150 / 535
眩い星に想い重ねて
しおりを挟む
(1)
「水奈、朝だぞ」
「頭痛いんだよ、もう少し寝させくれ」
「だからあれほどほどほどにしとけと言っただろ」
そう言うとベッドから出て服を着る。
朝食の準備を始める。
冷蔵庫から食材を漁って献立を決める。
昨日塩抜きをしていたあさりがある。
パン食が楽だけど二日酔いしている水奈には味噌汁の方が良いだろう。
あさりの味噌汁を作ってやる。
あとはお粥の方が良いだろうか?
考えていると水奈が慌てて起きて来た。
「朝食なら私に言えよ、彼氏に作ってもらって寝てるんて出来ないだろ」
「彼氏の手料理は食いたくないか」
「私がダメな彼女みたいじゃないか」
「それは済まなかったな。どうも自分でやる癖が抜けなくてな」
「で、何を作ってたんだ?」
「アサリの味噌汁は出来たんだが問題はお粥の方が水奈にはいいか悩んでいてな」
「ご飯でいいよ。あとは出し巻き卵でいいか?」
「任せるよ」
流石にキッチンに立つ時は水奈でも服を着てる。
しかし着替えは相変わらず脱ぎ散らかしている。
水奈の料理が終ると朝食を食べる。
水奈は俺の好みの味を習得している様だ。
「どうだ?」
「卵焼きは良い味付けだよ」
「良かった。これで私も学の嫁さんになれるな」
「どういう意味だ?」
「SHの高校生組で流行っているんだ。学生婚」
それって高校生が使う言葉か?
「俺はまだ水奈にプロポーズした覚えはないが?」
「私じゃまだ不満か?」
「俺はまだ水奈を養っていく自信はない」
「2人で協力すればいいだろ?私を選んで欲しい」
水奈は大学が別になることが不安なようだ。
ここ数年同じ学校にいた事は殆どないから仕方ないな。
「……婚約指輪は無いけどいいか?」
「当たり前だろ!そんなもんナットで十分だって言ってた」
走っているトラックの進路に突っ込んで自殺未遂を計るあれか。
「今日は水奈の父さん休みか?」
「ちょっと待ってて」
水奈がスマホで確認している。
今日は都合の良い様に平日だ。
「父さんいるって」
「じゃあ、午前中に済ませよう」
そう言って水奈の準備を待って俺達は多田家に行く。
「話ってどうしたんだ。急に改まって」
水奈の母さんが言う。
「水奈さんと結婚させてもらえませんか?必ず幸せにします」
俺はそう言って頭を下げた。
「私からもお願い!勉強はちゃんとするから」
「どこの馬の骨とも知れん輩に水奈はやれない!まだ学生じゃないか!」
「屁理屈言ってるんじゃねーよ!大体私達だって学生婚だったじゃないか!学はお前よりしっかりしてるから大丈夫だ!」
「……一度言ってみたかったんだよ。もう一回頼む」
水奈の父さんが言うともう一回お願いした。
やっぱりいい意見はもらえなかった。
「学が水奈を本当に守れるか俺が見極める。表に出ろ!」
「いい加減にしろ!この馬鹿は娘の婿を何だと思ってるんだ」
「だから色々試してみたかったんだって!」
この2人はこうやって生きてきたんだろうか?
