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1stSEASON
それぞれの花
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(1)
「ふぅ~」
湯舟に浸かってのんびりする。
銭湯っていいね。
足を伸ばして肩までつかる。
家の家の風呂は狭いわけじゃないけどなぜか翼と天音が一緒に入りたがる。
天音は大地がいるんだしそろそろ別でもいいんじゃないかと思ったけど。
「お前らを二人で風呂に入れるとか絶対にろくなことがない!」
だったら翼と天音が入ればいい?
もちろん提案したよ。
「空は私と入るの嫌?」
そんな風に心の中にまで訴えられてきたら断れないよ。
「となり良いか?」
「僕もいいかな?」
学と酒井君がやってきた。
5年生組は4人だけだ。
1人だけ中島君はサウナに入ってる。
4年生組は泳いではしゃいでる。
大人組は大人組で集まって何か話してる。
「桐谷君のお父さんの話は聞いたらいけません!」
母さんからの言いつけだった。
渡辺さんは正俊君の世話をしてる。
「さっきは大変だったみたいだね」
僕は学に聞いてみた。
「ああ。遊に事情を聞いてみたんだが何かあったみたいだな」
さっきというのは朝から水奈が突然走り去った件。
原因は学のお父さんなんだけど。
僕も人の心配をしてる状況じゃない。
翼だっていつ同じ事態になるか分からない。
女心とはとても難しいって母さんが言ってた。
幸いにも僕と翼は心を「接続」できる。
他のカップルよりはいくらかましなのかもしれない。
何を考えていて何を思って、今何をして欲しいのかそれがお互い分かるのだから。
もちろん「双子の姉弟」という障壁はある。
現実的に考えたら無理難題を抱えているわけだけど。
それに誰かが言ってた。
彼女の写真を撮るのが怖いのだと。
何枚も撮っていると彼女の心の変化が分かってしまうのだという。
「ああ、もう終わりなんだ」って時が分かってしまうのが怖いのだという。
父さんもなぜか母さんの心を読むのが怖いと言っていた。
自分から離れていくんじゃないかと思うと怖くて入れないそうだ。
母さんはそれが不満らしい。ちゃんと自分を見て欲しいと願っているそうだ。
恋は人を臆病にする。って偉い人が言ったらしい。
今ならその意味が分かる。
僕は翼の本心に触れて常時翼とリンクしてる。
今こうしている間も翼の気持ちを常に把握してる。
翼も僕に心を開いてくれてる。
だから怖い。いつか翼も僕から離れていくんじゃないかって。天音のように。
「そんなこと絶対にないから!」
翼からのメッセージが届いた。
「信じてる」
返信しておいた。
「ありがとう」
翼の心は満たされているようだ。
「何一人でにやけてるんだ?」
学に言われて現実に戻った。
「なんか重大な話してた?」
僕が学に聞いた。
「全然話聞いてなかったんだな」
学が呆れてる。
「どうやったらお前みたいに女心が分かるようになるんだ?って話をしてたんだよ」
なるほど。
「学は一つ大きな勘違いをしてる」
「と、いうと?」
「僕は女心が分かるわけじゃない。翼の気持ちが読み取れるだけ」
人の心を正確に把握するのは多分父さんと翼くらいだ。
その父さん達ですら偶にミスする。
「酒井君はどうなの?」
酒井君に話を振ってみた。
「いや、僕にもわかりませんね。妹の気持ちすらわからないんですよ」
酒井君はそう言って笑う。
「確かに女子の精神年齢は男子の2つ上は言ってると聞いたことがあるが恋の気持ちはさっぱりわからんな」
学が言う。
恋はまだ小学4年生。学にべったりなんだそうだ。
そういや3人とも妹がいるんだな。
「僕達ってみんな妹がいるよね?」
「そうだな」
「そうですね~」
「妹の扱い方ってわかる?」
ちなみに僕にはさっぱりわからない。
「梓と繭と祈の3人にはいつも苦労してます」
「恋は家にいる間はずっとそばにいたがるな」
お蔭で美希にメッセージが遅れないんだがと学が笑う。
「でも空は、天音は大地がいるから手がかからないんじゃないのか?」
そうでもないよ学。
4年生は飽きたのか風呂を出て行った。
多分外に出てゲームで遊ぶ気だろう。
「どうしたお前たち。3人そろって」
渡辺さんが来た。
同じ質問を渡辺さんにしてみた。
「女心を知る方法?そりゃまた小学生にしては難しい問題に遭遇してるな」
渡辺さんはそう言って笑う。
「そんな事が出来るのは俺の中ではただ一人。冬夜だけだ」
やっぱりそうなのか?
「父さんってモテたんですか?」
「普通にしてたらモテただろうな」
「と、いうと?」
「あいつには最初から愛莉さんがいた。愛莉さんだけが全てだった」
小6の時から付き合ってたんだっけ?
