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異世界編 1章
第46話 依頼その2
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その日の朝、為次はベッドの横に腰掛け考え込んでいた……
同じベッドでは、スイがまだ可愛い寝息を立てながら寝ている。
一人で寝るのは怖いからと、布団にもぐり込んで来たのだ。
寝ている間も離れたくないのだろうか? 今も為次の袖を掴んだままで寝ていた。
スイはとても可愛い、少し頭が弱いが気立てもいいし、とても良く尽くしてくれる。
普通の男性ならば、こんな女の子が彼女になってくれたなら嬉しい限りであろう。
自分だって女が苦手ではあるが、嫌いではない、彼女になって欲しいに決まっている。
それに、スイは自分のことを好きなのは間違いないはずだ、それも分かっている。
だから、この娘を彼女にしたいと思うのも当然の考えだった。
だが、それは誤りだと思う…… そんなスイの好きと言う思いは、多分、愛とは違うのだから。
長年いたぶられ続け辛い思いばかりして来た女の子が、突然に優しくしてくれる人に巡り会えたならば、好きという感情が芽生えるのは当然だろう。
もちろん、それは愛などではない。
錯覚しているだけなのだ。
人の思考など、単純で曖昧なモノである。
それに、感情的なことより、もっと大きな問題がある。
いずれ自分たちは帰るつもりだ…… 違う世界に……
そんな場所に、この世界の人間を連れて行ける分けがない。
生まれ故郷を捨て、二度と帰ることのできない場所に付いて来いなんて到底言える分けもないのだ。
などと、思ってはみるものの、それも只の言い訳に過ぎないかも知れない。
本当はただ単に、面倒臭いだけなのだ。
女とは我儘で自分本位な考えを持ち、ヒステリックで手に負えない。
一時の感情で付き合ったところで、すぐに別れるはずだ。
結婚しても離婚するに決まっている。
離婚しない人々は子供と言う口実があるに過ぎない。
つまり、女とは面倒臭い生き物なのだ。
面倒臭いのは嫌いだ…… でも、エロイのは好きだ。
だから為次はスイに手を出すことはなく、見つめるだけであった。
布団を捲るとシースルーのスイのパジャマ姿が悩ましい。
つまり、スイをオカズにさせてもらったので、為次は無ノ境地に達して下らないことを考えていたのです。
先程、手を出していないと言ったが、おっぱいは少々揉ませていただいた。
ちょっとくらい、ええやろ的な考えで。
そんなバカなモーニングを迎える為次の所へ……
バタン!
突然、部屋の扉が開くと、正秀が豪快に入って来た。
相変わらず節操の無い奴だ。
「おい! 為次」
「なんでおじゃるか? 我は悟りを開いたのぞよ」
「そんなことはどうでもいいから、ちょっとロビーに来てくれ」
「いやどす」
正秀が大声で話すのでスイも目が覚めたようだ。
「はぁぅ、おはようございます、ご主人様ぁ」
「うむ」
「スイちゃんおはよう、為次を借りて行くぜ」
「はう?」
「早く来い、ターナ達が待ってるんだよっ」
「ターナが来てるの? でも、今日はもういいんだけど……」
「何がいいんだよ! 訳の分からないこと言ってないでさっさとしろ」
「どうかしたの?」
「なんでも、俺達に依頼があるんだとよ」
「しょうがないにゃー」
為次はしぶしぶベッドから立ち上がるとロビーへ向かうのだ。
そんな部屋から出て行く主を見るスイ。
「おっぱいのとこがベトベトするのですぅ」
「朝から変なとこにぶっかけてんじゃねーよ」
「へーい……」
そして、為次と正秀はスイを残し部屋から出て行った……
※ ※ ※ ※ ※
正秀に連れられ、ロビーへ行くと例の3人組がソファーに座っていた。
テーブルの上の大剣の上には、マヨーラが淹れたのであろうお茶が3つと、箱が置かれている。
「あら、タメツグおはよう」
挨拶をするターナ。
「うん」
「スッキリした顔してんな」
スレイブは言った。
「まあね」
為次はテーブルに近づくと、マヨーラの前に置かれているお茶を手にする。
「ちょっと……」
「いいじゃない、別に」
そう言うと、為次はマヨーラのお茶を飲むのだ。
「しょうがないわねぇ……」
