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Calling
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(1)
「うーんと……ここからならこっちの方が近いね。先にこっち回ろうか。凜」
「わかった、幸。ほら、友誼たちも急いで!」
「ああ、わかった」
そう言って僕と拓斗は彼女の凛と幸と一緒に京都中のパワースポットを回っていた。
全部回る気なのか?と思えるほどの異様なやる気が漂っている。
「拓斗、大丈夫か?」
「俺は慣れてるから」
拓斗はあの事件があるまでは人気者だった。
だから彼女くらいいた。
そんな彼女にすら見捨てられたから荒んでしまったのだろうけど。
拓斗は今僕の家に住んでいる。
「中学生の一人暮らしはさすがにまずいでしょ」
母さんがそう言った。
中学生の交際相手を同室にするのは不味くないのだろうか?
「中学生なら普通だって愛莉ちゃん達から聞いたわよ?」
どうせ処女なんてもの大切にしていてもしょうがないからさっさとプレゼントしてあげなさい。
母親なのだろうか?という発言を偶にするのが母さんだった。
そして父さんが片桐さん達と飲みに行こうとすると「だから男だけで飲もうなんてずるい真似はやめなさい!」とついていく。
ちなみに妹の杏采はまだらしい。
「どうしてかな?」
そんな悩みを兄妹でしてた。
僕にどんな回答を求めているのか分からなかった。
父さんは「うちの娘の何が気に入らないんだ!?」とか怒鳴る父親じゃない。
そんな父親がいるのかって?
いるのがこの世界なんだよ。
僕達は修学旅行で京都に来ている。
一日目は京都で自由行動。
タクシー乗り放題で京都から出なければどこに行ってもいい。
僕と幸と凜と拓斗で班を組んでいた。
タクシーに乗っている間も2人でパンフレットを見ながら相談している。
さすがにたまらなかったのか拓斗が言った。
「昼飯くらい食わないか?」
「それなら食べたでしょ……」
「幸の家では抹茶パフェが昼食なのか?」
「だからわらび餅くらい食べておいたら?って言ったじゃない」
「そういう問題なのか?」
「一食抜いたくらいで死にはしない」
暴論だったが、僕達は大人しく従う。
昼飯を食べた代償に彼女の機嫌を取り戻すのはデメリットが大きすぎる。
大体の場所を回ると幸たちが言った。
「好きなもの食べていいよ」
僕と拓斗は悩んだ。
京都って何が美味いんだ?
和菓子と京料理くらいしか思いつかない。
京料理を食べるだけの小遣いは持っているけど、時間が足りないだろう。
「無難に行こう」
そう言って僕達が答えた。
「へ?」
幸と凜は驚いていた。
しかし約束は守ってくれた。
スマホで検索して近くにある美味しいラーメン屋さんに入る。
一日彼女のパワースポット巡りに付き合った恩恵がラーメンだった。
しかし胃と心に染みる。
ありがたく味わっているのを幸と凜は笑ってみていた。
「でも、この事は母さんには黙っておいた方がいいと思うよ」
「どうして?」
幸は笑って答えていた。
「彼女との夕食がラーメンなんて知れたら絶対母さん怒るよ」
(2)
「うーん……」
私達は夕食を食べた後、ホテルに戻って風呂に入っていた。
そして凜は私の体を見て何か考えている。
「凜、どうしたの?」
「こんな事を幸に聞いていいのかわからないけどさ……ぶっちゃけ幸は拓斗と最後までやったんだよね?」
「まあね……ってちょっと待って」
凜はまだなの?
「私はほら……あれだからいいんだけど、友誼は多分初めてなんだよね?」
まあ、彼女がいたって話は聞いたことないからそうだと思うけど。
「でさ、私じゃまだ子供なのかなって思って」
私の体型と自分を比べていたらしい。
なるほど、友誼はまだだったのか。
それはまずい気がするのは私だけだろうか?
とりあえず風呂を出て服を着ながら凜を慰めた。
「それはないよ。だってそれなら……」
「でも相手がロリコンだったって事も考えられるでしょ?」
「凜の相手ってそういう人達ばかりなの?」
「まあね……」
本当は人見知りで男子に声をかける事すら恥ずかしいらしい。
よくそれでやってこれたな……。
「多分それ友誼が気を使ってるんじゃないかな?」
「どういう事?」
「友誼まで凜の体目当てなんて思われるんじゃないかって奥手になってるだけだと思う」
「それって言い方変えたら私信用されてないって事じゃない?」
「そうだよね」
でもそれはない。
単に自分が未経験だから凜に馬鹿にされるんじゃないか?
男ってそんなしょうもない事で悩むもんだって姉さんたちが言ってた。
ならやる事は一つしかない。
「凜、行くよ」
「行くってどこに?」
もうすぐ消灯時間だよ?
