姉妹チート

和希

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眩い未来

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(1)

「どうしたの?冬眞」

 私はセーラー服に着替えながらもじもじしている冬眞を見ていた。

「い、いや。莉子は気にならないのか?」
「なにが?」

 どうしてそうなったのか分からないけど私を見ているのが恥ずかしいらしい。
 そして体の一部の異変を隠しているそうだ。
 しょうがないな。
 そんなことしてると意地悪したくなるのが片桐家の娘なんだよ?
 私は冬眞を背後から抱きしめる。

「ちょ、ちょっとまって!」
「今さら気にしなくていいじゃん。ずっと一緒だったのに」

 何を今さらそんなに気にするの。

「なんか、莉子を見てると平静でいられなくなるんだ」

 顔を真っ赤にして俯いている冬眞。

「少しは私女の子らしくなったのかな?」
「……胸は膨らんできてると思う」

 それだけでなく体つきがとても魅力的なんだそうだ。

「そんな事言われてもまだ私中学生だよ」

 高校生とかになったらどうするの?
 それにそんなこと言ってたら私はいつ冬眞に抱いてもらえるの?

「しょうもない事考えてないで早く着替えないと遅れちゃうよ」
「莉子は平気なのか?」
「今さらじゃん」

 そういうと冬眞は着替えだした。
 その間に私は洗面所に向かう。
 パパ達がすでに朝食を済ませていた。

「莉子も大きくなったんだね」

 パパはそう言ってくれた。
 冬莉達もやってたな。
 試してみよう。
 私はパパに抱きついて甘い声で言ってみる。

「私と愛莉どっちがいい?」
「ごめんね。やっぱり愛莉の方がいいな」

 多分そう言うと思った。

「莉子!冬夜さんから離れてさっさと仕度しなさい」

 愛莉が怒りだすのも分かっていた。
 冬眞も私の事をそんな風に思ってくれる時が来るのだろうか?
 準備を済ませると冬眞も着替え終えたみたいだ。
 呼び鈴が鳴る。
 多分歩美たちだろう。
 私はパパ達と家を出て中学校に向かう。
 歩美と崇博も両親と一緒だった。
 歩美の父さんがパパに何か言ってる。

「冬夜の娘はどうしてみんなバランスよく発達していくんだ?」
「そんなの僕に言われて分かるわけないだろ?」
「娘がいるのに朝から馬鹿な事言ってるんじゃねえ!」

 最後は歩美の母さんに叱られるまでがオチ。
 もちろん冬眞に「気にしたらダメ!」と注意するんだけど。

「私は残念だけど愛莉の方がいいってパパに言われたよ」
「そ、そうなんだ」
「へえ、莉子はそうだったんだ?」

 歩美が聞いてきた。
 
「歩美は違うの?」

 まあ、パパが特殊だって愛莉が言ってたけど。
 歩美はため息をついて言った。
 歩美も朝制服姿を父さんに見せたらしい。
 すると感動していたそうだ。

「やっぱり靴下は白だよな!」

 歩美も意味が分からなかったらしい。
 そして朝から夫婦喧嘩を始めた。
 それでも懲りないのが歩美の父親だ。
 歩美の胸を変な目で見ていたらしい。

「歩美は結構いい線いくんじゃないのか?」
「お前は人が気にしていることをズバズバと言いやがって!」

 水奈の胸が小さいのは私のせいだと言いたいのか!?
 私は水奈にも追い越されて傷ついてるんだぞ!
 そんな風に喧嘩の絶えない夫婦だけどしっかり愛情があるらしいのは、去年の誠司の事件の時に知ったと歩美が説明していた。
 
