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役者の工夫 其ノ参
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「すいやせん、ご迷惑をおかけして……」
「お、落ち着いたのならいいわよ……」
長屋の住人が帰り、弥助とさくら、そして忠蔵の三人になった家の中。
首吊り自殺をしようとした男――忠蔵は二十代半ばの良い男。加えて賢そうな顔つきをしている。だがどことなく他人に侮られるような顔をしていた。狐のようだと言えばいいだろうか。けれど、狐のようだからこそどんな役にも化けられるとも言える。
「しかしよう。役の工夫がつかないからって、何も死のうとしなくても」
呆れた顔の弥助に忠蔵は「団五郎の親分が見出してくれたんです。その期待に応えてえんです」と弱々しく言った。
「まあその気持ちつーか、心意気は買うけどよ。まだ諦めるのは早いんじゃあねえか?」
「そうよ! 『蔵入り地』の初日までまだ八日もあるんだから!」
弥助とさくらが説得するが忠蔵は「もう二十日も考えて出ないんです」とますます弱気だ。目には涙まで浮かべている。
「芸事の神様にもお祈りしました。それでも……谷川周五郎の工夫が思いつかねえんだ!」
最後は喚いて思いっきり床を叩く。
「こいつ、本物の役者だな……ここまで一つの役に追い詰められる野郎は他にいねえ」
「まったくね……そこんところは尊敬するかも」
とは言うものの、弥助とさくらには工夫など思い浮かばない。好きで舞台は見るものの名役者の発想を超えるなど、素人である彼らにはできまい。
「まあとりあえず、団五郎さんからいただいた大福でも食いなよ」
弥助は本来の目的である大福を忠蔵に差し出す。
包みを解いた忠蔵。高級そうな大福をじっと見つめて「これで喉を詰まらせたら死ねるよな」と本気かどうか分からないことを言う。さくらはすかさず「やめなさいよ!」と頭を叩く。
「じょ、冗談ですよ。それではいただきます――」
忠蔵が大福を食べたとき、するりと戸が開いた。
「なんだ。先に訪れていたのか。懊悩の役者の元に」
「あ、旦那。今日は収まるのが早かったですね」
「……普段はもっとかかるの?」
感心する弥助と引くさくら。
ふと二人が忠蔵のほうを見ると――真っ青な顔になっている!
「やべえ! 本当に喉詰まらせやがった!」
「弥助! 背中! 背中を叩いて!」
慌てて二人は忠蔵を叩いたりして吐き出させようとする。
来たばかりでよく状況が分からない桐野だったが「ククク……白き幸福を食べられなかったのか……」と不気味に微笑む。
ようやく大福を吐き出した忠蔵。顔を真っ赤にして涙目になりながら何度も息を吸ったり吐いたりする。その様子を見てほっと一息つく弥助とさくら。
「よ、良かった。死ぬところだった――」
「あなたねえ! 本当に喉に詰まらせるんじゃあないわよ!」
さくらが怒るのも無理はなかった。しかし忠蔵は涙を流したままだった。
そんなに怒ったかしらとさくらが首をかしげる中、忠蔵はなんと邪気眼侍の桐野政明に向かって拝み始めた。
「ありがとうございます、ありがとうございます……!」
「……助けたのはあっしらなんだが」
「ふむ。よく理解らぬな」
困惑する弥助。当の桐野もよく分かっていない。
それでも忠蔵はひたすら手を合わせて感謝を伝える。
「役の工夫ができました……あなたが、あなたこそが、理想の谷川周五郎だ……!」
これには三人、声を揃えて「はあ!?」と驚いてしまった。
忠蔵はなおも続けて思いを言う。
「良いこしらえだ……不気味で、邪悪で、なにより意味不明なところがいい……」
「不気味で、邪悪で、意味不明……」
流石の桐野も顔を引きつらせている。
「こんな悪役、見たことがねえ! 絶対に合うはずだぜ!」
興奮した忠蔵は「こうしちゃいられねえ!」と勢いよく立ち上がった。
「すぐに役の工夫だ! 急いで形にしねえと!」
先ほど自殺をしようとした、そして今大福で死にかけた男とは思えないくらい素早く精力的な動きで自分の家を飛び出した忠蔵。
それを呆気にとられた顔で見送る三人。間を開けてこほんと弥助が咳払いする。
「旦那、良かったですね。芝居の参考になるらしいですよ」
「……解せぬ」
◆◇◆◇
大演目である『蔵入り地』は大変な人気なもので、多くの観客がごった返すように集まった。そして盛り上がりところである、第三幕と第四幕を終え、客たちは各々持ち合わせた弁当を食べる。これから第五幕が始まるというのに客の関心はその次の第六幕に集まっていた。もしくはぺちゃくちゃと前幕の感想を話している。
役者が演じるには最も適さない場である。しかしここで役を張る忠蔵は自信に満ち溢れていた。己の工夫を心から信じているという顔つき。彼本来の狐のようなおどおどした立ち振る舞いはない。
「ククク……いよいよだな。貴様の真価が発揮されるのは……」
舞台の袖で邪気眼侍の桐野政明はいつものように、黒ずくめで右腕には包帯、左眼に蛇の眼帯をしていた。そして、その目の前にいる忠蔵も同じ格好をしていた。
「ありがてえことです。俺に工夫を与えてくれた……あなた様には感謝しかないです」
「礼を言うのはまだ早い……場がしらけることもありえるぞ……」
「ええ。一か八かの勝負だってことも分かりやす。でもね、桐野さん――」
いよいよ出番が訪れる。その最中、忠蔵は言った。
「俺はこの勝負、負ける気がしないんですよ――」
舞台上で主人公が窮地に陥った、まさにそのとき「待てい!」と声がかかる。
のそりと現れた邪気眼侍の恰好をした忠蔵。それを見た客たちはぽかんと口を開けた。
「お、おい。なんだありゃ?」
「見たこともねえ。あれが谷川周五郎か?」
ざわつく客たちを余所に、忠蔵の演技が光る。
大仰に腕を振り回しながら、主人公に向けて放つ台詞。
「ククク……漆黒の闇より生まれし、我が力に飲まれるがいい!」
大見得を切っての口上だ。この台詞に度肝を抜かれた客たちは弁当を食べるのを忘れて、ひたすら舞台を食い入るように見続けた。
今まで誰も見たことがない、そして誰もが診たがっていた新しい形の谷川周五郎がそこにいた!
「無限なる時の回廊にて、公をお待ちしよう……」
どたん! と倒れる忠蔵演じる谷川周五郎。やられ方も様になっている。
しーんと静まり返る客たち。誰も何も言えないほど集中していた。
そこで二人の男女が立ち上がった。
「見事だ忠蔵! あんたはすげえ役者だ!」
「よっ! 日本一! いい役者だわ!」
弥助とさくらである。二人は舞台を観客席から見ていた。
その声援を皮切りに、客たちは大声で忠蔵を褒め称える。
「すげえ谷川周五郎だ! こんなの見たことがねえ!」
「芝居が変わっちまった! すげえよ!」
大勢の客たちの称賛の声を聞きながら、倒れたままの忠蔵は安堵の涙を流す。
これで俺は、まだまだ芝居ができる、と――
さて。忠蔵の演技を舞台袖で見ていた桐野。
そこへ団五郎が「よう。ご苦労さん」とやってきた。
「……忠蔵が狐なら、貴様は狸だな。見事に化かされてしまった」
「何を言っているのかさっぱり分からねえ……とでもとぼけておくか」
「役の工夫がつかない忠蔵に、我を会わせようとして依頼を出したのだろう」
桐野の指摘に団五郎は肩をすくめた。
「やれやれ。そんな恰好をしているのに、案外鋭いんだな」
「いつ貴様が我を知ったのかは皆目理解らぬが……おそらく見た瞬間に新しい谷川周五郎が思い浮かんだのだろう。そして忠蔵ならば同じように考えると思った……いや信じたのだな」
「それで思い浮かばなかったらそれまでだった。あれには才覚があるよ」
のらりくらりと返答する団五郎。
桐野は「大した役者だ」と皮肉を言った。
「まんまと我らは利用されたということか」
「あっはっは。利用されたと思うのなら追加で支払うよ。忠蔵の野郎が値千金の役者になったしな。それと――」
団五郎は意味ありげに桐野を笑った。
「お前さんほど『演じるのが上手い』人はいないよ」
「…………」
「ふふふ。意地の悪いことを言ってしまったかな?」
桐野はそれに答えず、幕が下りようとしている舞台に視線を向けた。忠蔵が男泣きしているのが分かった。
鳴りやまない歓声と拍手が続く中、役者の神様と謳われた男、団五郎は邪気眼侍を見つめていた。
この人の演技は、見ていて悲しいねえ。
「お、落ち着いたのならいいわよ……」
長屋の住人が帰り、弥助とさくら、そして忠蔵の三人になった家の中。
首吊り自殺をしようとした男――忠蔵は二十代半ばの良い男。加えて賢そうな顔つきをしている。だがどことなく他人に侮られるような顔をしていた。狐のようだと言えばいいだろうか。けれど、狐のようだからこそどんな役にも化けられるとも言える。
「しかしよう。役の工夫がつかないからって、何も死のうとしなくても」
呆れた顔の弥助に忠蔵は「団五郎の親分が見出してくれたんです。その期待に応えてえんです」と弱々しく言った。
「まあその気持ちつーか、心意気は買うけどよ。まだ諦めるのは早いんじゃあねえか?」
「そうよ! 『蔵入り地』の初日までまだ八日もあるんだから!」
弥助とさくらが説得するが忠蔵は「もう二十日も考えて出ないんです」とますます弱気だ。目には涙まで浮かべている。
「芸事の神様にもお祈りしました。それでも……谷川周五郎の工夫が思いつかねえんだ!」
最後は喚いて思いっきり床を叩く。
「こいつ、本物の役者だな……ここまで一つの役に追い詰められる野郎は他にいねえ」
「まったくね……そこんところは尊敬するかも」
とは言うものの、弥助とさくらには工夫など思い浮かばない。好きで舞台は見るものの名役者の発想を超えるなど、素人である彼らにはできまい。
「まあとりあえず、団五郎さんからいただいた大福でも食いなよ」
弥助は本来の目的である大福を忠蔵に差し出す。
包みを解いた忠蔵。高級そうな大福をじっと見つめて「これで喉を詰まらせたら死ねるよな」と本気かどうか分からないことを言う。さくらはすかさず「やめなさいよ!」と頭を叩く。
「じょ、冗談ですよ。それではいただきます――」
忠蔵が大福を食べたとき、するりと戸が開いた。
「なんだ。先に訪れていたのか。懊悩の役者の元に」
「あ、旦那。今日は収まるのが早かったですね」
「……普段はもっとかかるの?」
感心する弥助と引くさくら。
ふと二人が忠蔵のほうを見ると――真っ青な顔になっている!
「やべえ! 本当に喉詰まらせやがった!」
「弥助! 背中! 背中を叩いて!」
慌てて二人は忠蔵を叩いたりして吐き出させようとする。
来たばかりでよく状況が分からない桐野だったが「ククク……白き幸福を食べられなかったのか……」と不気味に微笑む。
ようやく大福を吐き出した忠蔵。顔を真っ赤にして涙目になりながら何度も息を吸ったり吐いたりする。その様子を見てほっと一息つく弥助とさくら。
「よ、良かった。死ぬところだった――」
「あなたねえ! 本当に喉に詰まらせるんじゃあないわよ!」
さくらが怒るのも無理はなかった。しかし忠蔵は涙を流したままだった。
そんなに怒ったかしらとさくらが首をかしげる中、忠蔵はなんと邪気眼侍の桐野政明に向かって拝み始めた。
「ありがとうございます、ありがとうございます……!」
「……助けたのはあっしらなんだが」
「ふむ。よく理解らぬな」
困惑する弥助。当の桐野もよく分かっていない。
それでも忠蔵はひたすら手を合わせて感謝を伝える。
「役の工夫ができました……あなたが、あなたこそが、理想の谷川周五郎だ……!」
これには三人、声を揃えて「はあ!?」と驚いてしまった。
忠蔵はなおも続けて思いを言う。
「良いこしらえだ……不気味で、邪悪で、なにより意味不明なところがいい……」
「不気味で、邪悪で、意味不明……」
流石の桐野も顔を引きつらせている。
「こんな悪役、見たことがねえ! 絶対に合うはずだぜ!」
興奮した忠蔵は「こうしちゃいられねえ!」と勢いよく立ち上がった。
「すぐに役の工夫だ! 急いで形にしねえと!」
先ほど自殺をしようとした、そして今大福で死にかけた男とは思えないくらい素早く精力的な動きで自分の家を飛び出した忠蔵。
それを呆気にとられた顔で見送る三人。間を開けてこほんと弥助が咳払いする。
「旦那、良かったですね。芝居の参考になるらしいですよ」
「……解せぬ」
◆◇◆◇