凜はそう言うけど部屋をこっそり出て友誼たちの部屋に行く。
「こんばんは~」
「幸!?もう消灯時間過ぎてる。それに女子が来たらやばいだろ!」
「そう思うんだったら静かにして!」
私と凜は取りあえず部屋の中に入れてもらった。
「一体何があったんだ?」
拓斗が聞く。
「拓斗から友誼に説明してあげて」
「何をだ?」
拓斗に事情を説明する。
事情を聞いた拓斗は笑っていた。
「確かにそれは幸の言う通りかもしれないな」
拓斗は理解したらしい。
凜は理由が分からずに不安そうにしていた。
しかしこの際だからと聞いてみたくなったんだろう。
「やっぱり私みたいな女子じゃ友誼とつり合い取れないかな?」
そんな事つり合い取れるなんて自信過剰の中学生がいたらその鼻の柱をへし折ってやる。
拓斗も同じだったようだ。
拓斗は友誼に言った。
「俺からお前の気持ちを代弁してやってもいいが、それはあまりにも情けなくないか?心配するな。お前の思ってるような子じゃないよ」
だから友誼も凜を選んだんじゃないか。
その場の勢いで掴んだ物かもしれないけどそれが友誼を変える信号だよ。
思ったことを恋人に伝える事も大事だぞ。
拓斗はそう言った。
友誼は考えてそして言った。
「俺は凜を満足させられるか自信がなかった。経験豊富な凜を満足させてやれるのか不安だった」
思った通りだ。
「あのさ、友誼は勘違いをしてる」
「え?」
「そんな風に思われてた凜が可哀そうだよ」
男子ってみんなそうなの?
女子だって心があるんだよ?
友誼の事だから凜のその部分には触れない方がいいとか思ってるんだろうけど、そうじゃない。
それでも大丈夫って安心させてやる事が大事なんだよ。
女子は体だけで快楽を得ているわけじゃない。
友誼の心で自分の心に優しく触れて欲しい。
凜のやってきた事実は変わらない。
でも、それでも凜は恋に焦がれる中学生だ。
それに応えてやれるのは友誼だけなんだよ。
「私も怖かった。あんなことをしてきた私は友誼に嫌われているんじゃないかっていつも不安だった」
凜が今にも泣きそうな声で言った。
「ごめん、凜」
「大丈夫。私で大丈夫かな?」
「凜以外に誰もいないよ」
これは良いムードだな。
私は拓斗に耳打ちした。
「それもそうだな」
「じゃ、今夜は2人で過ごしなよ」
「え?」
凜も驚いていた。
「私達部屋に戻ってるから」
さすがに部屋に誰もいないのはまずいでしょ。
「で、でも……」
凜が何を言おうとしたか予測できたのでポケットから取り出した。
使い方は凜も知ってるでしょ。
「じゃね~」
そう言ってドアを開けて部屋に戻ろうとした。
「全く……一々手を焼かせるんだな」
部屋の前には担任の高槻翔がいた。
「翔~、二人に修学旅行の思い出作ってあげようよ」
「そんな修学旅行の思い出がある中学生がいるわけないだろ」
私達は通路に正座させられ仲良く叱られた。
「修学旅行の思い出ならそれでいいだろ」
そう言って翔は笑っていた。
(3)
「おはよう」
「おはよう」
修学旅行2日目。
昨夜は翔に遅くまで説教を受けていた。
さすがに中学生だ。
目の隈をそのままにして彼氏に会うなんて無理だ。
洗面台で鏡を見て確認する。
大丈夫みたいだ。
制服に着替えると部屋を出る。
朝食を食べに行く途中で友誼たちと会う。
「昨日は大変だったね」
友誼がそう言って笑う。
「ごめんね」
「あ、いや。僕こそごめん……」
友誼がそう言うと幸が友誼の尻を蹴飛ばす。
「そんな事気にする前に彼女に言うことくらいもっと他にあるんじゃないの?」
すると友誼は何か考えていた。
「綺麗だよ」
嬉しいけど、もっと喜ばせて欲しい。
少し意地悪してみた。
「あのさ、朝起きたてで何もしてないのにそんな事言ってもお世辞にしか聞こえないよ」
「あ……」
しまったって顔している友誼を見ていた。
心配しなくても修学旅行の日に気合入れて化粧する中学生なんていないよ。
そんな困っている友誼を堪能すると私は友誼の腕に抱きつく。
「お腹空いたでしょ?早く行こう?」
「そ、それはいいんだけどこの状態はまずいんじゃないか?」
「あら?彼氏と腕を組んでいてまずい事なんてないと思うけど?」
「そ、それならいいんだ」
昨日翔の説教を受けた後、幸から色々聞いていた。
とにかく友誼は奥手だからガンガン攻めるのみ!
