姉妹チート

和希

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地獄の季節

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(1)

 それはある日の深夜だった。
 何かおかしい。
 室温が妙に高い。
 焦げ臭いにおいに気づいて目が覚めた。
 まさか?
 とっさに窓から外を見る。
 真っ赤に燃える炎と黒煙。
 慌てて翼を起こす。

「翼!火事だ!!」

 僕がそう言うと翼もすぐに目を覚ます。

「とりあえず上着とあと必要なものを準備して!」

 翼にそう言うと陽葵達を起こす。
 ベランダから見える状況を見てパニックを起こす。
 秋久は落ち着いていた。
 
「善明、準備できた!」
「皆靴履いて!」
 
 そう言いながら僕も靴を履くとドアを開けようとする。
 
「ちょっとまって、こういうのって外の空気が入ってきたらまずいんじゃなかった?」

 翼が聞くと、僕はにこりと笑って返す。

「バックドラフトを起こすほど一酸化炭素が充満していたら僕達はとっくに意識を失ってるよ」

 ドアを直接触れるのは危険だと判断した僕は陽葵に言ってドアを吹き飛ばしてもらう。
 外に広がるのは燃え盛る炎。
 炎の中に道を作りながら僕たちは逃げ出した。
 外から見ると炎上するアパート。
 秋久は周りを見ていた。
 原因が放火だとしたら大体犯人はその様子を見てるらしい。
 秋久が気づくと僕に知らせる。
 バレたのを気づいた犯人が逃げ出そうとするが、間が悪かった。
 火災が起きて時間がたっている。
 当然警察が駆けつけていた。

「善明、こいつがやったの?」
「分からないけど……」

 僕達が見つけたら逃げ出したというのが証拠だろう。

「悪いけどお前家に帰れると思うなよ」

 純也がその男に言っている。

「善明!無事か!?」

 空達も騒ぎを聞きつけたらしい。
 
「私たちの家が……」

 陽葵達が泣いているのを翼があやしていると父さんたちも駆けつけた。

「無事でよかった」
「無事じゃないけどね」

 その後も次々と駆け付ける仲間たち。
 結局アパートは全焼してしまった。
 僕は事情聴取で純也と警察署に連行される。
 翼たちは実家で一夜を過ごした。
 実家に一枚のメッセージが送られていたらしい。

「あまり大人を舐めるなよ」

 ロシア語だった。
 自分から名乗り出るとはよほどの自信家なのだろう。
 取り調べが住むと家に帰る。

「菫たちは少し狭いけどしばらくは冬莉の部屋を使いなさい」
 
 僕達と秋久はもともとの部屋を使うといい。
 どうせもう少ししたら冬莉と冬吾が家を出る。
 それまでの我慢だと父さんが言っていた。

「善明、今夜時間空けておいてくれ」

 光太から電話があった。

「どうしたの?」
「ニュースでやってた。エリツィンの恋人の仕業なんだろ?対策を練ろう」
「わかった」

 そう言いながら自分を落ち着かせる。
 ふざけた真似をしてくれるよ……と僕が怒っていたらダメだ。
 冷静に判断できなくなってしまう。
 そうでなくても母さん達を落ち着かせなくてはならない。
 怒るのは菫や陽葵……それと秋久に翼や天音に任せたらいい。
 問題はこの報復をどうするか?
 よほどの命知らずが相手らしい。
 だったら相応の仕返しをしてやらないとね。
 もっとも僕達が手を下すまでもないかもしれない。
 酒井家に喧嘩を売ったんだ。
 絶対に無事じゃ済まさないだろう。