「次で最期だ。頼む」
水奈の父さんが言うので三度試みた。
「……一度やってみたかったんだ。学と2人で公園に行きたい」
「お前はいい加減にしろ」
「けがはさせないよ。頼む」
「分かりました」
そう言って水奈の父さんと公園に行く。
「一発だけ殴らせてくれないか?」
「……分かりました」
そう言うと水奈の父さんは俺の腹を殴った。
もちろん本気じゃなかった。
「本気でもよかったんですよ」
「こう見えて水奈の目は信じてる。大切な花婿に怪我はさせられない」
水奈の父さんは泣いている。
公園に連れて来た理由はこれか。
水奈の事を泣きながら話す水奈の父さん。
最後に言った。
「無事に水奈を嫁に出せて肩の荷が下りたよ。水奈の事よろしく頼む」
「必ず幸せにします」
「きっと今が幸せだよ。これからも仲良くな」
そう言って水奈の家に帰る。
何があったのかは伏せておいた。
水奈の母さんがこんな事もあろうかとと言わんばかりに婚姻届を出す。
証人の欄には水奈の両親の名前があった。
こんな日が来るのを待っていたそうだ。
それに俺達もサインをする。
必要書類は役所で取り寄せできる。
と言っても戸籍謄本も必要ないのでそんなに必要な物はない。
昼から水奈と役所に届けに行く。
平日だったのでその日の家に受理された。
引越しは水奈が高校卒業してからでいいだろう。
銀行の口座などの変更をしていた。
免許も書き換えがいる。
そうしているうちに夕方になる。
「これからよろしくな。旦那様」
「任せてくれ」
そんな幸せな新年になった。
(2)
みなみは相変わらず体調が悪いようだ。
流石に不安になって来た。
余命一ヶ月で亡くなってしまう花嫁という話を聞いたことがある。
肺がんを患った経験があるのにタバコを吸っているという自業自得な話だけど。
だけど女性特有の臓器。乳房や子宮などにも悪性腫瘍は出来る。
早期発見が必須らしい。
そして厄介な事に若い程進行や転移は早く。女性特有の臓器ほど様々な臓器に転移するらしい。
そんな不安を抱えてクリスマスイブを迎えた。
レストランを予約していたけど案の定みなみは食欲がなくトイレに駆け込む。
心配になったので家で休ませてやろうと食事を途中で止めてタクシーで帰った。
風呂に入ると落ち着いたようだ。
そして俺が風呂に入るとみなみは静かに言った。
「与留。落ち着いて聞いて欲しい」
俺は頷いた。
「まず、今まで黙っていてごめん。クリスマスイブにプレゼントしたかったから」
「プレゼント?」
俺が聞き返すとみなみは頷いた。
みなみは話を続ける。
異常に気付いたのは先月辺りから。
そして今月頭に病院に行ったらしい。
「病院?」
俺の気持ちは不安から期待に変わっていた。
まさか……。
「私のお腹の中で無事に育ってるみたい」
期待は喜びに変わり思わずみなみを抱きしめる。
そして気づいてみなみから離れる。
「あんまりしない方が良いよな。ごめん」
「与留が喜んでくれてるのは分かったから嬉しいよ」
みなみはそう言って笑った。
「じゃあ、これからは家事とか俺がしないといけないな」
元気な子供を産むのに専念して欲しい。
なんなら実家に帰ってもらっていても構わない。
「大丈夫。ここの方が西松医院に近いから便利いいし」
妊婦に運転はさせられない。
出来ないという事はないが可能な限り避けたい。
それならタクシー代のかからない今の住所の方が良い。
もちろんタクシー代にかかる費用くらい余裕で負担できる稼ぎをしているけど。
みなみがそう言うなら反対する理由はない。
「あまり無理するなよ」
「うん、安定期に入るまでは与留に迷惑かけるかもしれないけど」
「おばさんには伝えてるのか?」
「うん、与留のお母さんにも明日伝えておくつもり」
「予定日とか決まってるのか?」
「来年の6月中旬みたい」
「あのさ……名前俺が決めてもいいか?」
「最初からそのつもりだったから」
みなみは自分で産むから自分の子供だとわかる。
でも俺には実感ないだろうから名前を付けてあげて欲しい。
ずっと前から決めていたんだと告げる。
「男の子なら佐為。女の子なら朝子……どうかな?」
「朝子は何となく分かるんだけど佐為ってのはどうして?」
俺の名前は与留。よると変換するらしいから朝。だけど佐為は分からないらしい。
俺は説明してやった。
「みなみだから、佐為」
「え?」
佐為→さい→西。
ちゃんと意味を考えた。
するとみなみは笑った。
「与留は偶にすごい勘を発揮するね」
「おかしい名前だったかな?」
「そうじゃないよ」
みなみは笑顔で言った。
「私達が授かったのは男の子と女の子の双子だよ」
「水奈、朝だぞ」
「頭痛いんだよ、もう少し寝させくれ」
「だからあれほどほどほどにしとけと言っただろ」
そう言うとベッドから出て服を着る。
朝食の準備を始める。
冷蔵庫から食材を漁って献立を決める。
昨日塩抜きをしていたあさりがある。
パン食が楽だけど二日酔いしている水奈には味噌汁の方が良いだろう。
あさりの味噌汁を作ってやる。
あとはお粥の方が良いだろうか?