心配しなくてもちゃんと友誼は受け止めてくれる。
そう聞いたから朝から張り切ってみた。
もちろん他のクラスメートからの視線は気になったけど。
その程度今の幸せな気分に比べたらどうってことない。
ご飯を食べながら今日の行動を相談していた。
今日は大阪のテーマパークで自由行動。
私は始めて来るけど友誼と幸は来たことがあるらしい。
「まあ、あの人混みなら別行動でもいいんだろうけど」
幸はそう言ったけど友誼は違うようだ。
「兄さんが言ってたんだけど……」
この先私達が続いていくなら2人で来る機会なんていくらでもある。
でも私達4人で来ることなんてそんなにないはず。
だから4人で遊ばないか?
どうせアトラクションも4人乗りとかが殆どだろ?
まあ、友誼の言う通りだ。
「それに……」
まだ何かあるの?
友誼は私の顔を見て言った。
「初めてのデートをこんな手抜きしたくないよ」
友誼はそう言って笑った。
なんだ。友誼も頑張ればできるじゃない。
ありがとうね。
そしてテーマパークに行くと班行動をとることにした。
アトラクションが色々あって待ち時間もあったけど、友誼と幸は把握していた。
効率よくアトラクションを回ってそして昼食を食べてお土産を買うと良い時間になる。
ちょっと早いけど集合場所で待っていた。
拓斗と幸は一緒の家に住んでいるからペアのマグカップを買っていた。
まあ、羨ましいのは間違いない。
そんな表情に友誼は気づいたのだろう。
「まだ先の話なんだけど……」
「どうしたの?」
「高校卒業したら一人暮らししようと思うんだ」
何となく話は読めて来たけどとぼけてみた。
「それで?」
「よかったら一緒に暮らさないか?」
「いいの?」
友誼は私の事何も知らないでしょ?
私も友誼の事をまだそんなに知らないけど。
「それはこれから知っていけるんじゃないかって思って」
ふーん。
「一つ疑問があるんだけど?」
「何かまずい事情あるの?」
「うん」
「何が問題なの?」
不安そうな友誼の顔を見ていった。
「同棲するって意味分かってる?」
まさかそんなに広い部屋借りるわけじゃないんでしょ?
着替えとか一緒の部屋だよ?
友誼は平気なの?
すると友誼も慣れたのだろうか?
平気そうな顔をしていた。
「僕だってそこまで欲のない人間じゃないよ」
これから一緒に過ごすのなら当然欲くらい湧いて来る。
今までは昨日言ったようにあまり自信がなかった。
だから僕が聞くよ。
「修学旅行終わったらデートしないか?」
いきなりは無理だからキスくらいはしたい。
顔を真っ赤にして言う友誼が面白かった。
「それが友誼の欲なの?」
「だ、だめだったかな?」
そんな友誼にキスをしてみた。
もちろん軽くだけど。
一度に全部はもったいない。
少しずつ教えてあげる。
「デートする時には友誼から誘ってね」
「わかってる」
じゃあ、待ってるね。
ちゃんと流されないように捕まえていてね。
(4)
修学旅行3日目。
水族館に来ていた。
水族館を見て回って幸と凜がお土産を選んでいた。
「あっという間だったな」
拓斗が言う。
「そうだね」
「今日は疲れただろ?」
「まあね」
「頑張れよ」
彼女と付き合うってこんなもんじゃないぞ。
拓斗はそう言って笑う。
それでも手にしたいものがあるから努力するんだ。
努力した分だけ必ず報われるから。
「拓斗は付き合ってた時期あったんだっけ?」
「まあ、な。年上だった」
「そっか……」
「聞きたいか?」
どうせ二人共悩んでるだろうから時間あるし話してもいいぞ。
「じゃあ、聞こうかな」
「俺さ、バスケ部だったんだよね」
ミニバスからやってたらしい。
だけど親の借金の問題があって部活どころじゃなくなった。
無理矢理バイトをさせられて部活を辞めざるをえなかった。
そのバイト先で知り合った人が初めての彼女。
かなり年上だから最初は子供扱いされたそうだ。
だけど、次第に悩みを聞いたり話したりして仲良くなっていた。
そしてバイトをしている理由が一緒だと知って意気投合した。
それからは辛いバイトでも楽しかった。
だけどそんなに長く続かなかった。
ある日警察がガサ入れに来た。
未成年の拓斗を働かせていたのが発覚して摘発されてその店は閉店した。
拓斗達は別々の店に異動することになった。
拓斗もまだ子供だった。
「彼女と一緒が良い」
そう連中に訴えたらしい。
それを餌にもっと過酷な労働条件を突きつけられる。
そんな拓斗を案じたらしい。
「あんた何勘違いしてるの?」
ちょっと優しくしてやったからって彼氏になったつもり?
