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2ndSEASON
早すぎる時間時計の中で
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(1)
2月に入ると俺は地元に呼ばれていた。
全力で嫌な予感がする。
朝一で飛行機で地元に帰る。
地元駅に着くとタクシーでUSEの事務所に行く。
「あら?めずらしいわね。東京はどうですか?中村さん。」
「東京だと偶に雪も降って大変だよ」
事務員と話をしている。
すると次々と親が子供を連れてやってくる。
子供のレッスンの日らしい。
子供と言っても本当にまだ子供だ。
言葉も喋れない赤ちゃんがほとんどだった。
将来の夢もない赤ちゃんが親のエゴで将来を決められていく。
ある意味哀れだ。
途中で脱落したいものもいるだろう。
他の道を夢見る子供もいるだろう。
人気が左右するこの世界で生き残れるのか不安な子もいるかもしれない。
しかし良くも悪くもそういうことをまだ感じない赤ちゃんだった。
自分が何をやっているのかもわからない赤ちゃんだった。
どんな性格に育つのかも検討すらつかない。
笑顔が落ち着いていてぐずらない。
痩せてもなく太りすぎず、人見知りをせず良く笑う。
それだけで親は事務所に売り込みに来る。
事務所もそれを見極めて契約する。
USEはその子供の将来を文字通り買う。
良くも悪くもその子の将来は保証される。
USEではその子供の移動費から学費まですべて保障するのだから。
良くも悪くもUSEに所属した子供は将来が約束される。
モデルになりたいならモデルに、役者になると決めたなら役者になれるだろう。
将来の活躍も間違いない。
そうしないと俺達スタッフが責任を問われる。
しかし苦労するのは子供だけじゃない。
いわゆる赤ちゃんタレントは仕事には親の同伴も求められる。
子供一人で仕事をこなすなんてことはまずない。
どの撮影の現場でも親の同伴が必須条件となる。
なぜかうちの事務所に所属する子供の親は双子やら年子やらが多い。
そしてなぜか保育園に預けたがらない。
もちろん母親と子供の移動日も事務所が負担する。
そうするように社長の意向があるからだ。
これからも増え続けるのだろうか?
良くも悪くもUSEが地元の子供の芸能界への道を作っている。
その道は約束される。
親が願えば必ず叶う。
赤ちゃんタレントから子役、そして俳優女優へと道は準備されているだろう。
そういう運命と言う名の鎖が子供たちを引きずっていく。
そんな事を考えながらまだ自分の名前も言えない子供を見ていると社長夫人が来た。
この会社の専務だ。代表取締役はETCと言う別の会社の経営も携わっておりUSEの経営は専務に任されていた。
もちろん重要な事は社長の意向を確認するが。
専務は子連れの母親を連れていた。
それを見て俺はすぐに悟った。
またか……。
俺は応接室で説明を受ける。
専務が作った主婦のグループ「アムール」の会合で知り合ったそうだ。
そして専務はその女の子宇佐見宇佐子を一目見てスカウトした。
前にも同じケースがあった。
前原歩美と言う子が来た時と同じケース。
他の事はちょっと違うケースだ。
中学を卒業したら本気で仕事をさせるケース。
もちろん中卒なんて無責任な学歴にはさせない。
高校、大学までしっかり事務所で面倒を見る。学費は全て事務所が負担する。
専務がそこまで言うんだ。
必ずそれ以上の稼ぎをするだろう。
それは心配してない。
俺達は仕事とマネージャー、そして上京した後の住む場所等を確保をするだけ。
「この子は必ず売れる」
社長の発言は間違いないだろう。そういう物語なのだから。
本当は小学校から東京に済ませたいところだが、他の子供の面倒もある。
いっその事一家まとめて東京に引っ越せばいいのにどういうわけか育児は地元でという意思が固い。
地元に何かこだわりがあるのだろうか?
