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第14話 恐怖の蛇男現る

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 ―― 翌朝

 怪人チームは研究室で食後のコーヒーを飲んでいた。

 「んで、昨日の夜は何してたんだよ? 為次」

 昨夜は寝室にしている休憩室へ為次は戻って来なかった。
 用事があるからと戦車に引き篭もっていたのだ。
 スイも一緒に行こうとしたが仕事の邪魔だからと頑なに拒んだせいで今朝は機嫌が悪いようである。

 食事の時に正秀は聞いてみたが「後でね」とはぐらかされてしまった。
 そんな訳で今、問いただしている最中である。

 「ムフフフ。教えてほしいのかなー? かなー?」

 為次はニタニタするだけで答えようとはしない。

 「相変わらずウザイ奴だな。勿体ぶらないで教えろよ」

 「そうです、そうです、教えるのです。スイを放置して何をしていたのですかぁ」

 「しょうがないなー。んまあ、教えてあげるけど聞いて驚け」

 「うぜぇ」

 「です」

 「儂にも関係あるかのう?」

 「ま、爺さんが一番関係あるけど」

 「ほう。して?」

 「早く言えよ」

 「教えるのです」

 「はいはい。えー、では、コホン……」

 勿体つけて話す為次の内容は触手汁に関する内容であった。
 分析してみた結果、アンフェタミンに近い科学構造であり云わば麻薬である。
 効果はスイやピーチエールで試した通り主に快感を刺激し、中毒性と効力が異様なまでに高い作用をもたらす。
 並みの人間ならば、いつ廃人になってもおかしくないレベルである。
 そして極めつけは乳首へ直接注入した場合に母乳を促す効果まであるのだ。

 と、触手汁の構造と効能が分かった所で人への影響をシミュレートし数値化したのが今回の大発明らしい。

 「……そこで作ったのがこれなのだっ!」

 と、タブレットを取り出す。

 「どれだよ?」

 「うん。スイ。送るから表示ヨロ」

 「はぁーい、です」

 タブレットからスイのA.A.S.にデータを送信し、空中投影式のスクリーンに表示してもらう。
 大きい画面の方が見やすいとの為次の心遣い…… ではなく、ただ単に自慢したいだけだ。

 「はぁ? なんだよこりゃ……」

 「なんじゃこれはっ!」

 映像を見た正秀は呆れているが、もりもり博士は空中投影スクリーンに驚いていた。
 為次は自信満々で解説を始める。

 「これが魔法少女攻略の要であるステータス画面なのだぁ!!」

 ……と、表示されている内容がこちら。

 ◆ ◆ ◆ PeachYell's Status ◆ ◆ ◆

 【 名前 】:ピーチエール
 【 職業 】:魔法少女

 【 淫乱 】:023%
 【 感度 】:011%

 【 破瓜 】:001回
 【 出産 】:000回

 【 口腔 】:001%
 【 乳房 】:002%
 【 陰核 】:008%
 【 尿道 】:013%
 【 陰部 】:033%
 【 子宮 】:032%
 【 尻穴 】:000%

 ◆  ◆  ◆  ◆  ◆  ◆

 「完全にイかれてるぜ……」

 「むむっ!? これは……」

 もりもり博士は意外と興味津々だ。

 「フフッ、昨日と一昨日の戦闘録画を元に魔法少女の開発具合を数値化したのだ! いやぁ昨日は俺が見ていない間にあんなことになってたとはねぇ…… と、それは置いといて。触手汁と凌辱がこの星の人間に対して平均的に与える影響をレオの極亜空間光量子コンピューターで解析し限界値を100パーセントとして表したものがコレな分け。ちな淫乱はエロスに溺れた進行度で云わば洗脳具合ね。こいつが100パーで作戦は完了となる筈。感度はどれだけ全体的に敏感になったかってね。後は見ての通りだよ。もっとも魔法少女の正確な耐性が分からないから100パー超えもあるし逆もあるけど」