「なあ?冬眞。聞いてもいいか?」
「どうした崇博?」

 そんなに女性の胸って気になるか?
 エロ画像なんていくらでもあさればあるのにどうしてなのか分かんないらしい。
 崇博は父の趣味が理解できなくて困っているそうだ。

「そんなもんしなくていい!」

 母さんに叱られたらしい。
 歩美にも言われたそうだ。

「結構気にする女子多いから面と向かって聞かない方がいいよ」

 それは冬眞も同じ事を考えていたらしい。

「お前、杏采の見た事あるか?」
「あるわけねーだろ」
「多分本物見たら分かると思う」

 冬眞は私の胸を見てドキドキしたらしい。
 それは良いんだけど。

 ぽかっ

「そういう事を他人にべらべら喋るのはダメ!」

 そういうところに鈍いのはパパに似たんだろうと愛莉が言ってた。
 そんな私達を見て愛莉が歩美の母さんに言っていた。

「崇博君、やっぱり誠司君とはちがうみたいだね」
「そうなんだ。あいつはどういうわけか普通なんだ」

 歩美の父さんの影響を全く受けないで育っている。
 だけどこれから思春期だ。
 今まで以上に気をつけないとと歩美の母さんは言っていた。
 学校に近づくと杏采や千帆達に会う。
 当然両親も来ていた。
 
「全く……望には毎回世話やかせられるわ」
 
 杏采の母親が言っていた。
 朝から緊急の呼び出しが会社からあったそうだ。
 理由は官僚が地元を発つ前にちょっと挨拶しておきたいから。
 当然杏采の母親は引き留めた。

「そんなくだらない理由に付き合う暇が今日あると思ってるの!?」

 大臣との会食よりも一家団欒を優先する杏采の母親。
 同様の理由で善斗達の父親も呼び出されていたらしい。
 そして母親の怒りを買う。
 2人の父親はパパと話をしていた。

「瑛大……どうだった?」

 歩美の父さんが千帆達の父親に聞いていた。

「……あと一歩でしくじったよ」
「当たり前だこの変態!」

 千帆達の父親は母親に怒られている。

「何かあったの?」

 私達は千帆に聞いていた。

「莉子の父親が羨ましいよ……」

 千帆はそう言ってため息をついていた。

「初めて制服着るんだろ?パパが教えてやるから……」
「着替え中に部屋に入ってこないで!変態!」
「お前は朝の忙しい時に何馬鹿な事やってるんだ!」

 歩美は千帆達に同情していた。
 千帆達は部屋に鍵をつけてもらう予定らしい。
 歩美も水奈の部屋を使ってるそうだ。
 鍵をつけてあるから。
 私と冬眞の部屋にも鍵をつけてもらった。
 理由は若干違う。

「誰かに入ってこられるとびくびくしながらは可哀想ですよ」

 愛莉がパパにそう言っていた。
 パパはただ笑っていた。
 遠坂のお爺ちゃんとその晩飲んだらしい。
 私達は皆同じクラスだった。
 たぶんそうなるだろうとパパが言っていた。
 教室に入って席に座る。
 しばらくして教師が入ってきた。
 黒板に名前を書いていた。
 川島琴葉というらしい。
 まだ新米教師だそうだ。
 説明しながら色々配っていく。
 それが終ると体育館に入る。
 入学式だから当然だろう。
 校長が長々と話していた。
 天音が言ってた。

「あいつは禿だから話が長い」

 それは冬眞も崇博も聞いている。
 2人とも校長がヅラだと知っていたから笑いをこらえるので必死だったらしい。
 入学式が終ると教室で話があって、そして下校になる。 
 本格的に授業があるのは来週かららしい。
 私達は回転寿司屋に行く。
 私と冬眞と他の姉弟の決定的な違い。
 それは食欲。
 茜も純也もそうだったかな。
 冬莉や冬吾達は底なしに食べる。
 だけど私はもちろん冬眞もそんなに食べない。

