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異世界編 2章
第111話 異界その4
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為次は皆と一緒に食堂へとやって来た。
木のテーブルの上には、あまり見かけない食事が用意してある。
菜食主義なのだろうか? 肉が見当たらない。
代わりに豆のような物が沢山ある。
それがタンパク源となる主食かも知れない。
どうやら、異世界とは食文化が違う感じだ。
「どうぞ、冷めない内に召し上がって下さい」
ティティに言われて、適当に席へと着く。
為次はミミィの隣に座ると、向かいにリリーナとティティが座る。
目の前には木製の食器だけが並べられていた。
中央の大皿から皆で取り合うらしい。
「んじゃ、頂こうかな」
「お酒もありますよ」
ティティは赤い液体の入ったビンを取ると、皆のグラスへと注いでゆく。
「ありがとう、ティティ」
リリーナは注がれたグラスを手に取りミミィに向けた。
「私は結構です」
「ミミィさんは、お酒は駄目でしたか?」
酒瓶を抱えたままティティは訊いた。
「駄目ではないのだけど…… まだ昼間ですから」
「これワインすか?」
為次は呑んでみるとワインとは違った。
なんとも表現し辛い、ほのかな甘みの不思議な味わいだ。
「んー」
「どうですか? タメツグさん」
「美味しいよ」
「良かったです」
ティティは嬉しそうだが、お酒を呑みに来た分けではない。
為次は笑顔を返すと、リリーナに要件を訊く。
「んで、用は何?」
「大したことではありません」
「じゃあ、帰っていい?」
当然、為次の態度がミミィは気に入らない。
「失礼ですよ、礼儀も知らないのですか?」
「はいはい」
為次は豆みたいなのを、大皿に添えてあったスプーンですくうと自分の取皿へ。
なんだか粘っこいので、離れない。
カン カン
皿に叩きつけてみるもネットリして、すぐにはスプーンから離れない。
「マナーもなってないのですね、タメツグは」
皮肉そうに言うミミィを横目で見るとスプーンごと口に運ぶ。
「もぐもぐ、美味しいね」
「……あなたは」
「目障りなら消えるけどね」
「…………」
「食事は楽しく頂きましょう」
何も言わずに不満そうな顔をするミミィにリリーナは言った。
「はい……」
「それで頼み事ですが、話を聞いてもらえますか?」
「その前に、ちょっと聞きたいことが……」
「何かしら?」
「ぶっちゃけ、何処だよここは」
「そうですね。では、それも含めて私の頼みを話しましょう」
「うん」
リリーナの話によると、ここは精霊界だそうな。
なんでも、神々の住まう空間らしく、元居た世界とは別次元の場所らしい。
神は各々の世界をここから管理し、生命を育む。
但し、為次達の飛ばされた世界は元々知的生命体が少ないらしく、神による管理は行われていない。
ハイエルフは神の申し子で、単にこの次元に住んでいるだけなのだと。
「神の世界って…… またスケールがデカイな」
そして、現在ハイエルフの居るこの場所なのだが、どうも浮遊大陸みたいな感じらしい。
だが、あまり広くはなく、どちらかと言えば島である。
時間と空間を超越した光の大河にポツリと浮かぶ島だ。
「島から落ちたらどうなんの?」
「何処かの現世の、何処かの場所の、何処かの時間に流れ着きます」
「そんなとこに俺を流そうとしたのかよ」
そう言って為次はミミィを見た。
「今からでも流しますか?」
「ご遠慮します」
この島や他の大陸などは、次元向こうの星とセットになっているとリリーナは言う。
生命の量に応じて、この大地の大きさが決まるらしい。
つまり、今居る島とセットになっている星は生物が少ないことになる。
当然、狭い島での生活は困難である。
そこで、向こうの世界とこちらを繋げることによって、ある程度は生活環境を依存することにした。
繋げたはいいが、部外者に勝手に入られても困る。
だから、ハイエルフだけが行き来できる結界を張ったのだ。
それが周りを覆っている白い霧の正体だ。
「頭がおかしくなりそうな話ですな」
「元々、おかしいのでは?」
相変わらずミミィは嫌みったらしい。
よほど為次が嫌いなのであろう。
「……むぅ」
ところが最近、困った出来事が起こった。
ここ千年、星屑の民がやって来てからというもの、生命のバランスが崩れた。
生命の量に対して、生物が著しく減ったらしい。
そのせいで魔獣が増えすぎてしまい、この島もかなり小さくなった。
「生き物が減ると魔獣が増えるんだ」