「普通の男にはぜったいわからんよ。嫁の気持ちすらわからないんだから」
渡辺さんが言う。
「その冬夜も言ってたぞ『二人でお互いのトリセツを作るしかない』ってな」
「トリセツですか……」
学が言った。
「渡辺君、そろそろ出ようか」
大人組が言う。
「そうだな、俺達もそろそろでよう。のぼせるぞ」
渡辺さんが言うので僕達も風呂を出た。
風呂を出るとやっぱりコーヒー牛乳だよね。
買うと一気飲みする。
ふぅ~。
その後にアイスクリームを食べる。
僕がアイスクリームを食べていると正俊君が渡辺さんに強請っていた。
「仕方が無いな」
渡辺さんが買ってやる。
満足そうに食べていた。
それからしばらくして女性陣が出てきた。
昼ごはんをファミレスで食べて解散になった。
ファミレスに行くといくつかのテーブルに分かれる。
僕のテーブルには翼、天音、水奈、大地の5人。
注文をする。
その量に大地と水奈は驚く。
ご馳走になってるんだし控えめにした方なんだけど。
「お前ら一体どこにその栄養いってるんだよ?」
水奈が言う。
「翼は間違いなく胸にいってるね。毎日見てるから気づかなかかったけど、昨日水着姿みて確信した」
天音が言った。
「そ、育ち盛りだし……」
翼が恥ずかしそうに言う。
「でも食うだけで大きくなるものか?それなら私も頑張って食ってみるか」
水奈が言う。
「そう言えば揉まれたら大きくなるって言ってたな。まさか空、お前私の見てないところで……」
「そ、そんな事あるわけないだろ」
天音が言うと僕が言った。
「そんなに否定されると結構傷つくんだけど」
翼が言う。
「大体天音が一人で寝れるようになったら私は空と寝るのに」
理屈がおかしいよ翼。
「うぬぬ……大地!お前他人事みたいに聞いてるんじゃねーぞ!お前が私の胸を揉めば済むだけの話なんだからな!」
大地はジュースを吹いた。
「その理屈で言うなら私には当分無理だな……」
そっか、水奈にはまだ恋人がいないんだったな。
でも好きな人がいるみたいだけど……。
「水奈も好きな人がいるなら付き合ってみたらいいんじゃないか?」
「それが出来たら苦労しねーよ……」
その時、隣にいる翼から小突かれた。
「空は余計な事かんがえなくていいの」
そうか考えなくていいのか。
いいタイミングで注文した料理が来たようだ。
我が家では食い物は絶対。
3人とも黙って食べることに集中する。
それを呆然と見ている水奈と大地。
そんなに見てもあげないよ?
それより食べないと冷めちゃうよ?
料理を食べ終わると家に送ってもらう。
荷物を降ろして「ありがとうございました」と礼を言う。
「年末は無理だって言ってたな」
渡辺さんが父さんに聞いてる。
「ごめん、さすがに出産予定日間近の愛莉残して飲みには行けない」
父さんが申し訳なさそうに言う。
「まあ仕方ない。また落ち着いたら遊びに行こう」
「ありがとね」
「気にするな、じゃあな」
そう言って渡辺さん達は帰っていった。
荷物を部屋で整理するとベッドに横になる。
横になっていると翼が入ってくる。
「どうしたの?」
「天音まだ帰ってないし試してみようと思ってさ」
「なにを?」
「さっき話してた。『揉んだら大きくなる』って」
はい?
状況整理できない僕をよそに僕に背中を向ける翼。
「えーと……あの……」
「向かい合うのは難易度高いと思ったんだけどそっちの方がいい?」
いや、そう言う問題じゃなくて……。
「ああ、直接揉みたいってことか」
翼は僕の思考を読み取ってくれないのだろうか?
「何をそんなに慌ててるの?おっぱいくらいいつも見てるでしょ?気づかなかった?それはそれでショックなんだけど」
読み取ってはくれてるらしい。
「翼は今も順調に成長してるからそんなに慌てなくてもいいじゃないか?」
「あ、毎日見てくれてるんだね。ありがとう」
翼はそう言って抱きついてくる。
「でもさ、私もちょっと焦ってる」
「どうして?」
「さっき風呂場で確認したんだけど、美希ったら服脱いだら結構胸あるよ」
そんなこと暴露していいのか?
