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confict
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(1)
さすがに俺でも胃液を吐き出しそうになった。
必死にこらえていた。
それを見ていた先輩は「まあ、しょうがないな……俺でもこんなものは初めてだ」と言っていた。
夜の駅裏の広場に広がるおびただしいほどの惨殺死体。
相手の身元を特定できるようなものは残されていたけど多分意味がないだろう。
こいつらの身元を知ってるのはリベリオンだけだろう。
「償ってもらう」
ロシア語で書かれていた。
それだけでやったのはエリツィンの恋人だと特定できた。
しかしリベリオンの配下だったはずの奴らがどうして?
そう言えば空が言っていたな。
「相手は本当に神谷が統率しているのか確かめたい」
その回答がこれなんだろうな。
「しかし厄介なものが地元に入り込んできたな」
先輩はそう言ってため息をつく。
何人かの目撃者の証言が取れた。
拳銃を撃ったとか生易しい物じゃなかったらしい。
遠くの方から銃声が聞こえたということは狙撃手がどこかに潜んでいたのだろう。
こういう時大地がいると場所を特定してくれそうだけど、さすがに一般人を現場に連れてくることはできない。
こっそりスマホで写真を撮っておいた。
銃声のあと爆音が聞こえたらしい。
芝生のえぐれ具合からして何かロケットランチャーみたいなのをぶっ放したのだろう。
その根拠はむごたらしい死体からわかる。
喉を逆流する物をこらえながら死体を確認していく。
こめかみに撃たれた跡があった。
こいつが最初の犠牲者だろう。
一人殺して動揺させた後にロケットランチャーでまとめて……か。
しかしまだ確認することがある。
第一目撃者を見つけなければいけない。
それは案外容易かった。
だって腰を抜かして地面に座り込んで怯えていたから。
他の刑事が事情聴取に手こずっているので「替わるよ」と言った。
「警部自らですか!?」
普通はないだろうな。
俺くらいの年で警部に昇格してるのも異常なんだけど。
まあ、ロケットランチャーをぶっ放すのに比べたら普通なんだろう。
「若そうだし俺の方が歳近そうだから」
そう言って替わってもらうと女性に聞いてみた。
「落ち着いて、少しずつでいいから思い出して教えて欲しい」
俺の顔をみてほっとしたのか惚れたのかわからないけど案外簡単に答えてくれた。
二組の集団がいた。
片方の集団の先頭に女性がいた。
その女性が何かを言うと相手の先頭にいた奴が銃声と共に倒れた。
相手の方が何かしようとしたら目の前で爆発が起きた。
「ありがとう」
そう言って女性警察官を呼ぶと落ち着かせるように指示をする。
「お前、女の扱い上手いな」
先輩はそう言っていた。
「こう見えても彼女いるからまずいんですけどね」
「そりゃ内緒にしておかないと怖いぞ」
そう言って先輩が笑う。
「で、何が分かった」
「多分予想通りです」
女というのはエリツィンの恋人のリーダー、ヤーナ・アレンスキーだろう。
神谷直下のグループに制裁を下したというところか。
その根拠は先月あった惨殺事件。
自動小銃でエリツィンの恋人らしきメンバーが殺されていた。
それをやったのが神谷直下の部隊なのだろう。
と、なると空の想定していた状態みたいだ。
3つのグループは連携することはまずない。
「来月にはクリスマスだ。みんなが幸せな世界になるといいんだがな」
「そうですね」
高校生は今頃修学旅行か。
家に帰ると梨々香が待っている。
夕食を二人で食べながら梨々香に聞いてみた。
「梨々香はいつまで働くつもりなんだ?」
「そうだね。いつまでも続けたいとも思ったけど」
「けど?」
「SHの話聞いてたら育児に専念した方がいいかなって」
そういや茜も仕事辞めたな。
「逆に聞くけどさ。私はいつ仕事を辞めたらいいの?」
いつになったらプロポーズしてくれるの?
