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君が気になる
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最近は高田、瀬奈と昼食を取ることが多かったが、今日は二人とも別の用事があるらしく久しぶりに一人で食事に行くことになった。もともと一人で食べることが多かったし、女の子ではないから一人で食べることなどなんでもない。
(コンビニでいいかな。最近行ったことないし)
久しぶりに新製品をチェックするのも楽しいかもしれない。
待っていると、ようやく到着したエレベーターから樹が下りてきた。
「あ、千堂君。なんか久しぶり!」
「小鳩さん。一週間ぶりくらいですかね?ラインはやり取りしてますけど」
会社ではほとんど会わないので、なんだか嬉しい。
そう口にすると樹は複雑そうな顔をした。
……何か悪いことを言っただろうか。
「今から昼ですか?」
「そう。コンビニ行こうかなーって思ってたとこ」
「一緒していいですか?予定してた会食が向こうの都合で中止になって。書類だけ置きに行きたいんですが」
「もちろんいいよ!」
一人で食べるはずだったのが、思わぬ仲間ができてうれしい。食事は誰かと一緒に食べたほうがおいしい。
「きゃああー!二人そろってるぅうー!眼福」
いつのまにか近くにいた目を光らせた瀬奈がものすごい勢いで近寄ってくる。
スマホを取り出して連射してくる。
……樹はともかく一体どうしたというのだろう。
「この前小鳩さん樹先輩のところに泊まって看病したらしいですね。ごめんなさい私二人がそんなに進んでるなんて知らなくって。
もおぉー私たち助け合い同盟なんだから教えてくださいよ☆水臭いー!
どっちがどうなんですか?私的には年下攻め健気誘い受がいいんですけどー。ああー。低身長攻めもありです!」
瀬奈がものすごい勢いでマシンガントークを始める。日本語だと思われるのに外国語のようにまったく頭に入らない。
「?誘い……?ごめんちょっと意味がよく……」
意味は全く分からないが、瀬奈がなにか重大な勘違いしていることは分かる。
「この人と俺は関係ないんだからやめてくれない」
分からない、と続けようとしたのを樹が遮る。
関係ないというのは真実なのに、なぜか心が痛む。
「あ、これからなんですね」
「余計なお世話だから。オレたち飯食いに行くからじゃあね。ほら瀬奈ちゃんも予定あるんじゃないの」
「はーい」
軽口をたたきあい、瀬奈が舌を出す。
いかにも仲のいい友人同士とか恋人同士のようで親密そうだ。
「あああ、予定がなかったら一緒に行けたのにぃい!」
瀬奈は悔しそうな顔をしながら名残惜しそうに佑たちに手を振って戻っていった。
「あいつの言ってること、あんま気にしないでテキトーに受け流してください」
「僕と話してても楽しくない、よね?」
「俺は先輩と話してて楽しいですけど、先輩は違うんですか?」
「僕は楽しいけど…」
「じゃあそれでいいじゃないですか」
「瀬奈さんみたいな人がいい?」
関係ないのにこんなプライベートなこと立ち入ってはいけない、と思うのに開いた口が止まらない。
「はい?」
にこやかだった樹の目が鋭くなる。
「すごく楽しそうだったし。瀬奈さんと……付き合ってるの?」
ちっ。
樹が舌打ちをした。止まったままのエレベーターの下降ボタンを押して開かせると、佑の手をつかんでエレベーターに乗り込む。
壁に押し付けられた佑の顔の横に樹が手をつく。
……いわゆる壁ドンだ。自分がすることは性格上ないだろうと思っていたが、男にされるとは到底思っていなかった。
樹の整った顔が、唇に触れそうに近くに来てドキッとする。
以前、ショッピングセンターに行ったときにこういうことがあったのを思い出した。
でもあのときよりもずっと心臓がうるさい。密室の二人しかいない空間では、樹にも聞こえるのではないか、とありえないことを考える。
仕草は乱暴なのに、樹が静かな口調で佑に問いかけた。
「……あんたはオレと瀬奈のどっちに嫉妬してるんですか?」
「沢田さんのことは妹みたいでかわいいとしか思わないけど、千堂君のことは……よくわからない。でもごめん。気になる」
自分でもなんなのか分からない。樹には他人と違った好意を抱いているのは確かだが、それが後輩や友人に対してのものと違うのかは分からない。さっきの感情が嫉妬なのかどうかも。
はあ、と樹は深くため息をついた。
