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またね
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(1)
「まさ君」
学校が終ると夏希が声をかける。
夏希は僕の事を「まさ君」と呼ぶようになっていた。
僕達くらいの歳で女子と交際をするのは、この世界では当たり前らしくて特に冷やかされたりすることはない。
「どうしたの?」
「5月の連休どうするの?」
父さんの渡辺班も5月の連休はあまり予定を立てない。
今年は特に見たい映画もないし、家で勉強してるかな。
そう夏希に伝えると夏希がしかめっ面になった。
「そんな事だろうと思ったよ」
夏希と付き合い始めてメッセージや電話はしてるけど特に遊びに誘ったりはしたことが無い。
「少しは彼女に構ってくれてもいいんじゃない?」
「それってデートのお誘い?」
「それくらいまさ君から誘ってよ」
「んじゃどこか行く?」
「うん」
夏希は嬉しそうにしている。
でもどこに行く?
「まさ君慣れてなさそうだもんね……」
まあ、デートしたことないし。
「でも私が考えたらまさ君ずっとそのままになっちゃうし……まさ君が考えてみて」
「わかった」
「いつにする?」
宿題とかも片付けておきたいしな。
「連休最終日でいい?」
「最終日でいいの?」
お泊りできないよ?
夏希が言う。
高校生のデートでお泊りなんてあるのだろうか?
「さすがに今から連休に宿を予約するなんて無理だよ」
それに初デートだし。
「分かった。楽しみにしておくね」
僕と夏希は家が違う方向にあるので校門で分かれる。
その夜父さんに相談していた。
茉里奈も相談に加わっていた。
「そうだな、初めてなら。映画にカラオケ程度でいいんじゃないのか?」
父さんはそう言ったけど、茉里奈は違うようだ。
「ちょっと待ってろ」
そう言って茉里奈は部屋に戻ると何かを持って来た。
「女子に恥かかせるんじゃねーぞ。金と誘い方くらい調べとけ」
初めてのデートでそうなることがあるのだろうか?
「まあ、夏希さんは初めてじゃないだろうし心構えくらいはしておくべきだろうな」
だけど決して下心を表に出すな。
あくまでも彼女の望みを叶えてやれ。
父さんはそう言う。
それから部屋に戻って映画を調べてみた。
流石に高校生で探偵アニメはまずいかな。
無難にアクション映画にしておいた。
時間を調べていて気付いた。
映画館どっちがいいだろう?
ショッピングモールのほうが夏希の家からは近い。
やっぱりそっちの方がいいのだろうか?
夏希に聞いてみた。
「駅ビルの映画館にしようよ」
「どうして?」
「映画の後どうするか考えた?」
「カラオケに行こうと思ったけど」
「2人でずっとカラオケしてるの?」
「夏希は他に何かしたいことあるの?」
「うん」
「じゃあ、宗麟像の前に9時で」
「分かった。ありがとうね」
その後茉里奈にどんな格好したらいいか?何か気をつける事は無いか?とか色々聞いておいた。
当日、着替えて身支度をする。
「お、正俊。今日デートか?」
父さんが声をかけて来た。
母さんは流石に連休は稼ぎ時なので休めない。
「遅くならないようにしなさいとは言わんが……夏希さんの親への配慮も忘れるな」
初日から深夜まで一緒にいたりしたら次誘いづらくなるぞ。
父さんがそう言うけど、18時頃には帰る予定だと伝えた。
父さんは笑った。
「お前ももう高校生だろ。せめて夕食くらいは一緒に食べてやれ」
父さんは小遣いをくれた。
そして僕は家を出て、バス停に向かった。
(2)
「お、夏希。出かけるのか?」
秀史が声をかけて来た。
「うん。デート」
「今夜帰ってくるのか?」
まさ君にそれは期待していない。
「秀史悪いけど夕飯は自分で食べて」
「分かってる。楽しんでこい」
そう言って家を出るとバス停に向かう。
久しぶりのデート。
まさ君とは初めてのデート。
楽しみにしていた。
まさ君の性格を考えるとそこまでは期待してない。
でもそれでいいんだ。
のんびり2人で恋愛を楽しめたらいい。
好きって感情を2人で育んでいけたらいい。
駅前のバス停に着いた。
先に来ていたようだ。
いつもと違う服装だけど、まさ君の図体だと目立っている。
「おまたせー」
「あ、こんにちは」
デートだという事で少しは身だしなみに気を配って来たのだろう。
まさ君に姉がいる事は聞いていた。
だからこんな意地悪を言ってみた。
「お姉さんに服を選んでもらったの?」
「やっぱりわかった?似合わないかな?」
まさ君は悩んでいた。
「ううん。似合ってる。たださ……」
「ただ?」
「やっぱり少し運動した方がいいんじゃない?」
まさ君の体型ではファッションだって限られてくる。
「うーん、夏希に恥をかかせるわけにもいかないしね」
「そんなまさ君が好きなんだからいいよ。それよりさ」
私の服装は褒めてもらえないの?
