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4thSEASON
この想いはきっと
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(1)
「お誕生日おめでとう」
皆が僕の誕生日を祝ってくれる。
今日はクリスマスだけど僕の誕生日。
皆が集まってくれた。
空は水奈と、天音は皆と遊ぶらしい。
大人になるとそう言うものなんだそうだ。
プレゼントには新しいスパイクを買ってもらえた。
芝用と土用の二つ。
誠司の誕生日は昨日だったそうだけどさらにゲームを買ってもらったらしい。
ゲームは誕生日に買ってもらわなくても父さんが買ってくる。
天音がやったあとにさせてもらえる。
父さんはその度に母さんに怒られてるけど。
「で、でも愛莉今度の新作は凄いんだ」
「冬夜さんは私に構ってくれないでゲームばっかりするつもりですか?」
「子供達だってするだろ?」
「少しは子供に勉強をさせようって気になってもらえないんですか?」
「愛莉はいつも言ってるだろ?『やる時にやってれば少々遊んでも問題ない』って……」
「うぅ……」
「先に子供たちにやらせて今夜は愛莉に構ってあげるから」
「はい」
父さんは母さんの扱い方を分かっているらしい。
僕も瞳子の扱い方が分かる日が来るのだろうか?
偶に瞳子が拗ねる時があって不思議な時がある。
瞳子からも手作りのお菓子をもらえた。
茜は天音がいないから壱郎を家に招待してる。
父さんは難しい感情を持ってるけどなんでだろう?
「冬吾はまだ理解しなくていいの。もう少し大きくなってから説明してあげるから」
母さんが言う。
「大きくなると何かあるの?」
「ありますよ。教えておくべきことはちゃんと教えますから」
その時を楽しみにしていた。
空達は年明けに挨拶に来るそうだ。
しばらく会ってないから楽しみにしてる。
ご飯を食べるとお風呂に入る。
冬莉は部屋でテレビを見ながらスマホを弄ってる。
「冬吾もそのうち瞳子を部屋に入れる時が来るよ」
天音がそう言ってた。
ちなみに今はまだ部屋の中で二人きりになることは許されていない。
瞳子の家に行った時もそうだ。
「冬吾君の事を信用していないわけじゃないのよ」
言ってる意味がさっぱり分からなかった。
誠司は冴と二人でいる事があるという。
「その点は俺の方が勝ったな」と誠司が得意気に話してた。
世の中には僕の知らないことがいっぱいあるみたいだ。
だから学校に行って勉強するのだろう。
サッカーはもうすぐ全国高校サッカーが始まる。
地元の代表は当然のように伊田高だった。
地元はサッカー強国と化していた。
J3まで落ちたらしい地元クラブも今ではすっかり天皇杯なんかで勝ち上がっている。
今度の五輪には女子サッカーは水島みなみ選手の他に相楽真智、遠坂鞠選手が残っている。
遠坂鞠選手は母さんの方の親戚らしい。
サッカーの練習は相変わらず基礎トレーニングが主だ。
体の成長に合わせて体力を鍛えるのが優先らしい。
重要な試合では起用されることがある。
誠司や隼人達はフルタイムで起用されるようになった。
誠司の父さんが言うには僕は最後の切札らしい。
あまり相手に見せたくないのだという。
まあ「小学生の間は使いたくない」と言われた時に比べたらましだと思う。
誠司達を羨ましいとは思ったことはあるけど。