「空、ちょっと来なさい」

 愛莉さんが空を呼んでいる。
 僕も翼とリビングに行った。
 冬夜さんと愛莉さんが座っていた。

「……止めても無駄だよ。絶対にただじゃすまさない」

 翼が言う。

「逆だよ。生温い仕返しじゃさらに犠牲者が出る」

 冬夜さんは最近起きた事件を純也から聞いていた。
 いつも冬夜さんが言ってること。
 
 僕達に手を出したら割に合わない。

 そんな一撃を下してやれ。
 今の空ならそれが出来るだろ?
 言っておくけど人一殺したくらいじゃ全然物足りない。
 もっと震え上がらせる何かを準備しなさい。

「善明も翼や陽葵達も背負ってるの。忘れてはいけませんよ」

 それだけじゃない、SHの皆の人生を背負っている。
 部屋に戻るとイライラを押さえながら考える。
 まずやることはなんだ?
 グルチャは大炎上だった。
 
「ふざけた真似しやがって。大地、今すぐ爆撃機を用意しろ!」

 天音が怒り狂ってる。
 それをなだめるのに大地も必死なようだ。
 怒ってるのは天音だけじゃない。
 遊たちも同様だ。

「そんなに火葬がしたいなら望み通りしてやる。ガソリンと火さえあればいい!」

 遊が言っている。
 確かに今夜集まる必要がありそうだ。

「陽葵達はちゃんと幼稚園に行っておいで」

 陽葵達なら警護をつけなくても大丈夫だろう。

「パパ無理しないでね」

 陽葵達も心配してるらしい。

「大丈夫だから馬鹿な真似をしたらダメだよ」

 翼がそう言って3人の頭をなでると3人は結達を連れて幼稚園へ向かった。
 僕も仕事があるから準備をして出勤する。
 悩んでるのはどうするかじゃない。
 どう反撃するかだ。
 父さんは今日も一日休みをとった。
 核ミサイルの発射を進めようとしている母さんを宥めているため。

「やめておくれ。国際問題になる」
「酒井家にたてついて何もお咎めなしじゃ済まさないわよ!」

 そんなやりとりをしているらしい。
 どうせ僕が何も指示しなくても暴れ出すだろう。
 さすがに今回は止めとけなんて指示を出すつもりはない。
 もう警告程度では収められないだろうね。
 昼休みになると空から指示が出た。

「モスクワの座標と衛星写真が欲しい」

 衛星から映されるマップはネットでも見ることが出来る。
 茜に頼んでリアルタイムでの状況を知りたいようだ。

「手段が決まった?」
「まずは挨拶しておこうと思ってね」
「分かった」

 そして午後の仕事を終えると茜が家に来ていた。

「直接見せた方がいいと思って」

 そう言って茜がタブレットに映ったモスクワの風景を見せる。
 
「正確な座標もしっかり調べておいた。……けど、これをどうするつもり?」
「最近の巡航ミサイルの仕組み知ってる?」
「え?」

 ターコムと言われる誘導方式。
 標的となる場所の写真を記録させておいて画像と一致したら上に上昇して降下するらしい。
 さすがにそれだけではイメージしにくいから座標を教えてもらった。
 それだけあればなんとかなる。

「まさか本気で核落とすつもり!?」

 翼が驚いていた。

「そんなもんぶっ放したら恵美さんも後始末が大変だろ?」

 発射するのだって時間がかかるし隣国の対応とかいろいろ面倒だ。
 母さん達は本気で撃つつもりだったけどね。
 だから別の手段をとる。

「じゃあ、どうするの?」
「少し静かにしていて」

 そう言って目を閉じる。
 空に牙を向いた者の末路。
 地獄の窯がついに蓋を開けた。

(2)

「菫たち昨夜は大変だったね」

 幼稚園に行くと雪菜がそう言った。
 まさか本気で家を燃やすなんて真似するとは思わなかった。
 
「パパ達に任せて菫たちは幼稚園に行っておいで」

 パパは絶対に報復するつもりだ。
 SHに手を出したら相手が誰だろうとただじゃ済まさない。
 そんな事を考えてる顔だった。
 教室に入ると園児がひそひそ話をしながら私達を見ている。
 おかしいな?
 カミルとカミラが来てない。
 どうせあいつらのせいだから苛め抜いてやろうと思ったのに。
 そう言えば最近あの二人を見てないな。
 あいつらも異常な強さとその外見で誰もあいつらに手を出しては来ないけどこんな風に陰口をたたかれていたからな。
 保母さんはご丁寧に私たちの住んでいたアパートが全焼していたことを話した。
 んなもん話してどうするんだ?
 ニュースとか退屈だから見ていない。
 だから初めて知った。
 あのアパートに住んでいた老人とかが亡くなったらしい。
 可哀そうとかそういう気分はなかったけど笑う気にもなれなかった。
 人間いつかは死ぬんだから。
 まあ、不幸だったな。
 その程度だった。
 馬鹿がこそっと言うまでは。