でもそんなに大きいのか……美希。
「そんなことは想像しなくていい」
翼に頭を小突かれた。
「まあ、そんな事は置いておいてさ。折角天音いないんだから今のうちにいちゃつこう?」
「つ、翼それは無理だと思う」
「どうして……」
僕は翼の後ろを指差した。
翼は後ろを見る。
翼の背後には母さんが立っていた。
「翼……ほどほどにしておかないと空の部屋に立ち入り禁止にしますよ」
「パパは私達の仲を認めてくれた」
「母さんも認めてないわけじゃありません。でも冬夜さんの気持ちも察してあげてください。ただでさえ姉弟で恋仲になるなんて複雑な心境なのに、小学生からそんな関係を持ったなんて知ったらどう思うか考えたことありますか?」
母さんの言ってることはまともに見えるけど結構無茶苦茶だと思う。
「じゃあ、中学生になったらいいの?」
「……その時にあなたがその気があるのなら好きになさい。空の部屋は防音だから」
ほらね、やっぱり無茶苦茶だった。
「ありがとう。じゃあ、中学生になったら一緒に下着選ぼうね。空」
またあの思いをしなければいけないのか……。
(2)
私は石原家の家族の車に乗っていた。
美希は桐谷家の車に乗っている。
「天音ちゃん楽しめた?」
大地の母さんが聞いてきた。
「はい」
私は返事した。
「それはよかったわ」
会話が続かない。
私から積極的に振ったほうがいいのだろうか?
何を話そうか?
無難なところから攻めてみよう。
「大地は夏休みの宿題終わったか?」
「もうちょっとかな。言われた通り7月中には終わらせるよ」
「じゃあ、8月は遊べるな」
「それは大丈夫だと思う」
8月は花火から始まってプールにカラオケ、ボーリング、ゲーセン……映画でもいいか。今度は私が選んでやろう。
「天音読書感想文どうした?」
大地が話題を振ってきた。
指定された本から一冊選んで読んで感想文を書く課題。
率直に書くと「つまらん!」の5文字で終わってしまうんだけど400字詰め原稿用紙何枚以上って規定があるので適当に書くしかない。
適当に流し読みして印象に残ったところを頭にあるだけの単語を繋ぎ合わせて書くだけの作業。
「もう終わったよ」
「ちゃんと読んだ?」
「読むわけないじゃん」
「そうだよね……」
大地は読書感想文で苦戦してるのか?
……まてよ?これはチャンスなんじゃないのか?
「大地、分かんないところあるなら教えてあげる。今度大地の家に遊びに行ってもいい?」
我ながら良い攻め方だと思った。
「う、うちに来るの?」
慌てる大地。
「何か来られたらまずい事でもあるの?大地」
大地のお母さんが動いた。これで決まりだ。
「いや、特にないけど……」
「じゃあ、招待しなさいな。ちゃんとおもてなししてあげる」
そう来ると思った。
「天音ちゃん、うちはお風呂も広いから大丈夫よ。2人では入れるわ」
「え、恵美!?」
大地のお父さんが動揺してる。
「何か問題あるの?2人は恋人同士なのよ?泊ってくくらい当たり前でしょ?」
「そ、それは片桐君にも許可を得た方がいいんじゃないかな……」
大地のお父さんがそう言う前に大地のお母さんは行動してた。
「もしもし愛莉ちゃん?今度我が家に天音ちゃんを招待したいんだけど……大丈夫、うちの息子にも徹底しておくから『まだ孫は早い』って……」
頭を抱える大地。
大地のお母さんが電話終えるとにこりと笑った。
「これで問題ないわよね?望」
「そ、そうだね」
「そうね、私達外泊しておいた方がいいかしら?2人とも色々遠慮するだろうし」
「え、恵美。まだ大地たちは小学4年生だよ?」
「馬鹿ね、望。大地がそんな真似するはずないでしょ。精々抱き合ってキスして寝るくらいよ」
「でもさすがに、2人きりにするのは駄目だよ。美希を桐谷君の家で二人きりにして大丈夫なの?恵美は」
上手く切り返したように見えた大地のお父さん。
「それが亜依の家には瑛大がいるでしょ?恋ちゃんや遊君もいるし……そういうムードにはなれないみたい」
「そ、そうなんだ……」
「うちの大地はそんな事の無いように徹底しておくから安心して泊まりにきなさい」
「はい」
私と大地のお母さんは笑顔だった。
大地と大地のお父さんは笑うしかなかった。
私の家に着くと「じゃあ、いつでもいらっしゃい」と笑顔の大地のお母さん。
こりゃ私もとっておきの下着準備するしかないな!
(3)
私は桐谷家の車に送ってもらっていた。
学の代わりに恋の遊び相手をしてあげた。
恋もお姉さんという存在に憧れていたみたいで喜んでくれた。
「すまんな、男の俺ではどうにもならんこともあるから」
「気にしないで、気に入ってもらえてよかった」
「そうか。この後の夏休みはどうするつもりだ?」
「花火とプールは行く予定だよ」
「市営プールに行く約束も果たさないとな」と返してくれた。
覚えててくれたんだ。
「じゃあ、それまでに私も水着用意しておかなくちゃね」
「そうだね……」
母さんと買いに行こうかな?