 と、為次は早口で喋り終わった。

 「為次。お前、頭大丈夫か? だいたい破瓜はかの回数ってなんだよっ。おかしいだろ……」

 「ああ、それはねぇ。怪我したら可哀想でしょ、だから怪我の酷い時はヒールポーションを飲ませてあげるの。つまりそういうこと」

 「あっ、いや…… 確かにヒールポーションならどんな怪我でも治せるけどな…… アレも治るんだよな……」

 「そうそう」

 「……何度も処女喪失とかピーチちゃん悲惨過ぎるだろ。しかも出産って…… 出産しても処女膜を破られるのかよ」

 「はわわわ…… 何度も処女が…… ゴクリなのです」

 「スイちゃん……」

 「と言う訳で、このデータを参考に責める性感を決めて適した怪人を作るのだよ。よろしくね、爺さん」

 「ふむ、中々に面白いかもしれんの。確かにこれならば小娘攻略が捗るかも知れんわい」

 「でしょでしょ」

 「はぁ…… もう勝手にしてくれ」

 こうしてホトホト呆れる正秀をよそに新たなる怪人製作が始まった。
 もりもり博士と為次はアレやコレやと生き物を探し怪人のベース候補を取って来ると、責める箇所もおっぱいと尻で揉めたりもしたがなんとか決まった。

 結局、この日は公園で虫取りと怪人作りで過ぎて行くのだった……

 ……………
 ………
 …

 ―― 次の日

 ブリーフィングルーム兼食堂と化した研究室で本日の作戦内容をもりもり博士が発表しようとしていた。

 「ではお主らよく聞くのじゃぞ。本日の作戦を説明する。その名も放置車両強奪作戦じゃ!」

 「放置車両の撤去か、偉いぜもりもり博士」

 「もりもり様は偉いのです」

 「うむ、もっと褒めるがよい」

 もりもり博士によれば近年放置車両が問題化しているとのことだ。
 この国の車はすべて電気で走り、張り巡らされた架線へポールを伸ばして電力供給するトロリーカーとなっている。
 ところがこれが曲者で、人のあまり近寄らない場所には架線が少ない。
 それでも行こうとする人は少なからずおり、例えばキャンプに行く人などはなるべく近くまで車で行こうとしてしまう。
 結果、架線は少なく無理に架線軌道から出てしまい立ち往生してしまうのだ。
 しかも通信手段が乏しいせいで救援も呼べず、諦めて歩いて帰ってしまう人が多い。
 こうして取り残された車が放置車両となっているのだ。

 「……と、まあ大量の鉄屑を手に入れアブベーンに嫌がらせをするのじゃ」

 ここで正秀は疑問に思う。

 「なあ、なんで鉄の欲しいアブべは放置車両を回収しないんだ?」

 「簡単なことじゃ。架線軌道外じゃからトラックが近づけず持って帰るのが大変だからじゃ」

 「じゃあ俺達はどうやって持って帰るんだよ?」

 「……ふむ」

 「ふむ。じゃねーよっ!」

 「細かいことは気にするでない」

 「…………」

 ボケ爺ぃの戯言だと、それ以上はツッコムのを諦める正秀であった。

 「さて、今回の怪人じゃが…… タメツグ」

 「ういっス」

 為次は一番大きなガラス管に近づき何やら操作を始めると中の液体が減って行く。

 そして、蓋が開き出て来た怪人は……

 上半身だけ人間であるが他は全体的に蛇である。
 頭はもちろん蛇で下半身に足は無く蛇の尻尾が付いている。
 肩から先は人間の腕は付いておらず、代わりに蛇の胴体だけのような蛇腕が戸愚呂を巻いている。
 なんとも奇妙な姿であった。
 更に驚きなのがサイズである。
 人の3倍はあろうかという大男なのだ。
 幸い下半身が蛇のお陰で天井には辛うじて当たってはいない様子だ。

