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旅行
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「天音、着いたよ」
大地に起こされた。
「どこについたんだ?」
「長崎」
あ、そういや修学旅行に来てるんだったか。
「お昼ご飯らしいから早く……」
「あたりめーだ!」
何時間もバスの中に拘束されて腹が減ってるんだ。
さあ、食うぞ。
ちゃんぽんに皿うどんに佐世保バーガー。
……は全くなかった。
なんだこのどこにでもありそうな定食は!
それにこの程度で私の腹を満たせると思っているのか!?
「桜子!なんだこの昼飯は!」
もっと長崎らしい物よこせ!
明太子すらねーじゃねーか!
「お、落ち着いて。天音」
「大地の言うとおりだ。ここでごねても昼飯の時間減るだけだぞ」
大地と祈が私を落ち着かせようとする。
「僕にいい策があるからとりあえず足りない量は僕の分食べていいから」
いい策?
「なんだよそれ?」
「姉さんから聞いたんだ。修学旅行の前に”多分こうなるから”って」
翼と空もやっぱり機嫌が悪かったらしい。
「分かったよ……でもな」
ぽかっ
「飯を他人に簡単に譲るな!ご飯に申し訳ないと思わないのか!?」
片桐家では万死に値する行為。
食べられないなら最初から注文するな。
出された物は残さず食べろ。
「……その割には冬夜さんは大豆が嫌いだとか納豆は食べるのに言ってましたね」
「煮物は気持ち悪いんだよ」
「そういう食べず嫌いを子供の前でしないでください!」
愛莉も怒っていたな。
でも、そこは愛莉だった。
パパの好き嫌いを完璧に把握していて嫌いなものは出さないように配慮している。
私も大地の好き嫌いを把握するべきなんだろうか?
「しょうがない、とりあえず嫌いなものをこっちによこせ」
「あ、それなら……」
大地が残している物を挙げたほうが早かった。
ご飯とみそ汁と漬物。
焼き魚すら食べようとしない。
前言撤回。
やっぱり矯正させたほうがよさそうだ。
よく分からないけど、お偉いさんの席で「魚は食べられない」は恵美さんも激怒するに決まってる。
食事がすむと原爆資料館とやらに連れていかれた。
食事の後に行くところじゃないと思ったのは私だけじゃないようだ。
そもそもなんでわざわざこんなもの見なきゃいけないんだ?
半世紀以上も昔の戦争の事を蒸し返してどうするんだ?
「この恨みを忘れるな」
そんな半島のゴキブリみたいなことを感想文で書かせたいのか?
悲惨な武器?
悲惨じゃない武器があるなら言ってみろ!
飯でイライラしてこんなつまらんもんみてさらにイライラさせて……修学旅行って何が楽しいんだ?
それは次の長崎観光で分かった。
大量発生したカップルがそれぞれの記念館で楽しそうにしている。
大地も以前来たことがあるらしくて色々説明してくれた。
「……で、その時は誰と行ったんだ?」
「家族だよ!」
「分かってるよ」
慌ててる大地の姿を見ていて少しは気が晴れた。
もっともなずなと花は機嫌が悪かったみたいだ。
建物よりも提灯や模造刀に興味を示してはしゃいでる彼氏をあきれて見ていたと、浴場で聞いていた。
そしてあいつらは今も男女の浴場を隔てる壁の上から顔をのぞかせている。
どうしてバレないと思ったのだろうか。
不思議と陸や大地の顔はなかった。
「どうして男ってそうなんだろうな?」
祈が不思議そうに聞いてる。
見せてあげるといっても躊躇うくせに風呂を覗こうとする理由が祈には分からないらしい。
「水奈はどうなんだ?」
「学の奴、私の事絶対に妹くらいにしか思ってない」
まあ、胸の発育が絶望的だと信じてる水奈だからそう思うんだろう。
と、いうものの私も翼に比べると乏しいものがある。
疑問を持った私は愛莉に「私だけどうして胸がないんだ!?」と訴えた事があった。
パパはビールを吹きこぼしそうになっていた。
「それは個人差があると前にも説明したでしょ」
「去年の翼と比べても明らかに小さいぞ!私は愛莉の子供じゃないのか!?」
「馬鹿なことをいうんじゃありません!」
これで茜や冬莉より小さいとかになったら愛莉を絞め殺してやる!
「でも処刑台に首晒してるようなあの馬鹿達よりましじゃない?」
遊を撃退したなずなが水奈に言っていた。
「でも全く興味を示さないのも考え物だぞ?」
「……普段は遊も一緒だよ」
手を繋ぐことすら躊躇うのにどうしてあそこまで馬鹿なのか不思議でしょうがないとなずなと花は考えていた。
「陸はどうなんだ?」
私は祈に聞いてみた。
「あいつは異様に女子の扱いが上手いんだ」
私も数ある恋人の一人じゃないのかと悩むこともあるらしい。
そんな真似祈の母さんがしったらただじゃすまないだろう。
「私より大地はどうなんだ?」
どう考えても陸より問題ありそうだろ?と祈が聞いてくる。
「そうでもないぞ」
「え?」
私が言うと皆が私を見ていた。
あれからあいつはそれなりの頻度で私をデートに誘うようになった。
デートコースも上手く考えてくれる。
美希に相談しているそうだと、空から聞いた。
「なるほどな、あいつも必死なんだな」
片桐家の嫁を手に入れるのに大地の母さんも善明の母さんも必死だしな。
そんなにすごいものなのだろうか?