「俺がいい後輩でいようとするのを……いつもあんたが壊すんです。わかっててやってるんですか?」
佑が何も答えられずにいると、エレベーターが一階について扉が開いた。
「……行きましょう」
(コンビニでいいかな。最近行ったことないし)
久しぶりに新製品をチェックするのも楽しいかもしれない。
待っていると、ようやく到着したエレベーターから樹が下りてきた。
「あ、千堂君。なんか久しぶり!」
「小鳩さん。一週間ぶりくらいですかね?ラインはやり取りしてますけど」
会社ではほとんど会わないので、なんだか嬉しい。
そう口にすると樹は複雑そうな顔をした。
……何か悪いことを言っただろうか。
「今から昼ですか?」
「そう。コンビニ行こうかなーって思ってたとこ」
「一緒していいですか?予定してた会食が向こうの都合で中止になって。書類だけ置きに行きたいんですが」
「もちろんいいよ!」
一人で食べるはずだったのが、思わぬ仲間ができてうれしい。食事は誰かと一緒に食べたほうがおいしい。
「きゃああー!二人そろってるぅうー!眼福」
いつのまにか近くにいた目を光らせた瀬奈がものすごい勢いで近寄ってくる。
スマホを取り出して連射してくる。
……樹はともかく一体どうしたというのだろう。
「この前小鳩さん樹先輩のところに泊まって看病したらしいですね。ごめんなさい私二人がそんなに進んでるなんて知らなくって。
もおぉー私たち助け合い同盟なんだから教えてくださいよ☆水臭いー!
どっちがどうなんですか?私的には年下攻め健気誘い受がいいんですけどー。ああー。低身長攻めもありです!」
瀬奈がものすごい勢いでマシンガントークを始める。日本語だと思われるのに外国語のようにまったく頭に入らない。
「?誘い……?ごめんちょっと意味がよく……」
意味は全く分からないが、瀬奈がなにか重大な勘違いしていることは分かる。
「この人と俺は関係ないんだからやめてくれない」
分からない、と続けようとしたのを樹が遮る。
関係ないというのは真実なのに、なぜか心が痛む。
「あ、これからなんですね」
「余計なお世話だから。オレたち飯食いに行くからじゃあね。ほら瀬奈ちゃんも予定あるんじゃないの」
「はーい」
軽口をたたきあい、瀬奈が舌を出す。
いかにも仲のいい友人同士とか恋人同士のようで親密そうだ。
「あああ、予定がなかったら一緒に行けたのにぃい!」
瀬奈は悔しそうな顔をしながら名残惜しそうに佑たちに手を振って戻っていった。
「あいつの言ってること、あんま気にしないでテキトーに受け流してください」
「僕と話してても楽しくない、よね?」
「俺は先輩と話してて楽しいですけど、先輩は違うんですか?」
「僕は楽しいけど…」
「じゃあそれでいいじゃないですか」
「瀬奈さんみたいな人がいい?」
関係ないのにこんなプライベートなこと立ち入ってはいけない、と思うのに開いた口が止まらない。
「はい?」
にこやかだった樹の目が鋭くなる。
「すごく楽しそうだったし。瀬奈さんと……付き合ってるの?」
ちっ。
樹が舌打ちをした。止まったままのエレベーターの下降ボタンを押して開かせると、佑の手をつかんでエレベーターに乗り込む。
壁に押し付けられた佑の顔の横に樹が手をつく。
……いわゆる壁ドンだ。自分がすることは性格上ないだろうと思っていたが、男にされるとは到底思っていなかった。
樹の整った顔が、唇に触れそうに近くに来てドキッとする。
以前、ショッピングセンターに行ったときにこういうことがあったのを思い出した。
でもあのときよりもずっと心臓がうるさい。密室の二人しかいない空間では、樹にも聞こえるのではないか、とありえないことを考える。
仕草は乱暴なのに、樹が静かな口調で佑に問いかけた。
「……あんたはオレと瀬奈のどっちに嫉妬してるんですか?」
「沢田さんのことは妹みたいでかわいいとしか思わないけど、千堂君のことは……よくわからない。でもごめん。気になる」
自分でもなんなのか分からない。樹には他人と違った好意を抱いているのは確かだが、それが後輩や友人に対してのものと違うのかは分からない。さっきの感情が嫉妬なのかどうかも。
はあ、と樹は深くため息をついた。
「俺がいい後輩でいようとするのを……いつもあんたが壊すんです。わかっててやってるんですか?」
佑が何も答えられずにいると、エレベーターが一階について扉が開いた。
「……行きましょう」
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