「冬吾、そろそろ寝る時間ですよ」
母さんに言われたのでそろそろ寝る。
寝る前に瞳子と少し電話で話をする。
理由は分からないけど瞳子が嬉しそうに話をするので聞いている。
電話が終ると眠りにつく。
冬休みだけど生活リズムは崩したらいけない。
朝になったらお腹が空いて起きる。
それが当たり前の生活だと思っていた。
(2)
「今日は彼女とデートじゃないの?急いだほうがいいんじゃない?」
同僚の矢澤杏が聞いてきた。
彼女の相馬絢香には隣のコーヒーショップで待っているように言ってある。
杏も同じ様だ。
店長がケーキの入った箱を渡してくれた。
残り物だからタダで持って帰って良いと言われた。
それを持ってコーヒーショップに向かう。
絢香達が待っていた。
杏たちと別れて予約していた店に向かう。
そこで料理が来る前に絢香にプレゼントを渡す。
喜んでくれたみたいだ。
絢香達は冬休みに入っていた。
冬休みの間はずっと俺の家に居る。
色々と家事をしてくれるので助かる。
その事を絢香に伝える。
「今のうちに練習しとかないいけないんだからいいよ」
絢香は嬉しそうに言っていた。
夕食が終ると店を出てイルミネーションを見ながら家に帰る。
家に帰ると先に絢香をシャワーに入れて俺は着替えてくつろぐ。
絢香が出てくると俺が今度はシャワーに入る。
シャワーから出ると店でもらったケーキを切り分けて食べる。
絢香は美味しそうに食べていた。
お酒も入っていたせいもあるのだろう。
絢香に将来の事を相談していた。
「絢香が学校を卒業するまでにお金を溜めて卒業したら独立しようと思う」
店長からは既に勧められていた。
俺と杏はコンクールで受賞するほどの腕前を持っている。
もう店を持ってもおかしくないはずだと。
そして絢香に告げる。
「一緒に店を手伝ってくれないか?」
俺がそう言うと絢香は喜んでいた。
「それってプロポーズ?」
「プロポーズはちゃんとするよ。絢香がちゃんと資格を取ったら」
「もうしてるも同じじゃん」
そうなるよな。
「じゃあ、しっかり勉強しないといけないね」
「頑張れ」
「うん……ありがとう」
きっと嬉し涙だろう。
目頭を押さえる絢香をそっと抱きしめた。
次の日たまには遊びに行かないか?と遊園地に連れて行ってやった。
楽しそうにしている絢香を見てホッとする。
帰りに夕食を食べて帰る。
「偶には家に帰らなくていいのか?」
「年が明けたら一度帰るよ。吉生も一緒だよ」
それもそうだな。挨拶くらいしておかないとだよな。
「わかった。ところで冬休みの宿題とかないのか?」
「ちゃんと吉生が仕事に行ってる間にしてるから大丈夫」
「ならいいんだけど」
「そんなことで、吉生との交際反対されたらもったいないし」
絢香もそこらへんは分かっているらしい。
あとは何事もなく年末を迎えるだけ。
その年末もあと少しとなっていた。
(3)
吉生と別れた後夕食を食べて家に帰る。
家の中は綺麗に片付いている。
多分純平が片付けたのだろう。
その証拠に私の部屋に踏み入った形跡はない。
一応純平には合い鍵を渡してある。
別にみられて困る物もない。
純平くらいの年頃なら女性の部屋に興味があると思ったのだけど。
「どうして私の部屋には入らないの?」
「入ったらいけないような気がしたから」
「そんな人に合い鍵渡したりしないよ」
「色々見たらまずい物とかあると思って」
あまり問い詰めても純平を困らせるだけかな?
