モブが公園で泣いていた少女にハンカチを渡したら、なぜか友達になりました~彼女の可愛いところを知っている男子はこの世で俺だけ~

くまたに

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二章・波乱万丈の夏休み!?

第18話 冷姫といざプールへ!

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 体を揺らされている感覚に見舞われ、琉生は慌てて目を覚ました。

「あ、おきた」

『どうやら泥棒が来た』や、『朱莉が体調を崩した』ということではなかったらしい。 琉生は「なんだ」とだけ言い、二度寝を試みた。

「ってオイッ!」

 朱莉は先程よりも激しく琉生の体を揺らすが、固く瞑った琉生の瞼は全く開く気配はない。

「ぐぬぬ……、今日のおにぃは手強い……。 こうなったら、喰らえ!」

「──っいででででッ!」

 朱莉は琉生の首元に思いっきり噛み付いた。 慌てて琉生は起き上がるが、ずーんと痛みが続く。

「な、何してくれてんだよ!」

「だってぇ~、おにぃったら起きるの遅いんだもんっ♡」

「てへっ」と朱莉は可愛らしいポーズをするが、琉生は犬のフンでも見るかのような視線を送る。

「てかおにぃは今日、何の日か覚えてないの?」

「唯さんとプールに行く日だろ? 覚えてるよ」

「お、おにぃが真顔だと……!? 前は唯ちゃんの水着を見る寸前に気絶していたのに……!?」

 朱莉は分かりやすくドン引きする。

「悪いか? ──ってなんでその事知ってんだ!?」

「あー、服を着替えてくるねー」

 以前琉生が気絶する姿をバッチリと見ていた朱莉は、「や、やべぇ。 こっそり見てたの誰も知らないんだった」と思い、わざとらしい嘘をつき、琉生の部屋を去っていった。

 朱莉の出ていった扉を見つめ、琉生は「はー」とため息を着き、スマホで現在時刻を確認した。

「六時前……。 あいつは遠足の日の小学生か!?」

 朱莉のせいで覚醒してしまったので、琉生は大人しくベッドから降り、朝食の支度をすることにした。

 ◆

「唯ちゃんお待たせ~!」

「ごめん、待たせたかな?」

 琉生と朱莉が家から最も近い駅に着くと、唯は柱にもたれて待っていた。
 気温が高いということもあり、唯はショートパンツに半袖という布地面積の狭い服を選んでいた。

「ど、どう?」

 若干上目遣いで、唯は琉生に服装の感想を求めた。
 隣で朱莉は、「ひゅーひゅー!」などと茶化しているが、琉生も唯も見事にスルーしていた。
 琉生は聞こえている上でスルーをしていたが、唯は心臓がバクバクで聞こえていなかった。

「とっても可愛らしいけど、ちょっと目のやり場に困る……」

 女子との関わりが皆無な琉生は、思ったことをそのまま伝えてしまう。
 しかし唯は唯とて男子との関わりが皆無だ。 そのせいか──。

「は、恥ずかしいです……」

 唯は「可愛らしい」と言って貰えたことに素直に照れ、「目のやり場に困る」と言われたことに対しては、シンプルに「恥ずかしい」と思った。
 朱莉は隣で「おにぃは服装を褒めるのもダメだったのか……」と呟くが琉生の耳に届くことはなかった。

 ◆

 電車を乗り継ぎ約一時間半。 三人は屋内プールにたどり着いた。

「「「お、おっきい……!」」」

 三人は口を揃えて言う。 三人が訪れた屋内プールは、全国的に有名な施設だ。

「二人とも! 早く早く!」

 朱莉はいつも以上にはしゃぎ、足早に施設内に入っていった。 後に残された二人はお互いに目を合わせ、くすくすと笑いながら後を追う。

 更衣室で男女別に別れた。 琉生は男子なのですぐに着替えが終わり、先に更衣室を出た。

(前みたいに気絶しないよう、意識をしっかり保つんだ!)

 琉生は男の夢を達成するため、頬を『パシッ』と強く叩き、気合いを入れた。

「おにぃお待たせ~」

「琉生くん、お待たせ……」

 海パン一つで、少し離れたところに見えるウォータースライダーを眺めていると、後ろから声がする。

(ついに! この時がっ……!)

 琉生はゆっくりと振り返る。 と、そこには先程よりも布地面積の狭い唯の姿が。
 黒のビキニに身を包む唯。 いつも以上に胸がきょ、きょ、強調され……。

「oh......!」

 琉生は頭がショートしかけ、言語が日本語から英語に変わってしまう。

「どう、かな……」

 駅前で服装の感想を求めてきた時よりも、顔を赤らめて唯は言う。 しかも上目遣いで。
 自然にあざとくなった唯に、琉生は胸を強く射抜かれた。
 鼓動がとても早くなる、服をほとんど着てないのに、顔だけではなく体が熱い。

「あ、その──」

「はいはーい、感想は後でしっかりと言ってもらいますからねー。」

 朱莉は唯に伝えると、琉生の方へズカズカ近寄りながら──。

「とにかく今は頭を冷やせ、ドスケベおにぃ!」

 そう言われ、琉生は胸を強く押される。 そして冷たいプールに着水。 物理的に頭を冷やされ、琉生の意識はしっかりと元通りになったのだった。
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