考えていると水奈が慌てて起きて来た。
「朝食なら私に言えよ、彼氏に作ってもらって寝てるんて出来ないだろ」
「彼氏の手料理は食いたくないか」
「私がダメな彼女みたいじゃないか」
「それは済まなかったな。どうも自分でやる癖が抜けなくてな」
「で、何を作ってたんだ?」
「アサリの味噌汁は出来たんだが問題はお粥の方が水奈にはいいか悩んでいてな」
「ご飯でいいよ。あとは出し巻き卵でいいか?」
「任せるよ」
流石にキッチンに立つ時は水奈でも服を着てる。
しかし着替えは相変わらず脱ぎ散らかしている。
水奈の料理が終ると朝食を食べる。
水奈は俺の好みの味を習得している様だ。
「どうだ?」
「卵焼きは良い味付けだよ」
「良かった。これで私も学の嫁さんになれるな」
「どういう意味だ?」
「SHの高校生組で流行っているんだ。学生婚」
それって高校生が使う言葉か?
「俺はまだ水奈にプロポーズした覚えはないが?」
「私じゃまだ不満か?」
「俺はまだ水奈を養っていく自信はない」
「2人で協力すればいいだろ?私を選んで欲しい」
水奈は大学が別になることが不安なようだ。
ここ数年同じ学校にいた事は殆どないから仕方ないな。
「……婚約指輪は無いけどいいか?」
「当たり前だろ!そんなもんナットで十分だって言ってた」
走っているトラックの進路に突っ込んで自殺未遂を計るあれか。
「今日は水奈の父さん休みか?」
「ちょっと待ってて」
水奈がスマホで確認している。
今日は都合の良い様に平日だ。
「父さんいるって」
「じゃあ、午前中に済ませよう」
そう言って水奈の準備を待って俺達は多田家に行く。
「話ってどうしたんだ。急に改まって」
水奈の母さんが言う。
「水奈さんと結婚させてもらえませんか?必ず幸せにします」
俺はそう言って頭を下げた。
「私からもお願い!勉強はちゃんとするから」
「どこの馬の骨とも知れん輩に水奈はやれない!まだ学生じゃないか!」
「屁理屈言ってるんじゃねーよ!大体私達だって学生婚だったじゃないか!学はお前よりしっかりしてるから大丈夫だ!」
「……一度言ってみたかったんだよ。もう一回頼む」
水奈の父さんが言うともう一回お願いした。
やっぱりいい意見はもらえなかった。
「学が水奈を本当に守れるか俺が見極める。表に出ろ!」
「いい加減にしろ!この馬鹿は娘の婿を何だと思ってるんだ」
「だから色々試してみたかったんだって!」
この2人はこうやって生きてきたんだろうか?
「次で最期だ。頼む」
水奈の父さんが言うので三度試みた。
「……一度やってみたかったんだ。学と2人で公園に行きたい」
「お前はいい加減にしろ」
「けがはさせないよ。頼む」
「分かりました」
そう言って水奈の父さんと公園に行く。
「一発だけ殴らせてくれないか?」
「……分かりました」
そう言うと水奈の父さんは俺の腹を殴った。
もちろん本気じゃなかった。
「本気でもよかったんですよ」
「こう見えて水奈の目は信じてる。大切な花婿に怪我はさせられない」
水奈の父さんは泣いている。
公園に連れて来た理由はこれか。
水奈の事を泣きながら話す水奈の父さん。
最後に言った。
「無事に水奈を嫁に出せて肩の荷が下りたよ。水奈の事よろしく頼む」
「必ず幸せにします」
「きっと今が幸せだよ。これからも仲良くな」
そう言って水奈の家に帰る。
何があったのかは伏せておいた。
水奈の母さんがこんな事もあろうかとと言わんばかりに婚姻届を出す。
証人の欄には水奈の両親の名前があった。
こんな日が来るのを待っていたそうだ。
それに俺達もサインをする。
必要書類は役所で取り寄せできる。
と言っても戸籍謄本も必要ないのでそんなに必要な物はない。
昼から水奈と役所に届けに行く。
平日だったのでその日の家に受理された。
引越しは水奈が高校卒業してからでいいだろう。
銀行の口座などの変更をしていた。
免許も書き換えがいる。
そうしているうちに夕方になる。
「これからよろしくな。旦那様」
「任せてくれ」
そんな幸せな新年になった。
(2)
みなみは相変わらず体調が悪いようだ。
流石に不安になって来た。
余命一ヶ月で亡くなってしまう花嫁という話を聞いたことがある。
肺がんを患った経験があるのにタバコを吸っているという自業自得な話だけど。
だけど女性特有の臓器。乳房や子宮などにも悪性腫瘍は出来る。
早期発見が必須らしい。
そして厄介な事に若い程進行や転移は早く。女性特有の臓器ほど様々な臓器に転移するらしい。
そんな不安を抱えてクリスマスイブを迎えた。
レストランを予約していたけど案の定みなみは食欲がなくトイレに駆け込む。