「そこだけは空達を見習わなかったんだな」

 歩美のお母さんがそう言って笑っていた。
 
「ちょっと待ってよ!それ反則じゃない!?」

 千帆の母さんが言う。

「片桐君の子供で致命的な弱点すらないなんて、いくらなんでも反則じゃない!」

 杏采達の母さんも言っていた。
 
「そうなのよ。おまけに茜達と違ってちゃんと風呂も入るし洗濯物も出すの」

 愛莉も不思議そうに言っていた。

「どんな教育したらそうなるのか教えてよ。愛莉!」
「そうだぞ!食欲丸出しじゃないトーヤなんて変態癖の無い誠並みに完璧じゃないか」

 千帆の母さんと歩美の母さんは聞いていた。
 「子供の教育係に愛莉を雇いたい!」と杏采の母さんは言っていた。
 ちなみにパパは愛莉の隣でマイペースで寿司やらサイドメニューを制覇しようとして愛莉に怒られてた。
 これでも社長なんだけどな~。
 兄の空が同僚の女性と仲良くしてるところを写真に収めてグル通に流して義姉の美希を困らせている。
 当然愛莉に怒られてるけど。
 昼食が終ると家に帰る。
 制服を着替えると私は上着だけ洗濯機に入れる。
 ちゃんと着替えに何着か余計に買ってくれたから。
 夕食を食べて風呂に入る。
 年功序列というわけではない。
 冬莉が入るとその後に入る。
 さすがに冬眞と一緒に入るのは恥ずかしいから止めた。
 そして私が出るといつもの恒例の行事が待っている。

「茜!風呂に入りなさい」
「今日休みで家を一歩も出ていないから問題ない!」
「あなた結婚してもそれを続けるつもりなの!?」
「壱郎がプロポーズしてきてからでも問題ないじゃん!」

 どうしてそんなに風呂を嫌がるのかよく分からない。
 愛莉が放っておくと下着すら着替えない。
 女子としてそれはどうなんだろうか?
 私は部屋に入ると髪を乾かす。
 その様子を冬眞はじっと見ていた。

「どうしたの?」
「いや、最近思ったんだけどさ……」

 俺達付き合ってるんだよな。
 本当に今さら何を言ってるんだろう?

「それと私がドライヤーかけてるのとどう関係あるの?」
「女子ってさ、好きな人の為に一生懸命綺麗になろうとしてるんだろ?」

 冬莉ですら彼氏が出来て変わった。

「まあ、大半の女子はそうだろうね」
「それを俺は目の当たりにしてるんだよな?」

 俺の為に彼女が努力してくれてるんだって思ったら、俺はどうしたらいいんだろうって思って……。

「冬眞は問題ないよ」
「どうして?」
「だって私の相手してくれてるじゃない」

 いつもそばに居てくれる。
 一緒に寝てくれる。
 しかも朝はキスしてくれる。
 今の段階でこれ以上の嬉しい事はない。

「そんなもんか?」
「凄いイケメンってわけじゃないけど、普通だと思うし、私がちゃんと服選んでるから」

 身だしなみがだらしないわけでもないし文句言えってのが無理があるよ。

「それならいいんだ」
「これからもよろしくね」

 きっと色んな事があるだろうから。
 私のドライヤーが終ると一緒にテレビを見て寝る事にした。
 新しい学び舎での生活が始まった。

(2)