大演目である『蔵入り地』は大変な人気なもので、多くの観客がごった返すように集まった。そして盛り上がりところである、第三幕と第四幕を終え、客たちは各々持ち合わせた弁当を食べる。これから第五幕が始まるというのに客の関心はその次の第六幕に集まっていた。もしくはぺちゃくちゃと前幕の感想を話している。
役者が演じるには最も適さない場である。しかしここで役を張る忠蔵は自信に満ち溢れていた。己の工夫を心から信じているという顔つき。彼本来の狐のようなおどおどした立ち振る舞いはない。
「ククク……いよいよだな。貴様の真価が発揮されるのは……」
舞台の袖で邪気眼侍の桐野政明はいつものように、黒ずくめで右腕には包帯、左眼に蛇の眼帯をしていた。そして、その目の前にいる忠蔵も同じ格好をしていた。
「ありがてえことです。俺に工夫を与えてくれた……あなた様には感謝しかないです」
「礼を言うのはまだ早い……場がしらけることもありえるぞ……」
「ええ。一か八かの勝負だってことも分かりやす。でもね、桐野さん――」
いよいよ出番が訪れる。その最中、忠蔵は言った。
「俺はこの勝負、負ける気がしないんですよ――」
舞台上で主人公が窮地に陥った、まさにそのとき「待てい!」と声がかかる。
のそりと現れた邪気眼侍の恰好をした忠蔵。それを見た客たちはぽかんと口を開けた。
「お、おい。なんだありゃ?」
「見たこともねえ。あれが谷川周五郎か?」
ざわつく客たちを余所に、忠蔵の演技が光る。
大仰に腕を振り回しながら、主人公に向けて放つ台詞。
「ククク……漆黒の闇より生まれし、我が力に飲まれるがいい!」
大見得を切っての口上だ。この台詞に度肝を抜かれた客たちは弁当を食べるのを忘れて、ひたすら舞台を食い入るように見続けた。
今まで誰も見たことがない、そして誰もが診たがっていた新しい形の谷川周五郎がそこにいた!
「無限なる時の回廊にて、公をお待ちしよう……」
どたん! と倒れる忠蔵演じる谷川周五郎。やられ方も様になっている。
しーんと静まり返る客たち。誰も何も言えないほど集中していた。
そこで二人の男女が立ち上がった。
「見事だ忠蔵! あんたはすげえ役者だ!」
「よっ! 日本一! いい役者だわ!」
弥助とさくらである。二人は舞台を観客席から見ていた。
その声援を皮切りに、客たちは大声で忠蔵を褒め称える。
「すげえ谷川周五郎だ! こんなの見たことがねえ!」
「芝居が変わっちまった! すげえよ!」
大勢の客たちの称賛の声を聞きながら、倒れたままの忠蔵は安堵の涙を流す。
これで俺は、まだまだ芝居ができる、と――
さて。忠蔵の演技を舞台袖で見ていた桐野。
そこへ団五郎が「よう。ご苦労さん」とやってきた。
「……忠蔵が狐なら、貴様は狸だな。見事に化かされてしまった」
「何を言っているのかさっぱり分からねえ……とでもとぼけておくか」
「役の工夫がつかない忠蔵に、我を会わせようとして依頼を出したのだろう」
桐野の指摘に団五郎は肩をすくめた。
「やれやれ。そんな恰好をしているのに、案外鋭いんだな」
「いつ貴様が我を知ったのかは皆目理解らぬが……おそらく見た瞬間に新しい谷川周五郎が思い浮かんだのだろう。そして忠蔵ならば同じように考えると思った……いや信じたのだな」
「それで思い浮かばなかったらそれまでだった。あれには才覚があるよ」
のらりくらりと返答する団五郎。
桐野は「大した役者だ」と皮肉を言った。
「まんまと我らは利用されたということか」
「あっはっは。利用されたと思うのなら追加で支払うよ。忠蔵の野郎が値千金の役者になったしな。それと――」
団五郎は意味ありげに桐野を笑った。
「お前さんほど『演じるのが上手い』人はいないよ」
「…………」
「ふふふ。意地の悪いことを言ってしまったかな?」
桐野はそれに答えず、幕が下りようとしている舞台に視線を向けた。忠蔵が男泣きしているのが分かった。
鳴りやまない歓声と拍手が続く中、役者の神様と謳われた男、団五郎は邪気眼侍を見つめていた。
この人の演技は、見ていて悲しいねえ。
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