「あ、ごめん。凄く似合ってるよ」
「ありがとう」
嬉しくて抱きつきそうになるのを堪えてた。
「これからどうするの?」
「あ、映画の時間に合わせたから」
まっすぐ映画館に向かうらしい。
「じゃ、行こう?」
私はまさ君の手を掴んで駅ビルに入った。
少し緊張している様だ。
まあ、学校じゃしたことないしな。
「このくらいどうってことないよ。気にしないで」
それとも私が相手じゃ恥ずかしい?
そんな事言うまさ君じゃない事くらい分かっている。
だから安心してこんな意地悪を言ってしまう。
4階の映画館に着くとチケットを買おうとした。
するとまさ君が「先に買っておいた」と言う。
チケット代を払おうとバッグから財布を取り出そうとするとまさ君が「いらない」と言った。
「その分父さんが小遣いくれたから」
さすがに初デートで全部驕りは気が引ける。
どうしたものか悩んだ。
すると売店を見つけた。
これだ。
「じゃ、代わりに私がジュース驕るよ。何がいい?」
「ありがとう、コーラでいいよ」
「ポップコーンはどっちがいい?」
「え?」
ポップコーンと飲み物二つの方が安く上がる。
2種類の味を買うという手もあったけど。
「塩味の方がいいかな」
「分かった」
そう言ってセットを買ってくると、まさ君の所に戻る。
「ありがとう、でもどうしてポップコーンなの?」
まさ君の疑問に笑って答えた。
「2人でつまみながら映画楽しめるでしょ?」
「なるほどね。あ、僕が持つよ」
そのくらいの事はまさ君だって気づかうらしい。
開場されると中に入る。
映画はCGの凄いアクション映画。
男の子だからそうなのかな?
まさ君は食い入るように見てた。
私の存在忘れてないかな?
手すりに置いてあったまさ君の手に私の手を重ねてみた。
慌てて私の顔を見てる。
そんなに焦らなくていいのに。
じっと私の顔を見てた。
でもここは我慢。
今は映画を楽しもう。
まさ君はエンドロールまでみて余韻に浸るタイプの様だ。
照明がついて終ると私達も席を立つ。
驚いた。
男子というのは短時間で成長するのだろうか?
「行こ?」
そう言って私の手を握ってくれた。
嬉しかったからまた悪戯をする。
「それならこの方がいいよ」
一度まさ君の手を放して握りなおす。
まさ君の指と指の間に私の指を入れる。
恋人繋ぎというやつだ。
「この後どうする?」
まさ君は時計を見ながら言う。
時間的にはランチだろうな。
何を食べるかまでは考えていなかったらしい。
私の服装や、彼女とのランチというまさ君の中では初めてでだろう状況に戸惑っていたのだろう。
「フードコート行かない?」
私の方から提案してみた。
それならお互い好きな物を食べられる。
それに、自然におごりとかそう言うのを気にしないで選べる。
やっぱりまさ君はよく食べる。
ラーメンとタコ焼きとハンバーガーを持って来た。
席を取っておいた私はまさ君が戻ってくるとうどんを買ってくる。
女子高生がうどんを食べる。
まさ君の中では予想外だったのだろう。
「地元の女子高生の間ではうどんがブームなんだよ」
まさ君に説明してあげた。
昼食が済むとどうしようか?と聞いてくる。
まさ君の中ではカラオケだったらしいけど。
私は駅ビルの2階に行って服の量販店に行った。
毎回お姉さんに相談するのも大変だろうから私が服を選んであげた。
もちろん高校生の財布の中身でどうにかなる程度の服。
「次のデートの時にそれ着てくれたら嬉しいな」
「分かった!」
自分の言葉の意味が分かっているのだろうか?