「まさか、仕事で女性と知り合ったとか言わないよね?」
「まあ、今日若い女性に聞き込みしたくらいかな」
「ちょっと純也!」
「落ち着けよ……あとは死体だよ」
食事中に説明するのはためらうほどの。
俺は死体に浮気する性格なのか?
「そっか……ごめん」
「そんなに待たせるつもりはないから」
俺だって覚悟は決めてるよ。
「じゃあ、待ってるね」
そう言って梨々香は笑っている。
この先仕事上でもリベリオンと関わることになる。
そうなると心配なのが梨々香だ。
他の奴らも恋人の心配をしているだろう。
空はその事を分かっている。
しかし焦ってしくじっても被害が出る。
空は何かを狙っている。
「事件の事はニュースで見た。あまり無理しないでね」
「分かってる。俺だって花嫁姿の梨々香が見たいから」
そう言って梨々香の頭をなでる。
判断は空に任せておけばいい。
空がいる限りSHは大丈夫。
そう、SHの中枢は空が担っていた。
それは神谷達も知っていることを忘れていた。
(2)
「ねえねえ、東京着いたらどこ行く?」
「私渋谷行ってみたい!」
幸と凛が飛行機の中ではしゃいでる。
俺と拓斗はそんな幸達の隣で様子を見ていた。
「友諠たちは行きたいところ無いの?」
黙っていたから不思議に思ったんだろう。
凜が俺に聞いてきた。
すると拓斗が俺に言う。
「その返事はあんまりよくないぞ」
「拓斗の言うとおりだよ。友諠は凛と楽しもうって気はないの?」
「じゃあ、拓斗はどう答えるんだよ?」
俺が聞くと拓斗はすんなりと答えた。
「幸はどこか行きたいところあるのか?」
変わらないじゃないか。
しかし凛と幸には違うように聞こえたらしい。
「やっぱり渋谷かな」
「他には?」
レポート書くのに「買い物してました」じゃダメだろ。
「そこなんだよね」
やっぱりべたにランドマークタワーでも言っておくべきか?
すると拓斗が提案した。
その場所を聞いて幸は驚いていた。
「あんたアイドルに興味あったの?」
「いや、グループ名になるくらいだから気になってさ」
渋谷から近いしいいだろ?
色々由来もあるらしいから。
「そんなに時間とらないから」
「まあ、拓斗がそう言うならいいけど。聖地巡礼とか馬鹿なこと言わないでね」
「わかってるよ。それより幸達の方が楽しみなんじゃないか?」
男性アイドルの事務所あるぞ?
「私そう言うの興味ない」
「どういうのが好きなんだ?」
「いつもカラオケで歌ってるじゃん」
うまい具合に会話を繋いでいく拓斗。
女性の扱い上手いな。
「そりゃ、拓斗は人気者だったからね」
凜が言う。
「じゃ、凜も上手いのか?」
「そう言う意地悪しかいわないの?」
またミスったみたいだ。
落ち込む俺を見て、凜が俺の頭の撫でる。
「友諠のいいところってそこだと思うんだ」
変に女性慣れしてない。
だから私に合わせてくれるだけでいい。
この先私以外の女性を知るつもりもないんでしょ?
「じゃあさ、聞いてもいいかな?」
「どうしたの?」
「なんで渋谷で買い物なんだ?」
東京まで行って服とか買わなくても通販でよくないか?
