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 漆黒の宇宙に漂う黒い球体。
 いや…… 黒いのかは定かではない……
 ここは光の届かない全てが闇の世界。

 球体の内側・・では人々が生活を営み文化を築いていた。

 星を覆う外殻全体の半分を占める海に浮かぶ小さな島。
 そこにある森の中には石造りの通路の先に扉があった。

 扉の前では一匹の赤黒い肉塊が触手をうねらせながら何やら呟いていた。


 「もぐぐもぐー、もぐ」

 何を言ってるのか分からないのでは話が進まない。
 ここは一つ、皆には翻訳して聞いてもらおう。

 『うはwww、おkwwwww』

 翻訳しても何を言っているのか、ちょっと分からなかった……
 実に申し訳ないが、このまま話を進めよう。

 『ぶぶーん、ぶーん、って行っちゃうかもー』

 彼の名前は山崎やまざき 為次ためつぐ、触手宇宙怪人である。
 これまでなんやかんやあって今は宇宙戦車で宇宙を放浪中なのだ。
 仲間に水谷みずたに 正秀まさひでと言う名の青年とスイと言う名の少女が居る。

 この星に到着してから、ヒーローマニアである正秀はギルドで怪物退治を請け負って楽しんでおり、スイは新しい食品を探し料理を勉強中だ。
 そんな訳でやることの無い為次は、気になっていたダンジョンの散策に来ていた。

 『ウ~ン、世界観もモンスターもファンタジー系だけど…… なんか奇形入ってない?』

 ダンジョン内に入るとモンスターが闊歩していた。
 緑色の皮膚に醜い顔付きの小柄な生物はゴブリンだろうと思った。
 しかし、中には目の数が多かったり、歪んだ余分な腕を持っていたりと通常とは何か違う身体のモンスターが多かった。

 『やあ、こんにちは。中は涼しくていいね』

 とりあえず近くに居たゴブリンに話し掛けてみた。

 『ん? なんだ?』

 『外は炎天下であっついよね』

 『あ、ああ』

 『地下に降りたいんだけど、どっちに行けばいいの?』

 『はあ? ……お前、最近産まれたのか?』

 『え…… え~っと……』

 『俺達は1階層だろ。降りる必要は無いし、地図ならマップを開けよ』

 『マップ。マップ無いんだけど』

 『無い分け無いだろ。ステータスから開けよ』

 『は? ステータス?』

 『……はぁ、そこからかよ』

 と、親切なゴブリンは色々と教えてくれる。

 まず、ダンジョンモンスターとは産まれた階層に居るのが当然であり、侵入した人間を襲うものらしい。
 何故そうか? 理由は不明だが、それがこの星の摂理なのだろうと納得することにした。
 次にステータスだが、音声認識あるいはゼスチャーでウインドウを開けるそうだ。

 『ゼスチャーってどうやんの?』

 『そりゃお前こうやってだな…… ステータス画面をイメージしながら表示したいとこに手をだな……』

 ゴブリンの前に文字の書かれた浮遊ディスプレイが表れた。
 同様の機能は為次達も使っているので、それ自体には驚かないが、現実的な剣と魔法の世界で存在することに違和感を覚えた。
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