せめて福岡に。
そうも打診してみたがダメらしい。
地元の現在の人口は114万人らしいが、市内だけでどれだけの人数が専務の関係者なのか興味が少しあった。
とりあえず俺が呼び出されたのは前原歩美と同様宇佐見宇佐子は東京支社に所属する事になったから。
まあ、それはそれでやりやすい。小学校~高校までの間はどうするつもりなのか聞いてないけど。
実例がないわけじゃないから多分大丈夫だろう。
問題は移動距離だけだ。
勉強も多分高校に受かるくらいのレベルは保っていることだろう。
そういう風に物語が出来ているのだから。
東京での今日の仕事は営業に任せてる。
俺はゆっくり休んで。故郷の同期の友達と飲んで。そして次の日の朝に帰った。
(2)
今日は朝から忙しかった。
なんでこの時期に。
僕にも分からなかった。
僕が経営を任せれてる会社、江口トレーディングカンパニー。通称ETC
その会社になぜかこの年度末の忙しい時に大量の中途採用者を雇うことになった。
そして今日から出社するらしい。
社長として一応見ておいた方がいいと言われた
早来月には新卒者がくる。
この時期にわざわざ雇う理由が分からない。
当然、人事部のものは恵美に怒られていた。
危うく配置換えさせられるところだったらしい。
瀬戸作、岩崎洋二、宇佐美直太朗。
たった3人というものの2月に中途採用者を3名も緊急でいれなければいけないほどの会社ではないよ。
年齢を見るとまだ若い。
経歴は全員大卒だった。
「3年ちょっとで辞めてしまうような根性無しをどうして雇ったの!?」
恵美の言う通りだと思った。
どうせ続かないんじゃないか?
そんな感じもした。
まあ、3か月の試用期間で様子を見るという事で妥協した。
朝社長室に訪れ挨拶をして帰る。
特に特徴は無かった。
採用担当が何を感じて採用したのかわからない。
害はなさそだしいいか。
USEもの方も大変らしい。
子役の応募者が殺到している。
右も左もわからない赤ちゃんに親のエゴを押し付けていいのだろうか?
今年度はどうかしている。
近所に大量に親戚だの友達だのが引っ越してくる。
江口家も酒井家も白鳥家も同じそうだ。
市役所の職員もたいへんだろうな。
今年度で何十人の住所変更の手続きが行われたのだろう?
今日も朝から大忙しだった。
一々新人に付き合ってる暇もないくらいに客が押し寄せてくる。
山のように決裁書が届けられる。
時間の合間を縫ってそれに目を通さなければならない。
当然のように会議もある。
あっという間に一々が終わった。
家に帰ると恵美はまだ帰ってない。
恵美も忙しいのだろう?
新條さんが夕食を用意してくれていた。
遅れて恵美が帰ってくる。
中村さんと説得に時間がかかったらしい。
今後を考えたら早めに東京に引っ越した方がいい。
だけど皆頑なに拒んだそうだ。
地元に残ると言い張る。
地元にどんな魅力があるというのだろう?
夕食を終わると一番最後に風呂に入って恵美とリビングでくつろぐ。
そして次の日に備えて早めに寝る。
砂時計はあっという間に時間を刻んでいく。
(3)
「おはよう」
「おはよう、水奈」
起きると着替えて鞄を持ってダイニングに行く。
母さんからチョコを受け取った。
きっと翼がいないからと思って作ってくれたんだろう。
「ありがとう」
そう言ってチョコを受け取った。
父さんも母さんから受け取っていた。
時間になると僕達は純也達を迎えにいって学校に向かう。
水奈も家にきて「はい」と手作りのチョコをくれた。
水奈と正式に交際を始めて、初めてのプレゼントだった。
今年はちゃんとお返し考えてやらないとな。
小学校で天音達と別れると僕は中学校へ向かう。
教室では女子が騒いでいた。
騒いでるのは女子だけじゃなく男子もか。
チョコを受け取って喜んでいた。
学校が終ると部活をする人と帰宅部の者に別れる。
僕の周りで部活をする人はいなかった。
家に帰るとすぐに着替えてチョコを食べる。
「美味しかったよ、ありがとう」
水奈にメッセージを送る。
「お返し期待してるからな!」
さり気なくプレッシャーをかけてくる水奈。
宿題を済ませてゲームを始める。
父さんが帰ってくると夕食に呼ばれる。
夕食を食べると風呂に入ってゲームをしながら水奈と電話をする。
そして時間になるとベッドに入る。
時間はあっという間に経って行く。
平和な日々を過ごしていた。
(4)
準備は出来た。
今日で天音達ともお別れ。
6年間見守ってきた。
色々手を焼かされたけど、今となっては良い思い出。
胸をなでおろす教師もたくさんいる。
学校に着くと職員室に行く。
そして準備をして朝礼の時間になると教室に向かう。
教室には今日の日の為に着飾った子供たちがいた。
そして今日の説明をする。
時間になると体育館に向かう。
子供たちが会場に入っていくのを見守る。
拍手に包まれながら入っていく。
式が始まった。
そしていよいよ卒業証書授与が始まる。
私のクラスの番になると私は一人ずつ名前を読み上げる。
「片桐天音」
「はい」
天音はこういう場に慣れているのだろうか。
緊張することなく壇上に上がっていく。
そして卒業証書が授与される。
最後に在校生とコールをして合唱をする。
その後に最後の校歌斉唱。
卒業式が終ると卒業生は教室に戻る。
最後の終礼が始まる。
親御さんも一緒にいる。
私は壇上に立つ。
「皆さん誰一人かけることなくよく6年間頑張ってきました」
私の彼等に送る最後の言葉。
足下を見てください。
これがあなたの歩む道です。
前を見てください。
あれがあなたの未来です。
両親にもらった沢山の優しさ。
愛を抱いて歩めと繰り返してくれます。
まだあなた達は幼くて意味などわからないでしょう。
でもそんなあなた達の手を握り一緒に歩いてくれます。
夢はいつも空高くにあるから届かなくて怖いね。
だけど追い続けてください。
あなたの物語だから諦めないで。
不安になったときあなた達の手を握り一緒に歩んできた両親を振り返ってください。
その優しさが時には嫌になり、やがて離れる両親に素直になれないかもしれないけど。
でもそれでも両親は見守ってくれています。
前を見てください。
あれがあなた達の未来です。
未来へ向かってゆっくりと歩いてください。
先生達も応援しています。
がんばれ。
それが私が子供たちに贈る最後の言葉。
子供たちは黙って聞いてた。
そして一人ずつ最後の通知票を渡す。
最後の終礼が終わった。
私の彼等に対する最後の授業が終わった。
終礼が終ると親と一緒に教室を出ていく。
私の仕事はまだ終わってない。
私も教室を出ると校門に向かった。
(2)
「天音、水奈が来ましたよ!」
愛莉の声が聞こえる。
私は今日来ていく服を悩んでいた。
中学生は良いよな。
制服で済むんだから。
さすがにドレスは気合入れすぎか。
無難な服を選ぶと翼から借りたコサージュをつけて部屋を出る。
「お前も気合入れてるな」
それが水奈の感想だった。
そういう水奈もいつもはミニスカートなのに今日は清楚な服装にしている。
「お互い様だろ」
そう言って笑った。
私達は学校に向かう。
大地も粋も遊も皆お洒落していた。
「おはよう」
挨拶をする。
話をしていると桜子が教室に入ってくる。
桜子も今日はびしっとスーツ姿を決めていた。
朝礼が終ると体育館に移動する。
私達が入場すると拍手が起こる。
静かに着席する。
この学校に国歌斉唱で起立しないとかいう面倒な教諭はいない。
そして卒業式が始まる。
祝辞が長い。
暗記できないような長い文章一々考えてこなくていい。
「卒業おめでとう」
それだけで十分だろうが。
長々とくどい挨拶が終ると卒業証書授与の時が来る。
私達のクラスの番が来た。
桜子がマイクの前に立って名前を読み上げる。
「石原大地」
「はい」
大地が立ち上がって壇上に向かう。
そして私の番が回って来た。
「片桐天音」
「はい」
私も返事をして壇上に向かう。
こういう場所での振舞い方は大地のパーティで散々慣れてる。
校長の前に立ち卒業証書を受けとる。ヅラだからか?
今日の校長は眩しく見えた。
卒業証書を受け取ると礼をして壇上から降りる。
全員卒業証書を受け取ると在校生とコールをする。
そして互いに合唱をして卒業式が終る。
私達は教室に向かう。
教室で最後の通知票をもらう。
大変良く頑張りました。
そう桜子のメッセージが書かれてあった。
そのあと桜子の挨拶がある。
女子の何人かは泣いていた。
やばい!