風呂から出るとなずなと花は1時間近く電話で遊と粋に説教をしていた。
最後には「……そんなに見たいなら二人きりの時に言ってよ」と笑っていたけど。
私も大地に聞いてみた。
「大地は私に興味がないのか?」
「多分言われると思ったよ」
「で、どう答えるつもりだったんだ?」
「空達は”中学生になってから”と親に言われたそうだよ」
だから私達も……か。
「そろそろ寝たほうがいいよ、明日は大変だから」
「なんでだよ?」
つまらなさそうなテーマパークだろ?
「今日言ったろ?”秘策がある”って」
何があるんだろう?
……空も翼もこれを知っていたのか。
テーマパークには飲食店が立ち並んでる。
その中にチャンポンも皿うどんも佐世保バーガーもある。
パパが言ってた”トルコライス”なるものもあった。
「こっそり小遣い多めにもらったから思う存分食べてよ」
どうせ観光なんて考えてないでしょ?と大地が言う。
まあ、大地の言うとおりだけどな。
時間いっぱいまで食べつくして満足して帰りのバスに乗る。
寝ようと思ったけど考え直した。
大地は私に良い思い出を残してくれた。
私も何か大地に良い思い出を残してやりたい。
今からでも間に合うだろうか?
「大地は眠いか?」
「どうしたの?」
「少し話し相手になってくれないか?」
「え?」
大地は少し驚いていた。
だけど、夜景を見ながら大地としゃべっていた。
「いつか二人で来ような」
「うん」
学校で迎えに来ているパパ達を見つけると私達は家に帰る。
お土産の明太子を渡すと部屋に戻る。
「どうだった?」
「食い尽くした」
「よかったじゃん」
翼とそんな旅行の感想を話して眠りにつく。
これからも大地と旅行に行く時があるんだろうな。
大地は私の事を考えてくれてる。
だから私も大地の事を考えてやろう。
そんなことを考えていた。
大地に起こされた。
「どこについたんだ?」
「長崎」
あ、そういや修学旅行に来てるんだったか。
「お昼ご飯らしいから早く……」
「あたりめーだ!」
何時間もバスの中に拘束されて腹が減ってるんだ。
さあ、食うぞ。
ちゃんぽんに皿うどんに佐世保バーガー。
……は全くなかった。
なんだこのどこにでもありそうな定食は!
それにこの程度で私の腹を満たせると思っているのか!?
「桜子!なんだこの昼飯は!」
もっと長崎らしい物よこせ!
明太子すらねーじゃねーか!
「お、落ち着いて。天音」
「大地の言うとおりだ。ここでごねても昼飯の時間減るだけだぞ」
大地と祈が私を落ち着かせようとする。
「僕にいい策があるからとりあえず足りない量は僕の分食べていいから」
いい策?
「なんだよそれ?」
「姉さんから聞いたんだ。修学旅行の前に”多分こうなるから”って」
翼と空もやっぱり機嫌が悪かったらしい。
「分かったよ……でもな」
ぽかっ
「飯を他人に簡単に譲るな!ご飯に申し訳ないと思わないのか!?」
片桐家では万死に値する行為。
食べられないなら最初から注文するな。
出された物は残さず食べろ。
「……その割には冬夜さんは大豆が嫌いだとか納豆は食べるのに言ってましたね」
「煮物は気持ち悪いんだよ」
「そういう食べず嫌いを子供の前でしないでください!」
愛莉も怒っていたな。
でも、そこは愛莉だった。
パパの好き嫌いを完璧に把握していて嫌いなものは出さないように配慮している。
私も大地の好き嫌いを把握するべきなんだろうか?
「しょうがない、とりあえず嫌いなものをこっちによこせ」
「あ、それなら……」
大地が残している物を挙げたほうが早かった。
ご飯とみそ汁と漬物。
焼き魚すら食べようとしない。
前言撤回。
やっぱり矯正させたほうがよさそうだ。
よく分からないけど、お偉いさんの席で「魚は食べられない」は恵美さんも激怒するに決まってる。
食事がすむと原爆資料館とやらに連れていかれた。
食事の後に行くところじゃないと思ったのは私だけじゃないようだ。
そもそもなんでわざわざこんなもの見なきゃいけないんだ?
半世紀以上も昔の戦争の事を蒸し返してどうするんだ?