「どうせなら酒井が死ねばよかったのに」

 陽葵もしっかり聞いていたみたいだ。
 入院生活長すぎて呆けたのか?
 そんなに死にたいなら放課後にまとめて火葬してやる。
 しかし聞いていたのは私や陽葵だけじゃなかった。
 雪菜が突然立ち上がりそいつらに怒鳴りつける。

「よくそう言うこと言えるね!お前身内が死んだことないだろ!人の気持ちを知らないで、冗談でも言っていい事と悪いことくらい習わなかったの!?」

 親がいない私でも教えてもらたったぞ!
 そう言って雪菜がその馬鹿の胸ぐらをつかむ。
 話をややこしくするの馬鹿がFGだ。
 四宮紀子が雪菜をあざ笑う。

「他人の事言えた立場なの?雪菜」

 あんただってこっち側の人間だったって事忘れてないか?
 SHに入ったからって雪菜のしでかした悪行は消えない。

「二人とも落ち着いて」

 保母さんが言う。
 だから雪菜に声をかける。

「雪菜、落ち着いて。あんたはもうリベリオンの人間じゃないんだから」

 こんなところで暴れる必要はない。
 その証拠に結達がじっと見ていた。
 そう言って雪菜を落ち着かせると、雪菜は大人しく席に着いた。
 そんな雪菜を見て笑うやつらを私たちは許さない。
 どんな理由があろうと仲間に手を出す奴は許さない。
 それがSHのルール。
 帰る時間になると皆家に帰って行った。
 一部の人間を除いて。
 門の前で結が立ちふさがっていた。

「俺達に言いたい事あるんだろ?」

 聞いてやるから今言えよ。
 今だっておやつの時間が遅れてる。
 だからさっさと言いたいことを言え。
 怯えているのか誰も何も言えない。
 一番怒らせてはいけない人間を怒らせた。
 しかし紀子は言った。

「あんたたちの家を焼いたのはリベリオン……雪菜だってそのメンバーだったのに今更いい子ぶったって無駄だ」
「言いたいことはそれだけか?」

 結はうつむいている雪菜の代わりに代弁した。

「そうよ、だから菫たちには関係ない!」
「あるね」

 結は真っ向から否定した。
 どんな経緯があれ雪菜はSHに入った。
 私たちの仲間だ。
 その仲間を傷つける奴は絶対に許さない。
 そう言って紀子を殴りつけた。

「……火災だって元はと言えばお前らのせいだろうが!」

 他の奴らが言い出した。
 全員黒いリストバンドをしている。

「それがどうしたの?ごめんなさいとでも言うと思った?」

 陽葵が言った。
 あいにくと知らない人間の為に悲しむ余裕も謝罪をする時間もないんだ。
 人間どこでどんな関係で繋がっているかわからない。
 巻き添えを食ったのは不運だ。
 私たちのせいじゃない。
 責任を取らせるのは放火した人間だ。
 それはお前らには関係ない。

「知らない人が死んで悲しむ心は持ってないけど、目の前の馬鹿が苦しんで助けを求めるのを楽しむ時間はある」

 私達からおやつの時間を奪った罰だ。
 報いを受けなさい。
 陽葵がそう言うと馬鹿たちの足元から火が発生する。

「俺達を殺す気か!?」
「あなた達の言い分は私達は殺人犯なんでしょ?だったら一人二人増えたところでどうってことない」

 そんな状況になって馬鹿たちは初めて泣き出して謝り続ける。
 これ以上やると純也さんの仕事を増やす。
 炎を解除する。
 連中は一斉に逃げ出した。
 雪菜は紀子の言った言葉を気にしているのか落ち込んでいた。
 そんな雪菜の背中をたたく。
 SHでそんなしけた面はNGだ。
 雪菜はもうSHの人間なんだ。
 誰もそんな雪菜を望んでいない。
 望んでいる馬鹿がいたら私達が地獄に叩き落してやる。
 だからいつまでも足元だけを見るのをやめろ。
 空を見上げてみろ。
 きれいだから。
 雪菜は光を浴びて生きていく権利を手に入れたんだ。