「学はどういう水着が好み?」
聞いたらまずかったみたいだ。
学は動揺している。
「あ、ああ。どんなのでも美希が来たら似合うと思うよ」
あまり興味が無いのかな?
こう見えてスタイルには自信があるんだけど……。
「学、それ一番最悪の返事だよ?」
恋が言う。
「美希は『私の水着姿なんてどうでもいいのか』と受け取っちゃうよ?」
「ごめんね、良くも悪くも真面目に育ったから学は」
学のお母さんが言う。
「学の年頃ならやっぱりスクール水着勧めとけ!今の内だぞスクール水着着てくれるのは!何なら写真も撮っておくと……」
「このド変態は黙って運転してろ!学を変な趣味に巻き込むな!」
「学、こんな変態の言う事なんて聞かなくていいんだからね!」
学のお父さんが言うと、学のお母さんと恋に責められていた。
「そうだ、美希。学に水着選んでもらうといいよ。学なら多分大丈夫」
恋が言う。
翌日水着を買いに行った。
善明君は白地に花柄のスカートワンピースを選んでくれた。
「ありがとう」
「いえ、これでプール楽しみだな」
「ええ、折角だからお昼でも食べて帰りませんか?」
「そうだな」
お昼を食べた後午後はウィンドウショッピングをしてボーリングして帰った。
帰ってから「今日はありがとう」ってメッセージを送った。
「こっちこそありがとう。それじゃおやすみ」
そうか、こうやって口実を作ったら学も私に構ってくれるのかな。
でも恋と仲良くなっておくのも悪くない。
だったら……。
それから暇を見ては学の家に遊びに行った。
学が家事をしている間、恋の相手をしてた。
「助かるよ」
「私も学と一緒にいれるから嬉しい」
そんな夏休みの過ごし方をしていた。
(4)
「遊はプールに行くのか?」
「いや、母さんたちが仕事で……」
車にいる間は遊とスマホのメッセージでやり取りしてた。
そっか……じゃあしょうがないな。
「俺の事より自分の心配しなよ」
「遊……その事だけど」
「分かってる。俺と水奈だけの秘密だ」
「そうしてもらうと助かる」
私の家に着いた。
車を降りると遊たちは帰っていった。
「お!お帰り。どうだった?」
母さんが出迎えてくれた。
「楽しかった事もあるけど……母さんに相談したい事があるんだ」
「どうした?」
母さんに相談しようと思ったけど、その為にはまず私が空を好きな事、遊を振ったことを言わなきゃならない。
その事は出来れば母さんと私だけの秘密にしたい。
あの馬鹿には絶対知られたくない。
どうすればいいか悩んでいると母さんが察してくれた。
「そうだな、水奈。たまには一緒に風呂入るか?」
「神奈!それなら家族湯行こう!それなら俺も相談に乗れる」
「この馬鹿は黙ってろ!」
本当にどうしようもない父親だ。
その日夕食を食べると片づけする母さんを手伝った。
母さんの妊娠が分かってからずっとそうしてる。
母さんの体調が悪い時には私が替わりにやってる。
片づけが終ると母さんと風呂に入った。
母さんは私の胸を見て言った。
「やっぱりダメみたいだな……すまない」
母さんが謝る事じゃないと思うんだけど。
「で、どうしたんだ?」
「私は貧乏くじなの?」
「え?」
母さんの顔が険しくなる。
キャンプ場であったことを、遊のお父さんに言われた事を説明した。
もちろん私の好きな人の事も。
「そうか……なんとなく気づいてはいたんだがやっぱりな」
母さんは一言言って考え込んでしまった。
「それで空に貧乏くじだと言われたのか?」
「空にそう言われるのが怖くて」
「私は貧乏くじを引いたよ」
母さんはそう言って笑った。
多分貧乏くじとはあのくそ野郎の事だろう。
「……でもな、その運命が水奈という大切な娘を授かることになったんだ」
例え誰から何と言われようと母さんにとってはたった一つの宝物だと言う。
「親バカって言われてもいい。水奈も決して翼に負けてない」
だけどそれは優劣で決めるものじゃない。
空が選ぶ運命。
いつの日か空が私に振り向いてくれるまで待つもよし。
いつか他の見知らぬ誰かに私が振り向くもよし。
「……ずっと待ってたら母さんに孫を見せられないかもしれない」
「それは空達にも言える事だろ?」
母さんの笑顔が優しかった。
「いつも自分の気持ちに正直に生きろ。忘れるな。自分に嘘をついて生きてはいけない」
「……わかった」
私の花は綺麗な花じゃないかもしれない。
それでもたった一つしかない大切な花だ。
母さんの言葉を胸に刻んでいた。
もう迷わない。
私は私の思うままに生きよう。
そう心に誓った。
「ふぅ~」
湯舟に浸かってのんびりする。
銭湯っていいね。
足を伸ばして肩までつかる。
家の家の風呂は狭いわけじゃないけどなぜか翼と天音が一緒に入りたがる。
天音は大地がいるんだしそろそろ別でもいいんじゃないかと思ったけど。
「お前らを二人で風呂に入れるとか絶対にろくなことがない!」
だったら翼と天音が入ればいい?
もちろん提案したよ。
「空は私と入るの嫌?」
そんな風に心の中にまで訴えられてきたら断れないよ。
「となり良いか?」
「僕もいいかな?」
学と酒井君がやってきた。
5年生組は4人だけだ。
1人だけ中島君はサウナに入ってる。
4年生組は泳いではしゃいでる。
大人組は大人組で集まって何か話してる。
「桐谷君のお父さんの話は聞いたらいけません!」
母さんからの言いつけだった。
渡辺さんは正俊君の世話をしてる。
「さっきは大変だったみたいだね」
僕は学に聞いてみた。
「ああ。遊に事情を聞いてみたんだが何かあったみたいだな」
さっきというのは朝から水奈が突然走り去った件。
原因は学のお父さんなんだけど。
僕も人の心配をしてる状況じゃない。
翼だっていつ同じ事態になるか分からない。
女心とはとても難しいって母さんが言ってた。
幸いにも僕と翼は心を「接続」できる。
他のカップルよりはいくらかましなのかもしれない。
何を考えていて何を思って、今何をして欲しいのかそれがお互い分かるのだから。
もちろん「双子の姉弟」という障壁はある。
現実的に考えたら無理難題を抱えているわけだけど。
それに誰かが言ってた。
彼女の写真を撮るのが怖いのだと。
何枚も撮っていると彼女の心の変化が分かってしまうのだという。
「ああ、もう終わりなんだ」って時が分かってしまうのが怖いのだという。
父さんもなぜか母さんの心を読むのが怖いと言っていた。
自分から離れていくんじゃないかと思うと怖くて入れないそうだ。
母さんはそれが不満らしい。ちゃんと自分を見て欲しいと願っているそうだ。
恋は人を臆病にする。って偉い人が言ったらしい。
今ならその意味が分かる。
僕は翼の本心に触れて常時翼とリンクしてる。
今こうしている間も翼の気持ちを常に把握してる。
翼も僕に心を開いてくれてる。
だから怖い。いつか翼も僕から離れていくんじゃないかって。天音のように。
「そんなこと絶対にないから!」
翼からのメッセージが届いた。
「信じてる」
返信しておいた。
「ありがとう」
翼の心は満たされているようだ。
「何一人でにやけてるんだ?」
学に言われて現実に戻った。
「なんか重大な話してた?」
僕が学に聞いた。
「全然話聞いてなかったんだな」
学が呆れてる。
「どうやったらお前みたいに女心が分かるようになるんだ?って話をしてたんだよ」
なるほど。
「学は一つ大きな勘違いをしてる」
「と、いうと?」
「僕は女心が分かるわけじゃない。翼の気持ちが読み取れるだけ」
人の心を正確に把握するのは多分父さんと翼くらいだ。
その父さん達ですら偶にミスする。
「酒井君はどうなの?」
酒井君に話を振ってみた。
「いや、僕にもわかりませんね。妹の気持ちすらわからないんですよ」
酒井君はそう言って笑う。
「確かに女子の精神年齢は男子の2つ上は言ってると聞いたことがあるが恋の気持ちはさっぱりわからんな」
学が言う。
恋はまだ小学4年生。学にべったりなんだそうだ。
そういや3人とも妹がいるんだな。
「僕達ってみんな妹がいるよね?」
「そうだな」
「そうですね~」
「妹の扱い方ってわかる?」
ちなみに僕にはさっぱりわからない。
「梓と繭と祈の3人にはいつも苦労してます」
「恋は家にいる間はずっとそばにいたがるな」
お蔭で美希にメッセージが遅れないんだがと学が笑う。
「でも空は、天音は大地がいるから手がかからないんじゃないのか?」
そうでもないよ学。
4年生は飽きたのか風呂を出て行った。
多分外に出てゲームで遊ぶ気だろう。
「どうしたお前たち。3人そろって」
渡辺さんが来た。
同じ質問を渡辺さんにしてみた。
「女心を知る方法?そりゃまた小学生にしては難しい問題に遭遇してるな」
渡辺さんはそう言って笑う。
「そんな事が出来るのは俺の中ではただ一人。冬夜だけだ」
やっぱりそうなのか?
「父さんってモテたんですか?」
「普通にしてたらモテただろうな」
「と、いうと?」
「あいつには最初から愛莉さんがいた。愛莉さんだけが全てだった」
小6の時から付き合ってたんだっけ?