 「見よっ! 蛇男じゃっ!」

 もりもり博士の紹介によって登場した蛇男は体をクネらせながら口からチョロチョロと舌を出している。

 「シャー、キシャー、俺様が蛇男だっ! シャシャー」

 蛇男は人が飲み込めそうなほど口を開き叫んだ。

 「どうどう? 凄いでしょ。捕まえるの苦労したんだよねー」

 と、為次は蛇男の背中を叩きながら自慢する。

 「蛇男様ですか」

 「キシャーッ」

 「ええっ? お前ら昨日は公園に虫を取りに行ってただろ! しかも男ってなんだよ、怪人じゃないのかよっ!」

 「キシャシャー」

 「うん。でも蛇が居たから、これでいっかなって」

 「キシャー」

 「うむ。じゃのう」

 「キシャー」

 「蛇男、ちょっとうるさいかも」

 「キシャァ……」

 怒られたと思った蛇男はしょげてしまった。

 「結局、なんでもいいのかよ…… それに蛇男のメンタルが心配だぜ……」

 「マサヒデは細かい奴じゃのう……」

 「だよね」

 「です」

 「っく、お前ら……」

 こうして蛇男のお披露目が終わると、皆は作戦現場へと向かうのであった。

 ※  ※  ※  ※  ※

 量産型怪人を10匹加えた御一行は下水溝を抜けて暫く歩くと美しい湖の畔へと到着した。
 謎の植物も多いが自然豊かで実に清々しい場所である。
 しかし、少し目を逸らすと錆びついた四角い鉄の塊が幾つも草に埋もれ転がっていた。

 「綺麗な湖なのです」

 「おおっ、あっちには腐った車がいっぱい有るねぇ」

 「鉄屑は有るけど人が全然居ないぜ」

 「向こうの方で子供が遊んでるよ」

 「じゃのう」

 鉄を集める作戦に来たのはいいが人が殆ど居なかった。
 遠くでガキンチョが3人だけ走り回って遊んでいるのが見えるが他には見当たらない。
 吹き抜ける風が草花を揺らす音が聴こえるだけだ。
 ピーチエールをおびき出す筈であったが、このままでは本当に放置車両を処分するだけになってしまう。

 「なあ、もりもり博士」

 「なんじゃ? マサヒデ」

 「俺は思うんだが、アブべが手を付けない鉄屑を奪っても意味ない気がするぜ」

 「マサヒデよ」

 「ん?」

 「何故もっと早く言わぬのだ」

 「知らねーよっ!」

 皆は途方に暮れてしまった。
 そもそも鉄屑を持って帰ってもゴミになるだけだし何より重い。
 と言うより邪魔だ。
 しかもアブベーンに対して嫌がらせにもならないし、何も悪いことをしないので通報されることもない。
 つまりピーチエールも来ない。

 「今日は帰るかのう」

 もりもり博士は、あっさりと諦めることにした。

 「えー、帰っちゃうの? 折角だから少し遊んで行こうよ、スイの弁当もあるし」

 「だな、ピクニックでもしようぜ」

 「ですです」

 スイは手に持っていた大きなバスケットを開いて見せると、中には美味しそうな料理がぎっしりと詰まっていた。

 「ほう、中々に旨そうじゃの。どれ」

 と、もりもり博士はサンドイッチを摘まみ食べてみる。

 「どうでしょうか?」

 「もぐもぐ、良い味じゃ」

 「えへへー、タメツグ様もどうぞなのです」

 「うん。じゃぁ、あっちの木陰にでも行こうよ」

 この星の大陸は赤道付近に集まっているせいで日差しがきつい。

 「だな」

 「仕方ないのう、今日はゆっくりするかの」

 「キシャアー」

 「「「ヒョヒョー」」」

 怪人軍団も嬉しそうだ。

 「よし、あの辺りにしようぜ」

 「うい」

 「はいです」

 そんなこんなで皆は湖畔にあった木陰に陣取るとピクニックをする羽目になってしまった。

 なので、ついでに怪人用の虫取りにも励むのであった。
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