私は必死にこらえる。
終礼が終るとみんな校門に集まる。
最後は花のアーチを通って校門を抜ける。
それが最後の下校だ。
桜子は愛莉と水奈の母さん達と話をしていた
「桜子、6年間苦労を掛けたな」
「最後はいい子になってくれましたから」
桜子は私を見て言う。
「中学生になっても元気に明るく頑張りなさい」
私は我慢の限界だった。
泣くもんかって誓ったのに目かこぼれる涙を止めることはできなかった。
「らしくないぞ。折角のお祝いだ。いつもみたいに笑って」
桜子は凄く優しかった。
「ださっ、何泣いてるの?」
折角の余韻を台無しにする馬鹿がFGだ。
今日は大人しくしてようと思ったのにこいつは私を最後に怒らせた。
お前が送られる先は中学校じゃない、墓場だ。
そんな私を祈達がとめる。
「言ったろ?お前には大地がいるって」
祈が言う。
そして私の代わりに大地がそいつの胸ぐらを掴む。
「感涙に浸っている彼女を馬鹿にされて黙っているほど僕もまだ大人じゃない。入学式を病院で過ごしたくないなら失せろ」
私は初めてこんな場所で泣いていた。
大地は初めて怒りを露にした。
FGは立ち去った。
「ほら、せっかくだから天音も一緒に先生たちと写真とろう!天音、笑顔だよ」
なずなが言う。
先生達とひとりずつ写真を撮る。
それが終る頃時間が来た。
私達は在校生が作る花のアーチをくぐって校門を出る。
もう二度と戻ることのない学び舎。
さよなら小学校時代。
私達は新しい道を歩む。
私は振り返ることなくパパ達と家に帰った。
部屋に帰り着替えると昼間から寿司を頼んで宴会だった。
私達も来月からは中学生になる。
これまで色々な事があった。
退屈だと思ってた日常が懐かしい。
これからも色々な事があるだろう。
3年後にまた同じ気分になれるようにまた頑張ろう。
私はそう未来に誓った。
(5)
「水奈」
信じられなかった。
母さん達とアーチを抜けると空が待っていてくれた。
「どうしたんだ?」
「せっかくの卒業式だから見届けにきた」
それだけで嬉しい。
せっかく泣かずにいようと思ったのに、空の馬鹿……。
「じゃあ、母さん達先に帰ってるから」
積もる話もあるだろうからゆっくりしてこい。
そう言って母さん達と天音達は先に帰っていった。
私と空も近くの公園に寄って行った。
今日の空は優しい。
ここに来るまでの間ずっと手を繋いでいてくれた。
「今日は綺麗だね」
空がそう言うと私はドキッとした。
「……桜」
そう言うオチか。
「私はどうだ?」
「もちろん綺麗だよ」
そうか。
「……もう一年経つんだね」
何が?とか聞かなかった。
空はこの一年で気持ちに整理がついたんだろう。
もう一年前のような落ち込んでいる空の姿は無かった。
ちゃんと私の彼氏でいてくれる。
私だけを見てくれている。
「……ところでさ」
「どうした?」
「まだホワイトデーのお返ししてなかったよね」
ああ、忘れてると思っていたけど違うんだな。
「今日もらえるのか?」
「そのつもりで来た。もういい頃だろうと思ったから」
なんだろう?
すると空は不思議な事を言った。
「目を閉じて」
ここは小さな公園。
桜の花が綺麗に咲いている。
空が何をプレゼントしてくれるのか予想してしまった。
空はやっぱり何か吹っ切れたんだろう。
私は目を閉じる。
すると空は私の肩に手を乗せる。
目を閉じていても空の顔が近づいてくるのが分かった。
初めてのキスは初めて好きになった人がしてくれた。
ほんの数秒が長く感じた。
唇に残る温もり。
「これじゃだめかな?」
そんなわけないだろ。
「でも、やっぱりお返しにはならないな」
「ダメだった?」
「私のファーストキスだぞ」
私がプレゼントしたみたいじゃないか。
「それは困ったな」
空はそう言って笑みを浮かべる。
「今日じゃなくても良いから他の物をくれ」
「何をあげたらいい?」
「空の初めてが欲しい」
空にもその意味がわかったみたいだ。
「分かった……」
空の微笑みは崩れなかった。
翼、ちゃんと空の事は私が支えられているかな?
翼はどこかで見守っていてくれるか?
