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禁じられた戯れ 其ノ弐
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桜桃神社は江戸の住民の尊崇を集めている、由緒と伝統のある神社だ。
厳かな雰囲気の社殿が立ち並び、正面の入り口には大きくて立派な、朱に塗られた鳥居が存在する。その神聖さが溢れている場に相応しくない男――邪気眼侍の桐野政明はわざと鳥居を潜らずにその横から境内に入った。
「どうして鳥居を潜らないの?」
「ククク……我が邪気眼と相性が悪いからな……」
「へえ。てっきり汚れている自覚があるって思ってたわ」
「我はそれらを超越した者だからな……」
邪気眼の設定に対し、真面目に皮肉で返す桜桃神社の巫女、さくら。
しかし桐野は煙を巻くような返答を続けていた。
そんな二人の対立を弥助はため息交じりに見守っていた。
冷静さを欠いているさくらはともかく、どうして桐野も子供のような言い合いを続けているのか、疑問でならない。
「本殿は奥のほうにあるわ。そこで依頼を受けましょう」
「ククク……我に解決できぬことなどない……」
その自信はどこから出てくるのか。
境内を歩くと参拝客や巫女、禰宜などがちらほらいて、邪気眼侍と巫女が言い争う姿を奇妙に思いながら見ていた。しかし誰も話しかけたりしない。それほど近寄りがたい存在なのだ、桐野政明は。
何事もなく――正確には誰も関わってこなかった――本殿まで辿り着いた三人。
そこでは、一人の妙齢の女性が、神職らしき男性に泣いて縋っていた。
「あれ? お父さん? その人は?」
さくらがお父さんと呼んだその男、桜桃神社の神主である道重だった。
道重は娘と似ていてかなりの細身である。枯れ枝のようと評してもぴったりだ。目つきは穏やかで優男でもあった。
「さくらか。実は――うん? そこの君は?」
事情を話す前に桐野のことが気になった神主の道重。
まあ自分が仕切っている神社に胡乱な人間がいたら警戒するだろう。
桐野は着物をはためかせて「ククク……我は、桐野政明……」と名乗った。
怪しいことこの上ない。
「はあ……そうですか……」
「あっしは弥助と申します。ところでご婦人、何か困り事ですかい?」
よく分からないという顔になった道重に弥助は話を進めようと、今起きている問題を指摘した。
すると泣いていた女が「子供が、あやめがいないんです!」と大声で喚いた。
「遊びに出かけるって言って! もう二日も帰ってきません! きっと攫われてしまったんです!」
「奥さん、事情は分かりましたが、人探しは請け負っていないんですよ。失せもの探しというか、見つかるような祈祷をするのが、ここの務めでして」
神主の言うことはもっともだった。
そういうことは周りの大人か奉行所に訴え出るのが筋だろう。
よっぽど錯乱しているのが様子を見て分かった。
「でも、あやめは一人娘で、大切な子で――」
必死に縋る女を、さくらは見ていられなかったのか「お父さん。あたし、探してみる」と言い出した。
「おいおいさくら。子供の遊びじゃないんだぞ?」
「分かっているわよ。でも、ほっとけない。子供がいなくなって、親がこんなに悲しんでいるのを、見て見ぬふりなんてできないわ」
父親の反対を押し切って、さくらは女に「まずは子供の特徴を教えて」と言い出した。
「えっと。九つの女の子で、おかっぱ頭で、左目に泣きぼくろがあります。服は水色を着ていました」
「分かったわ。探してみる」
母親の肩を優しく撫でた後、今度は桐野に向かい合って「勝負はお預けよ」と言う。
その目は絶対に見つけるという決意で彩られていた。
「なんだ。その娘を見つけるのが勝負ではないのか?」
「子供の生き死にが関わっているかもしれないのに、そんな下世話なことはできないわ」
さくらはさっさと向かおうとするが、その背に向けて桐野が「我も手伝おう」と言い出した。
「人探しは慣れている……」
「ああ、そういえば万屋だったわね。でも、依頼料は出ないわよ?」
「そんなもの要らぬ」
弥助は桐野が珍しいことをするなあと思っていた。
依頼料を貰わないことではない。
自分から厄介事に首を突っ込むとは思わなかったのだ。
「そう。じゃああたし、行くから。お父さん、その人頼んだから」