「ごめん。ありがとう」
「あんまり若いうちから悩むとしわが増えるって天音が言ってたぞ」

 私がそう言うと皆で笑っていた。
 SHを中心に事件が起きている。
 そしてSHに逆らった者がどうなるのか今一度見せしめにする必要があった。

(3)

 その晩皆で集まった。
 もう我慢する必要がないだろ。
 まとめて叩き潰してやる。
 お酒も入って皆やる気になっていた。
 だけど空は言う。

「落ち着いて、これはどう見てもただの挑発だ」
「私もそう思う。ここで下手に反撃したら痛い目を見る」

 翼も口添えした。

「ふざけんな!このままやられっぱなしでいろっていうのか?」
「そんなわけないだろ」

 天音が言うと空が一言返した。
 空の声を聞いて皆背筋が凍った。
 どうして馬鹿は片桐家を狙う?
 仲間を狙われただけですぐに怒り出す片桐家だぞ。

「どうすんだよ?」
「とりあえず挨拶はしておいたよ」
「何したんだ?」
「天音は少しはニュースとか見なよ」

 翼が言うと皆思い当たることがあった。

「まさか……あれ、空がやったのか?」

 光太が聞くと空はにこりと笑った。

「ちょっと流れ星を作っただけだよ」

 モスクワ以外から見ればきれいに映っただろう。
 まさに空の怒りってわけか……。

「それがまず最初の警告」

 家を燃やされて慌てて反撃に出たの思われるのは癪だから考えた。
 彼らも愛国心が高いらしい。
 すでに茜達が掴んでいる情報網にすぐに彼らが慌てている様が引っかかった。

「で、この後はどうするんだい?」
 
 善明は聞いていた。
 すると空は笑顔で答えた。

「皆いつも言ってるじゃないか?」

 これしきの事で王が出張る必要はない。

「ってことは……」

 天音や水奈がうずうずしている。
 空はうなずいた。

「手順を踏んでおこう。茜、大地にあの番号教えてやって」

 空が茜に言うと茜は僕に紙きれを渡した。

「これは?」
「ヤーナってマフィアの頭の電話番号」

 そう言って茜は笑う。

「僕が直々に挨拶してやるのも考えたけど、僕が一々出張るのも変だろ?」
「だったら私に最初に一言言わせろ!」

 天音が言う。
 空が今ここですればいい。
 好きにしゃべればいいというので電話した。
 スピーカーにしてある。
 電話をするとすぐに出る。

「誰だ?」
「SHの一人っていえばわかる?」
「今お前らにかまってる暇はない。失せろ」
 
 そう言って電話を切られた。
 だけど空は動じない。
 空は善明に伝える。
 善明はスマホで誰かに連絡していた。
 しばらくすると向こうから電話がかかってきた。

「あれ?お取込み中じゃなかったの?」
「お前らの仕業か?」
「何のこと?」
「ふざけるな!私の家にロケット弾打ち込んでおいてしらばっくれるな!」

 私たちに歯向かうやつは皆殺しにしてやる。
 事情があるから後回しにしていたけど先に殺してほしいなら望み通りしてやる。
 それを聞いていた天音が怒鳴りつける。

「ざけんな!SHに手を出してごめんなさいは通用しないからな!全員冷凍マグロにして本国に配送してやる!」
「威勢だけはいいな。まだ家を燃やされないと気が済まないのか?」

 まだ相手に余裕があるようだ。
 空に任せられたのはその余裕を消し去ることだろう。
 天音は翼に任せて話を続ける。

「君勘違いしてない?」
「なんだと?」
「君は絶対にやったらいけないことをしたんだ。そんなに長生きできないと思った方がいいよ」
「お前が片桐空か?」
「僕は石原大地。空がお前如きの相手すると思ったか?」
「わざわざ名乗るとはとんだマヌケだな」
「だって隠す必要ないから」