「はい、行き場を失った命は寄り添い合い、やがて一つになります。その結晶こそが……」
「まさか、エレメンタル…… ストーン……?」
「そうです、やがて魔獣となる魔石」
「それで、人間を喰わせている分けか……」
「そのようです」
「じゃあ、星屑の民は?」
「他の星より飛来した人間の種族」
「ターナ達は異星人!?」
「はい、あの雪山こそ彼らの舟の残骸と魔獣の死骸」
ガザフの手記を思い出す。
-- 魔導兵器の暴走を悔やんでいたのを --
「いったい、何があったんだ?」
「ご自分の目で、確かめられては?」
「どうやって?」
「モノポールリングに行かれるのでしょう?」
「あー、うん、ハイエルフって意外と物知りなのね」
「永い時を生きていますので」
「へぇ……」
そして、ここからがリリーナの依頼であった。
結界は4つのエレメンタルストーンで発動させている。
意外とファジカルなもので、常に安定している分けではない。
たまに綻びが生じるらしい。
その際に、彷徨う魂が少しずつ、こちらに入って来てしまった。
気が付いた時には、既にエレメンタルストーンに取り憑き魔獣化していたと。
「んん? 意味が分からんぞ」
「あなたの足らない頭では仕方ありません」
ミミィは言った。
「あー、ごめんごめん、ミミィのエロおパンツを思い出してたら聞いてなかったわ」
「ななな、何を言ってるのですか!」
「もっかい見せてよ」
ポカッ
「あいた、叩くなよぉ」
「タメツグがイヤらしいことばかり考えるからです!」
「あなた達……」
「食事中なんです」
「申し訳ございません……」
リリーナとティティに注意されて、恥ずかしそう俯きながらミミィは小声で謝った。
「まあ、パンツともかくですが、タメツグの疑問も分かります」
「だよねー」
「り、リリーナ様まで……」
「この次元にもエレメンタルストーンがあるなら魔獣も存在するはずだと、そうタメツグは仰っしゃりたいのですね」
「そうそう」
リリーナはエレメンタルストーンと言った。
しかし、それは分かりやすく言っただけで、実際は違うと言う。
存在的には似たモノであるが、元になる物が違うらしい。
それは神々の命の源でもあるが、そもそも神には魂という概念が無い。
だから生命のエネルギー源ではあるが、魔獣化するモノでもない。
「つまり、生命エネルギーの結晶体でありますが、魂を生み出すことはありません」
「うーん、上手くはぐらかされた説明ですな」
「神様の存在を説明すること自体が無理なんです」
ティティは言った。
「確かにね」
リリーナは話を続ける。
「本来この次元に魔獣は居ません。しかし……」
「なるほどね、それで俺達に駆除してほしいと」
「はい、私達は精霊魔法を使います。ですが、それも魔法の一種、魔獣には殆ど効果がありません」
「そんで肝心の戦士はミミィが団長と」
「どういう意味ですかっ、それは!」
「仕方ないよ、戦士の能力は無いんだから」
「……ぐっ」
「でー、報酬とかあるの?」
「こちらです」
リリーナはテーブル上に箱を置くと、蓋を開け為次に見せる。
中には拳大の紫色をした、美しい結晶石が入っていた。
リ「こちらが先程説明した、この次元のエレメンタルストーンです。このサイズでも絶大な力を秘めていますよ。向こうの世界では、賢者の石などと呼ばれ、非常に価値の高いものです」
「へぇ、これを貰えるんだ」
「はい」
「リリーナ様! 本当にこのような人に渡すおつもりですか!?」
「初めはサダムネに頼むつもりでしたが……」
「たまたまタメツグさん達が通りかかったので、私がお願いして変更してもらったんです」
と、ティティが説明してくれた。
「あなた方も気孔士だからと」
リリーナの言葉にミミィは引っ掛かる物がある。
「達? あなた方?」
「言ってなかったけ? マサは俺の仲間だよ」
「なっ!」
「でも、ご迷惑をお掛けしたみたいで、ごめんなさい」
「こ、こんな人に謝る必要はありませんよ、ミミィ!」
「でもでも、ミミィさんが早とちりをしなければ……」
「早とちり? 私が?」
「俺はティティを襲ってないよ」
「え? 嘘……?」
「ミミィが、いきなり襲って来たんでしょ」
「少し、おっちょこちょいな所もありますからミミィさんは」
「そんなこと…… そんなことはありませんっ」
「今朝だってパンツ履き忘れてたじゃないですか」
「なっ!? ティティ!」
「私が教えてあげなかったら、今頃タメツグさんに……」
「ひゃぁ、あれはっ!」
横を見ると、為次はイヤらしい目付きで自分を見ている。
と、思った自意識過剰なミミィ。
バシッ!