少なくとも私は翼に幸せを貰えた。
私には翼が幸せになる事を願うしかできないけど……頑張れよ。
「そろそろ帰ろうか?」
そう言って空は手を差し伸べる。
私はその手を掴んだ。
桜の下を私たちはゆっくりと歩いて家に帰った。
2月に入ると俺は地元に呼ばれていた。
全力で嫌な予感がする。
朝一で飛行機で地元に帰る。
地元駅に着くとタクシーでUSEの事務所に行く。
「あら?めずらしいわね。東京はどうですか?中村さん。」
「東京だと偶に雪も降って大変だよ」
事務員と話をしている。
すると次々と親が子供を連れてやってくる。
子供のレッスンの日らしい。
子供と言っても本当にまだ子供だ。
言葉も喋れない赤ちゃんがほとんどだった。
将来の夢もない赤ちゃんが親のエゴで将来を決められていく。
ある意味哀れだ。
途中で脱落したいものもいるだろう。
他の道を夢見る子供もいるだろう。
人気が左右するこの世界で生き残れるのか不安な子もいるかもしれない。
しかし良くも悪くもそういうことをまだ感じない赤ちゃんだった。
自分が何をやっているのかもわからない赤ちゃんだった。
どんな性格に育つのかも検討すらつかない。
笑顔が落ち着いていてぐずらない。
痩せてもなく太りすぎず、人見知りをせず良く笑う。
それだけで親は事務所に売り込みに来る。
事務所もそれを見極めて契約する。
USEはその子供の将来を文字通り買う。
良くも悪くもその子の将来は保証される。
USEではその子供の移動費から学費まですべて保障するのだから。
良くも悪くもUSEに所属した子供は将来が約束される。
モデルになりたいならモデルに、役者になると決めたなら役者になれるだろう。
将来の活躍も間違いない。
そうしないと俺達スタッフが責任を問われる。
しかし苦労するのは子供だけじゃない。
いわゆる赤ちゃんタレントは仕事には親の同伴も求められる。
子供一人で仕事をこなすなんてことはまずない。
どの撮影の現場でも親の同伴が必須条件となる。
なぜかうちの事務所に所属する子供の親は双子やら年子やらが多い。
そしてなぜか保育園に預けたがらない。
もちろん母親と子供の移動日も事務所が負担する。
そうするように社長の意向があるからだ。
これからも増え続けるのだろうか?
良くも悪くもUSEが地元の子供の芸能界への道を作っている。
その道は約束される。
親が願えば必ず叶う。
赤ちゃんタレントから子役、そして俳優女優へと道は準備されているだろう。
そういう運命と言う名の鎖が子供たちを引きずっていく。
そんな事を考えながらまだ自分の名前も言えない子供を見ていると社長夫人が来た。
この会社の専務だ。代表取締役はETCと言う別の会社の経営も携わっておりUSEの経営は専務に任されていた。
もちろん重要な事は社長の意向を確認するが。
専務は子連れの母親を連れていた。
それを見て俺はすぐに悟った。
またか……。
俺は応接室で説明を受ける。
専務が作った主婦のグループ「アムール」の会合で知り合ったそうだ。
そして専務はその女の子宇佐見宇佐子を一目見てスカウトした。
前にも同じケースがあった。
前原歩美と言う子が来た時と同じケース。
他の事はちょっと違うケースだ。
中学を卒業したら本気で仕事をさせるケース。
もちろん中卒なんて無責任な学歴にはさせない。
高校、大学までしっかり事務所で面倒を見る。学費は全て事務所が負担する。
専務がそこまで言うんだ。
必ずそれ以上の稼ぎをするだろう。
それは心配してない。
俺達は仕事とマネージャー、そして上京した後の住む場所等を確保をするだけ。
「この子は必ず売れる」
社長の発言は間違いないだろう。そういう物語なのだから。
本当は小学校から東京に済ませたいところだが、他の子供の面倒もある。
いっその事一家まとめて東京に引っ越せばいいのにどういうわけか育児は地元でという意思が固い。
地元に何かこだわりがあるのだろうか?