「普通の男にはぜったいわからんよ。嫁の気持ちすらわからないんだから」
渡辺さんが言う。
「その冬夜も言ってたぞ『二人でお互いのトリセツを作るしかない』ってな」
「トリセツですか……」
学が言った。
「渡辺君、そろそろ出ようか」
大人組が言う。
「そうだな、俺達もそろそろでよう。のぼせるぞ」
渡辺さんが言うので僕達も風呂を出た。
風呂を出るとやっぱりコーヒー牛乳だよね。
買うと一気飲みする。
ふぅ~。
その後にアイスクリームを食べる。
僕がアイスクリームを食べていると正俊君が渡辺さんに強請っていた。
「仕方が無いな」
渡辺さんが買ってやる。
満足そうに食べていた。
それからしばらくして女性陣が出てきた。
昼ごはんをファミレスで食べて解散になった。
ファミレスに行くといくつかのテーブルに分かれる。
僕のテーブルには翼、天音、水奈、大地の5人。
注文をする。
その量に大地と水奈は驚く。
ご馳走になってるんだし控えめにした方なんだけど。
「お前ら一体どこにその栄養いってるんだよ?」
水奈が言う。
「翼は間違いなく胸にいってるね。毎日見てるから気づかなかかったけど、昨日水着姿みて確信した」
天音が言った。
「そ、育ち盛りだし……」
翼が恥ずかしそうに言う。
「でも食うだけで大きくなるものか?それなら私も頑張って食ってみるか」
水奈が言う。
「そう言えば揉まれたら大きくなるって言ってたな。まさか空、お前私の見てないところで……」
「そ、そんな事あるわけないだろ」
天音が言うと僕が言った。
「そんなに否定されると結構傷つくんだけど」
翼が言う。
「大体天音が一人で寝れるようになったら私は空と寝るのに」
理屈がおかしいよ翼。
「うぬぬ……大地!お前他人事みたいに聞いてるんじゃねーぞ!お前が私の胸を揉めば済むだけの話なんだからな!」
大地はジュースを吹いた。
「その理屈で言うなら私には当分無理だな……」
そっか、水奈にはまだ恋人がいないんだったな。
でも好きな人がいるみたいだけど……。
「水奈も好きな人がいるなら付き合ってみたらいいんじゃないか?」
「それが出来たら苦労しねーよ……」
その時、隣にいる翼から小突かれた。
「空は余計な事かんがえなくていいの」
そうか考えなくていいのか。
いいタイミングで注文した料理が来たようだ。
我が家では食い物は絶対。
3人とも黙って食べることに集中する。
それを呆然と見ている水奈と大地。
そんなに見てもあげないよ?
それより食べないと冷めちゃうよ?
料理を食べ終わると家に送ってもらう。
荷物を降ろして「ありがとうございました」と礼を言う。
「年末は無理だって言ってたな」
渡辺さんが父さんに聞いてる。
「ごめん、さすがに出産予定日間近の愛莉残して飲みには行けない」
父さんが申し訳なさそうに言う。
「まあ仕方ない。また落ち着いたら遊びに行こう」
「ありがとね」
「気にするな、じゃあな」
そう言って渡辺さん達は帰っていった。
荷物を部屋で整理するとベッドに横になる。
横になっていると翼が入ってくる。
「どうしたの?」
「天音まだ帰ってないし試してみようと思ってさ」
「なにを?」
「さっき話してた。『揉んだら大きくなる』って」
はい?
状況整理できない僕をよそに僕に背中を向ける翼。
「えーと……あの……」
「向かい合うのは難易度高いと思ったんだけどそっちの方がいい?」
いや、そう言う問題じゃなくて……。
「ああ、直接揉みたいってことか」
翼は僕の思考を読み取ってくれないのだろうか?
「何をそんなに慌ててるの?おっぱいくらいいつも見てるでしょ?気づかなかった?それはそれでショックなんだけど」
読み取ってはくれてるらしい。
「翼は今も順調に成長してるからそんなに慌てなくてもいいじゃないか?」
「あ、毎日見てくれてるんだね。ありがとう」
翼はそう言って抱きついてくる。
「でもさ、私もちょっと焦ってる」
「どうして?」
「さっき風呂場で確認したんだけど、美希ったら服脱いだら結構胸あるよ」
そんなこと暴露していいのか?
