんなに経ってない時に「愛莉は僕の彼女だ」と言ったろ?
 それが小学生の時から出来ていたらひょっとしたらじいじの奥さんは神奈だったかもしれない。
 だけど神奈にはそれが出来なかった。
 だから愛莉さんと一緒にいる。
 結論は最初から決まっていたんだ。
 神奈がもう少しストレートにじいじに気持ちを伝えていたら現在は変わっていたかもしれない。
 だけど神奈にはできなかった。
 愛莉さんの方が少しだけ勇気を出しただけだと思うかもしれない。
 でも、じいじの中ではもう決まっていたんだ。
 じいじが好きなのは愛莉さんだって。
 そうでなければバレンタインの話につながらない。

「そうだったんですか?」
「まあね。歳もちょうど空や天音達が恋人を見つけてきたころだったろ?」
「私には端から勝ち目がなかったのか……」

 神奈が落ち込んでいた。

「だ、だから俺がいるんじゃないか?」
「父さんそれ全然フォローになってないぞ」

 水奈が言うとみんな笑った。

「なんでだよ?俺だって昔はモテたんだぞ?」
「知ってるよ。だから不思議なんだ。なんで誠は私の前だと昔からああだったんだ?」
「そ、そりゃ神奈の前でくらいありのままの自分を出そうと」
「お前はそれがひどすぎるんだ!」
「そうだよ!パパはママの前でだけでなくて私達にだってそうだったじゃない!」

 歩美が怒っている。
 歩美に「制服売ってくれ!新しいの買ってやるから!」と言ったらしい。

「それは初耳だぞ……誠」

 神奈が誠を睨みつける。

「そういえばこんな事件もあったわね」

 そう言って次々と誠の過去を暴露していく大人たち。
 だけどそんな中亜依は落ち込んでいる。
 それに気づいた愛莉が声をかけると亜衣が言った。

「愛莉はともかく神奈だって可能性があったけどダメだったってだけでしょ?」
「そのダメだった結果が問題なんだが?」
「じゃあ、私はもっと最悪じゃない。最初に選んだのが瑛大だよ?」
「そうだよ!パパ最低!!」

 千帆達が怒っている。

「瑛大何やらかしたんだ?」
「……あれかな?」

 瑛大は何か心当たりがあるそうだ。
 つい最近の事らしい。

「ちょっと2,3日出張に行ってくるから千帆達だけで大丈夫かな?」

 むしろ瑛大がいる方が危険だと思っていたからいいけど、亜依は何か引っかかる事があったらしい。
 だから瑛大の勤めてる会社を経営している恵美に確認してもらった。
 そんなに急な転勤や出張があるような会社じゃないし瑛大もそんな仕事をしていない。
 ただわかったのはその日に有給を取っていた。
 瑛大が不倫をするわけがない。
 そんな事じいじたちの渡辺班の中でしたら大惨事が待っている。
 そこで亜依は思いついた。
 穂乃果や神奈にも確認する。
 誠は殆ど毎日が休日みたいなもんだから当然その日の予定は開けていた。
 隆司も公務員だから有給が取れるから取っていた。
 そして天の父さんの翔太も同様だった。
 その日は何もない週末。
 何があるんだ?
 答えはすぐにわかった。
 恵美の事業の中に大地が経営している芸能プロダクションのUSEがある。
 当然芸能関係の情報は殆ど把握している。
 あるグループのライブが東京のコンサート会場で行われる日だった。
 そのアイドルとメタルの融合を謳った3人組のユニット。
 スカートは穿いているけど、黒いストッキングに下にはちゃんとスパッツを穿いている。
 ほぼ確定だった。
 奥さんは旦那さんを問い詰める。
 如月グループの総裁の割には割とあっさりと口を割る翔太。
 理由はそれが悪いことだと認識してないから。

「翔太!お前が原因だったのか!?少しは考えろ!!」
「少し考えるのはお前だ馬鹿!!50超えたおっさんの趣味じゃないぞ!」
「お義父さん、少しは孫の事も考えてください」

 なずなが訴える。
 なずなだって今は琴音だけじゃない。
 進と朱鳥。
 双子らしい。
 進が男の子で朱鳥が女の子。
 今は遊が抱きかかえてご飯を食べている。

「遊でさえ真面目に育児をしてるのにお前は何をしているんだ!?」
「世話しようにも亜依が千帆達の部屋に鍵かけて入れてもらえないんだ!」
「年頃の娘の部屋に入って何するつもりだ!?」
「そんなの誠に聞けばわかるだろ!」
「ば、馬鹿瑛大。余計な事言うな!」
「誠……お前また佳織に何かしたな?」
「お、親なら普通だろ?」
「だったら何をしたか今すぐ吐け!」
「あれ、やっぱり歩美の言うとおりだったんだ」

 佳織がそう言った。

「佳織、この馬鹿何やったんだ?」

 神奈が聞くと佳織は素直に答えた。
 部屋にタブレットを持ってやってきたらしい。
 女の子だから下着がいっぱいあった方がいいだろう。
 買ってあげるからどんなのがいいか教えてごらん?
 そう言って通販サイトを佳織に見せる。
 別にまだ恥ずかしいとかそういう年頃ではなかったらしいけど、何か気持ち悪いものを感じたらしい。
 すると同室だった歩美が怒り出す。