せめて福岡に。
そうも打診してみたがダメらしい。
地元の現在の人口は114万人らしいが、市内だけでどれだけの人数が専務の関係者なのか興味が少しあった。
とりあえず俺が呼び出されたのは前原歩美と同様宇佐見宇佐子は東京支社に所属する事になったから。
まあ、それはそれでやりやすい。小学校~高校までの間はどうするつもりなのか聞いてないけど。
実例がないわけじゃないから多分大丈夫だろう。
問題は移動距離だけだ。
勉強も多分高校に受かるくらいのレベルは保っていることだろう。
そういう風に物語が出来ているのだから。
東京での今日の仕事は営業に任せてる。
俺はゆっくり休んで。故郷の同期の友達と飲んで。そして次の日の朝に帰った。
(2)
今日は朝から忙しかった。
なんでこの時期に。
僕にも分からなかった。
僕が経営を任せれてる会社、江口トレーディングカンパニー。通称ETC
その会社になぜかこの年度末の忙しい時に大量の中途採用者を雇うことになった。
そして今日から出社するらしい。
社長として一応見ておいた方がいいと言われた
早来月には新卒者がくる。
この時期にわざわざ雇う理由が分からない。
当然、人事部のものは恵美に怒られていた。
危うく配置換えさせられるところだったらしい。
瀬戸作、岩崎洋二、宇佐美直太朗。
たった3人というものの2月に中途採用者を3名も緊急でいれなければいけないほどの会社ではないよ。
年齢を見るとまだ若い。
経歴は全員大卒だった。
「3年ちょっとで辞めてしまうような根性無しをどうして雇ったの!?」
恵美の言う通りだと思った。
どうせ続かないんじゃないか?
そんな感じもした。
まあ、3か月の試用期間で様子を見るという事で妥協した。
朝社長室に訪れ挨拶をして帰る。
特に特徴は無かった。
採用担当が何を感じて採用したのかわからない。
害はなさそだしいいか。
USEもの方も大変らしい。
子役の応募者が殺到している。
右も左もわからない赤ちゃんに親のエゴを押し付けていいのだろうか?
今年度はどうかしている。
近所に大量に親戚だの友達だのが引っ越してくる。
江口家も酒井家も白鳥家も同じそうだ。
市役所の職員もたいへんだろうな。
今年度で何十人の住所変更の手続きが行われたのだろう?
今日も朝から大忙しだった。
一々新人に付き合ってる暇もないくらいに客が押し寄せてくる。
山のように決裁書が届けられる。
時間の合間を縫ってそれに目を通さなければならない。
当然のように会議もある。
あっという間に一々が終わった。
家に帰ると恵美はまだ帰ってない。
恵美も忙しいのだろう?
新條さんが夕食を用意してくれていた。
遅れて恵美が帰ってくる。
中村さんと説得に時間がかかったらしい。
今後を考えたら早めに東京に引っ越した方がいい。
だけど皆頑なに拒んだそうだ。
地元に残ると言い張る。
地元にどんな魅力があるというのだろう?
夕食を終わると一番最後に風呂に入って恵美とリビングでくつろぐ。
そして次の日に備えて早めに寝る。
砂時計はあっという間に時間を刻んでいく。
(3)
「おはよう」
「おはよう、水奈」
起きると着替えて鞄を持ってダイニングに行く。
母さんからチョコを受け取った。
きっと翼がいないからと思って作ってくれたんだろう。
「ありがとう」
そう言ってチョコを受け取った。
父さんも母さんから受け取っていた。
時間になると僕達は純也達を迎えにいって学校に向かう。
水奈も家にきて「はい」と手作りのチョコをくれた。
水奈と正式に交際を始めて、初めてのプレゼントだった。
今年はちゃんとお返し考えてやらないとな。
小学校で天音達と別れると僕は中学校へ向かう。
教室では女子が騒いでいた。
騒いでるのは女子だけじゃなく男子もか。
チョコを受け取って喜んでいた。
学校が終ると部活をする人と帰宅部の者に別れる。
僕の周りで部活をする人はいなかった。
家に帰るとすぐに着替えてチョコを食べる。
「美味しかったよ、ありがとう」
水奈にメッセージを送る。
「お返し期待してるからな!」
さり気なくプレッシャーをかけてくる水奈。
宿題を済ませてゲームを始める。
父さんが帰ってくると夕食に呼ばれる。
夕食を食べると風呂に入ってゲームをしながら水奈と電話をする。