先にシャワーを浴びるように言うと私も部屋着に着替える。
テレビをつけてみてたら純平が出てきた。
明日は休みだし仕掛けてみるか。
私はシャワーを浴びるとタオル一枚だけの姿になって出た。
案の定純平は目のやり場に困っている。
構わず貰ったケーキを切って紙皿に乗せると純平に渡す。
「私の体そんなに見たくないか?」
「そ、そんなわけない」
「じゃ、しっかり見ろ」
純平は少し目線を上にあげる。
そして小さな声で呟く。
「綺麗だよ」
「ありがとう」
ケーキを食べてテレビを見てそしてベッドに入った。
翌朝起きると服を着て朝食を作る。
純平は疲れたみたいでぐっすり寝てる。
朝食が出来上がった頃に純平を起こす。
朝食を食べた後2人で出かける。
そうは言っても街をぶらぶらするだけだけど。
そういうデートすら最近してなかったので丁度いい機会だった。
ちょっとしゃれた店でランチを食べて夕方までウィンドウショッピングしてそしてスーパーで買い物して家に帰る。
「杏、先にシャワー浴びなよ。その間に夕食作るから」
「わかった」
先にシャワーに入ると夕食が出来ていた。
さすがに調理科3年ともなると見事な料理を作る。
それを食べると今度は私が片付けてるからその間にシャワー入ってと言う。
純平がシャワーから出てくるとテレビをみてそして時間になったらベッドに入る。
「純平大事な話があるんだけど」
「大事な話?」
「うん、実はね……」
そろそろ独立を考えてる。
今その資金を溜めている。
いつ独立するか悩んでいたけど最近決断したところだと説明する。
「いつにしたの?」
純平が聞いてきた。
「純平は専門学校に行くんでしょ?それを卒業したら独立しようと思う」
だから出来れば純平に手伝って欲しい。
純平は少し悲しそうな顔をしていた。
まだそんな先の事は考えられないとかそんな悩みだろうか?
「僕が杏の力になれるなら喜んで引き受けるよ。ただ……」
「ただ?」
「そういう言葉って男の俺から言うべきなんじゃないか?って気がしてさ……」
そんな理由か。
私は純平を抱きしめる。
「じゃあ、純平から聞かせて。ちゃんと返事してあげるから」
「……まだ子供だけどその時が来たら杏の人生預けてもらえないかな」
「頼りにしてるよ」
「ありがとう」
純平の私を掴む手に力がこもる。
嬉しいんだろうな。
よかったよ。
いつかは全てを抱き締められるだろう。
この想いはきっと。
目を凝らして先は過酷な暗闇なのになぜ進もうとしているんだろう?
継ぎ接ぎだらけの覚悟で。
それでも時間は止まらないから。
今踏み出した足下に吹き荒れている情熱が錆びた世界を切り裂いて道に変えていく。
正しいのかなんて答えはいつもなくて。
選んだ道がただ真っ直ぐに続くだけ。
絶え間なく打ち寄せるのは後悔という幻。
何度も立ちすくむけどその向こうにある景色がみたいから。
容赦なく刻まれる傷跡は次の夢を手繰り寄せる大きな力。
過ちも悔しさも無駄にはしない。
いつか笑って自分の選択にうなずけるときまで。
もしあの時違う空を目指していたらなんて思い描く日もあるけど、この両手じゃ全てを抱き締められないけどここから始まる未来を生きる。
これから始まる未来を私達は進む。
(4)
「光太と麗華おめでとう!」
クリスマスの夜。
僕達はSH18歳以上組はパーティをしていた。
イブの夜に目出度い事が二つあった。
一つは光太と麗華の婚約。
もう一つは克樹と道香の婚約。
二組のカップルの婚約が成立した。
麗華と道香は薬指に綺麗な指輪をはめていた。
光太も克樹もすでに社会人。
同棲という中途半端な関係では親に悪いと考えていたらしい。
そこでイブにプロポーズというサプライズを企んでいたそうだ。
宴は当然4人を中心に盛り上がる。
式の日取りや新婚旅行はまだ未定らしい。
両親に挨拶すら済ませていないのだから当然だ。