「あのさ~冬眞」
「どうした?」
「人を殴り飛ばす前に話を聞いた方がいいんじゃない?」
「莉子の友達ってわけじゃなさそうだったから……で、何かあったの?」

 莉子に事情を聴いた。
 俺が殴り飛ばしたのはFGの人間だったらしい。
 
「FGに入るか金を払うかどっちを選ぶ?」

 やっぱり殴り飛ばして正解だったみたいじゃないか。

「まあ、そうなんだけどね」

 しかし周りの連中はそうは思わなかったみたいだ。
 教室にいたほとんどの男子生徒が立ち上がる。
 しかしそんな事どうでもいい。

「崇博が今日は練習あるから先に帰るって言ってた」
「そうなんだ」
「おい、俺達を無視してるんじゃねーぞ」

 男子生徒が立ち上がった。

「なんか問題あった?」

 何となく想像ついたけど取りあえず聞いてみた。

「FGにたてついて無事に帰れると思ってるんじゃねーだろうな!?」

 去年はSHだと思ったら今年はFGか。
 本当に忙しいな。

「莉子~またエビマヨしかないとかなってもしらないよ~」

 千帆達が遅いから様子を見に来たらしい。
 一緒に善斗達もいる。

「なんかあったの?」

 岳也が聞いてきたので答えた。

「なんか自殺願望あるらしい」

 俺達にわざわざ「俺達はFGだ」と名乗ったと伝えた。

「ふーん」

 千帆がスマホを弄ってる。
 その間に時間つぶしに会話でもするか。

「紀州南高梅が無くなってしまうかの重大な事態になってる。大人しく立ち去れば命は助けてやる」

 エビマヨだけになったら莉子が怒るぞ?
 俺も最悪ツナマヨにしたい。

「なめてんじゃねーぞ!」

 一人襲い掛かって来た。
 善斗が殴り飛ばす。

「この程度の雑魚で冬眞が手を出すまでも無いよ」

 そして彼等のチャンスは無くなった。

「殺すなよって返事来た」

 殺すのは天音達の役割だ。
 病院送りくらいで止めとけ。
 難しい注文だな。
 俺達中学生になったばかりだぞ。
 そして致命的なのが。

「崇博からメッセージ来た。もう南高梅ないってさ」

 あーあ。
 立場が逆転したようだ。

「残念だったな。お前らがFGだと聞いた以上俺達はお前たちを放っておけない」

 病院送り程度で許してくれるらしいぞ。
 よかったな。
 この雑魚共はちょっと挑発するとすぐムキになって仕掛けてくる。
 しかしだいたいが善斗と岳也で済んでしまった。
 
「お前ら、俺たちの怒りはどうするんだ?」
「冬眞は最初に一匹殴り飛ばしたからいいじゃん!」

 まあ、そんな騒ぎをしていたら担任の川島琴葉こと琴葉ちゃんがやって来た。

「これは一体どういうこと?」

 琴葉ちゃんが聞いてくると莉子が答えた。

「僕達を病院送りにして下さいって言うから叶えてあげたつもりだけど……」

 まだ足りなかったかな?

「とにかく片桐君達は職員室に来なさい!」
「は~い」

 莉子が答えるけどきっと機嫌が悪いだろう。
 おにぎり食い損ねた。
 怒りを発散させることもできない上に職員室に呼び出しだ。
 多分愛莉呼ばれるだろうな。
 明日こいつら確実に埋めてやらないと気が済まない。
 そして想像通り愛莉が呼ばれた。
 しかし意外なのが天音が来た。

「琴葉。こいつらゴキブリ駆除しただけだから許してやってくんね?」
 
 天音の知り合いなのか。

「その話は聞いてる。でも私の立場も考えてよ」

 無罪放免ってわけにはいかないらしい。

「それは私達がもみ消してやるから心配しなくていい」

 そう言ったのは岳也の母親だった。
 しかし、愛莉はそうは考えてなかったみたいだ。

「莉子!毎日放課後におにぎり食べて、太っても母さんは知りませんよ!」
「一個しか食べてないから大丈夫だって」
「そんなわけ無いでしょ!」

 愛莉にとってけが人より莉子の体型の方が重要らしい。
 善斗達の親も加わって「勝手に教室で同士討ち始めた」で済んだ。
 家に帰って父さんに怒られるとは思わなかった。

「父さんもエビマヨだけはダメなんだ」

 ほらね。
 夕飯を食べ終わると風呂に入って茜と愛莉の攻防を横目に部屋に戻る。
 どうしてあんなに風呂に入りたがらないのか気になるけど、莉子に怒られるから言わなかった。

「しかしFGが動き始めたみたいだな」

 そんなグルチャが流れていた。

「しかしまだ物足りない」

 中坊袋にしたくらいじゃ頭は出てこないし、引きずり出せないだろう。
 もっと上が出てこないと物足りない。
 それでも放置しておく理由にはならない。
 死にたいなら片っ端から殺してやれ。
 空の判断だった。
 ちなみに琴葉ちゃんは空の後輩らしい。
 だから琴葉はFGの事を聞いていた。
 学校で暴れる分には何の不都合はないと聞いた。
 そしてこれをきっかけに闘争は中学校だけでは収まらないとんでもない規模になる。
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