でもそんなに大きいのか……美希。
「そんなことは想像しなくていい」
翼に頭を小突かれた。
「まあ、そんな事は置いておいてさ。折角天音いないんだから今のうちにいちゃつこう?」
「つ、翼それは無理だと思う」
「どうして……」
僕は翼の後ろを指差した。
翼は後ろを見る。
翼の背後には母さんが立っていた。
「翼……ほどほどにしておかないと空の部屋に立ち入り禁止にしますよ」
「パパは私達の仲を認めてくれた」
「母さんも認めてないわけじゃありません。でも冬夜さんの気持ちも察してあげてください。ただでさえ姉弟で恋仲になるなんて複雑な心境なのに、小学生からそんな関係を持ったなんて知ったらどう思うか考えたことありますか?」
母さんの言ってることはまともに見えるけど結構無茶苦茶だと思う。
「じゃあ、中学生になったらいいの?」
「……その時にあなたがその気があるのなら好きになさい。空の部屋は防音だから」
ほらね、やっぱり無茶苦茶だった。
「ありがとう。じゃあ、中学生になったら一緒に下着選ぼうね。空」
またあの思いをしなければいけないのか……。
(2)
私は石原家の家族の車に乗っていた。
美希は桐谷家の車に乗っている。
「天音ちゃん楽しめた?」
大地の母さんが聞いてきた。
「はい」
私は返事した。
「それはよかったわ」
会話が続かない。
私から積極的に振ったほうがいいのだろうか?
何を話そうか?
無難なところから攻めてみよう。
「大地は夏休みの宿題終わったか?」
「もうちょっとかな。言われた通り7月中には終わらせるよ」
「じゃあ、8月は遊べるな」
「それは大丈夫だと思う」
8月は花火から始まってプールにカラオケ、ボーリング、ゲーセン……映画でもいいか。今度は私が選んでやろう。
「天音読書感想文どうした?」
大地が話題を振ってきた。
指定された本から一冊選んで読んで感想文を書く課題。
率直に書くと「つまらん!」の5文字で終わってしまうんだけど400字詰め原稿用紙何枚以上って規定があるので適当に書くしかない。
適当に流し読みして印象に残ったところを頭にあるだけの単語を繋ぎ合わせて書くだけの作業。
「もう終わったよ」
「ちゃんと読んだ?」
「読むわけないじゃん」
「そうだよね……」
大地は読書感想文で苦戦してるのか?
……まてよ?これはチャンスなんじゃないのか?
「大地、分かんないところあるなら教えてあげる。今度大地の家に遊びに行ってもいい?」
我ながら良い攻め方だと思った。
「う、うちに来るの?」
慌てる大地。
「何か来られたらまずい事でもあるの?大地」
大地のお母さんが動いた。これで決まりだ。
「いや、特にないけど……」
「じゃあ、招待しなさいな。ちゃんとおもてなししてあげる」
そう来ると思った。
「天音ちゃん、うちはお風呂も広いから大丈夫よ。2人では入れるわ」
「え、恵美!?」
大地のお父さんが動揺してる。
「何か問題あるの?2人は恋人同士なのよ?泊ってくくらい当たり前でしょ?」
「そ、それは片桐君にも許可を得た方がいいんじゃないかな……」
大地のお父さんがそう言う前に大地のお母さんは行動してた。
「もしもし愛莉ちゃん?今度我が家に天音ちゃんを招待したいんだけど……大丈夫、うちの息子にも徹底しておくから『まだ孫は早い』って……」
頭を抱える大地。
大地のお母さんが電話終えるとにこりと笑った。
「これで問題ないわよね?望」
「そ、そうだね」
「そうね、私達外泊しておいた方がいいかしら?2人とも色々遠慮するだろうし」
「え、恵美。まだ大地たちは小学4年生だよ?」
「馬鹿ね、望。大地がそんな真似するはずないでしょ。精々抱き合ってキスして寝るくらいよ」
「でもさすがに、2人きりにするのは駄目だよ。美希を桐谷君の家で二人きりにして大丈夫なの?恵美は」
上手く切り返したように見えた大地のお父さん。
「それが亜依の家には瑛大がいるでしょ?恋ちゃんや遊君もいるし……そういうムードにはなれないみたい」
「そ、そうなんだ……」
「うちの大地はそんな事の無いように徹底しておくから安心して泊まりにきなさい」
「はい」
私と大地のお母さんは笑顔だった。
大地と大地のお父さんは笑うしかなかった。
私の家に着くと「じゃあ、いつでもいらっしゃい」と笑顔の大地のお母さん。
こりゃ私もとっておきの下着準備するしかないな!
(3)
私は桐谷家の車に送ってもらっていた。
学の代わりに恋の遊び相手をしてあげた。
恋もお姉さんという存在に憧れていたみたいで喜んでくれた。
「すまんな、男の俺ではどうにもならんこともあるから」
「気にしないで、気に入ってもらえてよかった」
「そうか。この後の夏休みはどうするつもりだ?」
「花火とプールは行く予定だよ」
「市営プールに行く約束も果たさないとな」と返してくれた。
覚えててくれたんだ。
「じゃあ、それまでに私も水着用意しておかなくちゃね」
「そうだね……」
母さんと買いに行こうかな?