「つまりまたデートに誘ってくれるって意味だよ?」
「あ……」
分かっていなかったらしい。
「そんなに深く考えなくてもいいから」
映画観たりゲーセン行ったりボーリングしたり。
まさ君の思うデートを私に教えて欲しい。
「じゃあ、行こ?カラオケ行きたいんでしょ?」
「……あのさ。お願いがあるんだけど」
「どうしたの?」
「これ、デートなんだよね?」
今さら聞くの?
「デートじゃなかったらなんなの?」
「一つやってみたい事があったんだ」
「いいよ。何したいの?」
「SAP行かない?」
「分かった」
街のSAPはとにかくすごい。
周りのビルを全て買い占めて連結させて作り出したアトラクションが豊富な施設。
その中でもジェットコースターと観覧車は人気がある。
まさ君は観覧車を希望した。
理由は何となく察してしまった。
デート、観覧車……そして私達は2人っきり。
やっぱりまさ君も男の子なんだ。
やっぱりちゃんとリップくらいつけておいて正解だった。
私達は観覧車に乗るとまさ君は私の正面にではなく、隣に座った。
そして上に上がっていくにつれてまさ君の表情が硬くなる。
少し力を貸してあげた方がいいかな。
まさ君の手を握る。
まさ君は私の顔を見る。
私もまさ君の目を見つめる。
「大丈夫だから」
目でそう訴える。
そしてまさ君と初めてキスをした。
キスが終ると私はまさ君に身を預けていた。
その間ずっとまさ君は固まっていたけど。
観覧車を降りるとカラオケに行く。
キスの感触に浸っていたのか何を話しかけても上の空だった。
「歌わないの?」
「あ、ごめん」
「……実感湧かない?」
「夢みたいで」
「じゃあ、目を閉じてよ」
まさ君が目を閉じると私は2度目のキスをしてあげた。
今度はちゃんと覚えていられるようにじっくりしてあげた。
「ありがとう」
「いいえ、でも残念だけど」
「僕ヘマした?」
私は首を振った。
「まさ君はきっと初めてなんだろうけど、私は2人目なんだ」
「それが何かいけない事なの?」
え?
彼氏がいたってのは知ってる。
彼氏がいればそれなりの事をする年頃なのも姉さんから聞いたらしい。
でもまさ君とは初めて。
それは思い出にならない?
「そうだね」
私は笑ってみせた。
嬉し涙が出るのを堪えた。
まさ君に誤解されないように。
カラオケが終ると「夕食どうしよう?」って聞いてきた。
適当な洋食屋さんに入って食べる。
地元の情報誌には載るくらいの有名な店。
夕食が終ると後は帰るだけ。
「次はお泊りくらいできるといいね」
ちょっとだけ意地悪してみた。
今日はまさ君を困らせたり、意地悪したり、甘えてみたり。
バス停が違うのでターミナルで別れる。
少し寂しかった。
だけど、まさ君は最後まで優しかった。
「また、次があるから心配しないで」
まさ君はずっとそばにいてくれるって約束してくれた。
「じゃあ、また」
そう言って帰ろうとした時だった。
「あれ?夏希じゃない?」
振り返ると梨々香が彼氏の純也と一緒にいた。
梨々香は隣にいるまさ君を見る。
「夏希、渡辺君と付き合ってるの?」
あまり聞かれたくない。
まさ君がバカにされるのを聞きたくない。
不安になる。
そんな私を見て、まさ君はそっと私の肩を抱く。
「うん、デートするのは初めてだけど」
まさ君は堂々としていた。
本当にまさ君は私を喜ばせるのが上手い。
「へえ、最近なんか仲良さそうにしてたけどよかったじゃない」
梨々香はそう言った。
「正俊もよかったじゃん。ちゃんと相手してやれよ」
純也が言うと正俊は「じゃ、そろそろ僕バス来るから」と言ってバス停に向かった。
その後も純也達から色々聞かれた。
純也もまたSHの一員。
秀史からそれとなく聞いていたらしい。
今度は多分大丈夫。
私達の物語は続く。
だけどそれは決していい事ばかりではなかった。
「まさ君」
学校が終ると夏希が声をかける。
夏希は僕の事を「まさ君」と呼ぶようになっていた。
僕達くらいの歳で女子と交際をするのは、この世界では当たり前らしくて特に冷やかされたりすることはない。
「どうしたの?」
「5月の連休どうするの?」
父さんの渡辺班も5月の連休はあまり予定を立てない。
今年は特に見たい映画もないし、家で勉強してるかな。
そう夏希に伝えると夏希がしかめっ面になった。
「そんな事だろうと思ったよ」
夏希と付き合い始めてメッセージや電話はしてるけど特に遊びに誘ったりはしたことが無い。
「少しは彼女に構ってくれてもいいんじゃない?」
「それってデートのお誘い?」
「それくらいまさ君から誘ってよ」
「んじゃどこか行く?」
「うん」
夏希は嬉しそうにしている。
でもどこに行く?
