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モンブールの王女は夜半遅くの到着になるとのことだった。
「ソフィア」
夕食を済ませ、食堂を出ようとしたところでソフィアは女王に呼び止められた。
食事で顔を合わせる中で会話はあったが、二人で話したことなどなかったので少し緊張する。
「女王陛下。何か御用でしょうか?」
「マリアのことなのだけれど、私の部屋に来るように伝えてくれる?王宮に戻ってからあまり話せてないの」
「伝えておきます。女王陛下はメイドたちにも気をお配りになってお優しい方なのですね。マリアは私に仕えてくれているメイドですから私もうれしいです」
ソフィアの言葉に女王は複雑な表情を見せた。
「そうね…」
少し言い淀んでから、
「使用人は等しくかわいくはあるけれど、マリアはね特別なの」
「特別、ですか……」
「でも主人がこんなことを言ってはいけないから秘密にしておいてちょうだいね。マリアには伝えてくれてもいいけれど」
「はい、それはもちろん」
マリアはクロードの思惑により王宮で使えていたのにアルデンヌ家に来ることになった。そんなメイドはそうそういないだろうから、思い入れがあるのかもしれない。
「女王様があとで部屋に来てほしいとおっしゃっていらしたわ」
湯あみをすませ、夜着を着せつけてくれたマリアに、女王からの伝言を伝える。
今日はクロードは用事で遅くなるようで、来ないらしい。それゆえに王宮に来てから初めてしっかりとした生地のや夜着を着ている。
「女王陛下が…。かしこまりました」
女王の部屋に招かれたというのに一切マリアは動じた様子はない。
「マリアは特別だとおっしゃってらしたわ」
「クロード様のわがままに一番私が振り回されていますから、気にかけてくださっているのでしょう。戻った時にご挨拶させていただきましたが、一使用人の私が女王様に個人的にお話しさせていただくことはできませんから」
マリアが苦笑する。
「では私は失礼します。今日のお出かけのお話は後日ゆっくりお聞かせくださいね」
礼をしてマリアが出て行く。
クロードも来ないことだし、今日は早く寝てしまおう。
ソフィアは照明のろうそくを消してベッドに入り、ベスを抱きしめた。
「ソフィア」
夕食を済ませ、食堂を出ようとしたところでソフィアは女王に呼び止められた。
食事で顔を合わせる中で会話はあったが、二人で話したことなどなかったので少し緊張する。
「女王陛下。何か御用でしょうか?」
「マリアのことなのだけれど、私の部屋に来るように伝えてくれる?王宮に戻ってからあまり話せてないの」
「伝えておきます。女王陛下はメイドたちにも気をお配りになってお優しい方なのですね。マリアは私に仕えてくれているメイドですから私もうれしいです」
ソフィアの言葉に女王は複雑な表情を見せた。
「そうね…」
少し言い淀んでから、
「使用人は等しくかわいくはあるけれど、マリアはね特別なの」
「特別、ですか……」
「でも主人がこんなことを言ってはいけないから秘密にしておいてちょうだいね。マリアには伝えてくれてもいいけれど」
「はい、それはもちろん」
マリアはクロードの思惑により王宮で使えていたのにアルデンヌ家に来ることになった。そんなメイドはそうそういないだろうから、思い入れがあるのかもしれない。
「女王様があとで部屋に来てほしいとおっしゃっていらしたわ」
湯あみをすませ、夜着を着せつけてくれたマリアに、女王からの伝言を伝える。
今日はクロードは用事で遅くなるようで、来ないらしい。それゆえに王宮に来てから初めてしっかりとした生地のや夜着を着ている。
「女王陛下が…。かしこまりました」
女王の部屋に招かれたというのに一切マリアは動じた様子はない。
「マリアは特別だとおっしゃってらしたわ」
「クロード様のわがままに一番私が振り回されていますから、気にかけてくださっているのでしょう。戻った時にご挨拶させていただきましたが、一使用人の私が女王様に個人的にお話しさせていただくことはできませんから」
マリアが苦笑する。
「では私は失礼します。今日のお出かけのお話は後日ゆっくりお聞かせくださいね」
礼をしてマリアが出て行く。
クロードも来ないことだし、今日は早く寝てしまおう。
ソフィアは照明のろうそくを消してベッドに入り、ベスを抱きしめた。
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