そして時間になるとベッドに入る。
時間はあっという間に経って行く。
平和な日々を過ごしていた。
(4)
準備は出来た。
今日で天音達ともお別れ。
6年間見守ってきた。
色々手を焼かされたけど、今となっては良い思い出。
胸をなでおろす教師もたくさんいる。
学校に着くと職員室に行く。
そして準備をして朝礼の時間になると教室に向かう。
教室には今日の日の為に着飾った子供たちがいた。
そして今日の説明をする。
時間になると体育館に向かう。
子供たちが会場に入っていくのを見守る。
拍手に包まれながら入っていく。
式が始まった。
そしていよいよ卒業証書授与が始まる。
私のクラスの番になると私は一人ずつ名前を読み上げる。
「片桐天音」
「はい」
天音はこういう場に慣れているのだろうか。
緊張することなく壇上に上がっていく。
そして卒業証書が授与される。
最後に在校生とコールをして合唱をする。
その後に最後の校歌斉唱。
卒業式が終ると卒業生は教室に戻る。
最後の終礼が始まる。
親御さんも一緒にいる。
私は壇上に立つ。
「皆さん誰一人かけることなくよく6年間頑張ってきました」
私の彼等に送る最後の言葉。
足下を見てください。
これがあなたの歩む道です。
前を見てください。
あれがあなたの未来です。
両親にもらった沢山の優しさ。
愛を抱いて歩めと繰り返してくれます。
まだあなた達は幼くて意味などわからないでしょう。
でもそんなあなた達の手を握り一緒に歩いてくれます。
夢はいつも空高くにあるから届かなくて怖いね。
だけど追い続けてください。
あなたの物語だから諦めないで。
不安になったときあなた達の手を握り一緒に歩んできた両親を振り返ってください。
その優しさが時には嫌になり、やがて離れる両親に素直になれないかもしれないけど。
でもそれでも両親は見守ってくれています。
前を見てください。
あれがあなた達の未来です。
未来へ向かってゆっくりと歩いてください。
先生達も応援しています。
がんばれ。
それが私が子供たちに贈る最後の言葉。
子供たちは黙って聞いてた。
そして一人ずつ最後の通知票を渡す。
最後の終礼が終わった。
私の彼等に対する最後の授業が終わった。
終礼が終ると親と一緒に教室を出ていく。
私の仕事はまだ終わってない。
私も教室を出ると校門に向かった。
(2)
「天音、水奈が来ましたよ!」
愛莉の声が聞こえる。
私は今日来ていく服を悩んでいた。
中学生は良いよな。
制服で済むんだから。
さすがにドレスは気合入れすぎか。
無難な服を選ぶと翼から借りたコサージュをつけて部屋を出る。
「お前も気合入れてるな」
それが水奈の感想だった。
そういう水奈もいつもはミニスカートなのに今日は清楚な服装にしている。
「お互い様だろ」
そう言って笑った。
私達は学校に向かう。
大地も粋も遊も皆お洒落していた。
「おはよう」
挨拶をする。
話をしていると桜子が教室に入ってくる。
桜子も今日はびしっとスーツ姿を決めていた。
朝礼が終ると体育館に移動する。
私達が入場すると拍手が起こる。
静かに着席する。
この学校に国歌斉唱で起立しないとかいう面倒な教諭はいない。
そして卒業式が始まる。
祝辞が長い。
暗記できないような長い文章一々考えてこなくていい。
「卒業おめでとう」
それだけで十分だろうが。
長々とくどい挨拶が終ると卒業証書授与の時が来る。
私達のクラスの番が来た。
桜子がマイクの前に立って名前を読み上げる。
「石原大地」
「はい」
大地が立ち上がって壇上に向かう。
そして私の番が回って来た。
「片桐天音」
「はい」
私も返事をして壇上に向かう。
こういう場所での振舞い方は大地のパーティで散々慣れてる。
校長の前に立ち卒業証書を受けとる。ヅラだからか?
今日の校長は眩しく見えた。
卒業証書を受け取ると礼をして壇上から降りる。
全員卒業証書を受け取ると在校生とコールをする。
そして互いに合唱をして卒業式が終る。
私達は教室に向かう。
教室で最後の通知票をもらう。
大変良く頑張りました。
そう桜子のメッセージが書かれてあった。
そのあと桜子の挨拶がある。
女子の何人かは泣いていた。
やばい!