「なるほどね。そこから説明しないとダメか」
凜はそう言って説明する。
まず衣服なんかは生地とか気になるし、写真と実物だと微妙に違いがあるから実際触れて買ってみたい。
実際触れて買うのであれば別府とかでやってるフリマで古着買うのでも全然関係ない。
次にまず若者が憧れる渋谷って場所の空気を体感したい。
混雑しているデパートなんて地元じゃ味わえないから。
要するに雰囲気を楽しみたいだけ。
凜の説明を聞いてるうちに思ったことがあった。
「それでいいんじゃないか?」
「何が?」
「レポート」
渋谷に行ってみてどうだったって体験したことを書けばレポートにはなるだろ。
秋葉原に行ってメイド喫茶の感想を書く馬鹿がいたらしいし。
「友諠ってひょっとしてオタ?」
「まあ、不思議には思ったかな?」
一昔前には「ツンデレ喫茶」なんてなんで行くのか分からない店もあったらしいし。
ちなみにうちにはメイドはいない。
普通に母親が家事をやっている。
「男子ってああいう格好に憧れるの?」
「まあ、凜があの格好で”ご主人様”って言ってくれたら喜ぶかもな」
「絶対ないから心配しないで」
「……」
「どうしたの?」
「いや、聞いていいか分からないから戸惑って」
「そこまで言って言わないと私が気になる」
下着の色はとか聞いたら怒るよ。
さすがに凜にわざわざ聞くようなことじゃない。
「いやさ、凜もそういうコスプレしたことあるのかなって……」
「あ……そういうこと?」
すると凜はにこりと笑って答えた。
「まあ、ね。そう言うのを強制されてたから」
俺の何倍の歳のおっさんとも寝たらしい。
「幻滅した?」
「どうして?」
「え?」
首をかしげる凜の頭をなでる。
「そこで幻滅してたら今がないだろ?」
「それもそっか。……うーん、今の言葉はうれしいかも」
お礼にメイドコスしてあげようか?
凜が聞いてきた。
「それなんだよ」
「どうしたの?」
「拓斗にも聞いてみたんだけどさ」
色々知ってそうだから。
どうせ脱がすのに衣装を着せてどうするんだ?
拓斗もそんな経験ないらしい。
「不思議だよな。裸を見たくて借りてきたのに水着つけたままとか意味わからね」
「ちょっと。今の発言は聞き捨てならないよ!」
突然怒り出す凜。
「どうしたの?」
「ちょっと幸聞いてよ!」
幸にさっきの話をすると幸も怒り出す。
「あんた達2人で友諠の部屋で何やってるんだろ?と思ったらそんなことしてたの!?」
幸も怒り出した。
「まだ中坊だったころの話だよ!さすがに今はないって」
「どうしてそういう欲求があるなら私達に言わないの?母さんだって言ってたでしょ!」
安い金で女を買うくらいなら彼女の相手をしてやれ。
父さんは笑っていたけどな。
「そういうのをしたいんじゃなくて興味があったんだよ」
ゲームやアニメのキャラの格好をしてるから興味あって借りただけ。
そしたら最後には全部脱いだから意味ないじゃんって思っただけ。
でも脱がなかったらなんで借りたんだろう?って不思議に思うだけ。
シチュエーションってのに興味があっただけだ。
拓斗と一緒に必死に弁解するけど幸は許してくれなかった。
凜は「やっぱり男ってしょうがないね」って笑ってた。
後日母さんに幸が相談していた。
父さんは頭を抱えている。
だけど母さんは意外と冷静だった。
「それなら心配しなくていいわよ」
「どうして?」
「男二人になることがなくなるから」
「え?」
大学に通うようになったら同棲くらい認めるから心配しなくていい。
彼氏をきっちり指導するのも女性の役割だから頑張りなさい。
「あまりふざけた真似をしだしたら母さんが叱ってあげる」
とは、いうものの俺の部屋で拓斗と2人っきりになるのは禁止された。
「男だけで集まってもろくなことがない」
母さんの友達の話を聞いていた。
(3)
「あれ?」
「どうしたの?」
俺と茉奈は毎年恒例の紅葉狩りに来ていた。
愛莉達が相談したらしい。
まずこの二人に食以外の事に興味を持たせないとダメだ。
だからハンバーガーを食べる前につり橋を渡るように言われた。
すると俺の後ろを海翔がついてくる。
で、海翔にどうしたのか俺と茉奈が聞いていた。
天音達はつり橋のロープの上によじ登ろうとする茉莉と菫を見張るのに必死だった。
すると海翔は不思議なことを言い出した。
「にいに」
どういう意味だろう?