皆陽気になって盛り上がっていた。
僕と水奈はソフトドリンクだったけど。
来年の今頃には飲めるのだから我慢しよう。
皆こうなることを予感してたのか最初からそのつもりだったのか分からないけど誰も車で来なかった。
僕達もバスで来た。
理由は徹夜明けで運転するのは危険だと水奈が言うから。
光太達は1次会で帰る。
明日は月曜日。
仕事がまだあるらしい。
2次会はカラオケでオールすることになった。
皆それぞれ曲を入れて歌い始める。
僕は相変わらず食っていた。
あるのに残すのはもったいない。
もちろんそれだけじゃ足りないので追加で注文する。
訳の分からないテンションで朝まで騒ぐ。
ちなみに善明達は来ていない。
江口家のパーティに出席するためだ。
夜が明けると皆店を出る。
そして解散した。
始発のバスの時間に間に合った。
水奈とバスに乗って帰る。
他の人は大体電車で帰る。
美希と学もバスだけど行き先が違うので別のバスに乗る。
家に帰るとベッドにダイブする。
「せめて部屋着に着替えてからにしろ」
水奈に怒られた。
素直に着かえる。
水奈はシャワーを浴びてる。
その間に眠ってしまった。
目が覚めると隣で水奈が寝ている。
下手に動くと翼起こしちゃうかな?とか考えていると水奈を起こしてしまう。
「今何時?」
まだ昼前だった。
「じゃあ、もう少しゆっくりしよう?」
水奈が甘えてくる。
「分かった」
結局うとうとしていて動き出したのは3時過ぎ。
水奈の受験勉強を手伝っていた。
学校ではまず問題ないと言われてるらしい。
余り長時間ぶっ続けでやってても脳が疲労するだけ。
勉強が終ると僕に抱き着いてくる。
休みの日とはいえ家に居る間は水奈は家事をしてくれる。
良い時間になると水奈と二人で買い物に行く。
荷物を持ってやるくらいの事はする。
「空、夕飯何食べたい?」
「肉」
「もっと具体的に言ってよ」
「あ、回鍋肉が良い」
ご飯と一緒に食べると美味しいらしい。
「分かった。じゃ、キャベツも買わないとだね」
調味料はあったかな~?とか色々話しながら買い物をする。
もちろんその間腕を組んでいた。
買い物が終るとエコバッグに詰めていく。
この作業も僕が手を出すことは許されない。
「空が入れると滅茶苦茶になるから」
空は何もしなくてもいい。
甘えさせてくれる空が優しくて大好きだと水奈は言う。
家に帰ると水奈は料理する。
その間に風呂に入ってろと言われて風呂に入る。
もうすぐ一年が終る。
大掃除は手伝いにくるよと水奈が言う。
あとはゆっくりと休みを楽しんでいた。
「お誕生日おめでとう」
皆が僕の誕生日を祝ってくれる。
今日はクリスマスだけど僕の誕生日。
皆が集まってくれた。
空は水奈と、天音は皆と遊ぶらしい。
大人になるとそう言うものなんだそうだ。
プレゼントには新しいスパイクを買ってもらえた。
芝用と土用の二つ。
誠司の誕生日は昨日だったそうだけどさらにゲームを買ってもらったらしい。
ゲームは誕生日に買ってもらわなくても父さんが買ってくる。
天音がやったあとにさせてもらえる。
父さんはその度に母さんに怒られてるけど。
「で、でも愛莉今度の新作は凄いんだ」
「冬夜さんは私に構ってくれないでゲームばっかりするつもりですか?」
「子供達だってするだろ?」
「少しは子供に勉強をさせようって気になってもらえないんですか?」
「愛莉はいつも言ってるだろ?『やる時にやってれば少々遊んでも問題ない』って……」
「うぅ……」
「先に子供たちにやらせて今夜は愛莉に構ってあげるから」
「はい」
父さんは母さんの扱い方を分かっているらしい。
僕も瞳子の扱い方が分かる日が来るのだろうか?
偶に瞳子が拗ねる時があって不思議な時がある。
瞳子からも手作りのお菓子をもらえた。
茜は天音がいないから壱郎を家に招待してる。
父さんは難しい感情を持ってるけどなんでだろう?