馬鹿な事言わないで。
私はお前みたいなガキは趣味じゃない。
拓斗はショックだったらしい。
しかし現実は甘くない。
もちろん2人は離れた場所で働かせられた。
しかし拓斗は知らなかった。
拓斗を利用して彼女に過酷な労働を強いていたらしい。
彼女にもう生きる希望は無かった。
数日後に彼女はビルから転落したらしい。
俺と同い年なのにそんな過酷な生活していたのか。
「それでさ、俺も生きる理由を失った」
そしてあの日死のうと決意した。
そこに現れたのが幸だ。
拓斗は躊躇ったらしい。
だけど、必死な幸に彼女を重ねていた。
神様がもう一度チャンスをくれたんだと思ったそうだ。
「だから、俺は幸だけは絶対に守るって誓った」
どんなことがあっても幸を幸せにすると誓った。
「そんな事があったんだ……」
「まあな。でもまだ俺も子供だ。もっと力をつけなくちゃいけない」
子供が粋がったところで大人を越える事が出来ない。
越えられると思っているうちは子供なんだ。
限界を知った時が大人になった証。
「だからさ、俺から友誼に言える事は一つだけ」
僕が凜を好きだと思ったのなら死んでも手放すな。
自分が出来る最大限の努力をしろ。
失ってしまってから後悔しても遅いんだ。
何度失敗してもいい。
だけど絶対に手放すな。
「……ありがとう」
「ま、説教臭くなってすまないな」
拓斗はそう言って笑う。
その笑顔に届くまでどれだけの辛い過去があったのだろう?
「ちょっと友誼も手伝ってよ!」
「拓斗もだよ!」
凜と幸がむくれている。
「早速苦労しようか?」
拓斗が言うと僕も立つ。
凜と2人でどこまで走れるだろう?
どこまでも走っていこう。
どんなきつい坂道も命がけで超えてやる。
(5)
私は不思議に思った。
今は帰りの特急に乗っている。
水族館でお土産を買っている時に何か話していたらしいことは間違いない。
一体何を話していたんだろう?
どんな話をしたらこんな風に短時間で友誼が変わるのだろう?
どんな感じかっていうとずっと手をつないでくれる。
特急にのって座ると友誼に抱きつくと優しく返してくれる。
あんなに恥ずかしがっていたのに。
恥ずかしいだけじゃないみたいだったのは最近知った。
悩んでいても仕方ないな。
直接聞いてみよう。
「ねえ、友誼」
「どうしたの?」
「水族館言った時、拓斗と何を話していたの?」
「ああ、それね」
友誼は笑顔で言った。
「内緒」
そう言って私の頭を撫でてくれる。
気持ち悪いとかそんな感情は一切わかなかった。
ただ嬉しいだけ。
だけど戸惑いもある。
こんな短期間に態度が変わったら私はどうしたらしいのか分からない。
「私何かヘマした?」
そんな不安すら湧いてくる。
「そうじゃないよ」
「じゃあ、何?」
彼女の私にくらい少し教えてくれてもいいじゃない。
「覚悟を決めただけだよ」
「覚悟?」
私がそう言って友誼の顔を見ると友誼はにこりと笑った。
「凜を絶対に手放さない覚悟」
「え?」
何でそうなったの?
「よく言うだろ?本当に欲しい物は失って気づくって」
だから私は絶対離さない。
そう覚悟を決めたらしい。
「やっぱり何かあった?」
「それは秘密」
「そんなに大事な恋人に秘密を作るの?」
「軽々しく話していい話じゃないから」
凜だって触れられたくない事あるだろ?
そんなにないチャンスだから。
これを失ったら二度と来ないかもしれないから。
だから必死に私を守る。
友誼はそう言った。
「本当に私でいいの?」
「今更そんな事言っても離さないからな」
「うん」
「何お前ら見せつけてくれてんだよ!」
クラスの男子がそう言ってはやし立てる。
「勝手にお前らが見てるだけじゃないか」
え?
てっきり慌てて離れると思ったのに。
「悔しいなら自分も作ってみろよ」
「なんだと?」
男子が立ち上がる。
だけど友誼は全く動く素振りをしなかった。
「悪いけど今は修学旅行中だ。文句があるなら学校で聞いてやる。大人しくしてた方がいいんじゃないか?」
「どうした!?ちゃんと座ってないとダメだろ!」
翔が注意する。
男子は何も言わずに座った。
「ちょっと友誼やりすぎ。また友誼に何かあったら……」
怪我して悲しむ私の事はいいの?
「……恋人が出来ると石原家は強くなるらしいよ?」
兄の大地は同じくらいの歳でバイクを片手で持ち上げたらしい。
だから平気だと言うけど、それじゃダメなんだよ。
「喧嘩なんてしないのが一番だから。お願いだから私の為にとムキにならないで」
「凜がそう言うなら約束するよ」
「ありがとう」
男の子ってこんなにも成長するのだろうか?