結莉に聞いてみたけど、結莉にも分からないみたいだ。
母さんに聞いてみると母さんはにこりと笑った。
母さんは海翔の頭をなでている。
「そうだよね。お兄ちゃん欲しかったんだね」
母さんがそう言うと海翔が頷いた。
「にいに」ってお兄ちゃんの意味だったのか。
「ちゃんと面倒見てやりなさい。海翔は結がお気に入りみたいだから」
「うぅ……じゃあ、海翔の事お願いね」
結莉がそう言うと海翔は俺と茉奈の手を握る。
海翔は嬉しそうだった。
最初は嫌がっていた茉奈だけど嬉しそうに必死についてくる海翔を見てると表情が変わった。
「茉奈。ここに何があるの?」
「枯葉と滝」
言葉で説明すればそれだけだろう。
紅葉の景色なんて言っても海翔が分かるはずがない。
「それ美味しいの?」
「食べ物じゃないって言ってた」
俺が答えるとがっくりしてた。
そんな海翔を見て茉奈が言う。
「見学が終わったらハンバーガー食べられるから」
ソフトクリームもある。
そう言うと海翔の表情が明るくなる。
「……天音の子供はやっぱりそうなるの?」
愛莉が頭を抱えていた。
「でも不思議ね。大地の血はどこにあるの?」
「わ、私は大地以外と寝たことないぞ!」
「天音はそういう話を子供の前でするのはやめなさい!」
愛莉が天音を叱ってた。
どういう意味かは教えてもらえなかった。
「なんだ、茉奈はまだ結に女にしてもらえなかったか?」
様子を見ていた茉莉がまた茉奈を挑発する。
「わ、私達にはまだ早いってママも言ってたし」
「早い奴は小学生でもやるらしいから別に不思議じゃないだろ」
「茉莉はしてもらったの?」
「朔も玉無しなんだよ!」
「ちょ、ちょっと待って」
2人の話を聞いていた愛莉が恐る恐る聞いていた。
「あなた達母親に何を聞いたの?」
「私は何も教えてないよ?」
翼が弁解する。
……と、なると。
愛莉と神奈が水奈と天音を睨みつける。
「あなた達まさか……」
「ほら、予習って必要だろ?」
「いざという時は女性がしっかり対策しろっていうだろ」
「幼稚園児に何吹き込んでるんだ!この馬鹿娘!」
ちょっとした騒ぎになる。
「あ、愛莉さん。落ち着いて。他の人が見てるよ。茉莉もはしたない話はやめなさい」
大地が仲裁する。
「うっせぇ、もとはと言えば天音がちっぱいだから悪いんだろうが!」
母親に向かって言う言葉なんだろうか?
言葉だったようだ。
「愛莉!元はと言えば愛莉が私をちっぱいにしたからだろ!」
「天音は自分の立場をいい加減に弁えなさい!」
どんどん騒ぎが大きくなる。
空達も困っていた。
大地がそっと茉莉と結莉に言う。
「二人は確かに天音の子供だよ。でも僕の子供でもあるんだ」
「だったら同じじゃねーか!」
「……僕の姉は胸大きいよ」
だから可能性がないわけじゃない。
とりあえず二人は納得したようだ。
しかし別の問題が浮上する。
「大地!てめぇ私の胸が気に入らないってのか!?」
「天音!子供の前であまりそう言う話するの止めて!」
翼も怒り出す。
それは橋を渡り終えてハンバーガーを食べるまで続いた。
片桐家ではどんなことがあっても食べる時は静かに食べる。
ソフトクリームも食べてお腹が満足すると皆機嫌がよくなる。
「にいに、ちっぱいって何?」
海翔が聞いてきた。
どう答えたらいいか悩んだ。
「食べ物じゃないよ」
「そっか」
海翔もじいじの血があるのだろう。
食べ物じゃないと分かると興味をなくしたらしい。
茉奈とハンバーガーを食べると店を出る。
「父さん、この後昼ごはん食べるんでしょ?」
「そうだよ、大人しくしてようね」
母さんがそう言う。
「お前の家、やっぱり似たような子供だな」
「そうなのよ……だから頭が痛いの」
神奈と愛莉が悩んでいる。
もっといっぱい食べたら解決すると思うんだけど。
皆ご飯をいっぱい食べたら平和になるんじゃないかな。
そんな事を考えていた。
さすがに俺でも胃液を吐き出しそうになった。
必死にこらえていた。
それを見ていた先輩は「まあ、しょうがないな……俺でもこんなものは初めてだ」と言っていた。
夜の駅裏の広場に広がるおびただしいほどの惨殺死体。
相手の身元を特定できるようなものは残されていたけど多分意味がないだろう。
こいつらの身元を知ってるのはリベリオンだけだろう。
「償ってもらう」
ロシア語で書かれていた。
それだけでやったのはエリツィンの恋人だと特定できた。
しかしリベリオンの配下だったはずの奴らがどうして?