「それで、依頼って?」
「ええ、これを見てちょうだい」
そう言うとターナは大剣の上にある箱を開ける。
為次は箱の中を覗き込んだ。
「青い石…… だね」
「マサヒデには説明しましたけど、これは高純度エレメンタルストーンですわ」
「へー」
「これをポンタの街に居る、サダムネに届けて欲しいのですわ」
「うん」
「俺は承諾したが、為次の意見も聞こうと思ってな、それでお前を呼んで来たんだ」
正秀は言った。
「別にいいんじゃない、ターナ達にはお世話になってるし、俺なんかの意見は要らないでしょ」
「そうだな。だが、一応お前は仲間だからな」
「うん……」
「それから、お気遣いは無用ですわ。報酬も出しますので」
「そうすか」
「10万ゴールドですわ。本当はもっとお支払いしたいのですが、街の修復費用もありますの」
「え?」
「あなたが破壊した屋台街や石畳ですわ。サーサラを捕まえた報酬と合わせてもっと出したいのですけれど、さすがに損害が大き過ぎまして……」
「うーん、そっか、じゃあ断れないね。でも、ニクは? 何もしてくれないの?」
「ニクミ様も修繕費を工面して下さいましたわ、それらを差し引いて10万ゴールドですの」
「分かったよ、で、ポンタって遠いの?」
正秀は答える。
「距離なら100キロ以上みたいだぜ」
「そっか、1日あれば行けるね」
「おう、そうだな」
「では、引き受けて下さいますのね?」
「ま、こちらも要望あるけど」
突然に要望などと言い出した為次に向かってスレイブは言う。
「要望の出せる立場かよ」
「どうかなー?」
「要望ですの…… それは、どのような?」
「行くのは明日以降、それと上級国民区画の入場証をちょうだい」
「入場証を?」
ターナは訊き直した。
「うい」
要望という程のことではないと、スレイブも思う。
「なんだ、そんなことでいいのか」
「いいよ」
「入場証…… ですの。どこか行かれますの?」
「ちょっとね」
「……分かりましたわ。それは直ぐに発行致しますわ」
「そりゃ、どうも」
「なんだ為次。そんなに上級国民区画が気に入ったのか?」
「まあね、静かでいいとこだし、街を出る前に散歩でもしようかと思って」
「なるほどな」
「では、依頼の件。お願い致しますわ」
「任せといてくれ」
正秀は依頼を引き受けた。
そこへ着替えたスイもやって来た。
賢者タイムが終わっていた為次は、スイを見るとちょっと後ろめたい気分になったのだが、アレは男の性だと割り切ったのでした。
「皆様、おはようございます」
「やあ、スイちゃんおはよう」
「ようやく起きたわね」
正秀とマヨーラはスイを見ると言った。
「はい、直ぐに朝食の準備をしますね」
「ターナ達も食べて行くだろ?」
正秀は訊いた。
「せっかくですので、頂きますわ」
「おう、スイちゃんみんなの分も頼むぜ」
「分かりましたです」
スイは早速、朝食の準備に取り掛かる。
するとスレイブはマヨーラを振り向いて言う。
「なあ、マヨーラは作らないのか? 朝食」
「なんで、私が作るのよ」
「料理するんじゃなかったのか? さっきそう言ってたろ」
「う…… 言ったけど……」
マヨーラはマサヒデをチラリと見る。
「そ、そうね、私も作るわ……」
「マサの食事を作らないとねー、うひひ」
「うっさいわよ! タメツグ」
マヨーラも台所の方へと行ってしまった。
「なんだ、お前らそう言う仲なのか? マサヒデ」
スレイブは正秀に訪ねた。
「いや、そうでもないが」
「ふん、まあいいか」
そうして、マヨーラとスイの作った朝食を皆で食べるのであった。
朝食の最中に為次は約束の入場証をターナにせがんだ。
特別な用紙が要るのかと思ったが、適当な紙にターナ直筆の入場許可を記載した文とサインで大丈夫らしい。
だから、直ぐに入場許可証は貰えた。
……………
………
…
食事が終わると、さっそく為次は上級国民区画へと向かおうとするのだ。
「じゃあ、俺は上級区画に行くお」
「なんだ? 一人で行くのか?」
正秀はてっきりスイと一緒に行くのだと思っていた。
「うん」
「スイも行くのです」
「スイはお留守番ね」
「スイも行くのです」
「ダメなのです」
「行くのです!」
「ダメ」
「むー! ご主人様と一緒がいいのです!」
「ダメ」