理解できないくらいの変わりようだった。
今の私にとって友誼ほど頼もしい人はいない。
友誼さえいれば生きていける。
そんな予感がした。
地元駅についてバスに乗って学校に向かう。
学校で集まって解散になる。
友誼が家まで送ってくれた。
「またね」
そう言って友誼も帰る。
家に帰って着替えてお土産渡して夕食、お風呂を済ませて部屋に戻ると、友誼からメッセージが届いていた。
「電話してもいい?」
私の夢はまだ続くようだ。
「うーんと……ここからならこっちの方が近いね。先にこっち回ろうか。凜」
「わかった、幸。ほら、友誼たちも急いで!」
「ああ、わかった」
そう言って僕と拓斗は彼女の凛と幸と一緒に京都中のパワースポットを回っていた。
全部回る気なのか?と思えるほどの異様なやる気が漂っている。
「拓斗、大丈夫か?」
「俺は慣れてるから」
拓斗はあの事件があるまでは人気者だった。
だから彼女くらいいた。
そんな彼女にすら見捨てられたから荒んでしまったのだろうけど。
拓斗は今僕の家に住んでいる。
「中学生の一人暮らしはさすがにまずいでしょ」
母さんがそう言った。
中学生の交際相手を同室にするのは不味くないのだろうか?
「中学生なら普通だって愛莉ちゃん達から聞いたわよ?」
どうせ処女なんてもの大切にしていてもしょうがないからさっさとプレゼントしてあげなさい。
母親なのだろうか?という発言を偶にするのが母さんだった。
そして父さんが片桐さん達と飲みに行こうとすると「だから男だけで飲もうなんてずるい真似はやめなさい!」とついていく。
ちなみに妹の杏采はまだらしい。
「どうしてかな?」
そんな悩みを兄妹でしてた。
僕にどんな回答を求めているのか分からなかった。
父さんは「うちの娘の何が気に入らないんだ!?」とか怒鳴る父親じゃない。
そんな父親がいるのかって?
いるのがこの世界なんだよ。
僕達は修学旅行で京都に来ている。
一日目は京都で自由行動。
タクシー乗り放題で京都から出なければどこに行ってもいい。
僕と幸と凜と拓斗で班を組んでいた。
タクシーに乗っている間も2人でパンフレットを見ながら相談している。
さすがにたまらなかったのか拓斗が言った。
「昼飯くらい食わないか?」
「それなら食べたでしょ……」
「幸の家では抹茶パフェが昼食なのか?」
「だからわらび餅くらい食べておいたら?って言ったじゃない」
「そういう問題なのか?」
「一食抜いたくらいで死にはしない」
暴論だったが、僕達は大人しく従う。
昼飯を食べた代償に彼女の機嫌を取り戻すのはデメリットが大きすぎる。
大体の場所を回ると幸たちが言った。
「好きなもの食べていいよ」
僕と拓斗は悩んだ。
京都って何が美味いんだ?
和菓子と京料理くらいしか思いつかない。
京料理を食べるだけの小遣いは持っているけど、時間が足りないだろう。
「無難に行こう」
そう言って僕達が答えた。
「へ?」
幸と凜は驚いていた。
しかし約束は守ってくれた。
スマホで検索して近くにある美味しいラーメン屋さんに入る。
一日彼女のパワースポット巡りに付き合った恩恵がラーメンだった。
しかし胃と心に染みる。
ありがたく味わっているのを幸と凜は笑ってみていた。
「でも、この事は母さんには黙っておいた方がいいと思うよ」
「どうして?」
幸は笑って答えていた。
「彼女との夕食がラーメンなんて知れたら絶対母さん怒るよ」
(2)
「うーん……」
私達は夕食を食べた後、ホテルに戻って風呂に入っていた。
そして凜は私の体を見て何か考えている。
「凜、どうしたの?」
「こんな事を幸に聞いていいのかわからないけどさ……ぶっちゃけ幸は拓斗と最後までやったんだよね?」
「まあね……ってちょっと待って」
凜はまだなの?
「私はほら……あれだからいいんだけど、友誼は多分初めてなんだよね?」
まあ、彼女がいたって話は聞いたことないからそうだと思うけど。
「でさ、私じゃまだ子供なのかなって思って」
私の体型と自分を比べていたらしい。
なるほど、友誼はまだだったのか。
それはまずい気がするのは私だけだろうか?
とりあえず風呂を出て服を着ながら凜を慰めた。
「それはないよ。だってそれなら……」
「でも相手がロリコンだったって事も考えられるでしょ?」
「凜の相手ってそういう人達ばかりなの?」
「まあね……」
本当は人見知りで男子に声をかける事すら恥ずかしいらしい。
よくそれでやってこれたな……。
「多分それ友誼が気を使ってるんじゃないかな?」
「どういう事?」
「友誼まで凜の体目当てなんて思われるんじゃないかって奥手になってるだけだと思う」
「それって言い方変えたら私信用されてないって事じゃない?」
「そうだよね」
でもそれはない。
単に自分が未経験だから凜に馬鹿にされるんじゃないか?
男ってそんなしょうもない事で悩むもんだって姉さんたちが言ってた。
ならやる事は一つしかない。
「凜、行くよ」
「行くってどこに?」
もうすぐ消灯時間だよ?