そう言えば空が言っていたな。
「相手は本当に神谷が統率しているのか確かめたい」
その回答がこれなんだろうな。
「しかし厄介なものが地元に入り込んできたな」
先輩はそう言ってため息をつく。
何人かの目撃者の証言が取れた。
拳銃を撃ったとか生易しい物じゃなかったらしい。
遠くの方から銃声が聞こえたということは狙撃手がどこかに潜んでいたのだろう。
こういう時大地がいると場所を特定してくれそうだけど、さすがに一般人を現場に連れてくることはできない。
こっそりスマホで写真を撮っておいた。
銃声のあと爆音が聞こえたらしい。
芝生のえぐれ具合からして何かロケットランチャーみたいなのをぶっ放したのだろう。
その根拠はむごたらしい死体からわかる。
喉を逆流する物をこらえながら死体を確認していく。
こめかみに撃たれた跡があった。
こいつが最初の犠牲者だろう。
一人殺して動揺させた後にロケットランチャーでまとめて……か。
しかしまだ確認することがある。
第一目撃者を見つけなければいけない。
それは案外容易かった。
だって腰を抜かして地面に座り込んで怯えていたから。
他の刑事が事情聴取に手こずっているので「替わるよ」と言った。
「警部自らですか!?」
普通はないだろうな。
俺くらいの年で警部に昇格してるのも異常なんだけど。
まあ、ロケットランチャーをぶっ放すのに比べたら普通なんだろう。
「若そうだし俺の方が歳近そうだから」
そう言って替わってもらうと女性に聞いてみた。
「落ち着いて、少しずつでいいから思い出して教えて欲しい」
俺の顔をみてほっとしたのか惚れたのかわからないけど案外簡単に答えてくれた。
二組の集団がいた。
片方の集団の先頭に女性がいた。
その女性が何かを言うと相手の先頭にいた奴が銃声と共に倒れた。
相手の方が何かしようとしたら目の前で爆発が起きた。
「ありがとう」
そう言って女性警察官を呼ぶと落ち着かせるように指示をする。
「お前、女の扱い上手いな」
先輩はそう言っていた。
「こう見えても彼女いるからまずいんですけどね」
「そりゃ内緒にしておかないと怖いぞ」
そう言って先輩が笑う。
「で、何が分かった」
「多分予想通りです」
女というのはエリツィンの恋人のリーダー、ヤーナ・アレンスキーだろう。
神谷直下のグループに制裁を下したというところか。
その根拠は先月あった惨殺事件。
自動小銃でエリツィンの恋人らしきメンバーが殺されていた。
それをやったのが神谷直下の部隊なのだろう。
と、なると空の想定していた状態みたいだ。
3つのグループは連携することはまずない。
「来月にはクリスマスだ。みんなが幸せな世界になるといいんだがな」
「そうですね」
高校生は今頃修学旅行か。
家に帰ると梨々香が待っている。
夕食を二人で食べながら梨々香に聞いてみた。
「梨々香はいつまで働くつもりなんだ?」
「そうだね。いつまでも続けたいとも思ったけど」
「けど?」
「SHの話聞いてたら育児に専念した方がいいかなって」
そういや茜も仕事辞めたな。
「逆に聞くけどさ。私はいつ仕事を辞めたらいいの?」
いつになったらプロポーズしてくれるの?
「まさか、仕事で女性と知り合ったとか言わないよね?」
「まあ、今日若い女性に聞き込みしたくらいかな」
「ちょっと純也!」
「落ち着けよ……あとは死体だよ」
食事中に説明するのはためらうほどの。
俺は死体に浮気する性格なのか?