「……みゃぁーぁぁぁ、うえぇぇぇん……」
等々スイは泣き出してしまった。
それでも為次は頑なに拒否する。
「ダメ」
「ご主人様のバカー」
スイは叫びながら、為次の部屋へと駆け込んでしまった……
それを目で追いながら正秀は言う。
「連れて行ってやればいいだろ……」
「ダメ」
「はぁ…… なんでだよ」
「ダメ」
「はぁ、分かったぜ、好きにしな……」
「うん」
「んじゃ俺は何をしようかな」
「それなら俺が稽古をつけてやるぜ」
「ほんとか!? 頼むぜスレイブ!」
「おう、任せときな、この前約束したしな」
「やったぜ。それじゃ、今日はそれぞれ自由行動で、明日の朝一でポンタへ向かうぜ」
「りょかーい」
そんなこんなで、正秀はスレイブと大剣の稽古をすることとなり、為次は上級国民区画へと向かうのであった。
レオパルト2を軽くしたい為次であったが、スイがふて腐れているので今回は諦めた。
マヨーラとターナはスイが閉じ籠ってしまったので、昼飯とかの正秀とスレイブの世話をすることにしたのだった。
※ ※ ※ ※ ※
その頃、ポンタの街では…………
とある倉庫のような作業場で、仲の良さそうな夫婦が機械弄りに夢中になっている夫に朝食を早くすませるように催促をしていた。
「あなたー、何時まで陸上艇を弄ってるの? 早く食べてくれないと片付かないわ」
「ああ、分かった直ぐに行く」
妻は古びた陸上艇を見ると溜息交じりで言うのだ。
「この古い陸上艇はいつまで置いとくのかしら……」
「これは大切な物なんだよ、何時までだった置いとくさ」
「本当…… 仕方のない人ね……」
「それより、朝食の準備ができているんだろ?」
「そうよ、早く来てちょうだい」
「ああ」
そうして、夫婦は作業場を出ると、隣の家へと仲良く戻って行くのであった。
作業場を出る時に妻は古い陸上艇を振り返りながら思う。
こんな鉄の塊に、ヒトマルなんて可愛らしい名前まで付けちゃって…… 何がいいのかしらねぇ。
と……
同じベッドでは、スイがまだ可愛い寝息を立てながら寝ている。
一人で寝るのは怖いからと、布団にもぐり込んで来たのだ。
寝ている間も離れたくないのだろうか? 今も為次の袖を掴んだままで寝ていた。
スイはとても可愛い、少し頭が弱いが気立てもいいし、とても良く尽くしてくれる。
普通の男性ならば、こんな女の子が彼女になってくれたなら嬉しい限りであろう。
自分だって女が苦手ではあるが、嫌いではない、彼女になって欲しいに決まっている。
それに、スイは自分のことを好きなのは間違いないはずだ、それも分かっている。
だから、この娘を彼女にしたいと思うのも当然の考えだった。
だが、それは誤りだと思う…… そんなスイの好きと言う思いは、多分、愛とは違うのだから。
長年いたぶられ続け辛い思いばかりして来た女の子が、突然に優しくしてくれる人に巡り会えたならば、好きという感情が芽生えるのは当然だろう。
もちろん、それは愛などではない。
錯覚しているだけなのだ。
人の思考など、単純で曖昧なモノである。
それに、感情的なことより、もっと大きな問題がある。
いずれ自分たちは帰るつもりだ…… 違う世界に……
そんな場所に、この世界の人間を連れて行ける分けがない。
生まれ故郷を捨て、二度と帰ることのできない場所に付いて来いなんて到底言える分けもないのだ。
などと、思ってはみるものの、それも只の言い訳に過ぎないかも知れない。
本当はただ単に、面倒臭いだけなのだ。
女とは我儘で自分本位な考えを持ち、ヒステリックで手に負えない。
一時の感情で付き合ったところで、すぐに別れるはずだ。
結婚しても離婚するに決まっている。
離婚しない人々は子供と言う口実があるに過ぎない。
つまり、女とは面倒臭い生き物なのだ。
面倒臭いのは嫌いだ…… でも、エロイのは好きだ。
だから為次はスイに手を出すことはなく、見つめるだけであった。
布団を捲るとシースルーのスイのパジャマ姿が悩ましい。
つまり、スイをオカズにさせてもらったので、為次は無ノ境地に達して下らないことを考えていたのです。
先程、手を出していないと言ったが、おっぱいは少々揉ませていただいた。
ちょっとくらい、ええやろ的な考えで。
そんなバカなモーニングを迎える為次の所へ……
バタン!