「あいた、なんで叩くのー」
「隣に居るタメツグが悪いのです!」
「ええ!?」
「とにかく、この人に討伐依頼を頼むのは反対です!」
為次を指しながらミミィは言った。
そして、立ち上がると、両手をテーブルにバンッと叩きつける。
「魔獣如き、私が倒してみせますっ!」
「弱かった頃にすら倒せませんでしたのに、あれ程までに強力になってしまっては無理です」
「そんなことはありません! 私は、お先に失礼します!」
食べかけの食事を残して出て行くミミィ。
「お待ちなさい、勝手な行動は許しませんよ」
「失礼します!」
静止も聞かずに、出て行ってしまった……
「はぁ、仕方ないの無い子ですねぇ」
「ちょっと可哀想な気もするかもー」
「タメツグさんが虐めるからですよ」
「いや、俺は何も…… してないよね?」
「タメツグさん、自分のことですよ……」
「とりあえず、依頼は受けていただけます?」
「あー、その石も欲しいし、マサはやらせればいいしね」
「では」
「おけ、引き受けませう」
「ありがとうございます」
「詳しい内容は私が教えてあげます」
「あ、うん、ティティはいい子だね」
「えへへ」
どんな魔獣かも聞かずに引き受けた為次。
正秀に丸投げで大丈夫であろうと、安易な気持ちであった。
ミミィが取皿に残して行った豆を摘みながら為次は思う。
レオも持ってくれば良かった。
と……
木のテーブルの上には、あまり見かけない食事が用意してある。
菜食主義なのだろうか? 肉が見当たらない。
代わりに豆のような物が沢山ある。
それがタンパク源となる主食かも知れない。
どうやら、異世界とは食文化が違う感じだ。
「どうぞ、冷めない内に召し上がって下さい」
ティティに言われて、適当に席へと着く。
為次はミミィの隣に座ると、向かいにリリーナとティティが座る。
目の前には木製の食器だけが並べられていた。
中央の大皿から皆で取り合うらしい。
「んじゃ、頂こうかな」
「お酒もありますよ」
ティティは赤い液体の入ったビンを取ると、皆のグラスへと注いでゆく。
「ありがとう、ティティ」
リリーナは注がれたグラスを手に取りミミィに向けた。
「私は結構です」
「ミミィさんは、お酒は駄目でしたか?」
酒瓶を抱えたままティティは訊いた。
「駄目ではないのだけど…… まだ昼間ですから」
「これワインすか?」
為次は呑んでみるとワインとは違った。
なんとも表現し辛い、ほのかな甘みの不思議な味わいだ。
「んー」
「どうですか? タメツグさん」
「美味しいよ」
「良かったです」
ティティは嬉しそうだが、お酒を呑みに来た分けではない。
為次は笑顔を返すと、リリーナに要件を訊く。
「んで、用は何?」
「大したことではありません」
「じゃあ、帰っていい?」
当然、為次の態度がミミィは気に入らない。
「失礼ですよ、礼儀も知らないのですか?」
「はいはい」
為次は豆みたいなのを、大皿に添えてあったスプーンですくうと自分の取皿へ。
なんだか粘っこいので、離れない。
カン カン
皿に叩きつけてみるもネットリして、すぐにはスプーンから離れない。
「マナーもなってないのですね、タメツグは」
皮肉そうに言うミミィを横目で見るとスプーンごと口に運ぶ。
「もぐもぐ、美味しいね」
「……あなたは」
「目障りなら消えるけどね」
「…………」
「食事は楽しく頂きましょう」
何も言わずに不満そうな顔をするミミィにリリーナは言った。
「はい……」
「それで頼み事ですが、話を聞いてもらえますか?」
「その前に、ちょっと聞きたいことが……」
「何かしら?」
「ぶっちゃけ、何処だよここは」
「そうですね。では、それも含めて私の頼みを話しましょう」
「うん」
リリーナの話によると、ここは精霊界だそうな。
なんでも、神々の住まう空間らしく、元居た世界とは別次元の場所らしい。
神は各々の世界をここから管理し、生命を育む。
但し、為次達の飛ばされた世界は元々知的生命体が少ないらしく、神による管理は行われていない。