「まさ君慣れてなさそうだもんね……」
まあ、デートしたことないし。
「でも私が考えたらまさ君ずっとそのままになっちゃうし……まさ君が考えてみて」
「わかった」
「いつにする?」
宿題とかも片付けておきたいしな。
「連休最終日でいい?」
「最終日でいいの?」
お泊りできないよ?
夏希が言う。
高校生のデートでお泊りなんてあるのだろうか?
「さすがに今から連休に宿を予約するなんて無理だよ」
それに初デートだし。
「分かった。楽しみにしておくね」
僕と夏希は家が違う方向にあるので校門で分かれる。
その夜父さんに相談していた。
茉里奈も相談に加わっていた。
「そうだな、初めてなら。映画にカラオケ程度でいいんじゃないのか?」
父さんはそう言ったけど、茉里奈は違うようだ。
「ちょっと待ってろ」
そう言って茉里奈は部屋に戻ると何かを持って来た。
「女子に恥かかせるんじゃねーぞ。金と誘い方くらい調べとけ」
初めてのデートでそうなることがあるのだろうか?
「まあ、夏希さんは初めてじゃないだろうし心構えくらいはしておくべきだろうな」
だけど決して下心を表に出すな。
あくまでも彼女の望みを叶えてやれ。
父さんはそう言う。
それから部屋に戻って映画を調べてみた。
流石に高校生で探偵アニメはまずいかな。
無難にアクション映画にしておいた。
時間を調べていて気付いた。
映画館どっちがいいだろう?
ショッピングモールのほうが夏希の家からは近い。
やっぱりそっちの方がいいのだろうか?
夏希に聞いてみた。
「駅ビルの映画館にしようよ」
「どうして?」
「映画の後どうするか考えた?」
「カラオケに行こうと思ったけど」
「2人でずっとカラオケしてるの?」
「夏希は他に何かしたいことあるの?」
「うん」
「じゃあ、宗麟像の前に9時で」
「分かった。ありがとうね」
その後茉里奈にどんな格好したらいいか?何か気をつける事は無いか?とか色々聞いておいた。
当日、着替えて身支度をする。
「お、正俊。今日デートか?」
父さんが声をかけて来た。
母さんは流石に連休は稼ぎ時なので休めない。
「遅くならないようにしなさいとは言わんが……夏希さんの親への配慮も忘れるな」
初日から深夜まで一緒にいたりしたら次誘いづらくなるぞ。
父さんがそう言うけど、18時頃には帰る予定だと伝えた。
父さんは笑った。
「お前ももう高校生だろ。せめて夕食くらいは一緒に食べてやれ」
父さんは小遣いをくれた。
そして僕は家を出て、バス停に向かった。
(2)
「お、夏希。出かけるのか?」
秀史が声をかけて来た。
「うん。デート」
「今夜帰ってくるのか?」
まさ君にそれは期待していない。
「秀史悪いけど夕飯は自分で食べて」
「分かってる。楽しんでこい」
そう言って家を出るとバス停に向かう。
久しぶりのデート。
まさ君とは初めてのデート。
楽しみにしていた。
まさ君の性格を考えるとそこまでは期待してない。
でもそれでいいんだ。
のんびり2人で恋愛を楽しめたらいい。
好きって感情を2人で育んでいけたらいい。
駅前のバス停に着いた。
先に来ていたようだ。
いつもと違う服装だけど、まさ君の図体だと目立っている。
「おまたせー」
「あ、こんにちは」
デートだという事で少しは身だしなみに気を配って来たのだろう。
まさ君に姉がいる事は聞いていた。
だからこんな意地悪を言ってみた。
「お姉さんに服を選んでもらったの?」
「やっぱりわかった?似合わないかな?」
まさ君は悩んでいた。
「ううん。似合ってる。たださ……」
「ただ?」
「やっぱり少し運動した方がいいんじゃない?」
まさ君の体型ではファッションだって限られてくる。
「うーん、夏希に恥をかかせるわけにもいかないしね」
「そんなまさ君が好きなんだからいいよ。それよりさ」
私の服装は褒めてもらえないの?