心配になったので家で休ませてやろうと食事を途中で止めてタクシーで帰った。
風呂に入ると落ち着いたようだ。
そして俺が風呂に入るとみなみは静かに言った。
「与留。落ち着いて聞いて欲しい」
俺は頷いた。
「まず、今まで黙っていてごめん。クリスマスイブにプレゼントしたかったから」
「プレゼント?」
俺が聞き返すとみなみは頷いた。
みなみは話を続ける。
異常に気付いたのは先月辺りから。
そして今月頭に病院に行ったらしい。
「病院?」
俺の気持ちは不安から期待に変わっていた。
まさか……。
「私のお腹の中で無事に育ってるみたい」
期待は喜びに変わり思わずみなみを抱きしめる。
そして気づいてみなみから離れる。
「あんまりしない方が良いよな。ごめん」
「与留が喜んでくれてるのは分かったから嬉しいよ」
みなみはそう言って笑った。
「じゃあ、これからは家事とか俺がしないといけないな」
元気な子供を産むのに専念して欲しい。
なんなら実家に帰ってもらっていても構わない。
「大丈夫。ここの方が西松医院に近いから便利いいし」
妊婦に運転はさせられない。
出来ないという事はないが可能な限り避けたい。
それならタクシー代のかからない今の住所の方が良い。
もちろんタクシー代にかかる費用くらい余裕で負担できる稼ぎをしているけど。
みなみがそう言うなら反対する理由はない。
「あまり無理するなよ」
「うん、安定期に入るまでは与留に迷惑かけるかもしれないけど」
「おばさんには伝えてるのか?」
「うん、与留のお母さんにも明日伝えておくつもり」
「予定日とか決まってるのか?」
「来年の6月中旬みたい」
「あのさ……名前俺が決めてもいいか?」
「最初からそのつもりだったから」
みなみは自分で産むから自分の子供だとわかる。
でも俺には実感ないだろうから名前を付けてあげて欲しい。
ずっと前から決めていたんだと告げる。
「男の子なら佐為。女の子なら朝子……どうかな?」
「朝子は何となく分かるんだけど佐為ってのはどうして?」
俺の名前は与留。よると変換するらしいから朝。だけど佐為は分からないらしい。
俺は説明してやった。
「みなみだから、佐為」
「え?」
佐為→さい→西。
ちゃんと意味を考えた。
するとみなみは笑った。
「与留は偶にすごい勘を発揮するね」
「おかしい名前だったかな?」
「そうじゃないよ」
みなみは笑顔で言った。
「私達が授かったのは男の子と女の子の双子だよ」
0
お気に入りに追加
36
あなたにおすすめの小説
【R18】私はお父さんの性処理係
神通百力
恋愛
麗華は寝ていたが、誰かが乳房を揉んでいることに気付き、ゆっくりと目を開けた。父親が鼻息を荒くし、麗華の乳房を揉んでいた。父親は麗華が起きたことに気付くと、ズボンとパンティーを脱がし、オマンコを広げるように命令した。稲凪七衣名義でノクターンノベルズにも投稿しています。
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
隣の人妻としているいけないこと
ヘロディア
恋愛
主人公は、隣人である人妻と浮気している。単なる隣人に過ぎなかったのが、いつからか惹かれ、見事に関係を築いてしまったのだ。
そして、人妻と付き合うスリル、その妖艶な容姿を自分のものにした優越感を得て、彼が自惚れるには十分だった。
しかし、そんな日々もいつかは終わる。ある日、ホテルで彼女と二人きりで行為を進める中、主人公は彼女の着物にGPSを発見する。
彼女の夫がしかけたものと思われ…
隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました
ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら……
という、とんでもないお話を書きました。
ぜひ読んでください。
【R18】お父さんとエッチした日
ねんごろ
恋愛
「お、おい……」
「あっ、お、お父さん……」
私は深夜にディルドを使ってオナニーしているところを、お父さんに見られてしまう。
それから私はお父さんと秘密のエッチをしてしまうのだった。
連続寸止めで、イキたくて泣かされちゃう女の子のお話
まゆら
恋愛
投稿を閲覧いただき、ありがとうございます(*ˊᵕˋ*)
「一日中、イかされちゃうのと、イケないままと、どっちが良い?」
久しぶりの恋人とのお休みに、食事中も映画を見ている時も、ずっと気持ち良くされちゃう女の子のお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる