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 ―― 22階層

 翌日、マジカル桜夜鈴さよりんは再び下層を目指していた。
 前回は21階層のボス部屋直前で手痛い攻撃を受け、一度セーフゾーンへと戻ったが、その程度でダンジョン攻略は諦めはしない。

 この世界の人々を守る為に……

 「今回はあっさりと降りれたわね」

 魔法少女にとって21階層のボスは雑魚同然であったし、22階層も階段付近とはいえ敵は弱すぎである。

 (あの気持ち悪いモンスターはなんだったのかしら?)

 多少の不安は有るものの、己の力を過信していた。
 神から授かった特別な力は何者にも屈せず常に勝利を与えるものだと……

 「何があっても私は負けない」

 と、拳を握る。

 彼女は前世でも魔法少女であり、悪の怪人と戦い、街の平和を守っていた。
 しかし、強敵を前に仲間を庇ったことで倒されてしまい、気が付けば…… 目の前に美しい女神が居た。

 その時に言われた。

 まだ正義の為に戦えるならば力を貸してほしいと。
 もし協力してくれるならば、魔法少女として更なる能力を持たせて転生させるとのことであった。
 仲間の安否は気になったが、自分の死を告げられると愕然としながらも正義感の強さから承諾した。

 (この世界の人達を救って見せるわ。今度こそ絶対に…… 私一人でも……)

 気を引き締めながら奥へと向かう。
 そして、しばらく進むと怪しい扉を見つけた。

 「部屋があるわね…… またトラップじゃなければいいけど」

 戦闘における数値は飛び抜けて高いし、スキルも沢山持っていたが、なぜだがトラップの回避系は無かった。
 それに自身の好奇心が強いのもあって、何かと罠に掛かりやすかった。

 「一応は確認しておいたほうがいいわよね。後から来る冒険者の為にも」

 などと言い訳じみたことを呟きながら部屋へと慎重に入った。
 中は石造りの小狭い作りで、宝箱がポツンと一つだけ置いてあるだけであった。

 「うーん…… あからさまねぇ……」

 怪しさ満点で確実にトラップと思えるが、掛かった所で自分には通用しないこともあって無造作に蓋を開けた。


 同時にコロンと白いカプセルが転がり床に落ちると、ケースに僅かな隙間を開けるように展開し、緑色の光を内側から照らすように微妙な発光をした。

 「ん? 何かしら?」

 カプセルも気になるが、箱の中にはもう一つ小瓶が入っていた。

 「やったわ、エリクサーポーションだわ」

 レアアイテムの高性能万能薬であった。

 「これは頂いてっと、こっちの白いのは……」

 カプセルを拾い上げると微かにビービーと電子音のような音がしている。
 次第に音が聴こえなくなるのと一緒に緑色の光も消えた。

 「これもレア物かしら?」

 見たことの無いアイテムだし綺麗なので、とりあえず持って帰ることにした。
 罠が無かったことに拍子抜けしたが、こういうこともあるだろうと勝手に納得して部屋を出た。
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