 もうすぐ死ぬ人間に名乗ったところで何の支障もない。

「お前の反応を見て確信したことがある。ニュース見たんだろ?」

 お前が帰る場所なんてないからな。

「……お前らの仕業なのか?あまり国を舐めるなよ?すぐに突き止めるぞ」
「馬鹿だろお前。ミサイルをぶっ放したわけじゃないのにどうして僕たちの仕業だとわかるんだ?」

 分かったとしても僕達には手出しできない。
 手を出すとまた天罰が下るぞ。

「お前等のやり方はわかった。あまり大人の社会を舐めるな。苦しみながら死んでいくといい」
「お前本当に馬鹿だな」
「他人をコケにするのもたいがいにしろよガキ」
「気づいてないのか?どうしてこの電話番号を知っているか?」

 どうしてお前の家にロケット弾を撃ち込めたのか。
 子供だと舐めてると後悔するぞ?

「もう今さら”ごめんなさい”は通用しないからな。精々がたがた震えてろ」

 お前達はすでに死神に喧嘩を売ったんだ。

「後悔するなよ」
 
 そう言って電話は切れた。

「おつかれ、それでいいと思う」

 空はそう言って笑った。

「で、これからどうするつもりなんだい?」

 善明が聞くと空は答えた、

「大地が言っただろ?じっくりいたぶってやるさ」

 楽に死ねるとと思うな。
 空達だって家が燃やされるまで何もしてなかったわけじゃない。
 茜や誠さんがリベリオンの構成からジハードとの関係までしっかり調べつくしていた。
 結論から言うと3つのギャングが連携してくることはない。
 彼らはただSHを潰す力を貸してほしいと神谷が取引しただけ。
 わざわざ日本のガキ相手にそこまでする必要あるのか?と高をくくっていた。
 が、何が事件があったらしい。
 
「リベリオンには協力するがあの二人は私達が裁く」

 そんなやりとりを茜が調べ上げた。
 だったらまずはリベリオンと僕達を相手する羽目になったエリツィンの恋人から始末しよう。
 そう決断していた時にわざわざ向こうから口実を作った。
 だから容赦する必要はない。
 全力で潰してやれ。
 それが空の結論だった。

「本当は僕一人でどうにかなるんだけどね。それじゃ皆が不満貯めるでしょ?」

 空一人でどうにかなるのはモスクワの悲劇を見ての通り。
 ニュースでは「隕石の落下」と報道されている。
 わざわざ僕にSHの犯行と言わせたのは奴らを潰すと決めていたから。
 全員消滅させましたでいいんだけど、それでは天音の気が済まない。
 かといって、延々と奴らだけを相手に知れられない。
 これ以上戦力を持ってくるっていうなら国ごと潰すぞ。
 そういう圧力をかけて増援と言う手を封じた。
 お前らの行動は全部把握済みというプレッシャーも与えていた。
 あいつら一人一人が僕や善明並みの力を持っていたとしても、それ以上の実力があったとしても、今の僕たちはまだ切り札がある。
 
「あとの行動は善明と大地に任せてもいいかな?」

 空が言うと僕たちはうなずいた。
 僕達で手に負えないなら空が直接始末する。
 しかしその程度の力しかないと思われるのは僕も善明も不愉快だ。
 僕も善明も子供の心配をする必要はない。
 子供に手を出したら後悔するのは相手だろう。
 話が終わると僕たちは家に帰る。

「大地、この後どうする?」

 天音が聞いてきた。

「茜から情報はもらった。善明と手分けして片っ端から潰すよ」
「気を付けてくれよ。私はまだ未亡人にはなりたくない」

 天音も僕の心配をしてくれてるようだ。

「そんな真似したら母さんが地獄まで追いかけてくるからしないよ」
「恵美さんならそうだろうな」

 天音は笑っていた。
 それから連日のように事件が起きることになった。
 クリスマス前の地獄の季節の始まりだった。
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