突然、部屋の扉が開くと、正秀が豪快に入って来た。
相変わらず節操の無い奴だ。
「おい! 為次」
「なんでおじゃるか? 我は悟りを開いたのぞよ」
「そんなことはどうでもいいから、ちょっとロビーに来てくれ」
「いやどす」
正秀が大声で話すのでスイも目が覚めたようだ。
「はぁぅ、おはようございます、ご主人様ぁ」
「うむ」
「スイちゃんおはよう、為次を借りて行くぜ」
「はう?」
「早く来い、ターナ達が待ってるんだよっ」
「ターナが来てるの? でも、今日はもういいんだけど……」
「何がいいんだよ! 訳の分からないこと言ってないでさっさとしろ」
「どうかしたの?」
「なんでも、俺達に依頼があるんだとよ」
「しょうがないにゃー」
為次はしぶしぶベッドから立ち上がるとロビーへ向かうのだ。
そんな部屋から出て行く主を見るスイ。
「おっぱいのとこがベトベトするのですぅ」
「朝から変なとこにぶっかけてんじゃねーよ」
「へーい……」
そして、為次と正秀はスイを残し部屋から出て行った……
※ ※ ※ ※ ※
正秀に連れられ、ロビーへ行くと例の3人組がソファーに座っていた。
テーブルの上の大剣の上には、マヨーラが淹れたのであろうお茶が3つと、箱が置かれている。
「あら、タメツグおはよう」
挨拶をするターナ。
「うん」
「スッキリした顔してんな」
スレイブは言った。
「まあね」
為次はテーブルに近づくと、マヨーラの前に置かれているお茶を手にする。
「ちょっと……」
「いいじゃない、別に」
そう言うと、為次はマヨーラのお茶を飲むのだ。
「しょうがないわねぇ……」
「それで、依頼って?」
「ええ、これを見てちょうだい」
そう言うとターナは大剣の上にある箱を開ける。
為次は箱の中を覗き込んだ。
「青い石…… だね」
「マサヒデには説明しましたけど、これは高純度エレメンタルストーンですわ」
「へー」
「これをポンタの街に居る、サダムネに届けて欲しいのですわ」
「うん」
「俺は承諾したが、為次の意見も聞こうと思ってな、それでお前を呼んで来たんだ」
正秀は言った。
「別にいいんじゃない、ターナ達にはお世話になってるし、俺なんかの意見は要らないでしょ」
「そうだな。だが、一応お前は仲間だからな」
「うん……」
「それから、お気遣いは無用ですわ。報酬も出しますので」
「そうすか」
「10万ゴールドですわ。本当はもっとお支払いしたいのですが、街の修復費用もありますの」
「え?」
「あなたが破壊した屋台街や石畳ですわ。サーサラを捕まえた報酬と合わせてもっと出したいのですけれど、さすがに損害が大き過ぎまして……」
「うーん、そっか、じゃあ断れないね。でも、ニクは? 何もしてくれないの?」
「ニクミ様も修繕費を工面して下さいましたわ、それらを差し引いて10万ゴールドですの」
「分かったよ、で、ポンタって遠いの?」
正秀は答える。
「距離なら100キロ以上みたいだぜ」
「そっか、1日あれば行けるね」
「おう、そうだな」
「では、引き受けて下さいますのね?」
「ま、こちらも要望あるけど」
突然に要望などと言い出した為次に向かってスレイブは言う。
「要望の出せる立場かよ」
「どうかなー?」
「要望ですの…… それは、どのような?」
「行くのは明日以降、それと上級国民区画の入場証をちょうだい」
「入場証を?」
ターナは訊き直した。
「うい」
要望という程のことではないと、スレイブも思う。
「なんだ、そんなことでいいのか」
「いいよ」
「入場証…… ですの。どこか行かれますの?」
「ちょっとね」
「……分かりましたわ。それは直ぐに発行致しますわ」
「そりゃ、どうも」
「なんだ為次。そんなに上級国民区画が気に入ったのか?」
「まあね、静かでいいとこだし、街を出る前に散歩でもしようかと思って」
「なるほどな」
「では、依頼の件。お願い致しますわ」
「任せといてくれ」
正秀は依頼を引き受けた。
そこへ着替えたスイもやって来た。