ハイエルフは神の申し子で、単にこの次元に住んでいるだけなのだと。
「神の世界って…… またスケールがデカイな」
そして、現在ハイエルフの居るこの場所なのだが、どうも浮遊大陸みたいな感じらしい。
だが、あまり広くはなく、どちらかと言えば島である。
時間と空間を超越した光の大河にポツリと浮かぶ島だ。
「島から落ちたらどうなんの?」
「何処かの現世の、何処かの場所の、何処かの時間に流れ着きます」
「そんなとこに俺を流そうとしたのかよ」
そう言って為次はミミィを見た。
「今からでも流しますか?」
「ご遠慮します」
この島や他の大陸などは、次元向こうの星とセットになっているとリリーナは言う。
生命の量に応じて、この大地の大きさが決まるらしい。
つまり、今居る島とセットになっている星は生物が少ないことになる。
当然、狭い島での生活は困難である。
そこで、向こうの世界とこちらを繋げることによって、ある程度は生活環境を依存することにした。
繋げたはいいが、部外者に勝手に入られても困る。
だから、ハイエルフだけが行き来できる結界を張ったのだ。
それが周りを覆っている白い霧の正体だ。
「頭がおかしくなりそうな話ですな」
「元々、おかしいのでは?」
相変わらずミミィは嫌みったらしい。
よほど為次が嫌いなのであろう。
「……むぅ」
ところが最近、困った出来事が起こった。
ここ千年、星屑の民がやって来てからというもの、生命のバランスが崩れた。
生命の量に対して、生物が著しく減ったらしい。
そのせいで魔獣が増えすぎてしまい、この島もかなり小さくなった。
「生き物が減ると魔獣が増えるんだ」
「はい、行き場を失った命は寄り添い合い、やがて一つになります。その結晶こそが……」
「まさか、エレメンタル…… ストーン……?」
「そうです、やがて魔獣となる魔石」
「それで、人間を喰わせている分けか……」
「そのようです」
「じゃあ、星屑の民は?」
「他の星より飛来した人間の種族」
「ターナ達は異星人!?」
「はい、あの雪山こそ彼らの舟の残骸と魔獣の死骸」
ガザフの手記を思い出す。
-- 魔導兵器の暴走を悔やんでいたのを --
「いったい、何があったんだ?」
「ご自分の目で、確かめられては?」
「どうやって?」
「モノポールリングに行かれるのでしょう?」
「あー、うん、ハイエルフって意外と物知りなのね」
「永い時を生きていますので」
「へぇ……」
そして、ここからがリリーナの依頼であった。
結界は4つのエレメンタルストーンで発動させている。
意外とファジカルなもので、常に安定している分けではない。
たまに綻びが生じるらしい。
その際に、彷徨う魂が少しずつ、こちらに入って来てしまった。
気が付いた時には、既にエレメンタルストーンに取り憑き魔獣化していたと。
「んん? 意味が分からんぞ」
「あなたの足らない頭では仕方ありません」
ミミィは言った。
「あー、ごめんごめん、ミミィのエロおパンツを思い出してたら聞いてなかったわ」
「ななな、何を言ってるのですか!」
「もっかい見せてよ」
ポカッ
「あいた、叩くなよぉ」
「タメツグがイヤらしいことばかり考えるからです!」
「あなた達……」
「食事中なんです」
「申し訳ございません……」
リリーナとティティに注意されて、恥ずかしそう俯きながらミミィは小声で謝った。
「まあ、パンツともかくですが、タメツグの疑問も分かります」
「だよねー」
「り、リリーナ様まで……」
「この次元にもエレメンタルストーンがあるなら魔獣も存在するはずだと、そうタメツグは仰っしゃりたいのですね」
「そうそう」
リリーナはエレメンタルストーンと言った。
しかし、それは分かりやすく言っただけで、実際は違うと言う。
存在的には似たモノであるが、元になる物が違うらしい。
それは神々の命の源でもあるが、そもそも神には魂という概念が無い。
だから生命のエネルギー源ではあるが、魔獣化するモノでもない。
「つまり、生命エネルギーの結晶体でありますが、魂を生み出すことはありません」