「冬吾はまだ理解しなくていいの。もう少し大きくなってから説明してあげるから」
母さんが言う。
「大きくなると何かあるの?」
「ありますよ。教えておくべきことはちゃんと教えますから」
その時を楽しみにしていた。
空達は年明けに挨拶に来るそうだ。
しばらく会ってないから楽しみにしてる。
ご飯を食べるとお風呂に入る。
冬莉は部屋でテレビを見ながらスマホを弄ってる。
「冬吾もそのうち瞳子を部屋に入れる時が来るよ」
天音がそう言ってた。
ちなみに今はまだ部屋の中で二人きりになることは許されていない。
瞳子の家に行った時もそうだ。
「冬吾君の事を信用していないわけじゃないのよ」
言ってる意味がさっぱり分からなかった。
誠司は冴と二人でいる事があるという。
「その点は俺の方が勝ったな」と誠司が得意気に話してた。
世の中には僕の知らないことがいっぱいあるみたいだ。
だから学校に行って勉強するのだろう。
サッカーはもうすぐ全国高校サッカーが始まる。
地元の代表は当然のように伊田高だった。
地元はサッカー強国と化していた。
J3まで落ちたらしい地元クラブも今ではすっかり天皇杯なんかで勝ち上がっている。
今度の五輪には女子サッカーは水島みなみ選手の他に相楽真智、遠坂鞠選手が残っている。
遠坂鞠選手は母さんの方の親戚らしい。
サッカーの練習は相変わらず基礎トレーニングが主だ。
体の成長に合わせて体力を鍛えるのが優先らしい。
重要な試合では起用されることがある。
誠司や隼人達はフルタイムで起用されるようになった。
誠司の父さんが言うには僕は最後の切札らしい。
あまり相手に見せたくないのだという。
まあ「小学生の間は使いたくない」と言われた時に比べたらましだと思う。
誠司達を羨ましいとは思ったことはあるけど。
「冬吾、そろそろ寝る時間ですよ」
母さんに言われたのでそろそろ寝る。
寝る前に瞳子と少し電話で話をする。
理由は分からないけど瞳子が嬉しそうに話をするので聞いている。
電話が終ると眠りにつく。
冬休みだけど生活リズムは崩したらいけない。
朝になったらお腹が空いて起きる。
それが当たり前の生活だと思っていた。
(2)
「今日は彼女とデートじゃないの?急いだほうがいいんじゃない?」
同僚の矢澤杏が聞いてきた。
彼女の相馬絢香には隣のコーヒーショップで待っているように言ってある。
杏も同じ様だ。
店長がケーキの入った箱を渡してくれた。
残り物だからタダで持って帰って良いと言われた。
それを持ってコーヒーショップに向かう。
絢香達が待っていた。
杏たちと別れて予約していた店に向かう。
そこで料理が来る前に絢香にプレゼントを渡す。
喜んでくれたみたいだ。
絢香達は冬休みに入っていた。
冬休みの間はずっと俺の家に居る。
色々と家事をしてくれるので助かる。
その事を絢香に伝える。
「今のうちに練習しとかないいけないんだからいいよ」
絢香は嬉しそうに言っていた。
夕食が終ると店を出てイルミネーションを見ながら家に帰る。
家に帰ると先に絢香をシャワーに入れて俺は着替えてくつろぐ。
絢香が出てくると俺が今度はシャワーに入る。
シャワーから出ると店でもらったケーキを切り分けて食べる。
絢香は美味しそうに食べていた。
お酒も入っていたせいもあるのだろう。
絢香に将来の事を相談していた。
「絢香が学校を卒業するまでにお金を溜めて卒業したら独立しようと思う」
店長からは既に勧められていた。
俺と杏はコンクールで受賞するほどの腕前を持っている。
もう店を持ってもおかしくないはずだと。
そして絢香に告げる。
「一緒に店を手伝ってくれないか?」
俺がそう言うと絢香は喜んでいた。
「それってプロポーズ?」
「プロポーズはちゃんとするよ。絢香がちゃんと資格を取ったら」
「もうしてるも同じじゃん」
そうなるよな。
「じゃあ、しっかり勉強しないといけないね」
「頑張れ」
「うん……ありがとう」
きっと嬉し涙だろう。
目頭を押さえる絢香をそっと抱きしめた。
次の日たまには遊びに行かないか?と遊園地に連れて行ってやった。
楽しそうにしている絢香を見てホッとする。
帰りに夕食を食べて帰る。
「偶には家に帰らなくていいのか?」
「年が明けたら一度帰るよ。吉生も一緒だよ」
それもそうだな。挨拶くらいしておかないとだよな。
「わかった。ところで冬休みの宿題とかないのか?」
「ちゃんと吉生が仕事に行ってる間にしてるから大丈夫」
「ならいいんだけど」
「そんなことで、吉生との交際反対されたらもったいないし」
絢香もそこらへんは分かっているらしい。
あとは何事もなく年末を迎えるだけ。
その年末もあと少しとなっていた。
(3)
吉生と別れた後夕食を食べて家に帰る。
家の中は綺麗に片付いている。
多分純平が片付けたのだろう。
その証拠に私の部屋に踏み入った形跡はない。
一応純平には合い鍵を渡してある。
別にみられて困る物もない。
純平くらいの年頃なら女性の部屋に興味があると思ったのだけど。
「どうして私の部屋には入らないの?」
「入ったらいけないような気がしたから」
「そんな人に合い鍵渡したりしないよ」
「色々見たらまずい物とかあると思って」
あまり問い詰めても純平を困らせるだけかな?