「この恨みを忘れるな」
そんな半島のゴキブリみたいなことを感想文で書かせたいのか?
悲惨な武器?
悲惨じゃない武器があるなら言ってみろ!
飯でイライラしてこんなつまらんもんみてさらにイライラさせて……修学旅行って何が楽しいんだ?
それは次の長崎観光で分かった。
大量発生したカップルがそれぞれの記念館で楽しそうにしている。
大地も以前来たことがあるらしくて色々説明してくれた。
「……で、その時は誰と行ったんだ?」
「家族だよ!」
「分かってるよ」
慌ててる大地の姿を見ていて少しは気が晴れた。
もっともなずなと花は機嫌が悪かったみたいだ。
建物よりも提灯や模造刀に興味を示してはしゃいでる彼氏をあきれて見ていたと、浴場で聞いていた。
そしてあいつらは今も男女の浴場を隔てる壁の上から顔をのぞかせている。
どうしてバレないと思ったのだろうか。
不思議と陸や大地の顔はなかった。
「どうして男ってそうなんだろうな?」
祈が不思議そうに聞いてる。
見せてあげるといっても躊躇うくせに風呂を覗こうとする理由が祈には分からないらしい。
「水奈はどうなんだ?」
「学の奴、私の事絶対に妹くらいにしか思ってない」
まあ、胸の発育が絶望的だと信じてる水奈だからそう思うんだろう。
と、いうものの私も翼に比べると乏しいものがある。
疑問を持った私は愛莉に「私だけどうして胸がないんだ!?」と訴えた事があった。
パパはビールを吹きこぼしそうになっていた。
「それは個人差があると前にも説明したでしょ」
「去年の翼と比べても明らかに小さいぞ!私は愛莉の子供じゃないのか!?」
「馬鹿なことをいうんじゃありません!」
これで茜や冬莉より小さいとかになったら愛莉を絞め殺してやる!
「でも処刑台に首晒してるようなあの馬鹿達よりましじゃない?」
遊を撃退したなずなが水奈に言っていた。
「でも全く興味を示さないのも考え物だぞ?」
「……普段は遊も一緒だよ」
手を繋ぐことすら躊躇うのにどうしてあそこまで馬鹿なのか不思議でしょうがないとなずなと花は考えていた。
「陸はどうなんだ?」
私は祈に聞いてみた。
「あいつは異様に女子の扱いが上手いんだ」
私も数ある恋人の一人じゃないのかと悩むこともあるらしい。
そんな真似祈の母さんがしったらただじゃすまないだろう。
「私より大地はどうなんだ?」
どう考えても陸より問題ありそうだろ?と祈が聞いてくる。
「そうでもないぞ」
「え?」
私が言うと皆が私を見ていた。
あれからあいつはそれなりの頻度で私をデートに誘うようになった。
デートコースも上手く考えてくれる。
美希に相談しているそうだと、空から聞いた。
「なるほどな、あいつも必死なんだな」
片桐家の嫁を手に入れるのに大地の母さんも善明の母さんも必死だしな。
そんなにすごいものなのだろうか?
風呂から出るとなずなと花は1時間近く電話で遊と粋に説教をしていた。
最後には「……そんなに見たいなら二人きりの時に言ってよ」と笑っていたけど。
私も大地に聞いてみた。
「大地は私に興味がないのか?」
「多分言われると思ったよ」
「で、どう答えるつもりだったんだ?」
「空達は”中学生になってから”と親に言われたそうだよ」
だから私達も……か。
「そろそろ寝たほうがいいよ、明日は大変だから」
「なんでだよ?」
つまらなさそうなテーマパークだろ?
「今日言ったろ?”秘策がある”って」
何があるんだろう?
……空も翼もこれを知っていたのか。
テーマパークには飲食店が立ち並んでる。
その中にチャンポンも皿うどんも佐世保バーガーもある。
パパが言ってた”トルコライス”なるものもあった。
「こっそり小遣い多めにもらったから思う存分食べてよ」
どうせ観光なんて考えてないでしょ?と大地が言う。
まあ、大地の言うとおりだけどな。
時間いっぱいまで食べつくして満足して帰りのバスに乗る。
寝ようと思ったけど考え直した。
大地は私に良い思い出を残してくれた。
私も何か大地に良い思い出を残してやりたい。
今からでも間に合うだろうか?
「大地は眠いか?」
「どうしたの?」
「少し話し相手になってくれないか?」
「え?」
大地は少し驚いていた。
だけど、夜景を見ながら大地としゃべっていた。
「いつか二人で来ような」
「うん」
学校で迎えに来ているパパ達を見つけると私達は家に帰る。
お土産の明太子を渡すと部屋に戻る。
「どうだった?」
「食い尽くした」
「よかったじゃん」
翼とそんな旅行の感想を話して眠りにつく。
これからも大地と旅行に行く時があるんだろうな。
大地は私の事を考えてくれてる。
だから私も大地の事を考えてやろう。
そんなことを考えていた。
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