「あ、ああ。分かったよ」
どこか目星のつく場所を知っているのか、迷いなく走り出すさくら。
桐野は「婦人よ、今しばらくここにいるんだな」と母親に告げた。
「直ぐに見つけてやろう」
「ありがとうございます……!」
「だが聞くべきことがある。貴様はどこに住んでいるのだ?」
母親たちが住んでいるのは桜桃神社近くの長屋のようだ。
桐野は「行くぞ、相棒」と弥助を呼んでその場から立ち去った。
「いつになくやる気ですね、旦那」
「子供が攫われたかもしれぬ。ならば罪人がいるはずだ……」
「ええまあ。もしもの話ですけど」
「我が邪気眼には分かる……子供は確実に囚われていると……」
どうして分かるのか、弥助には全く分からない。
そもそも邪気眼は桐野の空想だと弥助は思っていた。
「それで、旦那はどうやって見つけるんですか?」
「婦人は言った。子供が遊びに出かけると……ならば、その遊び場を調べるのが道理であろう」
「それは分かります。でもその子供がいないのに、どうやって調べるんですか?」
桐野は弥助に「婦人と子供が暮らしているところを聞いただろう」と言う。
「子供のつながりは案外狭い……近所の子供と遊んでいるに決まっているだろう」
「あ、なるほど」
◆◇◆◇
攫われた子供、あやめと母親が住んでいる長屋の前で、綾取りをしている二人の女の子を見つけた桐野と弥助。
しかし邪気眼侍と頬に刀傷のある男が話しかけたら、それこそ攫いに来たと誤解されるだろう。
「どうしやす、桐野の旦那?」
「……正面から訊ねるしかあるまい。たとえ誤解されようともだ」
桐野はそう言って女の子たちに近づく。
弥助は桐野の度胸に驚きつつ、その後を追った。
「ククク……貴様らに聞きたいことがある……」
「えっ? なにおにいさん? ちょっと怖いんだけど……」
当たり前だが怯える女の子。
それを庇うように年長と見られる女の子が「何か用? 変な恰好のおにいさん」と言う。
「ククク……この格好良さを知るには、まだ成長していないな……」
「変な喋り方。みんなから笑われるよ?」
「…………」
真っすぐ非難された桐野は長屋の片隅で三角座りして落ち込んだ。
しょうがないなと弥助が「ちょっと聞きたいことがあるんだけど」と女の子たちに問う。
「あやめちゃん知っているかな? その子について聞きたいんだけど」
「あやめちゃん? ああ、あの子ね……よく知らない」
年長の女の子は桐野と弥助を警戒しているようだ。
弥助は「実はあやめちゃん、二日ほど姿を見なくてさ」と本当のことを言う。
「お母さん心配してて。それで探すように頼まれたんだ」
「……ふうん。でも知らない」
年長の女の子はそのまま無視しようとするのだけれど、もう片方の女の子が「お姉ちゃん。もしかして、あそこにいるんじゃないかな?」と小声で言う。
どうやら二人は姉妹のようだ。
「心当たりがあるなら言ってほしいな」
「…………」
姉のほうは頑なに言わないようにしている。
妹は言っていいのか迷っている様子だった。
「……仮定の話だが、あやめが死んでいるかもしれない」
ようやく復活した桐野が二人の姉妹を脅かすようなことを言いだした。
姉はぴくりと反応した。
「もしそうなら、死体だけでも見つけないとな」
「……ねえ。誰にも言わないのなら、教えてあげてもいいよ」
流石に知っている女の子の生死が危ういのは嫌らしく、姉が話し始めた。
「あやめちゃんはよく、ここから北にある里山に行ってた」
「お。旦那。これであやめちゃんの居場所分かりましたね」
「待て……何をしに里山に赴く?」
早速行こうとする弥助を制して桐野が姉に訊ねる。
「何をしにって……遊びに行くためでしょう?」
「我が相棒よ。それならば『里山に遊びに行っていた』と言うだろう。それに我に口止めする必要もない」
弥助は姉妹が一様に下を向いていることに気づいた。
ざわつくような感覚。
桐野は「もう一度聞く」と姉妹に訊ねた。
「何のために、あやめは里山に行っていた?」
「……一年前のことだけど」
姉が妹を抱きながら話し始める。
妹の身体は震えていた。
「里山で一人の旅人が死んだ。どうして死んだのか分からない。でも、死体は残っていたの」
弥助はまだ分かっていない。
しかし桐野は分かってしまった。
「なるほど。つまり、貴様ら子供は――ずっと見ていたんだな?」
「……うん」