先にシャワーを浴びるように言うと私も部屋着に着替える。
テレビをつけてみてたら純平が出てきた。
明日は休みだし仕掛けてみるか。
私はシャワーを浴びるとタオル一枚だけの姿になって出た。
案の定純平は目のやり場に困っている。
構わず貰ったケーキを切って紙皿に乗せると純平に渡す。
「私の体そんなに見たくないか?」
「そ、そんなわけない」
「じゃ、しっかり見ろ」
純平は少し目線を上にあげる。
そして小さな声で呟く。
「綺麗だよ」
「ありがとう」
ケーキを食べてテレビを見てそしてベッドに入った。
翌朝起きると服を着て朝食を作る。
純平は疲れたみたいでぐっすり寝てる。
朝食が出来上がった頃に純平を起こす。
朝食を食べた後2人で出かける。
そうは言っても街をぶらぶらするだけだけど。
そういうデートすら最近してなかったので丁度いい機会だった。
ちょっとしゃれた店でランチを食べて夕方までウィンドウショッピングしてそしてスーパーで買い物して家に帰る。
「杏、先にシャワー浴びなよ。その間に夕食作るから」
「わかった」
先にシャワーに入ると夕食が出来ていた。
さすがに調理科3年ともなると見事な料理を作る。
それを食べると今度は私が片付けてるからその間にシャワー入ってと言う。
純平がシャワーから出てくるとテレビをみてそして時間になったらベッドに入る。
「純平大事な話があるんだけど」
「大事な話?」
「うん、実はね……」
そろそろ独立を考えてる。
今その資金を溜めている。
いつ独立するか悩んでいたけど最近決断したところだと説明する。
「いつにしたの?」
純平が聞いてきた。
「純平は専門学校に行くんでしょ?それを卒業したら独立しようと思う」
だから出来れば純平に手伝って欲しい。
純平は少し悲しそうな顔をしていた。
まだそんな先の事は考えられないとかそんな悩みだろうか?
「僕が杏の力になれるなら喜んで引き受けるよ。ただ……」
「ただ?」
「そういう言葉って男の俺から言うべきなんじゃないか?って気がしてさ……」
そんな理由か。
私は純平を抱きしめる。
「じゃあ、純平から聞かせて。ちゃんと返事してあげるから」
「……まだ子供だけどその時が来たら杏の人生預けてもらえないかな」
「頼りにしてるよ」
「ありがとう」
純平の私を掴む手に力がこもる。
嬉しいんだろうな。
よかったよ。
いつかは全てを抱き締められるだろう。
この想いはきっと。
目を凝らして先は過酷な暗闇なのになぜ進もうとしているんだろう?
