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勝利
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……勝った。
賭けに勝った。
もし課長が傍にいなかったら、樹は思わずガッツポーズをしてしまうところだった。
思わず笑い出したくなるのを必死でこらえる。
もともとこの賭けが樹に分があるのは分かっていた。
佑が今一番親しいのは樹だという確信があったので、その樹との関係が突然なくなるというのは耐えられないだろうと。
さらに保険としてお見合いをするという噂をばらまいたが、噂好きの女子の会話が上手く佑の耳に入ったのだろう。こんなにうまくいくとは思わなかった。
肩で息をしている佑が現れたのはかなり驚いた。落ち着いている佑が焦って走ってくるというのはかなり珍しいからだ。そしてその理由が自分だというのはかなり気分がいい。
佑はエレベーターが来るのを待ちきれず、階段で降りてきたようだった。見るからに筋肉がついていないので体力がなさそうだし、実際その通りなのは肩で息をしていた様子から見ても明らかだ。そうまでしてもお見合いに行く前に樹に会いたかったらしい。
「千堂君、広報の小鳩君と親しいんだね。入社時期も違うのに」
さっきの普通ではないやり取りを見ても課長はとんちんかんなことを言っている。
お見合い会場までは徒歩で行ける距離なので、歩いて向かっている。鈍感な人で助かった。少しカンのするどい人で、樹や佑に悪意を持っている人間だったらあることないこと言いふらされてしまうだろう。
まぁそんなことされたらつぶすけど。
「ちょっときっかけがあって親しくさせていただいています。面倒見がいいんです、小鳩さん」
「そうなんだ。他の課と仲良くするのはいいことだよ。営業って特に」
「ああ。それは本当にそうですね」
社内で敵を作らず、親しい人を増やすことの大切さは、営業という仕事をしていて特に実感をしている。
客相手の仕事のため、時には他の課に色々頼むこともある。そんなとき普段親しくしていないとスムーズに行かない。
「うまくいくといいね。お見合い。業績アップ間違いなし」
「……そうですね。オレもそう思います」
機嫌のよい課長に樹も同意した。
「はい。千堂ですが」
樹のスマホに着信があり、課長に断ったうえで短く応答する。
「もう待っているそうです。彼女」
賭けに勝った。
もし課長が傍にいなかったら、樹は思わずガッツポーズをしてしまうところだった。
思わず笑い出したくなるのを必死でこらえる。
もともとこの賭けが樹に分があるのは分かっていた。
佑が今一番親しいのは樹だという確信があったので、その樹との関係が突然なくなるというのは耐えられないだろうと。
さらに保険としてお見合いをするという噂をばらまいたが、噂好きの女子の会話が上手く佑の耳に入ったのだろう。こんなにうまくいくとは思わなかった。
肩で息をしている佑が現れたのはかなり驚いた。落ち着いている佑が焦って走ってくるというのはかなり珍しいからだ。そしてその理由が自分だというのはかなり気分がいい。
佑はエレベーターが来るのを待ちきれず、階段で降りてきたようだった。見るからに筋肉がついていないので体力がなさそうだし、実際その通りなのは肩で息をしていた様子から見ても明らかだ。そうまでしてもお見合いに行く前に樹に会いたかったらしい。
「千堂君、広報の小鳩君と親しいんだね。入社時期も違うのに」
さっきの普通ではないやり取りを見ても課長はとんちんかんなことを言っている。
お見合い会場までは徒歩で行ける距離なので、歩いて向かっている。鈍感な人で助かった。少しカンのするどい人で、樹や佑に悪意を持っている人間だったらあることないこと言いふらされてしまうだろう。
まぁそんなことされたらつぶすけど。
「ちょっときっかけがあって親しくさせていただいています。面倒見がいいんです、小鳩さん」
「そうなんだ。他の課と仲良くするのはいいことだよ。営業って特に」
「ああ。それは本当にそうですね」
社内で敵を作らず、親しい人を増やすことの大切さは、営業という仕事をしていて特に実感をしている。
客相手の仕事のため、時には他の課に色々頼むこともある。そんなとき普段親しくしていないとスムーズに行かない。
「うまくいくといいね。お見合い。業績アップ間違いなし」
「……そうですね。オレもそう思います」
機嫌のよい課長に樹も同意した。
「はい。千堂ですが」
樹のスマホに着信があり、課長に断ったうえで短く応答する。
「もう待っているそうです。彼女」
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