「この変態!」
「ってことは……瑛大お前まさか」
「ほ、ほら。亜依も言ってたじゃないか。千帆達がカップのサイズ上がったって」

 だからいいのを買ってやろうと思ったらしい。
 当然亜依さんは怒り出す。
 しかしなぜか天音も怒り出した。

「ふざけるな!なんでお前らが成長して私はちっさいままなんだ!?」
「天音は子供の前で馬鹿な事を言うのはやめなさい!」

 愛莉が天音を叱っている。
 しかし火種はそれだけで収まらない。

「ちょっと水奈!パパは私達の下着なんて全く興味示さないよ!私達に興味ないの!?」
「ま、まだ優奈たちは子供だからだろ?」
「じゃあ、大人になったら寝取っていいんだね!?」
「ば、馬鹿。パパは母さんのものだから他を当たれ」

 狼狽えている水奈なんて珍しいな。
 でも一緒に寝て何が楽しいんだろう?
 寝てるだけなのに……。

 ぽかっ

「結は気にしなくていいんだよ」

 茉奈が笑っているから気にしない方がいいんだろう。

「水奈も天音もいい加減にして!結に変な入れ知恵しないで」

 と、母さんが言うと菫が反論する。

「別にいいじゃん。オスとメスが合体するなんて普通の事だろ?」
「菫の言うとおりだ。茉奈も今から教えておいた方がいいんじゃないのか?」

 どうせ小学生になったらするんだろ?
 何をするんだろう?

「ゆ、結はそんな変な趣味もってないから」

 茉奈が顔を真っ赤にしている。
 変な趣味ってなんだ?

「ま、まさか朔のやつ……」

 天音が朔を見ている。

「あ、天音大丈夫だ。そんな真似したら母さんに殺される」

 そこら辺はしっかり指導するから安心してくれ。

「天音は他人の子供を心配する前に茉莉の心配をしなさい!」

 愛莉が天音を叱っていた。
 なんかよくわからない話になってきたから退屈になった。
 早く帰っておにぎりや焼肉食べたいな。
 どうしておにぎりなのか?
 日本人だからなのかな?

(3)

「いや、今日は参ったね」
「本当ですね」

 焼肉を食べて家に帰ると皆一人ずつお風呂に入る。
 すると父さんと母さんが二人で何か相談をしている。
 すると母さんが言った。

「たまには母さんとお風呂に入ろうか?」

 え?

「でも母さんは女の裸は見たらいけないっていつも言ってたよ?」
「……結莉と茉莉はね。大地がお風呂に入れてるの」

 自分の子供とくらい入るよ。

「その理屈なら私達もパパと入っていい?」
「いいけど、落ち込んでも知りませんよ」
「なんで落ち込むの?」
「お父さんは自分の娘を変な目で見るような変態じゃないから」
「そうなんだ」

 カミラの知っている大人はみんなそういうのに興味を持っていたらしい。
 すると比呂が言い出した。
 
「そういうことだったら、カミラ。俺と一緒に入ろうぜ」
「それは兄として僕が容認できないね」

 そんな趣味を持った男と妹が風呂に入るのは認められないとカミルがニコッと笑って比呂に言う。

「馬鹿な事言ってないでさっさと入りなさい」

 愛莉が言うと皆交互に入る。
 父さんも今日は比呂とカミルと一緒に入ってた。
 そして俺の番がくると母さんとお風呂に入る。
 母さんの裸は初めて見る。
 とても綺麗だった。
 しかし不思議なことにそれ以上の何かを感じる事が出来ない。
 俺がおかしいのだろうか?
 そんな僕の髪を洗いながらママが言う。

「特に何もないでしょ?」
「うん」
「それでいいの」

 そういう興味を示すのは茉奈にだけでいい。とママが言った。
 でも茉奈だって多分一緒だ。
 まだ茉奈だって子供なんだから。
 まだ女性らしい体つきとは程遠い。
 だから気にならないのは俺がおかしいんじゃなくて、むしろ正常なんだって母さんが言う。

「じゃあ、どうして今日一緒にお風呂に?」
「それはね、今日の話を聞いて結も女性の体が気になったんじゃないの?」

 まだ幼稚園児。
 知るには早すぎる情報が飛び交っていた。
 そんな疑問を抱かせたまま成長していったら大変だ。
 母さん達が教えなくても結莉達が教えるかもしれない。
 茉莉達から余計な事を聞くかもしれない。
 だから一度にまとめて俺の疑問を晴らす方法を考えた。
 それが母さんと一緒にお風呂に入る事。
 自分の体と何が違うか納得させてやればいい。
 後は……

「今からでもちゃんと気を付けておいて損はしない事がある」
「それは何?」
「どんな時でも茉奈の体調を気づかってやりなさい」

 女性は男性と違って複雑な体のつくりになっている。
 それは幼稚園児でも知っておいていい。
 赤ちゃんを産むのは女性だからその為の仕組みが体の中にある。
 それが男と女の最大の違い。

「今はそれだけ知っていればいい。結莉や茉莉が不思議な事を言い出しても女性だからしょうがないと思っておけばいい」

 それ以上の事が必要になったら時期を見て母さんが話すと言った。
 あまり難しく考えるとのぼせそうになるので風呂を出た。
 風呂を出るとじいじやパパがリビングでテレビを見ていた。

「母さんの体はどうだった?」
「綺麗だった」
「へぇ……」

 じいじがそういうとぽかっと愛莉に叩かれていた。

「空の嫁をを変な目で見てはいけません」

 愛莉がそういうとじいじは笑った。

「んじゃ、たまには僕も愛莉の体を見ておくかな」
「本当に困った旦那様ですね」

 そのやりとりを聞いて不思議に思った。

「父さんは母さんとお風呂に入ったりしないの?」
「結が生まれる前は入ってたかな」
「今は?」
「それは内緒」

 いつか話をしてあげる。
 だから今は気にする必要はないよ。
 父さんがそう言うから僕は部屋に戻ってベッドに入る。
 今年最後の月が始まる。
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