凜はそう言うけど部屋をこっそり出て友誼たちの部屋に行く。
「こんばんは~」
「幸!?もう消灯時間過ぎてる。それに女子が来たらやばいだろ!」
「そう思うんだったら静かにして!」
私と凜は取りあえず部屋の中に入れてもらった。
「一体何があったんだ?」
拓斗が聞く。
「拓斗から友誼に説明してあげて」
「何をだ?」
拓斗に事情を説明する。
事情を聞いた拓斗は笑っていた。
「確かにそれは幸の言う通りかもしれないな」
拓斗は理解したらしい。
凜は理由が分からずに不安そうにしていた。
しかしこの際だからと聞いてみたくなったんだろう。
「やっぱり私みたいな女子じゃ友誼とつり合い取れないかな?」
そんな事つり合い取れるなんて自信過剰の中学生がいたらその鼻の柱をへし折ってやる。
拓斗も同じだったようだ。
拓斗は友誼に言った。
「俺からお前の気持ちを代弁してやってもいいが、それはあまりにも情けなくないか?心配するな。お前の思ってるような子じゃないよ」
だから友誼も凜を選んだんじゃないか。
その場の勢いで掴んだ物かもしれないけどそれが友誼を変える信号だよ。
思ったことを恋人に伝える事も大事だぞ。
拓斗はそう言った。
友誼は考えてそして言った。
「俺は凜を満足させられるか自信がなかった。経験豊富な凜を満足させてやれるのか不安だった」
思った通りだ。
「あのさ、友誼は勘違いをしてる」
「え?」
「そんな風に思われてた凜が可哀そうだよ」
男子ってみんなそうなの?
女子だって心があるんだよ?
友誼の事だから凜のその部分には触れない方がいいとか思ってるんだろうけど、そうじゃない。
それでも大丈夫って安心させてやる事が大事なんだよ。
女子は体だけで快楽を得ているわけじゃない。
友誼の心で自分の心に優しく触れて欲しい。
凜のやってきた事実は変わらない。
でも、それでも凜は恋に焦がれる中学生だ。
それに応えてやれるのは友誼だけなんだよ。
「私も怖かった。あんなことをしてきた私は友誼に嫌われているんじゃないかっていつも不安だった」
凜が今にも泣きそうな声で言った。
「ごめん、凜」
「大丈夫。私で大丈夫かな?」
「凜以外に誰もいないよ」
これは良いムードだな。
私は拓斗に耳打ちした。
「それもそうだな」
「じゃ、今夜は2人で過ごしなよ」
「え?」
凜も驚いていた。
「私達部屋に戻ってるから」
さすがに部屋に誰もいないのはまずいでしょ。
「で、でも……」
凜が何を言おうとしたか予測できたのでポケットから取り出した。
使い方は凜も知ってるでしょ。
「じゃね~」
そう言ってドアを開けて部屋に戻ろうとした。
「全く……一々手を焼かせるんだな」
部屋の前には担任の高槻翔がいた。
「翔~、二人に修学旅行の思い出作ってあげようよ」
「そんな修学旅行の思い出がある中学生がいるわけないだろ」
私達は通路に正座させられ仲良く叱られた。
「修学旅行の思い出ならそれでいいだろ」
そう言って翔は笑っていた。
(3)
「おはよう」
「おはよう」
修学旅行2日目。
昨夜は翔に遅くまで説教を受けていた。
さすがに中学生だ。
目の隈をそのままにして彼氏に会うなんて無理だ。
洗面台で鏡を見て確認する。
大丈夫みたいだ。
制服に着替えると部屋を出る。
朝食を食べに行く途中で友誼たちと会う。
「昨日は大変だったね」
友誼がそう言って笑う。
「ごめんね」
「あ、いや。僕こそごめん……」
友誼がそう言うと幸が友誼の尻を蹴飛ばす。
「そんな事気にする前に彼女に言うことくらいもっと他にあるんじゃないの?」
すると友誼は何か考えていた。
「綺麗だよ」
嬉しいけど、もっと喜ばせて欲しい。
少し意地悪してみた。
「あのさ、朝起きたてで何もしてないのにそんな事言ってもお世辞にしか聞こえないよ」
「あ……」
しまったって顔している友誼を見ていた。
心配しなくても修学旅行の日に気合入れて化粧する中学生なんていないよ。
そんな困っている友誼を堪能すると私は友誼の腕に抱きつく。
「お腹空いたでしょ?早く行こう?」
「そ、それはいいんだけどこの状態はまずいんじゃないか?」
「あら?彼氏と腕を組んでいてまずい事なんてないと思うけど?」
「そ、それならいいんだ」
昨日翔の説教を受けた後、幸から色々聞いていた。
とにかく友誼は奥手だからガンガン攻めるのみ!