「あ、ごめん。凄く似合ってるよ」
「ありがとう」
嬉しくて抱きつきそうになるのを堪えてた。
「これからどうするの?」
「あ、映画の時間に合わせたから」
まっすぐ映画館に向かうらしい。
「じゃ、行こう?」
私はまさ君の手を掴んで駅ビルに入った。
少し緊張している様だ。
まあ、学校じゃしたことないしな。
「このくらいどうってことないよ。気にしないで」
それとも私が相手じゃ恥ずかしい?
そんな事言うまさ君じゃない事くらい分かっている。
だから安心してこんな意地悪を言ってしまう。
4階の映画館に着くとチケットを買おうとした。
するとまさ君が「先に買っておいた」と言う。
チケット代を払おうとバッグから財布を取り出そうとするとまさ君が「いらない」と言った。
「その分父さんが小遣いくれたから」
さすがに初デートで全部驕りは気が引ける。
どうしたものか悩んだ。
すると売店を見つけた。
これだ。
「じゃ、代わりに私がジュース驕るよ。何がいい?」
「ありがとう、コーラでいいよ」
「ポップコーンはどっちがいい?」
「え?」
ポップコーンと飲み物二つの方が安く上がる。
2種類の味を買うという手もあったけど。
「塩味の方がいいかな」
「分かった」
そう言ってセットを買ってくると、まさ君の所に戻る。
「ありがとう、でもどうしてポップコーンなの?」
まさ君の疑問に笑って答えた。
「2人でつまみながら映画楽しめるでしょ?」
「なるほどね。あ、僕が持つよ」
そのくらいの事はまさ君だって気づかうらしい。
開場されると中に入る。
映画はCGの凄いアクション映画。
男の子だからそうなのかな?
まさ君は食い入るように見てた。
私の存在忘れてないかな?
手すりに置いてあったまさ君の手に私の手を重ねてみた。
慌てて私の顔を見てる。
そんなに焦らなくていいのに。
じっと私の顔を見てた。
でもここは我慢。
今は映画を楽しもう。
まさ君はエンドロールまでみて余韻に浸るタイプの様だ。
照明がついて終ると私達も席を立つ。
驚いた。
男子というのは短時間で成長するのだろうか?
「行こ?」
そう言って私の手を握ってくれた。
嬉しかったからまた悪戯をする。
「それならこの方がいいよ」
一度まさ君の手を放して握りなおす。
まさ君の指と指の間に私の指を入れる。
恋人繋ぎというやつだ。
「この後どうする?」
まさ君は時計を見ながら言う。
時間的にはランチだろうな。
何を食べるかまでは考えていなかったらしい。
私の服装や、彼女とのランチというまさ君の中では初めてでだろう状況に戸惑っていたのだろう。
「フードコート行かない?」
私の方から提案してみた。
それならお互い好きな物を食べられる。
それに、自然におごりとかそう言うのを気にしないで選べる。
やっぱりまさ君はよく食べる。
ラーメンとタコ焼きとハンバーガーを持って来た。
席を取っておいた私はまさ君が戻ってくるとうどんを買ってくる。
女子高生がうどんを食べる。
まさ君の中では予想外だったのだろう。
「地元の女子高生の間ではうどんがブームなんだよ」
まさ君に説明してあげた。
昼食が済むとどうしようか?と聞いてくる。
まさ君の中ではカラオケだったらしいけど。
私は駅ビルの2階に行って服の量販店に行った。
毎回お姉さんに相談するのも大変だろうから私が服を選んであげた。
もちろん高校生の財布の中身でどうにかなる程度の服。
「次のデートの時にそれ着てくれたら嬉しいな」
「分かった!」
自分の言葉の意味が分かっているのだろうか?