継ぎ接ぎだらけの覚悟で。
それでも時間は止まらないから。
今踏み出した足下に吹き荒れている情熱が錆びた世界を切り裂いて道に変えていく。
正しいのかなんて答えはいつもなくて。
選んだ道がただ真っ直ぐに続くだけ。
絶え間なく打ち寄せるのは後悔という幻。
何度も立ちすくむけどその向こうにある景色がみたいから。
容赦なく刻まれる傷跡は次の夢を手繰り寄せる大きな力。
過ちも悔しさも無駄にはしない。
いつか笑って自分の選択にうなずけるときまで。
もしあの時違う空を目指していたらなんて思い描く日もあるけど、この両手じゃ全てを抱き締められないけどここから始まる未来を生きる。
これから始まる未来を私達は進む。
(4)
「光太と麗華おめでとう!」
クリスマスの夜。
僕達はSH18歳以上組はパーティをしていた。
イブの夜に目出度い事が二つあった。
一つは光太と麗華の婚約。
もう一つは克樹と道香の婚約。
二組のカップルの婚約が成立した。
麗華と道香は薬指に綺麗な指輪をはめていた。
光太も克樹もすでに社会人。
同棲という中途半端な関係では親に悪いと考えていたらしい。
そこでイブにプロポーズというサプライズを企んでいたそうだ。
宴は当然4人を中心に盛り上がる。
式の日取りや新婚旅行はまだ未定らしい。
両親に挨拶すら済ませていないのだから当然だ。
皆陽気になって盛り上がっていた。
僕と水奈はソフトドリンクだったけど。
来年の今頃には飲めるのだから我慢しよう。
皆こうなることを予感してたのか最初からそのつもりだったのか分からないけど誰も車で来なかった。
僕達もバスで来た。
理由は徹夜明けで運転するのは危険だと水奈が言うから。
光太達は1次会で帰る。
明日は月曜日。
仕事がまだあるらしい。
2次会はカラオケでオールすることになった。
皆それぞれ曲を入れて歌い始める。
僕は相変わらず食っていた。
あるのに残すのはもったいない。
もちろんそれだけじゃ足りないので追加で注文する。
訳の分からないテンションで朝まで騒ぐ。
ちなみに善明達は来ていない。
江口家のパーティに出席するためだ。
夜が明けると皆店を出る。
そして解散した。
始発のバスの時間に間に合った。
水奈とバスに乗って帰る。
他の人は大体電車で帰る。
美希と学もバスだけど行き先が違うので別のバスに乗る。
家に帰るとベッドにダイブする。
「せめて部屋着に着替えてからにしろ」
水奈に怒られた。
素直に着かえる。
水奈はシャワーを浴びてる。
その間に眠ってしまった。
目が覚めると隣で水奈が寝ている。
下手に動くと翼起こしちゃうかな?とか考えていると水奈を起こしてしまう。
「今何時?」
まだ昼前だった。
「じゃあ、もう少しゆっくりしよう?」
水奈が甘えてくる。
「分かった」
結局うとうとしていて動き出したのは3時過ぎ。
水奈の受験勉強を手伝っていた。
学校ではまず問題ないと言われてるらしい。
余り長時間ぶっ続けでやってても脳が疲労するだけ。
勉強が終ると僕に抱き着いてくる。
休みの日とはいえ家に居る間は水奈は家事をしてくれる。
良い時間になると水奈と二人で買い物に行く。
荷物を持ってやるくらいの事はする。
「空、夕飯何食べたい?」
「肉」
「もっと具体的に言ってよ」
「あ、回鍋肉が良い」
ご飯と一緒に食べると美味しいらしい。
「分かった。じゃ、キャベツも買わないとだね」
調味料はあったかな~?とか色々話しながら買い物をする。
もちろんその間腕を組んでいた。
買い物が終るとエコバッグに詰めていく。
この作業も僕が手を出すことは許されない。
「空が入れると滅茶苦茶になるから」
空は何もしなくてもいい。
甘えさせてくれる空が優しくて大好きだと水奈は言う。
家に帰ると水奈は料理する。
その間に風呂に入ってろと言われて風呂に入る。
もうすぐ一年が終る。
大掃除は手伝いにくるよと水奈が言う。
あとはゆっくりと休みを楽しんでいた。
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