姉は覚悟したように、言葉を続けた。
「みんなで死体が腐っていくのを見てた。あやめちゃんは特に熱心に――見てた」
厳かな雰囲気の社殿が立ち並び、正面の入り口には大きくて立派な、朱に塗られた鳥居が存在する。その神聖さが溢れている場に相応しくない男――邪気眼侍の桐野政明はわざと鳥居を潜らずにその横から境内に入った。
「どうして鳥居を潜らないの?」
「ククク……我が邪気眼と相性が悪いからな……」
「へえ。てっきり汚れている自覚があるって思ってたわ」
「我はそれらを超越した者だからな……」
邪気眼の設定に対し、真面目に皮肉で返す桜桃神社の巫女、さくら。
しかし桐野は煙を巻くような返答を続けていた。
そんな二人の対立を弥助はため息交じりに見守っていた。
冷静さを欠いているさくらはともかく、どうして桐野も子供のような言い合いを続けているのか、疑問でならない。
「本殿は奥のほうにあるわ。そこで依頼を受けましょう」
「ククク……我に解決できぬことなどない……」
その自信はどこから出てくるのか。
境内を歩くと参拝客や巫女、禰宜などがちらほらいて、邪気眼侍と巫女が言い争う姿を奇妙に思いながら見ていた。しかし誰も話しかけたりしない。それほど近寄りがたい存在なのだ、桐野政明は。
何事もなく――正確には誰も関わってこなかった――本殿まで辿り着いた三人。
そこでは、一人の妙齢の女性が、神職らしき男性に泣いて縋っていた。
「あれ? お父さん? その人は?」
さくらがお父さんと呼んだその男、桜桃神社の神主である道重だった。
道重は娘と似ていてかなりの細身である。枯れ枝のようと評してもぴったりだ。目つきは穏やかで優男でもあった。
「さくらか。実は――うん? そこの君は?」
事情を話す前に桐野のことが気になった神主の道重。
まあ自分が仕切っている神社に胡乱な人間がいたら警戒するだろう。
桐野は着物をはためかせて「ククク……我は、桐野政明……」と名乗った。
怪しいことこの上ない。
「はあ……そうですか……」
「あっしは弥助と申します。ところでご婦人、何か困り事ですかい?」
よく分からないという顔になった道重に弥助は話を進めようと、今起きている問題を指摘した。
すると泣いていた女が「子供が、あやめがいないんです!」と大声で喚いた。
「遊びに出かけるって言って! もう二日も帰ってきません! きっと攫われてしまったんです!」
「奥さん、事情は分かりましたが、人探しは請け負っていないんですよ。失せもの探しというか、見つかるような祈祷をするのが、ここの務めでして」
神主の言うことはもっともだった。
そういうことは周りの大人か奉行所に訴え出るのが筋だろう。
よっぽど錯乱しているのが様子を見て分かった。
「でも、あやめは一人娘で、大切な子で――」
必死に縋る女を、さくらは見ていられなかったのか「お父さん。あたし、探してみる」と言い出した。
「おいおいさくら。子供の遊びじゃないんだぞ?」
「分かっているわよ。でも、ほっとけない。子供がいなくなって、親がこんなに悲しんでいるのを、見て見ぬふりなんてできないわ」
父親の反対を押し切って、さくらは女に「まずは子供の特徴を教えて」と言い出した。
「えっと。九つの女の子で、おかっぱ頭で、左目に泣きぼくろがあります。服は水色を着ていました」
「分かったわ。探してみる」
母親の肩を優しく撫でた後、今度は桐野に向かい合って「勝負はお預けよ」と言う。
その目は絶対に見つけるという決意で彩られていた。
「なんだ。その娘を見つけるのが勝負ではないのか?」
「子供の生き死にが関わっているかもしれないのに、そんな下世話なことはできないわ」
さくらはさっさと向かおうとするが、その背に向けて桐野が「我も手伝おう」と言い出した。
「人探しは慣れている……」
「ああ、そういえば万屋だったわね。でも、依頼料は出ないわよ?」
「そんなもの要らぬ」
弥助は桐野が珍しいことをするなあと思っていた。
依頼料を貰わないことではない。
自分から厄介事に首を突っ込むとは思わなかったのだ。
「そう。じゃああたし、行くから。お父さん、その人頼んだから」
「あ、ああ。分かったよ」
どこか目星のつく場所を知っているのか、迷いなく走り出すさくら。
桐野は「婦人よ、今しばらくここにいるんだな」と母親に告げた。
「直ぐに見つけてやろう」
「ありがとうございます……!」
