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 次の日からソフィアはクロードと行動を共にするようになった。執務の間はフランソワとともに執務室でお茶や刺繍などをしている。来客の応対をするときも、婚約者として同席している。
 ソフィアの部屋に戻ることはほとんどなく、ドレスや宝飾品などもクロードの部屋に移されている。ソフィアが一人になることはないと言っても過言ではなく、そのことに多少息苦しさを感じるが、あのようなことがあれば仕方がないかもしれない。 
「やっとソフィア様に挨拶できたのは嬉しいですし、先日の誘拐でご心配なのは分かりますがね」
 一週間ほどたったところで、ライナスはあきれ顔でクロードに進言した。
「いい加減過保護ではないですか?ソフィア様も息が詰まるでしょう」
「ふむ。そうか」
 クロードはしばらく考え込んだ。
「ではしばらく実家に戻るか?ジャンの夏季休暇に合わせて」
「よろしいのですか?」
 先日のことを思えばクロードが心配するのも当然だと思っていたが、実家に戻れるのは嬉しい。ソフィアはぱっと顔を明るくする。
 それとなく言ってはいたのだが、帰省中の護衛が気になるようで、クロードは明言を避けていたのだ。
「アルデンヌ伯爵にも挨拶しておきたい。予定を調整せねば。一週間ほどだろうな」
「……一応確認しますけど、クロード様も行く気ではないですよね?」
 ライナスがジト目でクロードを見る。
「そのつもりだが?ああ、その間は頼んだ。お前でできないことは兄上にお願いしておく」
 悪びれないクロード様に「はぁー」とライナスは深くため息をついた。
「ただ移動含めて一週間ですよ!いいですね」
 ライナスの協力があり、ソフィアたちは帰省を楽しんだ。実家に滞在したのは実質三日ほどだったが、久しぶりの実家を満喫した。
 伯爵たちも久しぶりの娘たちの来訪を喜んだようだ。
 近いうちにまた来訪することを約束し、ソフィアたちは王都に戻った。


 オレーユたちの事情聴取が進み、行方不明になっていた者たちが続々と家に戻されたことで、城下町は落ち着きを取り戻していった。
 オレーユは数年前から始めたらしいが、ここ最近ベルが次期女王として実権を握り始めたことでモンブールでの人身売買がしやすくなり、市場を拡大したらしい。オレーユの供述を信じるとすれば、クロードをさらおうとした男はオレーユとは無関係だったのだろう。
 夏になったころには騎士の護衛付きであればクロードの同伴なしで城下町に出ることも許されるようになった。
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