「そっか……ごめん」
「そんなに待たせるつもりはないから」
俺だって覚悟は決めてるよ。
「じゃあ、待ってるね」
そう言って梨々香は笑っている。
この先仕事上でもリベリオンと関わることになる。
そうなると心配なのが梨々香だ。
他の奴らも恋人の心配をしているだろう。
空はその事を分かっている。
しかし焦ってしくじっても被害が出る。
空は何かを狙っている。
「事件の事はニュースで見た。あまり無理しないでね」
「分かってる。俺だって花嫁姿の梨々香が見たいから」
そう言って梨々香の頭をなでる。
判断は空に任せておけばいい。
空がいる限りSHは大丈夫。
そう、SHの中枢は空が担っていた。
それは神谷達も知っていることを忘れていた。
(2)
「ねえねえ、東京着いたらどこ行く?」
「私渋谷行ってみたい!」
幸と凛が飛行機の中ではしゃいでる。
俺と拓斗はそんな幸達の隣で様子を見ていた。
「友諠たちは行きたいところ無いの?」
黙っていたから不思議に思ったんだろう。
凜が俺に聞いてきた。
すると拓斗が俺に言う。
「その返事はあんまりよくないぞ」
「拓斗の言うとおりだよ。友諠は凛と楽しもうって気はないの?」
「じゃあ、拓斗はどう答えるんだよ?」
俺が聞くと拓斗はすんなりと答えた。
「幸はどこか行きたいところあるのか?」
変わらないじゃないか。
しかし凛と幸には違うように聞こえたらしい。
「やっぱり渋谷かな」
「他には?」
レポート書くのに「買い物してました」じゃダメだろ。
「そこなんだよね」
やっぱりべたにランドマークタワーでも言っておくべきか?
すると拓斗が提案した。
その場所を聞いて幸は驚いていた。
「あんたアイドルに興味あったの?」
「いや、グループ名になるくらいだから気になってさ」
渋谷から近いしいいだろ?
色々由来もあるらしいから。
「そんなに時間とらないから」
「まあ、拓斗がそう言うならいいけど。聖地巡礼とか馬鹿なこと言わないでね」
「わかってるよ。それより幸達の方が楽しみなんじゃないか?」
男性アイドルの事務所あるぞ?
「私そう言うの興味ない」
「どういうのが好きなんだ?」
「いつもカラオケで歌ってるじゃん」
うまい具合に会話を繋いでいく拓斗。
女性の扱い上手いな。
「そりゃ、拓斗は人気者だったからね」
凜が言う。
「じゃ、凜も上手いのか?」
「そう言う意地悪しかいわないの?」
またミスったみたいだ。
落ち込む俺を見て、凜が俺の頭の撫でる。
「友諠のいいところってそこだと思うんだ」
変に女性慣れしてない。
だから私に合わせてくれるだけでいい。
この先私以外の女性を知るつもりもないんでしょ?
「じゃあさ、聞いてもいいかな?」
「どうしたの?」
「なんで渋谷で買い物なんだ?」
東京まで行って服とか買わなくても通販でよくないか?