賢者タイムが終わっていた為次は、スイを見るとちょっと後ろめたい気分になったのだが、アレは男の性だと割り切ったのでした。
「皆様、おはようございます」
「やあ、スイちゃんおはよう」
「ようやく起きたわね」
正秀とマヨーラはスイを見ると言った。
「はい、直ぐに朝食の準備をしますね」
「ターナ達も食べて行くだろ?」
正秀は訊いた。
「せっかくですので、頂きますわ」
「おう、スイちゃんみんなの分も頼むぜ」
「分かりましたです」
スイは早速、朝食の準備に取り掛かる。
するとスレイブはマヨーラを振り向いて言う。
「なあ、マヨーラは作らないのか? 朝食」
「なんで、私が作るのよ」
「料理するんじゃなかったのか? さっきそう言ってたろ」
「う…… 言ったけど……」
マヨーラはマサヒデをチラリと見る。
「そ、そうね、私も作るわ……」
「マサの食事を作らないとねー、うひひ」
「うっさいわよ! タメツグ」
マヨーラも台所の方へと行ってしまった。
「なんだ、お前らそう言う仲なのか? マサヒデ」
スレイブは正秀に訪ねた。
「いや、そうでもないが」
「ふん、まあいいか」
そうして、マヨーラとスイの作った朝食を皆で食べるのであった。
朝食の最中に為次は約束の入場証をターナにせがんだ。
特別な用紙が要るのかと思ったが、適当な紙にターナ直筆の入場許可を記載した文とサインで大丈夫らしい。
だから、直ぐに入場許可証は貰えた。
……………
………
…
食事が終わると、さっそく為次は上級国民区画へと向かおうとするのだ。
「じゃあ、俺は上級区画に行くお」
「なんだ? 一人で行くのか?」
正秀はてっきりスイと一緒に行くのだと思っていた。
「うん」
「スイも行くのです」
「スイはお留守番ね」
「スイも行くのです」
「ダメなのです」
「行くのです!」
「ダメ」
「むー! ご主人様と一緒がいいのです!」
「ダメ」
「……みゃぁーぁぁぁ、うえぇぇぇん……」
等々スイは泣き出してしまった。
それでも為次は頑なに拒否する。
「ダメ」
「ご主人様のバカー」
スイは叫びながら、為次の部屋へと駆け込んでしまった……
それを目で追いながら正秀は言う。
「連れて行ってやればいいだろ……」
「ダメ」
「はぁ…… なんでだよ」
「ダメ」
「はぁ、分かったぜ、好きにしな……」
「うん」
「んじゃ俺は何をしようかな」
「それなら俺が稽古をつけてやるぜ」
「ほんとか!? 頼むぜスレイブ!」
「おう、任せときな、この前約束したしな」
「やったぜ。それじゃ、今日はそれぞれ自由行動で、明日の朝一でポンタへ向かうぜ」
「りょかーい」
そんなこんなで、正秀はスレイブと大剣の稽古をすることとなり、為次は上級国民区画へと向かうのであった。
レオパルト2を軽くしたい為次であったが、スイがふて腐れているので今回は諦めた。
マヨーラとターナはスイが閉じ籠ってしまったので、昼飯とかの正秀とスレイブの世話をすることにしたのだった。
※ ※ ※ ※ ※
その頃、ポンタの街では…………
とある倉庫のような作業場で、仲の良さそうな夫婦が機械弄りに夢中になっている夫に朝食を早くすませるように催促をしていた。
「あなたー、何時まで陸上艇を弄ってるの? 早く食べてくれないと片付かないわ」
「ああ、分かった直ぐに行く」
妻は古びた陸上艇を見ると溜息交じりで言うのだ。
「この古い陸上艇はいつまで置いとくのかしら……」
「これは大切な物なんだよ、何時までだった置いとくさ」
「本当…… 仕方のない人ね……」
「それより、朝食の準備ができているんだろ?」
「そうよ、早く来てちょうだい」
「ああ」
そうして、夫婦は作業場を出ると、隣の家へと仲良く戻って行くのであった。
作業場を出る時に妻は古い陸上艇を振り返りながら思う。
こんな鉄の塊に、ヒトマルなんて可愛らしい名前まで付けちゃって…… 何がいいのかしらねぇ。
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