心配しなくてもちゃんと友誼は受け止めてくれる。
そう聞いたから朝から張り切ってみた。
もちろん他のクラスメートからの視線は気になったけど。
その程度今の幸せな気分に比べたらどうってことない。
ご飯を食べながら今日の行動を相談していた。
今日は大阪のテーマパークで自由行動。
私は始めて来るけど友誼と幸は来たことがあるらしい。
「まあ、あの人混みなら別行動でもいいんだろうけど」
幸はそう言ったけど友誼は違うようだ。
「兄さんが言ってたんだけど……」
この先私達が続いていくなら2人で来る機会なんていくらでもある。
でも私達4人で来ることなんてそんなにないはず。
だから4人で遊ばないか?
どうせアトラクションも4人乗りとかが殆どだろ?
まあ、友誼の言う通りだ。
「それに……」
まだ何かあるの?
友誼は私の顔を見て言った。
「初めてのデートをこんな手抜きしたくないよ」
友誼はそう言って笑った。
なんだ。友誼も頑張ればできるじゃない。
ありがとうね。
そしてテーマパークに行くと班行動をとることにした。
アトラクションが色々あって待ち時間もあったけど、友誼と幸は把握していた。
効率よくアトラクションを回ってそして昼食を食べてお土産を買うと良い時間になる。
ちょっと早いけど集合場所で待っていた。
拓斗と幸は一緒の家に住んでいるからペアのマグカップを買っていた。
まあ、羨ましいのは間違いない。
そんな表情に友誼は気づいたのだろう。
「まだ先の話なんだけど……」
「どうしたの?」
「高校卒業したら一人暮らししようと思うんだ」
何となく話は読めて来たけどとぼけてみた。
「それで?」
「よかったら一緒に暮らさないか?」
「いいの?」
友誼は私の事何も知らないでしょ?
私も友誼の事をまだそんなに知らないけど。
「それはこれから知っていけるんじゃないかって思って」
ふーん。
「一つ疑問があるんだけど?」
「何かまずい事情あるの?」
「うん」
「何が問題なの?」
不安そうな友誼の顔を見ていった。
「同棲するって意味分かってる?」
まさかそんなに広い部屋借りるわけじゃないんでしょ?
着替えとか一緒の部屋だよ?
友誼は平気なの?
すると友誼も慣れたのだろうか?
平気そうな顔をしていた。
「僕だってそこまで欲のない人間じゃないよ」
これから一緒に過ごすのなら当然欲くらい湧いて来る。
今までは昨日言ったようにあまり自信がなかった。
だから僕が聞くよ。
「修学旅行終わったらデートしないか?」
いきなりは無理だからキスくらいはしたい。
顔を真っ赤にして言う友誼が面白かった。
「それが友誼の欲なの?」
「だ、だめだったかな?」
そんな友誼にキスをしてみた。
もちろん軽くだけど。
一度に全部はもったいない。
少しずつ教えてあげる。
「デートする時には友誼から誘ってね」
「わかってる」
じゃあ、待ってるね。
ちゃんと流されないように捕まえていてね。
(4)
修学旅行3日目。
水族館に来ていた。
水族館を見て回って幸と凜がお土産を選んでいた。
「あっという間だったな」
拓斗が言う。
「そうだね」
「今日は疲れただろ?」
「まあね」
「頑張れよ」
彼女と付き合うってこんなもんじゃないぞ。
拓斗はそう言って笑う。
それでも手にしたいものがあるから努力するんだ。
努力した分だけ必ず報われるから。
「拓斗は付き合ってた時期あったんだっけ?」
「まあ、な。年上だった」
「そっか……」
「聞きたいか?」
どうせ二人共悩んでるだろうから時間あるし話してもいいぞ。
「じゃあ、聞こうかな」
「俺さ、バスケ部だったんだよね」
ミニバスからやってたらしい。
だけど親の借金の問題があって部活どころじゃなくなった。
無理矢理バイトをさせられて部活を辞めざるをえなかった。
そのバイト先で知り合った人が初めての彼女。
かなり年上だから最初は子供扱いされたそうだ。
だけど、次第に悩みを聞いたり話したりして仲良くなっていた。
そしてバイトをしている理由が一緒だと知って意気投合した。
それからは辛いバイトでも楽しかった。
だけどそんなに長く続かなかった。
ある日警察がガサ入れに来た。
未成年の拓斗を働かせていたのが発覚して摘発されてその店は閉店した。
拓斗達は別々の店に異動することになった。
拓斗もまだ子供だった。
「彼女と一緒が良い」
そう連中に訴えたらしい。
それを餌にもっと過酷な労働条件を突きつけられる。
そんな拓斗を案じたらしい。
「あんた何勘違いしてるの?」
ちょっと優しくしてやったからって彼氏になったつもり?