「なるほどね。そこから説明しないとダメか」
凜はそう言って説明する。
まず衣服なんかは生地とか気になるし、写真と実物だと微妙に違いがあるから実際触れて買ってみたい。
実際触れて買うのであれば別府とかでやってるフリマで古着買うのでも全然関係ない。
次にまず若者が憧れる渋谷って場所の空気を体感したい。
混雑しているデパートなんて地元じゃ味わえないから。
要するに雰囲気を楽しみたいだけ。
凜の説明を聞いてるうちに思ったことがあった。
「それでいいんじゃないか?」
「何が?」
「レポート」
渋谷に行ってみてどうだったって体験したことを書けばレポートにはなるだろ。
秋葉原に行ってメイド喫茶の感想を書く馬鹿がいたらしいし。
「友諠ってひょっとしてオタ?」
「まあ、不思議には思ったかな?」
一昔前には「ツンデレ喫茶」なんてなんで行くのか分からない店もあったらしいし。
ちなみにうちにはメイドはいない。
普通に母親が家事をやっている。
「男子ってああいう格好に憧れるの?」
「まあ、凜があの格好で”ご主人様”って言ってくれたら喜ぶかもな」
「絶対ないから心配しないで」
「……」
「どうしたの?」
「いや、聞いていいか分からないから戸惑って」
「そこまで言って言わないと私が気になる」
下着の色はとか聞いたら怒るよ。
さすがに凜にわざわざ聞くようなことじゃない。
「いやさ、凜もそういうコスプレしたことあるのかなって……」
「あ……そういうこと?」
すると凜はにこりと笑って答えた。
「まあ、ね。そう言うのを強制されてたから」
俺の何倍の歳のおっさんとも寝たらしい。
「幻滅した?」
「どうして?」
「え?」
首をかしげる凜の頭をなでる。
「そこで幻滅してたら今がないだろ?」
「それもそっか。……うーん、今の言葉はうれしいかも」
お礼にメイドコスしてあげようか?
凜が聞いてきた。
「それなんだよ」
「どうしたの?」
「拓斗にも聞いてみたんだけどさ」
色々知ってそうだから。
どうせ脱がすのに衣装を着せてどうするんだ?
拓斗もそんな経験ないらしい。
「不思議だよな。裸を見たくて借りてきたのに水着つけたままとか意味わからね」
「ちょっと。今の発言は聞き捨てならないよ!」
突然怒り出す凜。
「どうしたの?」
「ちょっと幸聞いてよ!」
幸にさっきの話をすると幸も怒り出す。
「あんた達2人で友諠の部屋で何やってるんだろ?と思ったらそんなことしてたの!?」
幸も怒り出した。
「まだ中坊だったころの話だよ!さすがに今はないって」
「どうしてそういう欲求があるなら私達に言わないの?母さんだって言ってたでしょ!」
安い金で女を買うくらいなら彼女の相手をしてやれ。
父さんは笑っていたけどな。
「そういうのをしたいんじゃなくて興味があったんだよ」
ゲームやアニメのキャラの格好をしてるから興味あって借りただけ。
そしたら最後には全部脱いだから意味ないじゃんって思っただけ。
でも脱がなかったらなんで借りたんだろう?って不思議に思うだけ。
シチュエーションってのに興味があっただけだ。
拓斗と一緒に必死に弁解するけど幸は許してくれなかった。
凜は「やっぱり男ってしょうがないね」って笑ってた。
後日母さんに幸が相談していた。
父さんは頭を抱えている。
だけど母さんは意外と冷静だった。
「それなら心配しなくていいわよ」
「どうして?」
「男二人になることがなくなるから」
「え?」
大学に通うようになったら同棲くらい認めるから心配しなくていい。
彼氏をきっちり指導するのも女性の役割だから頑張りなさい。
「あまりふざけた真似をしだしたら母さんが叱ってあげる」
とは、いうものの俺の部屋で拓斗と2人っきりになるのは禁止された。
「男だけで集まってもろくなことがない」
母さんの友達の話を聞いていた。
(3)
「あれ?」
「どうしたの?」
俺と茉奈は毎年恒例の紅葉狩りに来ていた。
愛莉達が相談したらしい。
まずこの二人に食以外の事に興味を持たせないとダメだ。
だからハンバーガーを食べる前につり橋を渡るように言われた。
すると俺の後ろを海翔がついてくる。
で、海翔にどうしたのか俺と茉奈が聞いていた。
天音達はつり橋のロープの上によじ登ろうとする茉莉と菫を見張るのに必死だった。
すると海翔は不思議なことを言い出した。
「にいに」
どういう意味だろう?