「つまりまたデートに誘ってくれるって意味だよ?」
「あ……」
分かっていなかったらしい。
「そんなに深く考えなくてもいいから」
映画観たりゲーセン行ったりボーリングしたり。
まさ君の思うデートを私に教えて欲しい。
「じゃあ、行こ?カラオケ行きたいんでしょ?」
「……あのさ。お願いがあるんだけど」
「どうしたの?」
「これ、デートなんだよね?」
今さら聞くの?
「デートじゃなかったらなんなの?」
「一つやってみたい事があったんだ」
「いいよ。何したいの?」
「SAP行かない?」
「分かった」
街のSAPはとにかくすごい。
周りのビルを全て買い占めて連結させて作り出したアトラクションが豊富な施設。
その中でもジェットコースターと観覧車は人気がある。
まさ君は観覧車を希望した。
理由は何となく察してしまった。
デート、観覧車……そして私達は2人っきり。
やっぱりまさ君も男の子なんだ。
やっぱりちゃんとリップくらいつけておいて正解だった。
私達は観覧車に乗るとまさ君は私の正面にではなく、隣に座った。
そして上に上がっていくにつれてまさ君の表情が硬くなる。
少し力を貸してあげた方がいいかな。
まさ君の手を握る。
まさ君は私の顔を見る。
私もまさ君の目を見つめる。
「大丈夫だから」
目でそう訴える。
そしてまさ君と初めてキスをした。
キスが終ると私はまさ君に身を預けていた。
その間ずっとまさ君は固まっていたけど。
観覧車を降りるとカラオケに行く。
キスの感触に浸っていたのか何を話しかけても上の空だった。
「歌わないの?」
「あ、ごめん」
「……実感湧かない?」
「夢みたいで」
「じゃあ、目を閉じてよ」
まさ君が目を閉じると私は2度目のキスをしてあげた。
今度はちゃんと覚えていられるようにじっくりしてあげた。
「ありがとう」
「いいえ、でも残念だけど」
「僕ヘマした?」
私は首を振った。
「まさ君はきっと初めてなんだろうけど、私は2人目なんだ」
「それが何かいけない事なの?」
え?
彼氏がいたってのは知ってる。
彼氏がいればそれなりの事をする年頃なのも姉さんから聞いたらしい。
でもまさ君とは初めて。
それは思い出にならない?
「そうだね」
私は笑ってみせた。
嬉し涙が出るのを堪えた。
まさ君に誤解されないように。
カラオケが終ると「夕食どうしよう?」って聞いてきた。
適当な洋食屋さんに入って食べる。
地元の情報誌には載るくらいの有名な店。
夕食が終ると後は帰るだけ。
「次はお泊りくらいできるといいね」
ちょっとだけ意地悪してみた。
今日はまさ君を困らせたり、意地悪したり、甘えてみたり。
バス停が違うのでターミナルで別れる。
少し寂しかった。
だけど、まさ君は最後まで優しかった。
「また、次があるから心配しないで」
まさ君はずっとそばにいてくれるって約束してくれた。
「じゃあ、また」
そう言って帰ろうとした時だった。
「あれ?夏希じゃない?」
振り返ると梨々香が彼氏の純也と一緒にいた。
梨々香は隣にいるまさ君を見る。
「夏希、渡辺君と付き合ってるの?」
あまり聞かれたくない。
まさ君がバカにされるのを聞きたくない。
不安になる。
そんな私を見て、まさ君はそっと私の肩を抱く。
「うん、デートするのは初めてだけど」
まさ君は堂々としていた。
本当にまさ君は私を喜ばせるのが上手い。
「へえ、最近なんか仲良さそうにしてたけどよかったじゃない」
梨々香はそう言った。
「正俊もよかったじゃん。ちゃんと相手してやれよ」
純也が言うと正俊は「じゃ、そろそろ僕バス来るから」と言ってバス停に向かった。
その後も純也達から色々聞かれた。
純也もまたSHの一員。
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今度は多分大丈夫。
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だけどそれは決していい事ばかりではなかった。
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