馬鹿な事言わないで。
私はお前みたいなガキは趣味じゃない。
拓斗はショックだったらしい。
しかし現実は甘くない。
もちろん2人は離れた場所で働かせられた。
しかし拓斗は知らなかった。
拓斗を利用して彼女に過酷な労働を強いていたらしい。
彼女にもう生きる希望は無かった。
数日後に彼女はビルから転落したらしい。
俺と同い年なのにそんな過酷な生活していたのか。
「それでさ、俺も生きる理由を失った」
そしてあの日死のうと決意した。
そこに現れたのが幸だ。
拓斗は躊躇ったらしい。
だけど、必死な幸に彼女を重ねていた。
神様がもう一度チャンスをくれたんだと思ったそうだ。
「だから、俺は幸だけは絶対に守るって誓った」
どんなことがあっても幸を幸せにすると誓った。
「そんな事があったんだ……」
「まあな。でもまだ俺も子供だ。もっと力をつけなくちゃいけない」
子供が粋がったところで大人を越える事が出来ない。
越えられると思っているうちは子供なんだ。
限界を知った時が大人になった証。
「だからさ、俺から友誼に言える事は一つだけ」
僕が凜を好きだと思ったのなら死んでも手放すな。
自分が出来る最大限の努力をしろ。
失ってしまってから後悔しても遅いんだ。
何度失敗してもいい。
だけど絶対に手放すな。
「……ありがとう」
「ま、説教臭くなってすまないな」
拓斗はそう言って笑う。
その笑顔に届くまでどれだけの辛い過去があったのだろう?
「ちょっと友誼も手伝ってよ!」
「拓斗もだよ!」
凜と幸がむくれている。
「早速苦労しようか?」
拓斗が言うと僕も立つ。
凜と2人でどこまで走れるだろう?
どこまでも走っていこう。
どんなきつい坂道も命がけで超えてやる。
(5)
私は不思議に思った。
今は帰りの特急に乗っている。
水族館でお土産を買っている時に何か話していたらしいことは間違いない。
一体何を話していたんだろう?
どんな話をしたらこんな風に短時間で友誼が変わるのだろう?
どんな感じかっていうとずっと手をつないでくれる。
特急にのって座ると友誼に抱きつくと優しく返してくれる。
あんなに恥ずかしがっていたのに。
恥ずかしいだけじゃないみたいだったのは最近知った。
悩んでいても仕方ないな。
直接聞いてみよう。
「ねえ、友誼」
「どうしたの?」
「水族館言った時、拓斗と何を話していたの?」
「ああ、それね」
友誼は笑顔で言った。
「内緒」
そう言って私の頭を撫でてくれる。
気持ち悪いとかそんな感情は一切わかなかった。
ただ嬉しいだけ。
だけど戸惑いもある。
こんな短期間に態度が変わったら私はどうしたらしいのか分からない。
「私何かヘマした?」
そんな不安すら湧いてくる。
「そうじゃないよ」
「じゃあ、何?」
彼女の私にくらい少し教えてくれてもいいじゃない。
「覚悟を決めただけだよ」
「覚悟?」
私がそう言って友誼の顔を見ると友誼はにこりと笑った。
「凜を絶対に手放さない覚悟」
「え?」
何でそうなったの?
「よく言うだろ?本当に欲しい物は失って気づくって」
だから私は絶対離さない。
そう覚悟を決めたらしい。
「やっぱり何かあった?」
「それは秘密」
「そんなに大事な恋人に秘密を作るの?」
「軽々しく話していい話じゃないから」
凜だって触れられたくない事あるだろ?
そんなにないチャンスだから。
これを失ったら二度と来ないかもしれないから。
だから必死に私を守る。
友誼はそう言った。
「本当に私でいいの?」
「今更そんな事言っても離さないからな」
「うん」
「何お前ら見せつけてくれてんだよ!」
クラスの男子がそう言ってはやし立てる。
「勝手にお前らが見てるだけじゃないか」
え?
てっきり慌てて離れると思ったのに。
「悔しいなら自分も作ってみろよ」
「なんだと?」
男子が立ち上がる。
だけど友誼は全く動く素振りをしなかった。
「悪いけど今は修学旅行中だ。文句があるなら学校で聞いてやる。大人しくしてた方がいいんじゃないか?」
「どうした!?ちゃんと座ってないとダメだろ!」
翔が注意する。
男子は何も言わずに座った。
「ちょっと友誼やりすぎ。また友誼に何かあったら……」
怪我して悲しむ私の事はいいの?
「……恋人が出来ると石原家は強くなるらしいよ?」
兄の大地は同じくらいの歳でバイクを片手で持ち上げたらしい。
だから平気だと言うけど、それじゃダメなんだよ。
「喧嘩なんてしないのが一番だから。お願いだから私の為にとムキにならないで」
「凜がそう言うなら約束するよ」
「ありがとう」
男の子ってこんなにも成長するのだろうか?
理解できないくらいの変わりようだった。
今の私にとって友誼ほど頼もしい人はいない。
友誼さえいれば生きていける。
そんな予感がした。
地元駅についてバスに乗って学校に向かう。
学校で集まって解散になる。
友誼が家まで送ってくれた。
「またね」
そう言って友誼も帰る。
家に帰って着替えてお土産渡して夕食、お風呂を済ませて部屋に戻ると、友誼からメッセージが届いていた。
「電話してもいい?」
私の夢はまだ続くようだ。
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