「学はどういう水着が好み?」
聞いたらまずかったみたいだ。
学は動揺している。
「あ、ああ。どんなのでも美希が来たら似合うと思うよ」
あまり興味が無いのかな?
こう見えてスタイルには自信があるんだけど……。
「学、それ一番最悪の返事だよ?」
恋が言う。
「美希は『私の水着姿なんてどうでもいいのか』と受け取っちゃうよ?」
「ごめんね、良くも悪くも真面目に育ったから学は」
学のお母さんが言う。
「学の年頃ならやっぱりスクール水着勧めとけ!今の内だぞスクール水着着てくれるのは!何なら写真も撮っておくと……」
「このド変態は黙って運転してろ!学を変な趣味に巻き込むな!」
「学、こんな変態の言う事なんて聞かなくていいんだからね!」
学のお父さんが言うと、学のお母さんと恋に責められていた。
「そうだ、美希。学に水着選んでもらうといいよ。学なら多分大丈夫」
恋が言う。
翌日水着を買いに行った。
善明君は白地に花柄のスカートワンピースを選んでくれた。
「ありがとう」
「いえ、これでプール楽しみだな」
「ええ、折角だからお昼でも食べて帰りませんか?」
「そうだな」
お昼を食べた後午後はウィンドウショッピングをしてボーリングして帰った。
帰ってから「今日はありがとう」ってメッセージを送った。
「こっちこそありがとう。それじゃおやすみ」
そうか、こうやって口実を作ったら学も私に構ってくれるのかな。
でも恋と仲良くなっておくのも悪くない。
だったら……。
それから暇を見ては学の家に遊びに行った。
学が家事をしている間、恋の相手をしてた。
「助かるよ」
「私も学と一緒にいれるから嬉しい」
そんな夏休みの過ごし方をしていた。
(4)
「遊はプールに行くのか?」
「いや、母さんたちが仕事で……」
車にいる間は遊とスマホのメッセージでやり取りしてた。
そっか……じゃあしょうがないな。
「俺の事より自分の心配しなよ」
「遊……その事だけど」
「分かってる。俺と水奈だけの秘密だ」
「そうしてもらうと助かる」
私の家に着いた。
車を降りると遊たちは帰っていった。
「お!お帰り。どうだった?」
母さんが出迎えてくれた。
「楽しかった事もあるけど……母さんに相談したい事があるんだ」
「どうした?」
母さんに相談しようと思ったけど、その為にはまず私が空を好きな事、遊を振ったことを言わなきゃならない。
その事は出来れば母さんと私だけの秘密にしたい。
あの馬鹿には絶対知られたくない。
どうすればいいか悩んでいると母さんが察してくれた。
「そうだな、水奈。たまには一緒に風呂入るか?」
「神奈!それなら家族湯行こう!それなら俺も相談に乗れる」
「この馬鹿は黙ってろ!」
本当にどうしようもない父親だ。
その日夕食を食べると片づけする母さんを手伝った。
母さんの妊娠が分かってからずっとそうしてる。
母さんの体調が悪い時には私が替わりにやってる。
片づけが終ると母さんと風呂に入った。
母さんは私の胸を見て言った。
「やっぱりダメみたいだな……すまない」
母さんが謝る事じゃないと思うんだけど。
「で、どうしたんだ?」
「私は貧乏くじなの?」
「え?」
母さんの顔が険しくなる。
キャンプ場であったことを、遊のお父さんに言われた事を説明した。
もちろん私の好きな人の事も。
「そうか……なんとなく気づいてはいたんだがやっぱりな」
母さんは一言言って考え込んでしまった。
「それで空に貧乏くじだと言われたのか?」
「空にそう言われるのが怖くて」
「私は貧乏くじを引いたよ」
母さんはそう言って笑った。
多分貧乏くじとはあのくそ野郎の事だろう。
「……でもな、その運命が水奈という大切な娘を授かることになったんだ」
例え誰から何と言われようと母さんにとってはたった一つの宝物だと言う。
「親バカって言われてもいい。水奈も決して翼に負けてない」
だけどそれは優劣で決めるものじゃない。
空が選ぶ運命。
いつの日か空が私に振り向いてくれるまで待つもよし。
いつか他の見知らぬ誰かに私が振り向くもよし。
「……ずっと待ってたら母さんに孫を見せられないかもしれない」
「それは空達にも言える事だろ?」
母さんの笑顔が優しかった。
「いつも自分の気持ちに正直に生きろ。忘れるな。自分に嘘をついて生きてはいけない」
「……わかった」
私の花は綺麗な花じゃないかもしれない。
それでもたった一つしかない大切な花だ。
母さんの言葉を胸に刻んでいた。
もう迷わない。
私は私の思うままに生きよう。
そう心に誓った。
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