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樹のトラウマ
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「ちょっとー!何、会社でのあれ!」
樹が帰宅するなり、出迎えた佑は噛みつくように言った。
樹はリビングに向かいながらネクタイを緩める。
「何って……軽い牽制です。『付き合うことになったんで』って公言したほうがよかったですか?
あんた嫌がるかと思ってオブラートに包んだのに」
憤る佑に樹は悪びれる様子は一切ない。
それどころかせっかく気遣ったのに何を怒っているのだろうと不思議そうにしている。
「……はぁ」
怒るだけ無駄な気がして佑は脱力した。
樹がソファーに座ってカバンを机に放りだしたので、その隣に座る。
「君ならともかく僕はモテないのにどうして牽制する必要ないよ」
もの言いたげに樹が佑を見つめてきて佑はたじろいだ。
「な、なに?」
「いや、あんた本当自覚ないんですね。腹立つくらい。まあいいや。とりあえずメシ食ったら、話があります」
あのことだ。
佑は身を固くした。
佑の用意していた食事を食べ終えると、樹は静かに話し出した。
「両親共働きだったんで、ガキのころ隣に住んでた女子高生がオレと妹の面倒見てくれたんですよ。で、あゆはが寝てからいきなり食われかけただけです。
まああゆはが起きてきたおかげで最後まではしなくてすんだんですけど。
安っぽいAVみたいですよね。隣に住んでる美人のJKで童貞喪失って。まー正確にはまだ新品ですけど。
それをラッキーと思えないくらいには純粋だったんでしょうねー。その時は」
天気の話でもするみたいに淡々と話していた樹は、佑の顔をみてぎょっとした。
「……なんであんたが泣いてるんですか」
「怖かったでしょ?苦しかったでしょ?だから代わりに僕が泣いてるんだ」
次々溢れる涙を樹は不思議そうにテーブルの上にあったティッシュを出して優しく拭く。
「あんたが泣くことないんですよ、本当に。20年近く前だし。オレが女の子ならともかく。
その時の呪いはまだ続いてますけど」
「……呪い?」
「彼女できて抱こうとしたらその時のこと思い出して気持ち悪くなってできなくなるんです。
オレはその時真っ黒に汚れてるから。だからできないようになってるんでしょうね」
樹の口調は今だ淡々としていて、顔がうつむいているのでその表情を窺い知ることは出来ない。
でも自分を卑下する樹が可哀想で佑は憤った。
「千堂君が汚れてるなんて、そんなこと絶対ない!被害者なのに」
「……オレはあの時、怯えてるあんたを見て初めてたまらなく興奮したんですよ。こんな奴が汚れてないなんて言えますか?
真っ白で綺麗なあんたをオレみたいにぐっちゃぐちゃに汚したら、呪いが解けるのかもなんて腐ってること考えてるオレが」
佑を見据える樹の視線は鋭い。佑の心の奥底までも見逃さないというように。
「千堂君の気が済むならいいよ。もし君が汚れてるって言うなら」
佑は樹の頬に手を伸ばした。
「……僕も一緒に汚れてやる」
樹が帰宅するなり、出迎えた佑は噛みつくように言った。
樹はリビングに向かいながらネクタイを緩める。
「何って……軽い牽制です。『付き合うことになったんで』って公言したほうがよかったですか?
あんた嫌がるかと思ってオブラートに包んだのに」
憤る佑に樹は悪びれる様子は一切ない。
それどころかせっかく気遣ったのに何を怒っているのだろうと不思議そうにしている。
「……はぁ」
怒るだけ無駄な気がして佑は脱力した。
樹がソファーに座ってカバンを机に放りだしたので、その隣に座る。
「君ならともかく僕はモテないのにどうして牽制する必要ないよ」
もの言いたげに樹が佑を見つめてきて佑はたじろいだ。
「な、なに?」
「いや、あんた本当自覚ないんですね。腹立つくらい。まあいいや。とりあえずメシ食ったら、話があります」
あのことだ。
佑は身を固くした。
佑の用意していた食事を食べ終えると、樹は静かに話し出した。
「両親共働きだったんで、ガキのころ隣に住んでた女子高生がオレと妹の面倒見てくれたんですよ。で、あゆはが寝てからいきなり食われかけただけです。
まああゆはが起きてきたおかげで最後まではしなくてすんだんですけど。
安っぽいAVみたいですよね。隣に住んでる美人のJKで童貞喪失って。まー正確にはまだ新品ですけど。
それをラッキーと思えないくらいには純粋だったんでしょうねー。その時は」
天気の話でもするみたいに淡々と話していた樹は、佑の顔をみてぎょっとした。
「……なんであんたが泣いてるんですか」
「怖かったでしょ?苦しかったでしょ?だから代わりに僕が泣いてるんだ」
次々溢れる涙を樹は不思議そうにテーブルの上にあったティッシュを出して優しく拭く。
「あんたが泣くことないんですよ、本当に。20年近く前だし。オレが女の子ならともかく。
その時の呪いはまだ続いてますけど」
「……呪い?」
「彼女できて抱こうとしたらその時のこと思い出して気持ち悪くなってできなくなるんです。
オレはその時真っ黒に汚れてるから。だからできないようになってるんでしょうね」
樹の口調は今だ淡々としていて、顔がうつむいているのでその表情を窺い知ることは出来ない。
でも自分を卑下する樹が可哀想で佑は憤った。
「千堂君が汚れてるなんて、そんなこと絶対ない!被害者なのに」
「……オレはあの時、怯えてるあんたを見て初めてたまらなく興奮したんですよ。こんな奴が汚れてないなんて言えますか?
真っ白で綺麗なあんたをオレみたいにぐっちゃぐちゃに汚したら、呪いが解けるのかもなんて腐ってること考えてるオレが」
佑を見据える樹の視線は鋭い。佑の心の奥底までも見逃さないというように。
「千堂君の気が済むならいいよ。もし君が汚れてるって言うなら」
佑は樹の頬に手を伸ばした。
「……僕も一緒に汚れてやる」
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