1 / 13
プロローグ
しおりを挟む
ヴィンセントの大きな手が、シャルロットの双丘の頂に触れる。
「ふ……んんぅ……っ」
その途端、自分でも無意識のうちに、シャルロットはびくんと体を震わせてしまった。
(早く……終わってぇ……!)
この行為に愛はない。分かっているのに、ヴィンセントは巧みだった。心とは裏腹に強引に与えられる刺激に快感を覚えてしまう自分が嫌だった。少しでも快感を逃そうと、シャルロットはぎゅっとシーツをつかむ。
シャルロットの願いもむなしく、ヴィンセントの検・査・は終わりそうになかった。
★★★
城を発ったのは昼間だったが、もうすっかり日が落ちてしまった。ただでさえ薄暗い森の中にそびえたつ古城は、歴史を感じさせるというよりも、不気味とか薄気味悪いという気持ちのほうが先にたってしまう。日中であればそれほどでもないのかもしれないが。
古城までもう少し、というところで、馬車が停まった。
「シャルロットさま。この先馬車は行けませんので、おひとりでお願いします」
馬車の扉を開けた御者が、申し訳なさそうに言った。
このような薄気味悪い場所から早く去りたいという気持ちが透けて見えるが、それは仕
方のないことだと思う。誰でもこんなところに長くいたくないだろう。
「分かりました」
シャルロットは少しばかりの荷物を持って、御者の手を借りて、馬車から降り立った。小さなバッグに詰められた荷物は、年頃の若い娘のものと思えないほど最小限だ。それが幸いして、体力のないシャルロットでも無理なく持って歩けるだろう。
「ここまで送ってくれてありがとう。あなたも気をつけて戻って」
「もったいないお言葉です。シャルロットさま。……ご武運を。あなたさまに、太陽神の加護がありますように。ではひと月後の正午、またここで」
御者は不憫そうな顔でシャルロットを見ると、丁寧に一礼した。御者台に乗り込むと、すぐさま馬車を走らせる。
同情してくれる使用人もいたが、誰もシャルロットをかばってなどくれない。やっかい姫をかばって自分に火の粉がかかることをみんな恐れているのだ。
遠ざかる馬車が見えなくなるまで見送ると、
「……もう、後戻りはできないわ」
シャルロットは、大きく深呼吸をした。重い足取りで、古城に歩き出す。気持ちは重かったが、早く行かなければ完全に夜になって、獣が出てきてしまう。空気が肌を刺すように冷たい。空は曇天模様だったので、雨が降ってしまえば雪になりそうだ。
彼女の名前は、シャルロット・オーデノワ・ド・エンブライド。小国だが、エンブライド神聖国のれっきとした第三王女だ。
そう。もう後戻りなどできはしない。やっとシャルロットを国王が求めてくれたのだから。
そもそも戻れたとしても、そこにあるのは「死」だけだ。
「ふ……んんぅ……っ」
その途端、自分でも無意識のうちに、シャルロットはびくんと体を震わせてしまった。
(早く……終わってぇ……!)
この行為に愛はない。分かっているのに、ヴィンセントは巧みだった。心とは裏腹に強引に与えられる刺激に快感を覚えてしまう自分が嫌だった。少しでも快感を逃そうと、シャルロットはぎゅっとシーツをつかむ。
シャルロットの願いもむなしく、ヴィンセントの検・査・は終わりそうになかった。
★★★
城を発ったのは昼間だったが、もうすっかり日が落ちてしまった。ただでさえ薄暗い森の中にそびえたつ古城は、歴史を感じさせるというよりも、不気味とか薄気味悪いという気持ちのほうが先にたってしまう。日中であればそれほどでもないのかもしれないが。
古城までもう少し、というところで、馬車が停まった。
「シャルロットさま。この先馬車は行けませんので、おひとりでお願いします」
馬車の扉を開けた御者が、申し訳なさそうに言った。
このような薄気味悪い場所から早く去りたいという気持ちが透けて見えるが、それは仕
方のないことだと思う。誰でもこんなところに長くいたくないだろう。
「分かりました」
シャルロットは少しばかりの荷物を持って、御者の手を借りて、馬車から降り立った。小さなバッグに詰められた荷物は、年頃の若い娘のものと思えないほど最小限だ。それが幸いして、体力のないシャルロットでも無理なく持って歩けるだろう。
「ここまで送ってくれてありがとう。あなたも気をつけて戻って」
「もったいないお言葉です。シャルロットさま。……ご武運を。あなたさまに、太陽神の加護がありますように。ではひと月後の正午、またここで」
御者は不憫そうな顔でシャルロットを見ると、丁寧に一礼した。御者台に乗り込むと、すぐさま馬車を走らせる。
同情してくれる使用人もいたが、誰もシャルロットをかばってなどくれない。やっかい姫をかばって自分に火の粉がかかることをみんな恐れているのだ。
遠ざかる馬車が見えなくなるまで見送ると、
「……もう、後戻りはできないわ」
シャルロットは、大きく深呼吸をした。重い足取りで、古城に歩き出す。気持ちは重かったが、早く行かなければ完全に夜になって、獣が出てきてしまう。空気が肌を刺すように冷たい。空は曇天模様だったので、雨が降ってしまえば雪になりそうだ。
彼女の名前は、シャルロット・オーデノワ・ド・エンブライド。小国だが、エンブライド神聖国のれっきとした第三王女だ。
そう。もう後戻りなどできはしない。やっとシャルロットを国王が求めてくれたのだから。
そもそも戻れたとしても、そこにあるのは「死」だけだ。
0
お気に入りに追加
184
あなたにおすすめの小説

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~
月
恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん)
は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。
しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!?
(もしかして、私、転生してる!!?)
そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!!
そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

獣人の彼はつがいの彼女を逃がさない
たま
恋愛
気が付いたら異世界、深魔の森でした。
何にも思い出せないパニック中、恐ろしい生き物に襲われていた所を、年齢不詳な美人薬師の師匠に助けられた。そんな優しい師匠の側でのんびりこ生きて、いつか、い つ か、この世界を見て回れたらと思っていたのに。運命のつがいだと言う狼獣人に、強制的に広い世界に連れ出されちゃう話
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

私は5歳で4人の許嫁になりました【完結】
Lynx🐈⬛
恋愛
ナターシャは公爵家の令嬢として産まれ、5歳の誕生日に、顔も名前も知らない、爵位も不明な男の許嫁にさせられた。
それからというものの、公爵令嬢として恥ずかしくないように育てられる。
14歳になった頃、お行儀見習いと称し、王宮に上がる事になったナターシャは、そこで4人の皇子と出会う。
皇太子リュカリオン【リュカ】、第二皇子トーマス、第三皇子タイタス、第四皇子コリン。
この4人の誰かと結婚をする事になったナターシャは誰と結婚するのか………。
※Hシーンは終盤しかありません。
※この話は4部作で予定しています。
【私が欲しいのはこの皇子】
【誰が叔父様の側室になんてなるもんか!】
【放浪の花嫁】
本編は99話迄です。
番外編1話アリ。
※全ての話を公開後、【私を奪いに来るんじゃない!】を一気公開する予定です。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる