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 本当は回避行動を取りたかったが、完全に不意をつかれたせいで気を集中できなかった。
 気功を使わない移動では戦闘可能な速度まで出せないので、通常時の高速移動には伸ばした触手をどこかに引っ掛けて体を引っ張る必要があるのだ。
 故に回避は間に合わないと判断した。

 ドゴォォォ!!

 命中した火球が爆発し触手を吹き飛ばした。

 「もぎゅぅぅぅぅぅ(うぎゃぁぁぁぁぁ)」

 幸いにも触手を伸ばしたおかげで、爆発は本体まで届かなかった。
 しかし、触手は焼きただれ激痛が走る。

 「あー…… 防がれちゃったわ」

 「もぎゅー、もぎゅー(痛いよー、痛いよー)」

 ≪大丈夫か為次!?≫

 「じゃあもう一発」

 「もぐぅ(やべぇ)」

 ≪おい! 為次!≫

 為次は咄嗟にただれた触手を振って、桜夜鈴目掛けて体液をばら撒いた。

 「きゃっ、何これぇ、気持ち悪いわね…… って、あー、エッチな液体かぁ」

 「もぐぐ……(まさか……)」

 その、まさかであった。
 触手の体液が効いている様子はない。

 「残念だったわね。私はすべての状態異常を完全無効にするスキルがあるの」

 そう言いながら、既に手には電気がほと走しっていた。
 どう見てもライトニングボルトである。
 触手ごと貫通させる気なのであろう。

 「もぐぐぐもぐ!(ぬぉシールド!)」

 と、慌ててカプセルを放り投げた。
 得体の知れない相手に戦闘を続けるなど愚かな行為だと判断した。
 戦いにおいて何より重要なのは情報であり、情報を制した方が勝利を収める。
 一旦、引いてスキルのことを調べた方がいいに決まっていた。

 が……

 「んあっ♡」

 「もっ?(えっ?)」

 魔法が発動していない。
 それどころか、桜夜鈴さよりんはスカートの上から股間を押さえて悶えていた。


 「んん…… な、何これぇ…… ああっ♡」

 「もぐもぐもぐ、もぐぐ(なんか知らんけど今のうちに逃げよう、そうしよう)」

 ≪逃げれそうか? 援護を出しといた、早く撤収するんだ≫

 「もぐぐ(ありがちょ)」

 桜夜鈴の後方から人型のモンスターが現れた。
 ジェル助が援護の為に配置してくれたらしいが原型は不明だ。
 ここぞとばかり為次は触手を伸ばしてボス部屋の扉に引っ掛けると、一目散に逃げ出すのだった。
 残された桜夜鈴は結果的に新手のモンスターと対峙するハメになったが、動くのもままならない。
 何故かスキルの効果が無くなり、触手怪人の体液によって性感が著しく上昇していたのだ。

 「くぅ。どうして…… ア、アソコが疼いてぇ…… ああっ♡」

 モンスターが迫っているので、どうにか耐えて迎え打たなくてはならない。

 「ガオガオガオー。ガオガオ(魔法少女が悶えてる。攻撃チャンスだ)」

 「くっ、こんな時に……」

 魔法を使おうとするが、なかなか集中できない。
 特に無詠唱で魔法を発動させるには集中力が必要であった。
 そうこうしている内にモンスターが殴り掛かって来た。
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