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「なぜバラすのだ。エリク」
「事前に打ち合わせなんかしておりませんし、そんなの私の知ったこっちゃありません! というか」
エリクはまじまじとジャスミンに顔を近づけた。すぐに嫌そうな顔をしてリュディアスは、ジャスミンを自分の背中に隠す。
「見るな。減る」
嫉妬丸出しのリュディアスに、エリクはあきれ顔だ。
「減るはずがないでしょう。見たくらいで。なんですか? この人間の子供」
「オレの番だ。見つけたから連れてきた」
「番!? 見つからないと思ったら、人間だったのですね。確かなのですか?」
「このオレが、番を違えるはずがないだろう」
ふん、と偉そうにリュディアスは鼻を鳴らす。
「まぁそれもそうですね。おめでとうございます。それはいいとして……」
エリクはうろんげな目を、リュディアスに向ける。
「この子供の親に挨拶したり、手順はふんだんでしょうね? 見たところ結婚適齢期に満たない子どものようですが」
「いや? 見つけてすぐ連れてきた。両親には会っていないが、ここへ飛んでくるまでに、番だという説明はした」
平然と答えるリュディアスに、エリクは慌てて、
「だ、だめですよ! 犬や猫の仔とは違うんですから、勝手に連れてきては! あなた名は何というんです? 年齢は?」
エリクの目線を見なくとも、当然彼の指す『あなた』はジャスミンのことだろう。
「ジャスミンです。十六になります」
ジャスミンの答えに、エリクは驚いた声を上げる。
「十六? 本当に適齢期に満たない子どもではないですか。……ジャスミン? もしかしてヴァ―リアス王国の第一王女では?」
「はい。そうです」
交流はないのに、近隣諸国のことについてしっかり研究しているようだ、とジャスミンは感心した。
エリクは大げさに天を仰ぐと、腕組みをしてその場をうろうろと何度も行ったり来たりする。
「王女! よりによって王女! ヴァ―リアス王国は、王子と王女おひとりずつでしたね。王が王女を溺愛しているのは、私の耳にも入っています。いささか面倒かもしれませんねぇ。番を見つけて嬉しかったのは分かりますが、もう少し考えてくださいよ。下手すると外交問題にも発展しますよ?」
「王女だなんて知らなかった。まあ王女だろうと平民だろうと、オレの番に変わりはないがな」
可哀想なほどにうろたえるエリクと対照的に、リュディアスは平然としている。これまでもエリクはリュディアスの尻拭いをしてきたのだろう、とジャスミンは気の毒に思った。
「はっきりと聞いていなくても、この身なりからそれなりの身分なのは分かると思いますが。ジャスミン王女、あなたはどこで兄上に連れ去られたのですか?」
「えーと、城の王族のみが立ち入ることのできる庭です。庭の周囲は厳重に警備されているので一人でいたのですが、空からの侵入者を想定していなかったので」
「城!? だったらなおさら王女なのが、分かりそうなものじゃないですか! もう、どちらにしろ、この子は嫁ぐには幼いですし、王の許可も取らなくてはいけませんし、早いうちに城に返してきなさい!」
「いやだ。まだ城を案内していない」
ふてぶてしく答えるリュディアスに、エリクはまなじりを吊り上げた。
「いやだじゃない! 私も一緒に行きますから。あなただけではちゃんと説得させられるか心配ですし」
「事前に打ち合わせなんかしておりませんし、そんなの私の知ったこっちゃありません! というか」
エリクはまじまじとジャスミンに顔を近づけた。すぐに嫌そうな顔をしてリュディアスは、ジャスミンを自分の背中に隠す。
「見るな。減る」
嫉妬丸出しのリュディアスに、エリクはあきれ顔だ。
「減るはずがないでしょう。見たくらいで。なんですか? この人間の子供」
「オレの番だ。見つけたから連れてきた」
「番!? 見つからないと思ったら、人間だったのですね。確かなのですか?」
「このオレが、番を違えるはずがないだろう」
ふん、と偉そうにリュディアスは鼻を鳴らす。
「まぁそれもそうですね。おめでとうございます。それはいいとして……」
エリクはうろんげな目を、リュディアスに向ける。
「この子供の親に挨拶したり、手順はふんだんでしょうね? 見たところ結婚適齢期に満たない子どものようですが」
「いや? 見つけてすぐ連れてきた。両親には会っていないが、ここへ飛んでくるまでに、番だという説明はした」
平然と答えるリュディアスに、エリクは慌てて、
「だ、だめですよ! 犬や猫の仔とは違うんですから、勝手に連れてきては! あなた名は何というんです? 年齢は?」
エリクの目線を見なくとも、当然彼の指す『あなた』はジャスミンのことだろう。
「ジャスミンです。十六になります」
ジャスミンの答えに、エリクは驚いた声を上げる。
「十六? 本当に適齢期に満たない子どもではないですか。……ジャスミン? もしかしてヴァ―リアス王国の第一王女では?」
「はい。そうです」
交流はないのに、近隣諸国のことについてしっかり研究しているようだ、とジャスミンは感心した。
エリクは大げさに天を仰ぐと、腕組みをしてその場をうろうろと何度も行ったり来たりする。
「王女! よりによって王女! ヴァ―リアス王国は、王子と王女おひとりずつでしたね。王が王女を溺愛しているのは、私の耳にも入っています。いささか面倒かもしれませんねぇ。番を見つけて嬉しかったのは分かりますが、もう少し考えてくださいよ。下手すると外交問題にも発展しますよ?」
「王女だなんて知らなかった。まあ王女だろうと平民だろうと、オレの番に変わりはないがな」
可哀想なほどにうろたえるエリクと対照的に、リュディアスは平然としている。これまでもエリクはリュディアスの尻拭いをしてきたのだろう、とジャスミンは気の毒に思った。
「はっきりと聞いていなくても、この身なりからそれなりの身分なのは分かると思いますが。ジャスミン王女、あなたはどこで兄上に連れ去られたのですか?」
「えーと、城の王族のみが立ち入ることのできる庭です。庭の周囲は厳重に警備されているので一人でいたのですが、空からの侵入者を想定していなかったので」
「城!? だったらなおさら王女なのが、分かりそうなものじゃないですか! もう、どちらにしろ、この子は嫁ぐには幼いですし、王の許可も取らなくてはいけませんし、早いうちに城に返してきなさい!」
「いやだ。まだ城を案内していない」
ふてぶてしく答えるリュディアスに、エリクはまなじりを吊り上げた。
「いやだじゃない! 私も一緒に行きますから。あなただけではちゃんと説得させられるか心配ですし」
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