私は必死にこらえる。
終礼が終るとみんな校門に集まる。
最後は花のアーチを通って校門を抜ける。
それが最後の下校だ。
桜子は愛莉と水奈の母さん達と話をしていた
「桜子、6年間苦労を掛けたな」
「最後はいい子になってくれましたから」
桜子は私を見て言う。
「中学生になっても元気に明るく頑張りなさい」
私は我慢の限界だった。
泣くもんかって誓ったのに目かこぼれる涙を止めることはできなかった。
「らしくないぞ。折角のお祝いだ。いつもみたいに笑って」
桜子は凄く優しかった。
「ださっ、何泣いてるの?」
折角の余韻を台無しにする馬鹿がFGだ。
今日は大人しくしてようと思ったのにこいつは私を最後に怒らせた。
お前が送られる先は中学校じゃない、墓場だ。
そんな私を祈達がとめる。
「言ったろ?お前には大地がいるって」
祈が言う。
そして私の代わりに大地がそいつの胸ぐらを掴む。
「感涙に浸っている彼女を馬鹿にされて黙っているほど僕もまだ大人じゃない。入学式を病院で過ごしたくないなら失せろ」
私は初めてこんな場所で泣いていた。
大地は初めて怒りを露にした。
FGは立ち去った。
「ほら、せっかくだから天音も一緒に先生たちと写真とろう!天音、笑顔だよ」
なずなが言う。
先生達とひとりずつ写真を撮る。
それが終る頃時間が来た。
私達は在校生が作る花のアーチをくぐって校門を出る。
もう二度と戻ることのない学び舎。
さよなら小学校時代。
私達は新しい道を歩む。
私は振り返ることなくパパ達と家に帰った。
部屋に帰り着替えると昼間から寿司を頼んで宴会だった。
私達も来月からは中学生になる。
これまで色々な事があった。
退屈だと思ってた日常が懐かしい。
これからも色々な事があるだろう。
3年後にまた同じ気分になれるようにまた頑張ろう。
私はそう未来に誓った。
(5)
「水奈」
信じられなかった。
母さん達とアーチを抜けると空が待っていてくれた。
「どうしたんだ?」
「せっかくの卒業式だから見届けにきた」
それだけで嬉しい。
せっかく泣かずにいようと思ったのに、空の馬鹿……。
「じゃあ、母さん達先に帰ってるから」
積もる話もあるだろうからゆっくりしてこい。
そう言って母さん達と天音達は先に帰っていった。
私と空も近くの公園に寄って行った。
今日の空は優しい。
ここに来るまでの間ずっと手を繋いでいてくれた。
「今日は綺麗だね」
空がそう言うと私はドキッとした。
「……桜」
そう言うオチか。
「私はどうだ?」
「もちろん綺麗だよ」
そうか。
「……もう一年経つんだね」
何が?とか聞かなかった。
空はこの一年で気持ちに整理がついたんだろう。
もう一年前のような落ち込んでいる空の姿は無かった。
ちゃんと私の彼氏でいてくれる。
私だけを見てくれている。
「……ところでさ」
「どうした?」
「まだホワイトデーのお返ししてなかったよね」
ああ、忘れてると思っていたけど違うんだな。
「今日もらえるのか?」
「そのつもりで来た。もういい頃だろうと思ったから」
なんだろう?
すると空は不思議な事を言った。
「目を閉じて」
ここは小さな公園。
桜の花が綺麗に咲いている。
空が何をプレゼントしてくれるのか予想してしまった。
空はやっぱり何か吹っ切れたんだろう。
私は目を閉じる。
すると空は私の肩に手を乗せる。
目を閉じていても空の顔が近づいてくるのが分かった。
初めてのキスは初めて好きになった人がしてくれた。
ほんの数秒が長く感じた。
唇に残る温もり。
「これじゃだめかな?」
そんなわけないだろ。
「でも、やっぱりお返しにはならないな」
「ダメだった?」
「私のファーストキスだぞ」
私がプレゼントしたみたいじゃないか。
「それは困ったな」
空はそう言って笑みを浮かべる。
「今日じゃなくても良いから他の物をくれ」
「何をあげたらいい?」
「空の初めてが欲しい」
空にもその意味がわかったみたいだ。
「分かった……」
空の微笑みは崩れなかった。
翼、ちゃんと空の事は私が支えられているかな?
翼はどこかで見守っていてくれるか?
少なくとも私は翼に幸せを貰えた。
私には翼が幸せになる事を願うしかできないけど……頑張れよ。
「そろそろ帰ろうか?」
そう言って空は手を差し伸べる。
私はその手を掴んだ。
桜の下を私たちはゆっくりと歩いて家に帰った。
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