結莉に聞いてみたけど、結莉にも分からないみたいだ。
母さんに聞いてみると母さんはにこりと笑った。
母さんは海翔の頭をなでている。
「そうだよね。お兄ちゃん欲しかったんだね」
母さんがそう言うと海翔が頷いた。
「にいに」ってお兄ちゃんの意味だったのか。
「ちゃんと面倒見てやりなさい。海翔は結がお気に入りみたいだから」
「うぅ……じゃあ、海翔の事お願いね」
結莉がそう言うと海翔は俺と茉奈の手を握る。
海翔は嬉しそうだった。
最初は嫌がっていた茉奈だけど嬉しそうに必死についてくる海翔を見てると表情が変わった。
「茉奈。ここに何があるの?」
「枯葉と滝」
言葉で説明すればそれだけだろう。
紅葉の景色なんて言っても海翔が分かるはずがない。
「それ美味しいの?」
「食べ物じゃないって言ってた」
俺が答えるとがっくりしてた。
そんな海翔を見て茉奈が言う。
「見学が終わったらハンバーガー食べられるから」
ソフトクリームもある。
そう言うと海翔の表情が明るくなる。
「……天音の子供はやっぱりそうなるの?」
愛莉が頭を抱えていた。
「でも不思議ね。大地の血はどこにあるの?」
「わ、私は大地以外と寝たことないぞ!」
「天音はそういう話を子供の前でするのはやめなさい!」
愛莉が天音を叱ってた。
どういう意味かは教えてもらえなかった。
「なんだ、茉奈はまだ結に女にしてもらえなかったか?」
様子を見ていた茉莉がまた茉奈を挑発する。
「わ、私達にはまだ早いってママも言ってたし」
「早い奴は小学生でもやるらしいから別に不思議じゃないだろ」
「茉莉はしてもらったの?」
「朔も玉無しなんだよ!」
「ちょ、ちょっと待って」
2人の話を聞いていた愛莉が恐る恐る聞いていた。
「あなた達母親に何を聞いたの?」
「私は何も教えてないよ?」
翼が弁解する。
……と、なると。
愛莉と神奈が水奈と天音を睨みつける。
「あなた達まさか……」
「ほら、予習って必要だろ?」
「いざという時は女性がしっかり対策しろっていうだろ」
「幼稚園児に何吹き込んでるんだ!この馬鹿娘!」
ちょっとした騒ぎになる。
「あ、愛莉さん。落ち着いて。他の人が見てるよ。茉莉もはしたない話はやめなさい」
大地が仲裁する。
「うっせぇ、もとはと言えば天音がちっぱいだから悪いんだろうが!」
母親に向かって言う言葉なんだろうか?
言葉だったようだ。
「愛莉!元はと言えば愛莉が私をちっぱいにしたからだろ!」
「天音は自分の立場をいい加減に弁えなさい!」
どんどん騒ぎが大きくなる。
空達も困っていた。
大地がそっと茉莉と結莉に言う。
「二人は確かに天音の子供だよ。でも僕の子供でもあるんだ」
「だったら同じじゃねーか!」
「……僕の姉は胸大きいよ」
だから可能性がないわけじゃない。
とりあえず二人は納得したようだ。
しかし別の問題が浮上する。
「大地!てめぇ私の胸が気に入らないってのか!?」
「天音!子供の前であまりそう言う話するの止めて!」
翼も怒り出す。
それは橋を渡り終えてハンバーガーを食べるまで続いた。
片桐家ではどんなことがあっても食べる時は静かに食べる。
ソフトクリームも食べてお腹が満足すると皆機嫌がよくなる。
「にいに、ちっぱいって何?」
海翔が聞いてきた。
どう答えたらいいか悩んだ。
「食べ物じゃないよ」
「そっか」
海翔もじいじの血があるのだろう。
食べ物じゃないと分かると興味をなくしたらしい。
茉奈とハンバーガーを食べると店を出る。
「父さん、この後昼ごはん食べるんでしょ?」
「そうだよ、大人しくしてようね」
母さんがそう言う。
「お前の家、やっぱり似たような子供だな」
「そうなのよ……だから頭が痛いの」
神奈と愛莉が悩んでいる。
もっといっぱい食べたら解決すると思うんだけど。
皆ご飯をいっぱい食べたら平和になるんじゃないかな。
そんな事を考えていた。
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