「だが聞くべきことがある。貴様はどこに住んでいるのだ?」
母親たちが住んでいるのは桜桃神社近くの長屋のようだ。
桐野は「行くぞ、相棒」と弥助を呼んでその場から立ち去った。
「いつになくやる気ですね、旦那」
「子供が攫われたかもしれぬ。ならば罪人がいるはずだ……」
「ええまあ。もしもの話ですけど」
「我が邪気眼には分かる……子供は確実に囚われていると……」
どうして分かるのか、弥助には全く分からない。
そもそも邪気眼は桐野の空想だと弥助は思っていた。
「それで、旦那はどうやって見つけるんですか?」
「婦人は言った。子供が遊びに出かけると……ならば、その遊び場を調べるのが道理であろう」
「それは分かります。でもその子供がいないのに、どうやって調べるんですか?」
桐野は弥助に「婦人と子供が暮らしているところを聞いただろう」と言う。
「子供のつながりは案外狭い……近所の子供と遊んでいるに決まっているだろう」
「あ、なるほど」
◆◇◆◇
攫われた子供、あやめと母親が住んでいる長屋の前で、綾取りをしている二人の女の子を見つけた桐野と弥助。
しかし邪気眼侍と頬に刀傷のある男が話しかけたら、それこそ攫いに来たと誤解されるだろう。
「どうしやす、桐野の旦那?」
「……正面から訊ねるしかあるまい。たとえ誤解されようともだ」
桐野はそう言って女の子たちに近づく。
弥助は桐野の度胸に驚きつつ、その後を追った。
「ククク……貴様らに聞きたいことがある……」
「えっ? なにおにいさん? ちょっと怖いんだけど……」
当たり前だが怯える女の子。
それを庇うように年長と見られる女の子が「何か用? 変な恰好のおにいさん」と言う。
「ククク……この格好良さを知るには、まだ成長していないな……」
「変な喋り方。みんなから笑われるよ?」
「…………」
真っすぐ非難された桐野は長屋の片隅で三角座りして落ち込んだ。
しょうがないなと弥助が「ちょっと聞きたいことがあるんだけど」と女の子たちに問う。
「あやめちゃん知っているかな? その子について聞きたいんだけど」
「あやめちゃん? ああ、あの子ね……よく知らない」
年長の女の子は桐野と弥助を警戒しているようだ。
弥助は「実はあやめちゃん、二日ほど姿を見なくてさ」と本当のことを言う。
「お母さん心配してて。それで探すように頼まれたんだ」
「……ふうん。でも知らない」
年長の女の子はそのまま無視しようとするのだけれど、もう片方の女の子が「お姉ちゃん。もしかして、あそこにいるんじゃないかな?」と小声で言う。
どうやら二人は姉妹のようだ。
「心当たりがあるなら言ってほしいな」
「…………」
姉のほうは頑なに言わないようにしている。
妹は言っていいのか迷っている様子だった。
「……仮定の話だが、あやめが死んでいるかもしれない」
ようやく復活した桐野が二人の姉妹を脅かすようなことを言いだした。
姉はぴくりと反応した。
「もしそうなら、死体だけでも見つけないとな」
「……ねえ。誰にも言わないのなら、教えてあげてもいいよ」
流石に知っている女の子の生死が危ういのは嫌らしく、姉が話し始めた。
「あやめちゃんはよく、ここから北にある里山に行ってた」
「お。旦那。これであやめちゃんの居場所分かりましたね」
「待て……何をしに里山に赴く?」
早速行こうとする弥助を制して桐野が姉に訊ねる。
「何をしにって……遊びに行くためでしょう?」
「我が相棒よ。それならば『里山に遊びに行っていた』と言うだろう。それに我に口止めする必要もない」
弥助は姉妹が一様に下を向いていることに気づいた。
ざわつくような感覚。
桐野は「もう一度聞く」と姉妹に訊ねた。
「何のために、あやめは里山に行っていた?」
「……一年前のことだけど」
姉が妹を抱きながら話し始める。
妹の身体は震えていた。
「里山で一人の旅人が死んだ。どうして死んだのか分からない。でも、死体は残っていたの」
弥助はまだ分かっていない。
しかし桐野は分かってしまった。
「なるほど。つまり、貴様ら子供は――ずっと見ていたんだな?」
「……うん」
姉は覚悟したように、言葉を続けた。
「みんなで死体が腐っていくのを見てた。あやめちゃんは特に熱心に――見てた」
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