「うーん、上手くはぐらかされた説明ですな」
「神様の存在を説明すること自体が無理なんです」
ティティは言った。
「確かにね」
リリーナは話を続ける。
「本来この次元に魔獣は居ません。しかし……」
「なるほどね、それで俺達に駆除してほしいと」
「はい、私達は精霊魔法を使います。ですが、それも魔法の一種、魔獣には殆ど効果がありません」
「そんで肝心の戦士はミミィが団長と」
「どういう意味ですかっ、それは!」
「仕方ないよ、戦士の能力は無いんだから」
「……ぐっ」
「でー、報酬とかあるの?」
「こちらです」
リリーナはテーブル上に箱を置くと、蓋を開け為次に見せる。
中には拳大の紫色をした、美しい結晶石が入っていた。
リ「こちらが先程説明した、この次元のエレメンタルストーンです。このサイズでも絶大な力を秘めていますよ。向こうの世界では、賢者の石などと呼ばれ、非常に価値の高いものです」
「へぇ、これを貰えるんだ」
「はい」
「リリーナ様! 本当にこのような人に渡すおつもりですか!?」
「初めはサダムネに頼むつもりでしたが……」
「たまたまタメツグさん達が通りかかったので、私がお願いして変更してもらったんです」
と、ティティが説明してくれた。
「あなた方も気孔士だからと」
リリーナの言葉にミミィは引っ掛かる物がある。
「達? あなた方?」
「言ってなかったけ? マサは俺の仲間だよ」
「なっ!」
「でも、ご迷惑をお掛けしたみたいで、ごめんなさい」
「こ、こんな人に謝る必要はありませんよ、ミミィ!」
「でもでも、ミミィさんが早とちりをしなければ……」
「早とちり? 私が?」
「俺はティティを襲ってないよ」
「え? 嘘……?」
「ミミィが、いきなり襲って来たんでしょ」
「少し、おっちょこちょいな所もありますからミミィさんは」
「そんなこと…… そんなことはありませんっ」
「今朝だってパンツ履き忘れてたじゃないですか」
「なっ!? ティティ!」
「私が教えてあげなかったら、今頃タメツグさんに……」
「ひゃぁ、あれはっ!」
横を見ると、為次はイヤらしい目付きで自分を見ている。
と、思った自意識過剰なミミィ。
バシッ!
「あいた、なんで叩くのー」
「隣に居るタメツグが悪いのです!」
「ええ!?」
「とにかく、この人に討伐依頼を頼むのは反対です!」
為次を指しながらミミィは言った。
そして、立ち上がると、両手をテーブルにバンッと叩きつける。
「魔獣如き、私が倒してみせますっ!」
「弱かった頃にすら倒せませんでしたのに、あれ程までに強力になってしまっては無理です」
「そんなことはありません! 私は、お先に失礼します!」
食べかけの食事を残して出て行くミミィ。
「お待ちなさい、勝手な行動は許しませんよ」
「失礼します!」
静止も聞かずに、出て行ってしまった……
「はぁ、仕方ないの無い子ですねぇ」
「ちょっと可哀想な気もするかもー」
「タメツグさんが虐めるからですよ」
「いや、俺は何も…… してないよね?」
「タメツグさん、自分のことですよ……」
「とりあえず、依頼は受けていただけます?」
「あー、その石も欲しいし、マサはやらせればいいしね」
「では」
「おけ、引き受けませう」
「ありがとうございます」
「詳しい内容は私が教えてあげます」
「あ、うん、ティティはいい子だね」
「えへへ」
どんな魔獣かも聞かずに引き受けた為次。
正秀に丸投げで大丈夫であろうと、安易な気持ちであった。
ミミィが取皿に残して行った豆を摘みながら為次は思う。
レオも持ってくれば良かった。
と……
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最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。
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